論文誌「情報教育方法研究」
 第7巻 第1号

− 概 要 −
 

研究論文

「eラーニングのインストラクショナル・デザイン 〜経済学の事例〜」


帝塚山大学 中嶋 航一、堀 真寿美

 多様な学力と勉学意欲を持つ学生が自発的に学習に取り組めることを目標に、eラーニングシステムTIES(タイズ)を1997年より開発してきた。学生の視点に立ち、学生個々の理解度と関心に対応した
eラーニングの効果的な教育デザインを工夫し、実際の授業の臨場感溢れるコンテンツを多く作成した。
 さらに、教育コンテンツの通用性を高めるため大学連携による教材や授業共有を実践し、学生の学問に対する動機付けのため、企業人とライブシステムを組み合わせた合同授業を開催している。その結果、学生の自立的な学習が学力向上につながり、豊富な電子教材が学生の自立的な学習をさらに支えるという、学習サイクルが成立し、教育的な効果が上がるようになった。
 本稿では、このようなTIESを利用した教育デザインと教材・講義連携の事例、その教育的効果について報告する。


「サイバーキャンパスを利用した薬学アーカイブス学習」

明治薬科大学 梶原 正宏、向日 良夫、日野 文男、高取 和彦

 急速な高齢化社会を迎え、医療の場では薬物治療が主体となっている。医薬品の安全性、有効性に対する国民の関心は高くなり、医療技術は専門化、高度化している。これにより薬学教育においては、高度で良質な薬剤師の養成が要望されている。社会の変化に迅速に対応するために、今後e-Learningによって情報を共有化することは必須であり、教員も学生も新たに必要とされる技術と知識を得ることが必要である。本学では、学生が積極的に繰り返し利用するシステムを構築することを目標にし、従来方法と異なる独自の「明薬サイバーキャンパス」を構築した。これによりマルチメディア教育、オンデマンド型の学習支援システム、薬剤師国家試験の自習支援が可能になった。本稿では、本学でこれまでに取り組んだコンテンツの作成および平成15年度に開発したサイバーキャンパス(e-Learningシステム)の導入成果について検証する。


「オリジナルe-Learning中国語教育の試み」

愛知淑徳大学 馮  富榮、杜  英起

 本研究はオリジナルのe-Learningによる中国語教育の実現を目的とし、1)教材原稿は学生の趣味、大学生活など、学生に身近な話題する、2)メディア教材は多様な操作の可能性と学習の楽しさを最大限求める、3)授業は面白さ、分かりやすさおよび、目に見える上達から生まれる学習の動機付けを徹底的に追求することを進めてきた。その結果、中国語発音の学習と練習、聞き取りの練習、発音や日本語訳を含めた授業の予習と復習などは、教員がいなくても、学生が自分でできるようになった。また練習問題では、自分の答えが正しかったか否かがすぐ分かるようになった。一方、教員側の採点作業も省かれ、公正でかつ信頼度の高い成績評価が実現された。さらにメディア教材を使わない授業と比べ、メディア教材を使う授業のほうは学生の発音も作文も上達が早いことも分かった。


「『使いやすさ』『導入のしやすさ』を追求した教育支援システムの開発と導入」

酪農学園大学 遠藤 大二

 講義・実習に付随して生じる出席管理および、小テストの採点という単純作業を軽減するための教育支援システムを開発した。操作を簡略化することにより、講義・実習において教員の活動を阻害しないことを目標として設計を進めた結果、導入時の説明が不要でありながら、利用による作業時間の短縮が使用者に印象づけるシステムを構築することができた。導入後は、出欠・小テストばかりでなく授業評価アンケートにも使用し、導入学部の全教員が当該システムを利用するようになった。そのため、データ量が増大し、蓄積されたデータは学生の学習情報として有用性を持つことになった。加えて、利用上の平易かつ柔軟性を持つ構造から、学内他学部での利用も開始され、全学的な基盤システムと言ってよい状況となった。本論文では、導入を容易にし、利用率を高くすることを目的として作成されたシステムの設計、導入および展開過程を報告する。


「大教室における携帯電話を利用した授業の管理・運営の改善」

明治大学 川島 高峰、株式会社エイエン 永里 壮一

 従来、大教室で困難であった出席管理と学生との双方向コミュニケーションを、携帯電話を活用することにより改善した。出席は、携帯で利用できる出欠管理用のホームページを設けて出席登録を携帯で行い、パスワード、座席番号、小テスト等の運用技術により、高度に不正を抑止することに成功した。また、携帯端末で実施できるアンケートシステムを開発・利用し、アンケート結果をその場で学生と共有しながら授業を展開した。これにより学生の出席率は大幅に向上し、授業への参加の実感が高まったことが確認できた。また、大教室でも学生の理解度を確認しながら進度調整をすることができ、より応答的な講義展開が可能となった。


「解剖学の自己学習に必要な視聴覚教材」

東京歯科大学 御手洗 智、上松 博子、阿部 伸一、河田 英司、井出 吉信

 解剖学は、臨床科目を理解する上で基礎となる科目でもあり、臨床科目との関連性を認識することが大切である。しかし、講義・実習時間内にすべてを把握し、臨床との関連性を理解させるのは困難である。そこで、複雑な人体の立体的構造を把握する目を養い、興味を持って自己学習できるよう、視聴覚を駆使し、臨床解剖学的観点から立体的に形状を把握できることを目的として、CD-ROM教材を作成した。CD-ROMを利用することにより、画像だけでなく、ムービーやアニメーション、3Dデータを扱うことが可能となり、教科書等での自己学習では困難であった人体の立体的構造の把握が容易となった。さらに、解剖と関連した臨床領域についても解説を加え、関連科目との総合的な学習が可能となった。


「e-Learningによる授業理解度向上への取り組み 〜オンライン試験による個別指導の自動化〜」

四国大学 村井  礼、奥村 英樹

 本論文では、e-Learningによる授業運営の支援および学生の理解度向上を図ったWBTシステムSELSを提案し、対面教育の補助システムとしてのe-Learningの応用事例を紹介する。SELSシステムには2種類のサーバが存在する。公開講座や地域貢献を目的とした学外向けSELS1、および、主に学内の授業補助や視覚教育などを目的とした学内向けSELS2である。
 学生の多様化により、教育機関では指導が複雑になってきている。個別ニーズに対応するためには少人数教育が有効であるが、コスト面で課題を有している。そこで、学生の特徴分析、個別指導および教師への指導要領作成を自動化するSELS2により、授業運営を支援し、さらに、学生の理解度の向上を図る。本論文ではSELS2の機能紹介と、実際の授業に応用することにより有効性の検証を行う。


「『GPAS法』によるオンライン理解度テストの有効性評価 〜その授業改善への効果〜」

東京電機大学 小林  浩、佐野  香、中村 尚五

 学校教育におけるIT活用の有効性を評価する方法はまだ確立されていない。筆者らが以前に提案したGPAS法は、学生ごとのIT活用度合の違いを利用して有効性を評価しようとする個体差法と呼べるものである。そのポイントは、GPAを用いて学生の総合能力や科目固有の影響要因を隠蔽し、学生たちの頑張り度合によってグルーピングし、両端2グループ間でIT活用度合と頑張り度合の平均値の差の検定を行うことにある。筆者らの授業で実施しているオンライン理解度テストにおいて、同手法を用いてその有効性を評価し、結果を学生たちにフィードバックしたところ、顕著な授業改善効果が認められた。


「高野山古地図を利用した追記可能なデジタル教材の作成」

高野山大学 山陰加春夫、藤吉 圭二

 歴史資料の活用には、保存への配慮が不可欠である。古文書類はマイクロ撮影の複製で文字などの判読も可能になるが、絵図や曼荼羅など視覚資料は大きなサイズのものも多く、原寸大の複製は作成に困難が伴う。また、大判の図録に収録しても細かな部分は潰れてしまうという難点があり、資料の重要性にもかかわらず、その貴重性ゆえ活用が困難だった。今回、古地図「高野惣山之絵図」を素材に試みたデジタル化は、1)大型の古地図をPCモニタ上で気軽かつ詳細に閲覧できる、2)「絵図」データの入ったノートPC持参で山内を歩くことで、当時と現状を比較対照できる、3)「絵図」へのコメントをデジタルデータで追記できるという利点を持ち、大きな教育効果を得た。

研究ノート

「光回線上のPC会議システムを用いた2大学間の設計教育の相互講評会」

東京工芸大学 眞鍋信太郎、佐々木 誠、宮城大学 平岡 善浩

 建築の設計教育においては、学生がモチベーションを維持し頑張る環境が求められ、課題運営の工夫とともに、提出された作品を適切に講評することが大切である。平成15年度、東京工芸大学と宮城大学との間で、光回線上の会議システムを用いて双方30名が参加する相互講評会を行った。講評機会の拡大と相互の教育内容とその達成レベルを確認することを意図した。
 製図室内で図面と模型を用いて発表し、そのVTR映像を送信し、他校から講評する方式で行った。今回用いた会議システムで映像と音声ともに高品質の通信が可能になり、発表図面の詳細部も十分伝わる相互講評会を行うことができた。
 ここでは、実施体験に加えて、得られた技術的なサポート報告書と記録VTRから実施記録を整理し、教育効果、必要な装置と環境、運営上の改善点、今後への課題を考察した。