情報教育と環境

聖心女子大学における情報教育環境



1.はじめに

 聖心女子大学は1801年にフランスでマグダレナ・ソフィア・バラが創立した聖心会の教育理念に基づいて設立された旧制の聖心女子学院高等専門学校を改組して、1948年4月、日本における最初の新制女子大学の一つとして発足した。現在では文学部に外国語外国文学科、日本語日本文学科、歴史社会学科、哲学科、教育学科の5学科8専攻を開設し、総学生数は約2,200名である。キャンパスは都心にありながら静寂という理想的な環境にあり、国際性豊かで、個性を重視した少人数教育を理念としている。
 本学の情報教育環境は、パソコンを用いたリテラシー教育やLL教育を1990年より開始しているが、インターネットの急速な普及に伴い、1996年に事務局総務部に情報システム課を新設し、学内LAN(USHnet)、マルチメディア設備を中心とした本格的な整備を実施、同時にOPAC(図書館蔵書文献検索)も学内外の端末で利用できるようになった。以後、情報教育施設の拡充を行い、今年度は歴史社会学科(人間関係)およびメディアセンターの充実を図っている。
 本稿では、これらの設備を活用した教育のねらいや内容、効果について紹介する。


2.情報教育のねらい

 現代社会のメディア化、デジタル化は急速に進行しており、そうした中で、学生に対する授業への興味の喚起、理解の促進、深化を推進するためには、マルチメディア機器やインターネットの授業への取り込みが不可欠である。これは理工学系、技術系というジャンルだけでなく、本学の少人数教育を理念とする教育現場にもあてはまることである。本学における主な分野別の情報教育のねらいは次の通りである。

(1)外国語外国文学科(英語英文学)

 文学の背景となっている地域の映像資料、映画、オペラ・演劇化された作品の映像・音声資料等の収集・編集・提示、および徹底した英語環境で基礎的英語教育を推進するため英語版OSのパソコンを配備した教室を活用する。

(2)日本語日本文学科(日本語日文学)

 日本語のデータベースやインターネットのホームページ等から得られた近・現代日本語の語彙調査法や文体解析法による文章の解析。

(3)歴史社会学科(人間関係)

 人格・臨床心理学、社会心理学のデータベース活用、および民族学、社会福祉教育上必要な各種資料の収集・編集・提示。

(4)歴史社会学科(国際交流)

 異文化を理解し交流を図るために必要な民族誌的映像・音声資料の収集・編集・提示、およびコンピュータ言語と自然言語の比較、分析。

(5)教育学科(教育学・初等教育学)

 情報技術の発展、情報化をとりまく社会の変化と教育への影響に対し、メディアやコンピュータがどのような役割を果たしてきたかの考察、およびマルチメディア教材を作成できる教員の養成、及びそれに必要な各種マルチメディア資料の収集・編集。

(6)教育学科(心理学)

 心理学実験、およびプログラム開発、実験データ、およびデータベースの解析。

図1 聖心女子大学LAN構成


3.情報関連施設、設備の概要

 聖心女子大学は1996年に本格的な学内LANを構築、その後毎年ネットワークを拡張し、現在のネットワーク構成となった(図1参照)。この学内LAN上に450台を越えるパソコンを中心とした機器を接続し、ネットワークを活用した教育・研究が行われている。
 主な情報関連教室の概要は次の通りである。

(1)心理学 コンピュータ室

 コンピュータやネットワークを利用し、大量の調査データやデータベースの多変量解析による心理学的考察、解析、グラフィックスを利用した心理学実験とそのデータ収集、実験に使用するプログラムの開発や技法を学習する。

(2)教育学 学習支援センター

 コンピュータ、ネットワークを利用した教材の開発と教員養成のコンピュータ・リテラシーを育成し、ネットワークを利用した実験及び現場教員へのネットワーク上での指導の実験的研究を行う。

(3)国際交流 コンピュータ室

 コンピュータシステムの基本的理解とBASIC、C、COMETなどのプログラミングによるアプリケーション開発を伴う電子メールやデータベース検索を活用した実習を行う。

(4)人間関係 コンピュータ室

 観察実験室で得た被験者データ、カウンセリングの実践、社会福祉、乳児期の鏡映像実験、青年期女性のコンサルタント事例等の音声画像をデータベース化し、統計解析や研究結果などのプレゼンテーションなどを行い包括的教育を目指す。

(5)メディアセンター

 A・B教室は1年英語授業で使用され、その他語学学習や学生の自習にも利用される。学生は外国語習得のためにオーディオテープ、ビデオテープを使用する。
 C・D教室ではマルチリンガル環境での授業を様々な形の対話方式で行う。
 E・F教室では、コンピュータ・リテラシー教育でインターネットの基礎知識や利用マナーなどを学習する。また、インターネット、電子メールを利用した語学学習を行う。


4.おわりに

 現代社会においてコンピュータ・リテラシー習得が不可欠なものとなる一方、その落とし穴の一つとして、間接情報の氾濫と直接情報の希薄化が深刻な問題となっている。いくら情報機器を活用しても人間の五感の視覚、聴覚をサポートするに過ぎない。情報環境の整備とともに、学生が教室を出て、キャンパス内や周辺および調査対象地域に実際に足を運び、視覚や聴覚を切り口にその環境資源を発掘し、その記録を素材としたオリジナル教材を作成させる等の実経験も重要な学習の一つと考える。また情報化社会の抱えるもう一つの問題は、マスメディアの発達や情報関連機器の高度化により、人々が常に「情報の受け手」に終始し、自らの感性や身体に根ざしたオリジナルな「情報の送り手」になれない難しさがある。
 以上のような問題点を克服すべく、教育プログラムの推進とそれに対応可能な情報環境の更なる整備を今後の大きな課題としたい。


文責: 聖心女子大学情報システム課


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