巻頭言

情報化への取り組みと青山学院大学の新キャンパス構想


辻 正重(青山学院大学副学長)



 2009年の大学全入時代、またますます進展するIT革命に対して各大学でいろいろな改革が進められています。その流れの中で青山学院大学が進めている新キャンパス構想とそれに関連する情報化計画を紹介することにします。この構想は、従来の厚木キャンパス(文系1・2年、理系1年)と世田谷キャンパス(理工学部)を統合する新キャンパスを相模原市に創設し、「青山キャンパス」と「新キャンパス(淵野辺駅より徒歩で数分)」の2キャンパス体制を敷く改革です。新キャンパスは、「21世紀型文理融合の『未来と世界へのインテリジェント・キャンパス』」のテーマのもと、1)人にやさしいキャンパス、2)高度情報型キャンパス、3)国際交流型キャンパス、4)地域共生型キャンパス、5)環境共生型キャンパスのコンセプトで、2003年4月開学を目指して、現在詳細設計がなされているところです。特にこの中で「高度情報型キャンパス」について触れますと、新キャンパスの目玉として、その中心に情報科学研究センター、図書館、ラボなどを集約した壮大な建物(仮称メディアセンター)が建設されます。そしてこのメディアセンターは言うに及ばずキャンパス全体にネットワーク、情報コンセント、無線LAN、テレビ会議などの設備を整え、それを基に青山キャンパス、他大学、相模原市、海外大学との遠隔教育や、さらにMBAやMSEの取得なども視野に入れたサイバー・システムを検討しています。また教材関係の「データ・ベース・センター」も検討しているところです。ご承知のように情報化の課題はハード的基盤整備から、教材開発(教育コンテンツ)に移っています。すでに米国大学の教材がインターネットを通じて世界標準になりつつあります。このような状況下で、このセンターは、青山の特色ある教材開発の促進を狙っています。
 この新キャンパスでは、理工学部、新学部(文理融合系予定)の教育・研究が行われますが、同時に全学の1・2年を対象としたいわゆる一般教育の拠点でもあります。フレッシュマン教育として3I教育(Informational、International、Intelligent)の基礎グレードを保証することを検討していますが、その一つとして情報教育があり、情報科学研究センターを中心にした新教育システムを検討中であります。高校までの情報教育の進展(2005年)を見据えると、大学での情報リテラシー教育は専門の情報教育へ進むための「レベル揃え」になると考えられ、新しい講習会形式の集中方式が想定されます。そしてバーチャル・システムを基盤にした各学部の専門教育、およびそれに関わる情報教育へと繋げていくことが考えられ、やはり上述の教材開発が重要になります。
 大学院を含む専門教育では、専門知識をサイバー・システムで教育することがますます進むことになりますが、それが進むほど「教養教育」、「人との触れあい教育」、自ら体験し考える「自立教育」、「リアリティ教育」が強調される必要があります。特に人生に影響力のある1・2年生を中心とする教育においてそれが求められます。そこで新キャンパスでは、サイバー教育システム推進と同時に青山らしい「リアル・バーチャル・ハイブリッド教育」を検討し、調和のとれた大学教育を目指しているところです。


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