私情協ニュース1

第31回臨時総会開催される


 第31回総会は、平成14年11月25(金)午後1時半より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催された。当日は、議事に入るに先立ち、文部科学省専門教育課の徳久課長から来賓の挨拶があり、引き続き第10回情報教育方法研究発表会の受賞者の表彰の後、平成15年度文部科学省の情報関係予算の概算要求等について私学助成課の田村課長補佐より説明があった。次いで、電子著作物権利処理事業の実施準備、マルチメディア衛星通信プロジェクト、大学情報環境基本調査等について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.第10回情報教育方法研究発表会の受賞者の表彰

 63件の応募から7月6日の第一次選考会で11件が選考され、9月4日の第二次選考会の結果を受けて、文部科学大臣賞1件、私立大学情報教育協会賞1件、奨励賞2件の都合4件が決定された。なお、文部科学大臣賞には、衣袋洋一氏(芝浦工業大学システム工学部教授)が発表した「Web Learning Studioにおける建築設計の教育」が選ばれた。
 受賞理由は、教える授業から学ぶ授業へとITを活用した教育方法で、設計段階での概念図を学習する過程にネットワークを通じて教員と学生、学生同士、さらには学外の設計の専門家の講評を得て、最先端の知見を個々の学生に提供するとともに社会に通用する高い水準の授業を実現できる点で他分野の教育に大きな示唆を与えるシステムであること。


2.情報関係補助金の15年度概算要求および14年度予算の執行等について

1)15年度概算要求に当たって、政府の方針は経常費補助金、設備補助金はマイナス2%、装置補助金はマイナス3%という基準を一貫しつつ、要求幅は2割増とし、後は財務省が重点的に措置するとのことから、経常費補助で100億円、装置補助で11.5億円、設備補助で24億円増の要求としたが、12月政府予算案の編成に向けて昨年同額を維持するのも厳しい状況にある。
2)新規事業として「教育研究情報利用経費」を8億円要求している。電子ジャーナル、データベースの利用が大学の費用負担で大きな比重を占めてきていることと、これらの利用が学術振興や教育振興に欠かせないとのことから、一般補助の教育研究費の中でこれまで建前として対象とされてきたが、ある程度高額のものに対して補助することを要望している。
3)14年度の情報関連予算の執行状況として、世界の大学または国内の大学等とネットワークを通じて教育研究の交流を行うサイバー・キャンパス整備事業は、23大学26事業が採択され、8割が採択された。不選定となった理由の多くは、他大学との連携に重点を置いていない点が不明確であった。一度選定されると3年、4年程度継続して支援するもので、3年目に書類審査で事業の進捗状況を調査し、評価することにしている。設備、装置補助の内定は1月頃、経常費補助は2月を予定。なお、14年度の計画調書の提出が差し迫っているので、多少遅れるようなことがあれば個別に相談に応じる。
4)14年度補正予算は、現在不明であるが、当初予算が毎年縮小傾向に入るので、追加募集があった際には、積極的に前倒しして申請いただきたい。
5)学内LANの財産処分については、9年間という義務があるが、残存期間の補助金を国に返還納付すれば、新たな補助を申請することができる。5件程同様の申請があるので、承知おき願いたい。


3.電子著作物権利処理事業の実施準備

 電子著作物権利処理事業について5月の総会で概要説明を行い、後日、管理委託契約約款および使用料規程について意見を伺い、それを踏まえて理事会で協議を重ね、考え方を一部変更した。
 大きな変更点としては、第1に閲覧料の廃止、第2にシステム手数料の大学一括負担、ただし、15年度は徴収を見合わせ、本協会資金の中で工夫する。なお、参加費については実際の稼働を見て大学の規模に応じて、16年度より1大学当たり例えば、3万円から8万円程度を予定している。
 本協会が定める使用料規程については次の点を見直した。1)電子著作物の区分の中でのプログラムとデータベースは使用が一体となる例が多いことから分離しないこととした。2)資料、作品は、静止画と動画・音声を分離し、動画・音声のコンテンツの使用料を高く設定することにより、芸術・美術などの教育コンテンツの利用についても配慮した。3)教育利用での無料の枠を拡大するとともに、研究利用について実情に即して調整した。4)同一人の電子著作物の区分が一体となっている場合には、使用料の高い区分に合わせた使用料とする。5)使用料の単価は、1年度ごととし、利用しやすい水準で設定した。コンテンツの質や量を反映した単価との意見については、現時点では判断基準を見い出せないことから現行通りとした。
 使用料の算定モデルは、次の通り。

「会計入門」の前期授業でスライドデータ2件を学内サーバーに置き、受講生100人に見せる。さらに後期授業でも同様に授業で使用。
年間使用料 300円×2件=600円
「マクロ経済学」の授業で前期・後期通して「マクロ経済学入門システム」(ミニ講義のVTRデータ1件とグラフ画像3件が一体)を学内のサーバーに置き、受講生500人に見せる。
年間使用料
VTR(動画) 1,900円×1件


図1 大学等電子著作物権利処理システム

 規程以外の見直しでは、2次著作物の引用、転載の取り扱いが慎重に行われるよう、会話形式のシステムで自己点検できるようにした。また、電子著作物の著作権に関する相談・助言をWebサイトで行えるよう想定問答集のシステムを構築するとともにシステムで対応できない問題は専門家の助言が得られるように体制を計画している。本協会が係争に巻き込まれないよう、権利者が登録する内容については権利責任者とする他、利用者による不正を発見した場合は、使用を停止するなどのシステム利用のガイドライン又は規程を別途作成することにした。
 以上の他に、管理委託契約約款の第2条の3項において、使用料規程によらず、コンテンツ利用の無料を希望される委託者もこの約款の対象とすることにした。
 このシステムのメリットは、1)ネットワーク上でのコンテンツの権利処理で自動処理が可能となる他に、2)電子著作物に関する相談・助言が可能なことから作成の不安がなくなる、3)権利者にとっては希望すれば利用大学、利用者氏名、利用度数、授業規模など教育業績の手掛かりを得る基礎情報を得ることが可能。基礎情報から個別に利用者に具体的な利用状況を把握することが可能となる点で大きなメリットがある。
 現在、本事業の準備には、NTT東日本株式会社、株式会社日立製作所、サン・マイクロシステムズ株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、伊藤忠テクノサイエンス株式会社、松下電器産業株式会社による6社の賛助会員の協力を得て進めている。
 今後の作業としては、参加大学に学内での担当窓口の設置、教員へのコンテンツ提供の呼び掛けと電子登録を依頼するとともに、説明会を11月29日、3月の総会、5月の総会に予定しており、15年度の6・7月頃に本格実施をと考えている。


4.マルチメディア衛星通信プロジェクト

 マルチメディア衛星通信を3年に亘り研究してきたが、地上通信の飛躍的革新により衛星通信の需要が希薄化してきた。将来は映像・音声によるコンテンツのマルチメディア化の進展に伴い、地上線が渋滞することが予想されることから、衛星通信が注目されることになることを見越して最終提言がされた。
 地上通信と比較してのメリットとしては、1)地上通信の回線混雑の不安を解消、2)同時多地点への配信、3)海外への配信、4)ネットワークのセキュリティの不要を掲げた。研究開発したマルチメディア衛星通信は、世界標準の通信方式を用い、使用目的に応じてテレビ会議程度の画質から高画質の映像まで幅広く対応が可能。また、学内LANと一体化したシステムとして、サーバーにある教材コンテンツの配信や保存を自動的に行うことが可能。回線の利用は、Webサイトから常時可能で多様な利用に専門家を置かずに自動的に処理することが可能など、これまでにない機能を持たせたシステムである。なお、利用目的に対応した衛星通信システムのパターンは次の通り。
 活用事例としては、早稲田大学での3Mbpsで講義を配信し、インターネットで質疑応答する例、東海大学での授業コンテンツのオンデマンド授業の例、東京工業大学のeラーニングを融合した教育環境の例、慶應義塾大学の次世代インターネット環境の構築などを紹介。導入のための課題と実現性では、6Mbpsの大規模なシステムを借入で導入した場合、年額2,000万円程度で可能。512Kの小規模なシステムは、年額480万円程度で買取で導入が可能。通信回線費も通信費のリセイル料にコンテンツ開発費を含められることから、1時間5万円、6万円も高くはないことを提言。2006年度以降にはマルチメディアコンテンツの授業の常態化とeラーニングを中心とした教育連携の実現に衛星通信が重要視されることになる。



図2 衛星通信システムのパターン

5.私立大学情報環境基本調査の実施

 大学の情報環境が適正に整備されているかを自己点検するための調査として2年ごとに調査を実施する。今回は特に3年程度先を予測した大学の当面の目標について、学内LANを設けている段階から、いつでも、どこでも利用可能な大学全体の情報環境を整備、職員の支援を得た組織的な教育研究の情報化の目標など、大学の整備すべき目標を確認するところから調査を実施する。主な項目としては1)教育研究パソコンの整備方針と大学に設置のコンピュータ、さらには学生持ち込みによるコンピュータまで調査を拡大。2)ネットワーク環境では、伝送能力の現状と計画、学外接続回線のマルチホーム化、ネットワークセキュリティ対策の範囲、セキュリティポリシーへの対応、無線LANや携帯電話などを含めたネットワーク環境の計画、運用管理体制、利用内容、マルチメディア環境整備の方針、マルチメディア環境整備の実態、授業情報化の支援体制、eラーニング環境への取り組み、IT活用授業科目の開設状況など重点化している。



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