私情協ニュース3

平成16年度 短期大学部門検討会議開催される



 平成16年度短期大学部門検討会議は6月12日(土)、武庫川女子大学日下記念マルチメディア館で開催された。今年度は、インターネットによるライブ配信も行い、当日会場に来ることのできない短大関係者も会議に参加いただくことができた。


1.基調講演

「新しい短大教育とITの活用」
湘北短期大学理事長・学長 山田 敏之氏


 学生の最大の目標は就職であり、就職先や社会が求める短大生は、即戦力になる社会に役立つ人材である。両者の満足を得るには、社会に出てから必要な基礎学力と社会適応力を身につけさせることであり、これが短大教育の主眼であろう。  本学が就職先125社に満足度アンケート調査したところ、企業が短大生に求めているのはコミュニケーション能力、パソコン技能、提案・企画力、一般常識・文章力、就労意識が上位を占めた。これらの社会のニーズを学生に自ら気付かせ、問題発見、問題解決に取り組む行動力をつけさせることが重要で、こうした教育は少人数の実習授業、社会体験教育によって成果が生まれるが、今日ではIT活用によってさらに大きな成果が得られる。  湘北短大のIT教育は、情報メディア学科を基盤とした全学の情報教育・ネットワークの拠点「インフォテックセンター」に支えられている。大中小12のIT教室があり、約400台のパソコンを備えている。学生はいつでも自由にパソコンを使える。学生自身がWebサイトを作り、電子マネー付き学生IDカードを持ち、学内はすべてキャッシュレスである。これらは実社会の現実をキャンパス内で実体験できる点で、社会体験教育の一環となる。  ITを活用した本学の社会体験教育の柱が「SHOHO」(Shohoku Hands-on Office)である。これは学生たちがITを活用するさまざまなSOHO的チームを立ち上げ、社会や学内に提案・企画・受注して商品やシステムを生み出す仕組みで、ITの活用能力と社会体験が結び付いたユニークな実践教育である(詳細は後掲の事例紹介を参照)。また、インターンシップにも力点を置いており、これまでのケースをデータベースに加工して教育効果を高めている。(注1)



2.事例紹介

「ITを活用したプロジェクトベースの教育とその事例」
湖北短期大学情報メディア学科講師 内海 太祐氏


 「SHOHO」のプロジェクトの代表的なものが、厚木市の商店会連合会のWebサイト作成である。同連合会主催の学生ホームページコンテストで湘北短大の学生集団が優勝し、これがきっかけで多数の「SHOHO」が学内に立ち上げられた。
 また、本学の情報教育の中心であるインフォテックセンターの依頼で、Webカメラ設置プロジェクト(学内OA教室等の利用状況をWebサイトで閲覧できる)、ポータルサイト構築なども行われ、さまざまなIT関係プロジェクトが学生により手がけられている。
 「SHOHO」のプロジェクトに携わった学生の熱意はきわめて高く、また就業意識も強く、就職率が高いのが特色である。


「Web教材作成−小規模短大の取り組みと課題」
星陵女子短期大学経営実務科助教授 沢野 伸浩氏


 学生が「いつでも・どこでも」ITを活用して学習できる環境づくりを目指している。そのため、1)講義室(大・中・小)のマルチメディア化、2)ノートパソコン貸与、3)Web学習システムの導入・運用、4)Videonetシステムによるインターネット活用授業、に取り組んだ。2001年からの更新システムの運用だが、小規模校であるため専門の要員を確保するのが難しく、またソフトや関連装置の使用の習熟、オリジナル教材の作成などにも教員の負担が大きくなるなど、マンパワー問題の解決が課題となっている。


「e-Learning教育への取り組み」
千里金蘭大学短期大学部現代社会情報学科講師 小野 淳氏


 平成14年開設の現代社会情報学科では、学習環境の柱の一つとして「サイバー学習空間」を設け、学生に対して「学習ポータル」経由でネットワークを活用した個人学習環境を実現した。この学習ポータルの中身は、教材提示用、Web学習用、学生連絡用、学生個人用などである。
 教材提示用システムを利用すれば、学生はWeb感覚で教員が作成した教材を見て学習でき、課題を提出し、また学習の支援も得られる。Web学習用を使って資格取得などの課外教育を学ぶことができる。今後の課題は使いやすさとコンテンツの多様化により、学生の利用度を高めることである。



3.パネルディスカッション

パネリスト 山田敏之氏(湘北大学)、内海太祐氏(湘北短期大学)、沢野伸浩氏(星陵女子短期大学)、小野 淳氏(千里金蘭大学短期大学部)
短期大学会議運営委員会 和田茂穂委員長(千葉経済大学短期大学部)、三田 薫委員(実践女子短期大学)、鈴木 隆委員(立教女学院短期大学)
司 会 私立大学情報教育協会 戸高敏之会長(同志社大学)
 前半の基調講演および事例紹介を踏まえ、上記パネリストにより学生一人ひとりの自己実現能力を高めるための工夫について、教育内容、教育支援、人材育成などの側面から討議が行われた。主な意見は以下の通り。

注: (1)文部科学省の平成15年度、16年度「特色ある大学教育支援プログラム(GP)に採択。

文責: 短期大学会議運営委員会委員長
千葉経済大学短期大学部 和田 茂穂


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