私情協ニュース3

平成16年度 情報倫理教育研究集会報告


 平成16年度情報倫理教育研究集会は、9月6日に、立教大学池袋キャンパスで開催された。参加対象者は、情報倫理教育に関わっている加盟大学・短期大学の教職員で、82名(63大学、5短期大学)の参加があった。
 当協会では、情報社会を秩序ある社会とするためには、技術や法制度を超えた人間の心に根差す問題があると考え、人間一人ひとりが自己責任の中で、加害、被害防止のための情報の取り扱いを適切に行うことが不可欠として、日本で最初に情報倫理と称した教育を発足し、普及に努めてきた。
 最初は、平成6年に情報倫理の重要性をPRするため「情報倫理教育のすすめ」をとりまとめ、翌7年には、教材として体系付けを行うことになり、教材としての「情報倫理概論」を刊行した。さらに、平成11年には、教育を実践するためのモデルを提示するため、「インターネットと情報倫理」をとりまとめた。その後5年を経た現在、被害防止、加害防止を内容とした情報倫理教育の普及に、本協会での授業モデルの開発が期待・要請されたことから、2年の歳月をかけて授業で活用いただくためのeラーニング教材を情報倫理教育振興研究委員会にて開発した。
 そこで、eラーニング教材の内容について、授業を担当されている先生方からご意見を伺い、また、これを機に、大学間の連携による情報倫理教育の可能性について模索するために本研究集会を開催した。


情報倫理教育eラーニング教材の紹介

 研究集会の前半は、7月に配信を開始したeラーニング教材開発にあたってのコンセプトおよび教材活用方法などについて、教材を提示しながら解説を行った。教材は、授業で部分的に活用できるように、また自学自習に使用できるように、それぞれのコンテンツを部品のように、映像・音声を用いて作成してあり、以下に示すような18コンテンツであった。
 参加者のeラーニング教材への意見、要望をコメント用紙に記入いただき、前半終了時に回収した。
※画像は教材のイメージ
詳細はこちら http://www.juce.jp/LINK/e-rinri/e-rinri.html
I 総論
 1. インターネット社会の特質
 2. インターネット社会における秩序の形成
 3. インターネット社会におけるコミュニケーション


II 被害防止
 4. パスワードの重要性
 5. 個人情報の流出防止
 6. うまい話の危険性


III 加害防止
 7. 禁止行為
 8. インターネット社会の著作権
 9. 国際理解


IV インターネット社会におけるセキュリティ
 10. セキュリティ対策の必要性
  (1)インターネット社会の脅威
(2)セキュリティ対策
 11. 暗号とディジタル署名


V インターネット社会における知的財産権の保護
 12. インターネット社会における著作権の理解
  (1)著作権とは
(2)著作権の利用と使用
(3)著作者の権利
(4)著作権の内容
(5)引用について
(付録)著作権の仕組み


全体討議「eラーニング教材の評価と活用」

 研究集会の後半は、コメント用紙の意見、要望に基づき、eラーニング教材に関して全体討議を行った。参加者からのeラーニング教材への意見、要望は、約200件に上り、教材の内容に関するもの、スライドの構成などに関するもの、教育方法や評価方法に関するもの、対象者と教材のレベルに関するもの、基本方針に関するもの、ファイルのフォーマットや技術的な利用環境に関するものなど、非常に多岐にわたるものであった。また、他者が作成したコンテンツを授業に利用する場合の著作権法の解釈に関する活発な議論が交わされた他、情報倫理教育のあり方に関わるコメントも寄せられ、非常に有意義な討議が行われた。
 運営委員会では、寄せられた意見・要望を踏まえて教材を改善し、平成17年度に第2版を加盟大学・短期大学に提供することにしている。

 一昨年に開催した前回の研究集会と比較すると、参加者の情報倫理教育に対する意識の高まりが感じられ、教材は私情協頼みという受身の雰囲気が減少し、皆で良い教材を作っていこうという積極的な気運が高まってきた。この変化の本格化が、日本の情報倫理教育にさらなる発展をもたらすことは確実であり、本研究集会が微力ながらその流れに貢献できたのであれば幸いである。
の結論を得た。

(文責:情報倫理教育振興研究委員会)



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