私情協ニュース1


第40回臨時総会開催される


 第40回総会は、平成17年11月25日(金)午後1時半より、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)会議室にて開催。当日は議事に入るに先立ち、文部科学省専門教育課の浅田課長より「電子政府の実現とIT国家の実現の中で、高等教育では時間・場所の制約を受けないeラーニング等によるIT活用教育の一層の推進が示されている」との来賓の挨拶があり、引き続き平成17年度全国大学IT活用教育方法研究発表会の受賞者の表彰の後、平成18年度文部科学省の情報関係予算の概算要求等について私学助成課の俵課長補佐より説明があった。引き続き、教員による学生個人情報保護活用のガイドライン、産学官連携サイバー・ユニバーシテイ構想の準備計画等について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.平成17年度全国大学IT活用教育方法研究発表会の受賞者の表彰

 128件の応募から100件が7月3日の第1選考会で発表され、そのうちの14件が9月3日の第2次選考会で選考を受けた結果、私立大学情報教育協会賞2件(武蔵野学院大学、慶應義塾大学)、奨励賞4件(専修大学、東海大学、福岡女学院大学、日本赤十字豊田看護大学)の都合6件が決定した。http://www.juce.jp/LINK/houhou/05jusho.htmに掲載。


2.情報関係補助金の18年度概算要求の決定内容等について

 文部科学省私学助成課の俵課長補佐より、主に次のような説明があった。
1) 情報関係は、教育学術情報ネットワークに2億円増、教育研究情報利用経費に1億円増を要求。情報通信施設、情報通信装置は専修学校含め合わせて7,200万円を要求しているが、研究設備補助金の情報関係設備は8,700万円の減額要求とした。歳出削減という大きな課題の中で私学助成はかなり厳しいというのが実感。
2) 17年度の執行状況は、採択制の補助は今年度から審査で一定の評価を得たものは原則採択した上で、80%、90%から110%の傾斜配分を行った。審査員1人5点満点で3人の15点の中で採択点を9点とし、予算の範囲内で足りない部分については大学では申請額の80%、短期大学は90%の傾斜をつけ、14、15点は110%とした。これにより、9点でも採択されるようになり、採択率は、情報関係設備が大学で95.6%、短期大学87.4%、ソフトウエアが大学97.8%、短期大学95.2%、データベース等開発が大学92.2%、短期大学100%となった。
3) 情報通信施設、情報通信装置は、審査結果が出ていない。サイバー・キャンパス整備事業は、申請8に対して6校が採択された。不採択は、計画の具体性がなく利用者が少ない、連携の相手先が決まっていないことなどであった。
 次いで、井端事務局長より申請上17年度に見受けられた注意すべき点について、次のような説明があった。
1) 情報関係設備では、大学と短大の計画が同じ、計画と講義の関係が不明確、研究計画に記載の研究用パソコンが不記載、補助対象外の事務用設備、図書館用が入っている、教育研究を改善するための固有の理由がない、期待される効果が不明、システムの構成、授業時間数、担当教員数に整合性がないなど注意すべき点がある。
2) ソフトでは、教育内容、使用計画が同じ、ソフトの規模が教育計画と一致しない、教育効果の記述がない、個人所有のパソコンにインストール可能なソフト、大学教育に必要のない技能練習用のソフト、補助対象外の事務用、図書館のソフト、科研費などで申請すべきものが入っている。
3) データベース等の開発では、事務処理用と思われる開発、開発の内容・効果が不明確、コンテンツの具体性がない、費用の積算根拠が不明確、外部に委託した内容が不明確。


3.教員による学生個人情報活用のガイドライン

 教育現場で教員が日常的に取り扱う個人情報について指針を作成するため、1万4,000名の教員アンケートを実施し、それを踏まえて、個人情報の留意点(第一次案)を取りまとめ、7月の教育の情報化フォーラム、8月の理事長・学長等会議で報告の後、中央大学堀部政男教授を交えて委員会で検討を進めとりまとめた。
 前提知識として、保護法の責任者は、教員・職員ではなく学校法人にあること。学校法人は個人情報の安全管理のために教員・職員が取り扱う行動に対して、監督する義務がある。個人情報の取り扱いに過敏になると、情報の有用性が損なわれてしまうこともあるので、有用性と学内での取り扱いのバランスをどのように考えるべきかをガイドラインの課題とした。
 基盤的なセキュリティの課題としては、情報へのアクセス制限の徹底、教員が取り扱っている個人データの大学として登録・一元管理の義務付けが必要。情報漏洩の防止は、一つは、教員のパソコンに個人情報を一切置かないという方法で、大学の共同サーバにすべて格納・管理する。情報を使用するときは、教員の本人の認証を行い、教員から共同サーバまでの通信を暗号化する。情報基盤の再構築など費用負担が大きくなる問題がある。もう一つは、教員のパソコンに暗号化ソフトを入れ、パスワードの鍵で解除して利用する方法がある。
 個人情報の取得・活用のポイントは、用途、利用範囲の伝達が基本で、学生本人の同意を得ておくことと、情報管理の漏洩防止に最大限、教員が努めることになる。具体的なケーススタディのうち、以下の四つを説明する。

1)Webページに試験の成績を掲載する場合
 個人情報は学籍番号、氏名、成績、未提出情報など。利用目的は成績の通知、学生の呼び出し・課題未提出の学生への通知。公開対象は授業を受けている履修生。公開場所は教員のwebサイト。[留意点」目的を明らかにし、学生本人の同意を得ること。対策は、成績を相互に比較させ、学生に刺激を持たせる場合には、個人を特定できないよう全員の成績を一覧化する。個人への成績だけの伝達であれば、アクセス制限を設け本人に成績を閲覧できるようにシステムを構築するか、個人宛に電子メールを送る方法がある。

2)連絡のための携帯電話、メールアドレスを収集する場合
 教員の6割が個人情報を取得している。書面等による本人の同意が必要。参考事例の通り、科目名、教員の氏名、使用目的などを明記の上、個人情報を可能な限り求めるが、拒否するにしても個人の成績などに影響しないことを明記し、収集している例がある。

3)ゼミ学生の名簿を作る場合
 学生から見れば他の学生も第三者になるので、本人の同意を得ておく必要がある。ゼミ専用Webページへには個人認証によるアクセス制限をかけることが必要。緊急の場合の連絡網のメールアドレスは学生個人のアドレスではなく、大学でのメールアドレスを使用することが適切。

4)学生の論文、作品等をwebに掲載し、助言・評価する場合
 授業の通用性を高めるために、学生の作品、考え方を教材として授業で使用する場面が増えてくることから、学生に同意を得ておく必要がある。学外の専門家から助言・評価を受けるにしても同様。参考事例として、作品・論文のテーマ及び氏名のみを記載してコンテンツを公開する方法、第三者に評価を得ることを納得させた上で、学生に了解を得ている方法などがある。
 同意を得る方法は、個人情報を利用する時期により、入学時に一括同意を得る方法、学年進行の中で経験しなければ判断できない分割同意の方法がある。一括同意は、教育学習指導上の連絡、就職活動の指導、分割同意は個人学習の指導、学習成果の助言評価などが考えられる。同意を得る手段は、書面が一番望ましいが、開示、訂正などに臨機に対応するには手続きの迅速化が必要でWebサイトでの直接入力を考えることが望まれる。セキュリティ対策は、通信の暗号化、生体認証、パスワード認証による個人認証、情報倫理教育の徹底が不可欠。
 書式の事例は、ガイドラインhttp://www.juce.jp/kojin_joho/index.htmlに一括同意と分割同意のモデルを使用目的、該当の個人情報、同意の有効期間、署名欄を掲げた書式を掲載。


4.産学官連携サイバー・ユニバーシティ構想の準備計画

 16年11月の臨時総会での問題提起を受け、産学官連携サイバー・ユニバーシティ構想として報告。この事業は、大学での人材育成の向上を図るため、大学教育の支援を産業界・社会に求めていくもので、大学卒業生の無業者、フリーターの急増、学生の基礎学力、学習意欲の低下、コミュニケーション力、独創力など人間力の低下問題を解決することが可能となる。
 社会からの具体的な支援は、現場情報、体験情報、実務教育、専門家の助言・評価、失敗・成功例などの人間力養成体験談、コンテンツの共同開発、IT人材の育成、企業家の育成教育を想定。
 構想のイメージは、大学が希望する教育の支援を協会のポータルサイトを介して、社会に公募。社会から支援が得られるものであれば、本協会で仲介・調整して、希望する大学にネットワークによるオンデマンドで配信する。支援は、企業及び社会の組織、個人で、団塊の世代も対象にしていく。当面は本協会加盟校約500校を対象とするが、将来は国公立の大学も対称に考えたい。経費負担は、支援者の意向次第であるが、有料、無料など仲介することになる。仲介の手数料は無料。コンテンツの提供はネットワークを介して提供するが、ITを使えない場合は協会が過渡的問題として電子化する。
 支援を無償で協力いただくような場合には、文部科学省に働きかけ、組織、個人に対して社会のメダルが付与できないか働きかけたい。
 社会へのインセンティブは、高齢者の雇用対策に活用できるということで、雇用の創出、マーケットプレイスの拡大、社会人のリカレント教育、人材育成による生きがいの提供に繋がるとして、提唱していく。
 連携の具体的な方法は、ポータルサイトを本協会に設置し、できるだけ多くの大学にコンテンツが利用できるような包括連携などを予定。コンテンツは当面は本協会のサーバに置くが、将来はそれぞれの支援者のところに置く予定。大学の利用者と提供する側とで、顔の見えない世界での連携となることから、本協会に電子認証局を置き、利用者、支援者の適格性を認証しながら事業を進めることを考えている。
 実験準備の課題は、来年3月下旬の総会に向けて準備を進め、5月の総会を目指して実験を開始したい。賛助会員85社の中で教育効果の検証などを進める。約1万2,000人の私情協関係の教員を対象に授業に必要な支援要望を改めて把握し、データベース化する。経団連をはじめとする経済界との協力要請、報道機関へのPRなど社会的に呼び掛けていきたい。
 産学連携は大いに進んでいるが、教育に関しては寄付講座あるいは客員教授など、大学の授業を担当いただく形で進められている。今回の構想は、大学に教員を派遣いただくというのではなく、教育現場で実現が困難な情報、技術・体験を提供いただく。理論と実際をマッチングした現実感のある教育、科学的証拠に基づいた教育の実現が可能になるのではないか。卒業生の多い大学では実施可能かと思われるが、多くない大学では支援が得にくいため、有効な事業と思われる。今後、実績を得つつ文部科学省の理解を得て進めていくように考えている。

図 教育支援仲介システム

5.協会のイベントコンテンツのオンデマンド配信

 本協会が実施する年間11件の内、ファカルティ・ディベロップメントに関係するIT活用教育の実践例の報告をオンデマンドの形にして、正会員、賛助会員を単位に有料で配信することにした。研究会、大会、フォーラムなどに1名で参加すると10万円内外となるが、これを会員を単位に規模により1法人31,500円から52,500円で視聴できる。利用の教職員数は無制限で1年間利用が可能となる。毎年コンテンツを追加するまでの間の1年間無制限で利用いただくもので、大学のファカルティ・ディベロップメントの資料として不可欠な情報となろう。賛助会員は一律1社42,000円とした。生のイベントとの違いは、討議や質疑の内容は割愛しており、また、本協会による補助金関係の情報提供などは除外している。17年度のコンテンツは223本で分野別にタイトルごとに掲載されている。

<実施方法>
●配信
 当協会にコンテンツサーバを設置して配信します。 VTR(およびスライド)はダウンロード不可とし、レジュメ(PDF形式)はダウンロードとプリントが可能です。
●認証
 1大学、企業につき一つのID・パスワードを発行して行います。(自宅でも見ることが可能です。)

<実施スケジュール>
申込み受付開始: 平成17年12月20日(火)16:00より開始
申込み期限: なし(随時募集)
配信開始: 18年2月(1月末までに詳細をお知らせします)

<配信分担金>
 配信分担金は、18年度分のコンテンツが配信されるまでの約1年度分の金額です。
 18年度分のコンテンツ配信後も、17年度分のコンテンツ配信も希望される場合は、その時期になりましたら改めて分担額とともにご案内させていただきます。(その際の17年度分担額は下記の金額を上限に検討いたします。)

正会員は学生収容定員別※ 賛助会員は一律
学生収容定員 金額(税込) 金額(税込)
7,000人以下 31,500円 42,000円
10,000人以下 42,000円
10,001人以上 52,500円
※学生収容定員の算定方法は、正会員設置の加盟大学・短期大学・高等専門学校の学生収容定員の合計とします。

詳細は下記サイトをご覧下さい。
<オンデマンド配信に関するページ>
http://www.juce.jp/ondemand/


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】