私情協ニュース2


平成17年度 大学情報化全国大会開催される


 通算で19回目を迎えるこの大会は、文部科学省の後援を受け開催している。
 今回の大会は、「e-Learningの実施と効果」をメインテーマに掲げ、9月7日から9日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催された。
 今回の参加者数は、447名(172大学、28短期大学、賛助会員23社)の参加となった。賛助会員46社による展示会では、2日目の午後から教育の情報化関連の多くの展示が行われ、大変好評であった。
 初日は、午前中は戸高敏之会長の開会挨拶の後、大会テーマ「e-Leaningの実施と効果」のもと、本協会がまとめたe-Learning導入のためのガイドライン「教育改革を目指したeラーニングのすすめ」について、玉木欽也氏(青山学院大学経営学部教授)より解説いただくとともに、同大学での取り組みを紹介された。また、関連事例紹介として、e-Learning活用による個別学習事例について松浦 執氏(東海大学開発工学部教授)より、対面授業とe-Learningの融合について杉山伸也氏(慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター所長)より紹介いただいた。
 午後には「インターネットによる大学間授業交流と教材の公開」と題して、オンデマンド授業流通フォーラムと日本オープンコースウェアの2組織から活動紹介をいただいた。また、トピックとして、「教員側に求められる個人情報保護対策」について堀部政男氏(中央大学法科大学院教授)より解説いただいた。
 最後に、提言・報告として、本協会で実施した調査や研究報告などをもとに情報化対策への提言を行う他、補助金活用の解説などが事務局より行われた。
 2日目はA、B、C、D、E、Fと並列に六つの会場に分かれて、合計102件の大会発表が行われ、例年同様に盛況であった。また最後には懇親会が催された。
 3日目の午前は、「e-Learningと著作権」をテーマに前半は、鈴木雄一氏(東京理科大学情報メディアセンター教授)による著作権に関する留意点の解説と質疑応答が行われた。また後半では、初日の「e-Learningの実施と効果」を具体的に進めるための「e-Learning のための授業設計」として、経済学の教育事例を中嶋航一氏(帝塚山大学経済学部教授)より、語学教育の事例を小野隆啓氏(京都外国語大学外国語学部教授)より紹介いただいた。
 午後は午前のテーマを引き継いで「学習管理システム導入の必要性」について、中村寿宏氏(神奈川大学大学院法務研究科助教授)より事例を踏まえて解説いただき、その後、「市販システムの導入事例」について、鈴木治郎氏(信州大学医学部保健学科教授)と塚原 渉氏(電気通信大学大学院情報システム学研究科助手)より紹介いただいた。また、最後に「教育研究支援のための組織改革」と題して、吉田悦志氏(明治大学教育の情報化推進本部本部長)と安藏伸治氏(明治大学教育の情報化推進本部副本部長)より、教育改革を目指した組織的な取り組みについて紹介いただいた。
 次に、各セッションの内容について報告する。



第1日目(9月7日)

「e-Learningの実施と効果」



「教育改革を目指したeラーニングのすすめ」

青山学院大学経営学部教授 玉木 欽也氏

 本協会コンテンツ標準化委員会がまとめたeラーニング導入のためのガイドラインを本委員会委員である同氏より解説いただくとともに、青山院大学での取り組みも紹介された。まず、大学の教育は教員が教える授業から学生が学ぶ授業への改革が求められており、それを補完するためeラーニングを手段として活用することができると述べられた。また、eラーニングで失敗しないための対策として、授業全体の分析・設計・開発・実施・評価を行う工夫とノウハウを蓄積するインストラクショナルデザインが重要であるとされた。この他に、eラーニングを取り入れた授業モデル、運用のための留意点、学習管理システム、教材作成の留意点についても解説いただいた。

<関連事例紹介>
 e-Learning の効果的な活用方法として、二つの実践例を紹介された。


「基礎教育理解のための個別学習支援システム」

東海大学開発工学部沼津教養教育センター 助教授 松浦 執氏

 物理学の基礎教育の理解を深めるため、対面授業では、伝統的な講義やトレーニング、実験や観察を通じたactive learningを、また個別学習支援では、予復習、特に分散型反復学習での復習をe-Learning用いて効果をあげている事例が報告された。


「ブレンデッド・ラーニング:対面授業とe-Learning の融合」

慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター 所長 杉山 伸也氏

 多様な学習者ニーズに応じ、教育形態そのものの変容を余儀なくされている現状を背景に、2003〜2005年度の3年間行ってきた実験的な授業におけるe-Learningと対面授業の融合、ブレンデット・ラーニングについて報告いただいた。授業は、Webは配信による基本的な内容についての講義の予習と実際の対面授業から構成されており、ポータルサイトの構築と教材(デジタルコンテンツ)の蓄積と再利用、サポート体制、インストラクショナル・デザイナーの育成、個人情報保護と著作権への配慮が重要であると示された。


「インターネットによる大学間授業交流と教材の公開」

 インターネットを活用した大学間授業交流に関して、主として日本国内での取り組みであるオンデマンド流通フォーラムと国際的な取り組みである日本オープンコースウェアについて、活動を報告いただいた。


「オンデマンド授業流通フォーラム」

オンデマンド授業流通フォーラム 事務局 内山 博夫氏

 2005年8月15日現在、学校会員が53校、企業会員が44社であり提供講座数は21である。2008年度までに100講座を流通させ、それと同時にフォーラムをNPO化すべく着々と準備が進んでいるとの報告であった。


「日本オープンコースウェア」

慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ 統合研究機構教授 福原 美三氏

 MITでの取り組みを活用し、わが国において既に6大学、137講座の授業計画、講義ノート、試験問題等の教育資源を公開し、既に世界各国から多数のアクセスがあったことが報告された。また、慶応義塾大学において、第一段階として公開された13コースに関する教育資源についての概要が説明された。


「教員側に求められる個人情報保護対策」

中央大学法科大学院教授 堀部 政男氏

 大学教育活動における個人情報の取り扱いの留意点を解説された。個人情報保護法上の教員の立場は個人情報取扱者(学校法人)の「従事者」であり、学校法人には従事者の監督業務が課せられている。教員が関係する身近な事象としては、テストの結果を掲示板などに掲載する。学生への連絡の目的で携帯電番号、電子メールアドレスを収集する。卒業生の電話番号を就職希望の学生に提供するなどがあげられる。これまでは普通に行われてきたことが、個人情報保護法により、本人の同意無しに情報を提供することができなくなった。いずれの場合も、情報を収集するときに、この情報はこの目的で使用するとの文書を交わしておかなければ、その目的でその情報を使用することはできない。言い換えると、文書を交わしてあっても、その文書に掲げてある目的以外にその情報を使用することはできない。個人情報取扱者(学校法人)としては、すべての場合に対応できるように使用目的を抽象的に表現し、新入生の入学時に一括して許諾を得ようとする法人もあるようだが、これはあまり勧められない。できれば、使用目的をはっきりさせ個別に許諾を得た方がよいと述べられた。




第2日目(9月8日)

大会発表(102件)
*敬称略

A-1   ITを利用したe-Learning用教材開発
札幌国際大学 川名 典人

 語学を効果的に学習するために、音声や動画を利用した教材を作成した。あわせて、成果を確認するための練習問題を作成した。15課分のコンテンツを作成し、実際に授業や自学自習で利用しているが、非常に効果もあり、学生の評判もよい。開発に使用したソフトウェアは、MySQLとFlash Playerであり、いずれも無料で利用できる。Learning Management System はMoodleを用いた。


A-2   学習習慣の効果的形成をめざして−BBC放 送とe-Learningシステムの融合
関西大学 山本 英一、北村 裕、冬木 正彦、田實 佳郎、北詰 恵一、安田 陽、山川 栄樹、住 政二郎

 関西大学で開発されたLMSであるCEASを利用して英語教育システムを作成した。現在はVersionの製作中である。BBC放送内容を平易なレベルの単語で再記述すること、関連語彙や表現をクイズ形式でゲーム感覚で学ばせる工夫などを行っている。これによって、学生は、時間と空間に縛られない継続的な学習サイクルを身につけることができるようになる。


A-3   日本語能力試験2級文法対応マルチメディア教材の開発:英語圏の学習者を対象として
摂南大学 小池 正平

 英語圏の大学で日本語の中級・上級文法を学ぶ者、とりわけ日本語能力試験1級、2級を目指す学生を対象とした教材が極めて少ないことに鑑みて、マルチメディアを用いた教材を開発した。Windows用のオーサリングソフトであるToolBookII、Instructor を用いて作成した。英語圏では日本語フォントが使えないため、漢字・仮名はグラフィックで表示している。この教材を用いて学習した被験者9人中8人が能力試験1級に合格した。


A-4   組み込みシステムプログラミングの教育用基板の開発
湘北短期大学 小田井 圭

 組み込み系とはカーナビ、家電等に組み込まれたシステムである。組み込みシステムは世界にさきがけ、日本がかなり進歩している。就職の際、組み込み系プログラマーの需要は多いが、組み込みシステムプログラミング用の教材が少ないため、大学独自で教材を開発せざるを得ないのが現状である。短大では、女子学生が多く、ハードウェアになじみがないため、半田などを使うことが難しい。湘北短期大学では、手軽に組み込みシステムのプログラミングを体験できるような教育用基盤を開発した。C言語を用いPC上でプログラムを作成し、make後演習基盤上のCPUにRS-232Cケーブルで送信し、実行する。プログラム通りに動くようになるため、学生への評判は良かった。


A-5   C言語教育におけるe-Learning教材の開発と運用
倉敷芸術科学大学 中川 重和、尾高 好政、門脇 眞示
富士通サポート&サービス(株)   長谷川 健治

 大学の情報系学部では、プログラミング教育をする必要があるが、入学当初、個々の学生の能力には著しい差がある。従って、講義・演習だけでは講義について来れない学生が出てきてしまう。さらに、学生の理解度を上げ、練習不足を解消するため、e-Learning教材を、日本情報処理技術者試験のC言語プログラミングに合格できるレベルを目標として開発した。教材は、学生が作成したプログラムにエラーが有るか無いかを自動判定し、学生の成績をつけることができる。さらに、この教材のReal Time Judge機能は、学生がどんなプログラムを書いているのかを教員がReal Time(例えば10 secごと)で閲覧することができる。学生は自分が過去に書いたプログラムを利用することも可能である。今後は、現在学内利用に限られているこの教材を、学外に公開する、コンテンツの充実を計る予定である。


A-6   学生主体の理数系教材開発による全学的なe-Learningの取り組み
千歳科学技術大学 山川 広人、川西 雪也、小松川 浩

 学力低下、少子化等の背景の中で大学としては、きめの細かい教育をしていく必要がある。このため、入学後リメディアル教育の必要性、キャリアアップ教育の必要性があげられる。これらを解決する最も効果的な方法としてe-Learningが挙げられる。ブレンド型でのe-Learningを主体とするが、負担やコストの点で教員による開発は不可能である。そこで、学生プロジェクトを立ち上げe-Learning教材を開発することにより、学生教員の両方にメリットがある開発体制を構築した。全学の学生数が1000名の理工系大学でコンテンツ作成スタッフ約30名を使い、年間約200コンテンツを300万円以下で作成するシステムを作り上げた。


A-7   情報基礎教育のための共通カリキュラムと電子教材
武蔵大学 梅田茂樹、加藤美治
LPTコンサルティング 秦 隆博
IBMビジネスコンサルティングサービス   常盤 祐司

 情報系リテラシー教育の問題点として非常勤講師への依存率も高く、学習者ばかりでなく教育者の質のバラツキがあってクラス運営が難しい問題がある。これを解決するため全学共通カリキュラムならびに教材を作成した。実技スキル修得のための教材と知識スキル修得のための教材の両方で企画書を作成した。修得レベルや講義シナリオを明確に定義することによって、授業内容を標準化することができた。


A-8   ロボットシミュレーションによるオブジェクト指向プログラミング学習教材開発の試み
いわき明星大学 高山 文雄、大表 良一

 学生の学習意欲の低下する反面、IT技術によるグローバル化の中で、ITスキルのスタンダードの策定が求められている。そこで、興味をもって学習できるプログラミング教材を作成することを目的に、ロボットを用いたオブジェクト指向プログラミング学習教材を開発した。ロボットはCPUをもちプログラミングによって動作する。また、実機ばかりでなくコンピュータ上の仮想ロボットを用いて、多人数クラスにも対応した。


A-9   PC画面動画キャプチャー教材の活用
大阪国際大学 矢島 彰

 コンピュータグラフィックス入門の授業で動画教材を利用する事例の報告。授業計画として画像処理、モデリング、課題作成、レンダリング、CGの基礎知識、模擬試験と続いていくが、立体をコンピュータで表現して記録する方法を理解させることが目的である。操作手順を示すために画面キャプチャーを活用した動画教材を用いたところ、文書によるマニュアルに比べて学生の学習進度に格段の改善が見られた。


A-10   Flashを用いたアルゴリズム学習教材の開発
大阪国際大学 中井 哲夫、岡本 容典、下條 善史
 
 プログラミング初学者を対象とした、抽象的なアルゴリズムの学習を助けるための、また学習意欲を沸きたたせるためのビジュアルな教材ソフトであるダイナミック・フロー・チャート(DFC)を開発した。しかし、実行中の変数の値とフローチャートが統一的に把握できないなどの改善すべき課題が残っていたので今回改善した。その改善にあたってはインターネットとの親和性が高いFLASHを用いた。


A-11   簡易なLMSおよびHTML教材作成システムの開発
日本福祉大学 大場 和久、中村 伸一、豊田 倫明

 e-Learning導入のハードルを低くする、すなわち、わかりやすく、作業工程も少なく、安価であり、かつ教材が共有できるシステムを開発した。名称はSEEDS。クライアントはOSを選ばない。教材の作成は・管理はWordで可能。サーバはPCで可。教材登録など一般的なLMS機能を持つ。


A-12   TIESと授業ライブ配信・授業録画
帝塚山大学 細谷 征爾、堀 真寿美

 従来のTISEに動画記録機能を活用したLiveTISEと称する新システムを追加した。授業のビデオは復習用として有用だがコストや教員の負担が大きいなど、実現性に問題がある。そこで、PCを使った授業をそのまま動画として記録することにした。授業が終了すると、記録された動画画面が授業収録ビデオとして配信され、学生の閲覧が可能になる162のビデオアーカイブが比較的容易に作成され、有効性が実証された。


A-13   図学教育におけるITの活用
中部大学 塩見 弘幸

 文章から作図過程を理解できる学生が少なくなってきていることに鑑み、PowerPointによって作図過程を示す教材を作成した。教材のPowerPointファイルをWEBにアップして学生の利用に供している。学生に対するアンケート調査を実施したところ、「よく理解できた」、「まあまあ理解できた」を合わせて40%程度。理解できた理由としてPowerPointを利用したことをあげる者が多かった。また、板書型の授業に比べて分かりやすいとの評価が多かった。


A-14   数学の学習を支援するマルチメディア教材の開発(2)−教材をeBookとして配信する試み−
北海道工業大学 佐藤 宏一
元北海道自動車短期大学   佐藤 聰夫

 AdbePDFを用いたeBookを活用して数学の学習を支援するマルチメディア教材を作成した。範例は数列から積分まで。単位教材は、それぞれ1)基礎事項、2)スライドショウ、3)問題解説(ビデオクリップ)、4)プロセス問題、5)添削問題(メールのレビュー機能+eEnvelope)、6)練習問題のパートで構成される。PDFを用いたのは、盗聴、なりすまし、改ざん、否認などセキュリティ要件を満たして解答に添削を施すことができるためである。


A-15   大学共通教育数学のe-Learning Systemの構築
高知工科大学 西本 敏彦
高知工業高等専門学校   藤井 幸一

 汎用ソフトであるWebClassの上にThe Mathematicaを用いてe-Learningシステムを構築した。高校で数学IIIまで学習した習熟度の高い学生グループを対象に、解説と例題、練習問題と試験問題画面、レポート問題(記述問題)等を用いて、演習の時間に問題を解かせることとレポート提出に利用している。


A-16   PCを使用した衣服(衣装)形状のデザインからCAD/CAMによる作品制作までの授業計画
名古屋学芸大学短期大学部 加藤 素子
CSC研究会   五十嵐 かつ代

 従来の衣服デザイン分野ではイメージを2次元の手書きスタイル画で表現するか、ドレーピング技術による直接立体で確認してきたが、パターンメイキング技術や製作技術がなければ製品を正確に確認することができないという問題があった。この問題を解決するために、そうした技術がなくとも製品を立体的に確認できるように、3Dスキャナーによって取り込んだ画像を用いる方策を開発した。


A-17   加賀友禅の魅力を引き出す『加賀友禅遊戯』ゲームの開発
金沢学院大学 高田 伸彦
 
 加賀友禅をより多くの人々に知ってもらいことを目的として、友禅並べ、虫食い探し、友禅崩し、言霊合わせの四つのモジュールからなるゲームを作成した。虫食い探しと言霊あわせでは学習性が高いことが分かった。反面、友禅並べでは駒を並べるのが難しいことがわかった。今後は、学習性が高く、かつゲーム性があり、楽しんで学習できるものに改良したい。


B-1   診療放射線技師教育におけるe-Learningの活用
駒澤大学 佐藤 昌憲、小山 正希、森田 和也、徳本 克彦
 
 本発表は、駒澤大学において、学生個人の学力レベルとニーズに合った、国家試験対策支援を行うためのe-Learningシステムの改良と、国家試験対策教材の作成を行ったことに関する報告である。これによって、1)学習到達度の確認が容易に行え、学力レベルに応じた学生ごとの指導ができること、2)自宅でも国家試験対策がやれるので、低学年次生の学力の向上が期待できることなどが挙げられていた。


B-2   歯学部における病理組織診断学の学習支援に向けたメディア教材の開発
日本歯科大学 佐藤 かおり、江成 里香、柳下 寿郎、島津 徳人、青葉 孝昭
 
 最近、講義・実習の時間枠が減少しており、学生の学習意欲の低下も重なり、学習到達目標の達成も容易でない状況が浮かび上がってきた。本発表はこうした状況を克服し、学生自信が能動的な学習習慣を養うことを支援するために、病理学教科内容の見直しと講義室・自習室・メディア空間を統合した学習環境の整備を試みたことの報告である。


B-3   医療の情報化を学習する仮想病院実習室について
国際医療福祉大学 豊田 修一、外山 比南子

 医療機関においては、情報記述に精通しているだけではなく、医療に関して十分な理解を有する人材が必要である。このような状況において、看護士や理学療法士などのコメディカルを目指す学生や、医療経営を学ぶ学生に対して、本研究では、医療情報システムの基本的な原理を習得させる教育を、仮想病院実習室と称する情報システムを設置することにより試みている。


B-4   「法律キャリア・プランニング」授業の実践
東海大学 北村 隆憲
 
 法的知識と教養を備えて、社会の広い現場で活躍するさまざまな可能性とその社会的意義を、わかりやすくそして楽しく学生に理解させる努力が求められている。こうした観点から、東海大学法学部では2004年度より「法律キャリア・プランニング」授業を開講している。本研究は、授業の理念、教材開発、授業実践の概要を紹介している。


B-5   簡易データベースの一致検索を用いた、自己達成確認用教材開発
高田短期大学 中野 美雅

 本研究は、簡易データベースの「一致検索」を用いた、汎用性の高く取り扱いの簡単な、自己学習テストに関するソフトの開発である。このソフトは行動理論に基づいて作られているので、学習効果が高いと報告されている。


B-6   重要点を学生に繰り返し教え込むためのスライドショー活用
早稲田大学 黒須 誠治
 
 本研究では、講義や発表の内容を正しく理解し、記憶してもらうために、スライドショーを利用している。スライドには、風景などの写真の上に数行程度の要点を書き、これを必要枚数作成し、演習時間にBGMの要領で映し出す。スライドショーでは、同一画面が繰り返し映し出されるため、受講者はうろ覚えだった点を明確にでき、問題を容易に解答できると報告している。


B-7   授業効果の直接的測定−表計算ソフトの場合−
安田女子大学 千葉 保男
 
 教室向きに最大限の効果を得るためのシステムを開発した。到達目標に学生が到達したのかが問題である。情報教室の機能とLMSとを組み合わせを利用する。教室支援ソフトのアンケート機能を使い、学生のスキルを把握することが可能。この機能を使って表計算ソフトのスキルを上げる。課題:学生は本当に式を書くべきセルに正しく入れているのかを判定するソフトを作成した。結果として、設問正しくされていないケースがある。設問自体を理解できているのか。電卓的操作からシステム的な考え方が必要。


B-8   情報基礎教育プレイスメントテストの開発
武庫川女子大学 中野 彰、岡田 由紀子
 
 情報基礎教育が高等学校で実施されるようになったが、情報教育が系統的にできていないため、入学者の能力の差(高校での選択した科目による違い。教科書による違い。教師による違い。)がある。このような現状を背景に、個々の学生の能力に合った情報教育を行うため、情報基礎教育プレイスメントテストの開発を行った。開発に当たっては、大学における情報教育とは何か。学習目標をはっきりさせることが重要である。そこで、まず、高校教科書の指導目標を取り上げコード化とキーワード化を行った結果学習目標は全部で項目600項目となった。開発当初はプレイスメントテストの中で問題のある問題(正答率が高すぎる、低すぎる)が有ったが、これらを取り除いた結果、正規分布するようになった。質疑応答で、会場からプレイスメントテストをするとわざと低い点をとり簡単なクラスに入りよい成績を取りたい学生が出てくるとの指摘があった。


B-9   情報倫理教育確認試験の実施について
龍谷大学 西尾 信大
 
 インターネットの爆発的な発達により、大学においても、多くの学生がメディアに関わる犯罪の被害者になっているだけでなく、知らず知らずのうちに加害者となっている事実も見逃せない。龍谷大学では、入学時にインターネットマナー教育(1日)を行った上でIDパスワードを配布している。さらに、情報倫理教育確認試験は7月上旬(必修の講義が終わったあと)に印刷した問題で行ってきた。情報倫理を理解していない場合はどうするか。どのような問題が良いのか等、今後解決しなければならない問題点は多々あるが、出題形式は正誤2択に「わからない」を加えた3択とした。400題の中からランダムに問題を20問抽出し試験を実施した結果その効果は上がっている。今後e-Learningによる教育も行っていく予定である。


B-10   大学入試における「情報」の導入について
専修大学 植竹 朋文、竹村 憲郎、大曽根 匡、渡辺 展男、渥美 幸雄
 
 専修大学経営学部では設立当時から情報系の教育を重視してきた。選択科目の多様化等の目的を達成するために情報を入試科目として導入することになった。導入に当たって、高等学校での履修状況を調査した結果、情報Aを履修しているところが圧倒的に多いことが分かり、情報Aを中心重複する部分を対象に試験を行うこととした。選抜基準は、1)基礎知識を持っている、2)論理的な思考ができる、3)取得した知識を実社会に応用できる能力がある、である。2006年度実施に向けて、高校生、大学生を対象に、模擬試験を行い、これと同時にアンケートも実施をした。論述・アルゴリズムの問題の正解率が大学生の方が良かったため、大学生の成績が良かった。


B-11   オンデマンド授業方式による統計学導入講座実施報告
早稲田大学 瀧澤 武信
 
 2000年度から早稲田大学では導入講座を導入した。これは入学前教育と平行して入学後入試科目にない科目の教育を行うのが目的である。政治経済学部では、導入講座として統計学を1年生を対称として行った。このシステムでは、試験・アンケートを実施しながらその結果をリアルタイムで見ることはできない。実施した結果、単位としては認められない為、受講者が少なかったため、統計学であるにもかかわらず、導入の結果を統計学的に処理することができなかった。


B-12   WBTによる数学導入教育
早稲田大学 古川 勉、瀧澤 武信
 
 数学の実力が大学レベルに達していない学生に対し、入学前に数学導入教育を行い、大学教育についていけるようレベルアップすることを目的とした。教材は、アニメーションなどを多用することで興味を維持させ、学生側は演習の正答率により自分の進度を自己判定することで、学習目標を立てやすいように設計を行った。推薦入学合格者と入学後の政治経済学部の学生を受講対象とし評価を行った。政治経済学部の学生は必修科目のため受講率が非常に高かった。推薦入学者については、一般指定校の推薦入学者の受講率は非常に低かった。その原因の一つとして、PCの操作ができなかったことがあげられる。今後、受講率を上げるためには情報リテラシーの教育も必要なことが分った。ログイン時間のモニターも今後は必要である。


B-13   テレビ会議システムを応用した工学系高校・大学連携プロジェクト教育
神奈川工科大学 金井 徳兼、三輪 基敦
山梨県立甲府工業高校   中澤 透
 
 企業では分業製造が主流である。これを見習い、高校と大学で別々に製作し、最終的にこれを合体させる方式で何かを作成するプロジェクトを立ち上げた。連携にあたってはテレビ会議システムを利用し、双方の情報の共有を図った。ロボットカフェプロジェクトでは、高校でロボット本体を作成し、大学ではその制御部分を担当した。大学生側、高校の生徒ともに学生自身が責任を持って自主的にプロジェクトを推進する点で教育効果があった。


B-14   地域・海外発信型マルチメディアWebログの構築
東洋大学 藤田 晴啓
 
 インターンシップ2単位を利用し、海外大学などに学生を派遣し、周辺の観光地からWeb-logの発信を行うことを目的とした。学生の能力としてはHTMLを発信できる、英語ができることが条件である。日本側の教員は現地の担当教員とはじめに打ち合わせを行った。派遣された学生は、現地の学生と連携し投稿することで、現地の学生とのコミニケーションが必要となる。システムとしては、言語は多国語に対応している物を作成した。投稿に当たっては、多数のカテゴリーの中からカテゴリーを選び投稿できるようにした。


B-15   歯科大学におけるe-Learning環境整備への取り組み
松本歯科大学 金銅 英二、小澤 英浩、五十嵐 順正、王 宝禮、宇田川 信之、吉澤 英樹、倉持 武、長澤 栄、倉澤 郁文、
新井 嘉則、安田 浩一、山下 秀一郎、村田 洋祐、有賀 則正、黒岩 昭弘
 
 e-Learningは学生の学力向上を目的とした。e-Learningを行うにあたって、学生へのノートパソコンの配布、ネットワークの整備を行い、学長のプロジェクトとして推進した。e-Learningのシステムは、情報の共有と学習の習慣化により学習効果を上げる。ウィークリーテストを実施しその結果をWeb掲載し、学習意欲の向上を図るように設計した。


B-16   教育委員会と連携したe-Learningの実践
帝京平成大学 仲井 克己、佐藤 博樹
福岡県山門郡山川町教育委員会   東 竜雄
 
 史跡などの紹介には画像が非常に重要である。しかし、画像を手に入れるためには、現地に行って写真を撮るなど、予算的な制約がある場合かなり難しい。「予算がない場合にできるIT時代の教育とは」がこの講演の命題である。携帯電話を使ってどこまでできるのかに挑戦した。現地の教育委員会とは、コンピュータを利用し現地に行くことなしに連携を図った。


B-17   インターネットを利用したカナダの大学との連携授業の実践
岐阜聖徳学園大学 廣瀬 孝文、岡崎 直樹
Lakehead University   James Gallert
 
 外国の大学との連携を図り、上級レベルの英語教育の提供を実践した。テレビ会議システムを利用して、カナダの大学との間で連携授業を実践した。連携授業の前半部分で日本の教員がテーマについての概論を行い、その後各論をカナダの教員が行った。実践した結果、教員のしゃべるスピードが速すぎる等、テレビ会議システムを使っているための問題点が出てきた。技術的にはPPCの画像をどのように送るのかが問題となった。事前にファイルを送ってもらう、画像として送る等を試した。時差等まだまだ解決しなければならない問題点が多々あるが、最終的には各スタッフの人間関係、先生方の信頼関係が重要であることが解った。


C-1   学内電力エネルギー監視システムと体験型情報システム開発実習
広島工業大学 永田 武
 
 情報システム開発技術の修得を目指したWebアプリケーションによる体験型開発実習の取り組みである。開発システムの仕様をもとに、学生がプロジェクトチームを組んで協力しながら開発を体験し、最後にプレゼンテーションによって、チームの取り組み方、システム開発の考え方の理解を深めさせる。対面での教育とシステムによる自動化との切り分けを今後の課題とされた。


C-2   コンピュータリテラシとしてのOSインストールとPC環境設定実習
奈良産業大学 中尾 泰士、福井 徹、大原 荘司、向井 厚志

 学生自らが主体的にPC環境を整備する力をつけさせるべく貸与したノートPCにWindows XPおよびLinuxをインストールさせるという実習(4日間、学生数84名)を行った。アンケートの結果過去にOSインストールの経験がないもの(76%)のほとんどが有用であると回答した。


C-3   ワークショップ可視化のための検討とシステムの試作
関西学院大学 武田 俊之
 
 教育効果が高いワークショップ型の授業は従来その評価方法が難しいとされていた。そこで、課題遂行を通じて何を学んだかを振り返りができるよう、ワークショップのプロセスを可視化(ビデオ、ICレコーダ、デジタルスチルカメラによる記録のデータベース化)するプラットホームを作成し、対応した。


C-4   互恵的な読書共同体を創出するWebアプリケーションの開発
慶應義塾大学 水野 邦太郎
 
 英語学習において、学生の英文を読む量が少ないという問題点を解決するため、多読を支援するウェブアプリケーションを開発し、その効果について調査した。
 なお、機能の中でどれが効果的かという質問に対して、アンケートで調べたわけではないが、おそらく星の数であろうという回答があった。


C-5   コンピュータとネットワークを利用した英語授業での学習効果
山陽学園大学 川端 淑子
 
 あまり費用をかけない e-learningを目標に、英語の授業の中にマルチメディア教材を利用した e-learning を取り入れた。期末試験の成績などで比較したところ、学習効果が高いという結果が得られた。


C-6   e-Learningの光と影に関する実証的研究
文京学院大学 与那覇 信恵、竹蓋 幸生
大阪大学   草ヶ谷 順子
 
 これまでの CALL 関連の実践の結果を報告した。CALL を用いることにより、平均点の上昇などの成果が得られているが、低い学習意欲や、教材の難易度と学習者の習熟度の不適合により効果が見られない場合もある。なお、教材をこちらから与えるのでは受身にならないかという質問に、学生が自分にあった難易度の教材を選択できない場合もあるという回答があった。


C-7   英語語学教育に於けるweb教材と遠隔ビデオ録画システム応用
慶應義塾大学 飯沼 瑞穂、千代倉 弘明
 
 Academic Writingに関するe-Learning(SCORM対応)を活用した英語カリキュラムおよび実践に関する報告であった。本実践において学生が独自に録画作成したプレゼンテーション動画ファイルを教員と学生が遠隔会議を持ちながら添削する場面も紹介された。


C-8   コンピュータ演習と磁性体工学授業へのオンラインテスト適用とその比較
大阪電気通信大学 阿久津 典子、清水 学、西木 毅、勝間 友康、早野 秀樹、対馬 勝英

 レベルが多様化した多数の学生に対し、2種類のオンラインテストシステムを導入し、採点および学生へのフィードバックを効率化した。その結果磁性体工学の授業では例年に比べ期末テストの大幅な得点上昇(平均30 -> 67点)が認められ有効性が確かめられた。


C-9   電子教材を用いた発見型ものづくり教育のこころみ
長崎大学 林 秀千人、高瀬 徹
九州大学   竹之内 和樹
 
 流体機会(ファン)の設計に関し、知識にもとずく演繹的な授業から、電子教材(シミュレータ)を用い試行錯誤しながら学生自らが設計していく形式の授業に改めた。その結果単なる計算上の答えではなく設計の上の妥当性を述べられる学生が増えるとともに設計段階で制作のしやすさを考慮する学生が現れるという効果があった。


C-10   ミニッツシートの導入によるパワーポイント+ホームページ型授業の改善
東京理科大学 日下部 慧
 
 パワーポイント等のプレゼンテーションソフトを授業で活用することは便利である一方学生がノートを取らなくなるなどの弊害がある。その弊害を無くすべく授業終了10分程度前にその日の授業の要約を学生させることを実施した。その結果学生も授業に対し受け身にならなくなり、この要約を課す試みは正味の授業時間の減少を補ってあまりある成果を得ることができた。


C-11   学生による質問受付・理解度調査が可能な授業運営システムの開発と実施
北海道工業大学 藤田 勝康
 
 毎回の授業で学生の反応・理解度を調査し、その結果をリアルタイムで次の授業に反映させるシステムを開発し授業に適用した。その結果学生の理解度に合わせて授業内容を修正でいるといった利点が明らかになる一方学生の理解度と教員の理解度の乖離等の問題点も明らかになってきた。


C-12   e-Learningシステムでの学生の誤答に対する対応について
明星大学 最首 和雄、飯田 桂郎、鈴木 忠三郎
 
 語句で解答入力するe-Learningシステムを開発し授業で利用した。定期的に解答照合できなかった誤答を集めて、多い誤答には適切な応答文をつけて、データベースに保存し対応した。これによりなぜ間違えたのか、どの程度の間違えなのかが学生に伝えることが可能になった。


C-13   コンピュータリテラシー教育における文字入力方法の検討
日本工業大学 吉岡 亨、飯倉 道雄、樺澤 康夫

 携帯電話型文字入力装置を用いて打鍵速度の違いをフルキーボードによるものと比較した。3回の練習で携帯電話型文字入力装置では60.6文字/分(S.D. = 12.31)、フルキーボードでは75.6文字/分(S.D. = 23.91)であったが、携帯電話型でも分速100文字を超える者もあり、文字入力装置として期待できることがわかった。


C-14   情報コンセントとホットスポットを利用したネットワークリテラシ教育
浜松学院大学短期大学部 山本 孝一
浜松学院大学   山本 由美子
 
 キャンパスLANの他に公衆無線LANのアクセスポイント(ホットスポット)をキャンパスに導入し、コンピュータリテラシー教育の中でその使用法を理解させ、また関連するe-Learning教材を提供したところ、ほとんどの学生が有線、無線のネットワークの両方を使えるようになるとともに半数以上の学生がコンピュータを使用することが好きになった。


C-15   プログラミング言語学習専用パーソナルコンピュータによるプログラミング教育
京都創成大学 神谷 達夫
     
 廃棄処分を待つような旧型のPCとフリーウェアを活用し、プログラミング言語学習環境を構築した。ランプの点灯を制御できるよう簡単なハードウェアを付加し学生に提供したところプログラム制御による立派なクリスマスイルミネーションを自作し、地域でも話題になり新聞等で取り上げられそれがまた学生の学習意欲を刺激した。


C-16   海外の日本語学習者に向けた、学生参加型英語版ウェブサイトの作成及び配信
戸板女子短期大学 北村 弥生

 学習環境の協働学習モデルの可能性を検討すべく、学生参加型英語版ウェブサイトを立ち上げた。分業によってお互いに助け合うScafforldingや参加者全員にReflectionが起きていることが観察され本サイトがCSCLの場として機能したことが明らかになった。


C-17   「2006年問題」を踏まえた情報基礎教育の構築
武庫川女子大学 小野 賢太郎、濱谷 英次

 高等学校で教科情報を履修した学生が入学し始める2006年に対応すべく、大学全体とし2001年年度よりロードマップに従い準備してきている。4月当初の短期間に一人ひとりの学生に必要な情報基礎教育を診断し、受講できるようなインフラも既に整備し2006年以降も多様な学生に柔軟に対応可能な体制の準備が整っている。


D-1 イメージ・モデリング・シミュレーション思考支援ソフトによる参加型e-Learningの効用
東洋大学 池田 誠
NPO法人情報化ユートピア   中村 州男
館林市役所   手塚 節
あずさ監査法人   末武 透

 問題解決のための手法であるイメージ・モデリング法を支援するソフトウェアについての紹介がされた。このソフトウェアは、作図機能やシミュレーション機能などから構成され、それを用いて問題解決を支援する。このソフトウェアを用いての、大学と自治体との地域連携プログラムについても報告された。


D-2 株式投資教育・地域学習によるITスキル形成
松山大学 松本 直樹

 経済系学部に入学してきた学生に対し、株式投資について関心を持たせるための実践的な授業方法の取組みについて報告があった。具体的には、四国地域の上場企業などを投資対象とし、擬似的な売買を行わせる。その際、数式の代わりに表計算ソフトを利用し、ポートフォリオ理論を体感させる試みである。


D-3 ICT活用による授業展開とインパクト:携帯電話による授業アンケート導入と効果
三重中京大学 清水 亮、岡田 良明
 
 携帯電話を活用した授業アンケートシステムを開発し、それを用いて授業中に授業内容のアンケートを導入したことによる効果についての報告があった。その結果、授業中における4択式のアンケートの導入が学生の理解度の向上につながり、それが成績評価に良い影響を与えたと結論づけている。


D-4 課題提出のための携帯利用の試み
近畿大学 堀田 美保
有限会社リウム   穂口 大悟

 従来行われている紙面による論述式の課題提出は、その提出物の管理や評価、再利用などに膨大な時間を必要とする。それを解決する試みとして、携帯を利用した課題提出システムについての報告がされた。アンケート調査によると、利便性や教育効果について高い評価が得られ、教員の負担も大幅に軽減された。


D-5 大学新入生対象のスタディ・スキルズ授業におけるe-Learning環境の活用
日本大学 豊川 和治、川口 智彦
 
 自発的学習能力などの養成を目指すスタディ・スキルズ授業をe-Learning環境において行い、e-Learning環境と学生の習熟度との関連や、学習に関する自律性との関連について調査した。そいて、e-Learning環境を肯定的に評価する要因として習熟度はあげられるが、自律性については顕著な相関は認められなかったと報告している。


D-6 ITを活用したアナログ方式による講義の可能性と課題
北海道医療大学 林 英幸
 
 薬剤師国家試験問題を題材とし、アナログ式による講義方法の紹介があった。そのアナログ式の講義では、キーワードを抜いたプリントを配布し予習を徹底させ、講義中はOHCを用いての解答と解説を行う。この講義方式では、OHCの利用により板書に比べ効率化を図っており、学生の評価も高かったと報告している。


D-7 学内LANによる3キャンパスを結んだ双方向リアルタイム遠隔授業「スポーツ指導論」の実践
法政大学 五明 公男、林 公美、落合 さやか、須藤 智徳
 
 3キャンパスを結んだ双方向リアルタイム遠隔授業についての報告がされた。「スポーツ指導論」の受講生を対象とし、3キャンパスを学内LANで結び、地理的な制約を越えて質疑応答や討論を交えた対面授業的な雰囲気を作り出した。アンケートにより、遠隔講義に肯定的な学生が極めて多かったことも報告している。


D-8 フリーソフトウェア「XOOPS」によるe-Learningと授業支援システムのデザイン
東海大学福岡短期大学 伊津 信之介

 「XOOPS」を用いた授業支援システムの構築についての報告であった。開かれた教育機関ではXOOPSのようなオープンソースのソフトウェアを導入すべきであり、XOOPSを用いたe-Learningシステムは学習者が学習環境を自ら改善できるというメリットもあると主張し、具体的な作成例を提示した。


D-9 幼児教育科「社会福祉援助技術論」におけるデジタル紙芝居の利用効果
武蔵野学院大学 荻原 尚、木川 裕
鶴川女子短期大学   田中 利則
 
 幼児教育科の学生の表現力と創造力の育成を目的としたデジタル教材の構築について報告があった。その教材は、マルチストーリ型のデジタル紙芝居を中心としたもので、紙芝居自体は手作りである。受講生へのアンケート調査により、デジタル紙芝居の製作が楽しかったという評価を受け、利用効果が確認されたとしている。


D-10 地域環境科学の教育・研究における空間情報科学・技術の活用に関する基礎的研究
法政大学 小寺 浩二
 
 地理学において、空間情報科学・技術を活用した教育・研究を試みた。現段階では、高価で特殊なGISソフトは用いず、Excelの図化機能や無料もしくは安価なソフトを組み合わせて、具体的なテーマに関する空間情報を収集・解析するスキルを向上させた。基本的な手法がこの教育分野において活用可能であることを示している。


D-11 講義収録自動アーカイブ・配信システムを活用した授業研究の方法
名城大学 平山 勉、竹内 英人
名古屋大学   後藤 明史

 映像記録の特性を生かした、授業記録アーカイブ・配信システムを活用した授業方法を提案している。小学校において本システムを適用した事例分析を行った。教育実習者及び初任者教師が映像記録を視聴して、授業者、研究者等の授業観察視点・コメントを参考に自分の授業の見方への活用が可能である。


D-12 e-Learningを活用した入学前指導
奈良産業大学 廣田 英樹、北島 健雄
奈良文化女子短期大学   松田 親典
 
 高校生に対する大学への入学前教育として、e-Learningの活用を試みた。市販のe-Learningソフトをカスタマイズして、入学生の実態に合ったシステムを構築し、数学基礎および英語基礎の学習コースに試行した。このシステムは学習コースの作成や変更が容易であり、きめ細かな学習が期待できる。


D-13 入学事前教育プログラムにおけるWebの活用
目白大学 新井 正一、林 俊郎、海老澤 成享、山崎 令氏、里田 武臣、橋詰 靜子、渋谷 昌三、
高谷 和夫、野田 正治、大枝 近子、宮田 学、松川 秀樹
 
 大学への入学前教育として、フォローアップセミナーを開催する。この間に、5または6名の班に分かれ、教員1名およびサポートスタッフ2名が担当して、質問やレポート提出などWebサイトを活用した課題レポート作成の学習支援を行う。スタッフと受講生のアクセス結果から三つのカテゴリーに分類した。


D-14 基礎学力確立のためのe-Learningシステム活用の取組−経済学教育を例として−
名古屋学院大学 児島 完二
 
 基礎知識をITで補完し、基礎学力確立を目指した。経済学部の基礎知識確立として、事前知識として必要な内容の選択問題について、学生はWeb上で解答し、正答と解説により何回も繰り返して問題を解く。学習履歴DBの分析、正答率などから設問の適正、基礎学力向上への有効性などの検証に利用できる。


D-15 TV会議システムとPC会議システムを併用した3国間ビジネスゲームの試み
大阪国際大学 韓 尚秀、市川 直樹、岡本 容典、田窪 美葉
 
 日本、中国、韓国の3国の大学間でインターネットを利用し、ビジネスゲームの準備段階実験を行った。チーム内の遠隔経営会議にはPC会議システムのAll-Friendを利用し、最終の模擬株主総会にはTV会議およびPC会議システムを併用した。操作上、システム規格互換性などの問題を示している。


D-16 講義補完型マルチメディア教育システムの構築とその運用に関する研究
東京成徳大学 川合 治男、福山 裕宣、半田 勝久、岩瀬 弘和、渡部 泰夫、毛利 昭、松本 寿三
 
 マルチメディアシラバスにおいて、簡易ホームページ作成システムを開発した。授業を補完するものとして、トップページ・各授業ページの作成、配布資料のUploadなどで構成されている。統一した画面構成により、教員自身が小テストやアンケートも用意に作成・実施でき、教員による教材のデジタル化を促進した。


D-17 教育用ファイルサーバ「課題提供システム(仮称)」による教育支援の試み
北里大学 片倉 隆、石川 俊広、瓜田 美幸、岡本 牧人、外須 美夫、西 芳弘
 
 医学部における情報関係の教育支援として、教育用ファイルサーバシステムを構築した。学習用補助教材ファイルの提示・参照、課題提示およびレポート提出の利用が可能であり、認証および暗号化通信の環境も整備した。本格利用開始は9月からであるが、少人数の使用を行っている。


E-1 記述型プログラミング演習問題に対する自動採点方式の検討
神奈川工科大学 山本 富士男、小河原 直行

 私立大の教員は演習系の授業でも多数の学生を担当する場合が多く、課題やレポートの採点業務が重圧となる。本発表は、プログラミング演習において評価の自動化を可能とするものである。学生への仕様の提示はある程度規格化している。GUIを含むプログラムは今後の検討が必要である。


E-2 情報処理技術者試験を対象とした学力評価システムの開発
岐阜聖徳学園大学短期大学部 津森 伸一
岐阜聖徳学園大学   磯本 征雄
 
 多肢選択式の試験の評価は偶然正答となる可能性を排除できないので、その結果をそのまま学習到達度とはみなせない。本発表は解答と共に「確信度」を答えさせる手法の検討である。この方法についてある程度効果の確認ができた。システム全体はまだ開発中であり、今後に期待したい。


E-3 携帯電話を活用した簡易型授業支援ツールの実践
摂南大学 松永 公廣
 
 近年ほぼ100%に近い学生が携帯電話を持っている状況を教育の改善に活用する試みが見られるが、本発表もその1つと言える。出席のチェックや小テストの集計・評価に使うのは標準的であるが、学生の受講態度の注意などにまで広げて使用するなど、ユニークな活用がある。


E-4 ゼミ配属支援システムの構築
大阪工業大学 安留 誠吾、中西 通雄

 各種の学務処理にコンピュータが利用されるが、不定形で例外の多いものは依然として手作業中心の場合が多い。本発表は学生を希望に応じて各研究室のゼミ(定員あり、教員の選考作業もある)に配属させるという面倒な作業をWebベースで処理することに成功した興味深い例である。


E-5 振替受講を活用した欠席を生まない情報リテラシー教育
札幌大学 本庄 勝巳、大森 義行
 
 発表者の大学では、全学的に情報系のリテラシー科目を展開しており、外部のインストラクターにより週41回の授業を設置している。学生は都合により本来の受講時間で履修できない場合は他のコマの授業をオンラインで空きを確認し予約でき、これにより欠席が生まれない。


E-6 共有ファイルと表計算ソフトを活用した小テスト支援ツール
九州情報大学 岸川 洋、岡 久登、福田 耕治、合田 和正

 学生に小テストを提示し、それを回収・採点・評価する手段はいろいろ考えられるが、本発表では共有ファイルの仕掛けを活用して実施した事例である。即時採点が可能なので、講義時間内に該当箇所を解説したり類似問題を提示するなど、教育改善効果が現われている。


E-7 京都女子大学の講義ビデオ検索データベース開発と市販e-Learningシステムの比較
京都女子大学 水野 義之

 講義ビデオのデータベースを活用する事例である。本報告で紹介されたシステムでは、学生がノートPCを使って講義ノートをとる際、各自マークをつけることができ、そのマークとビデオデータをリンクして検索できる。学生は、自分のノートの該当箇所から講義ビデオを再生できる。


E-8 ノートPC貸与による学習活動の支援と効果
兵庫大学 河野 稔
 
 ノートPCを全学生に貸与し、すべての学生が大学にいる間は同一のIT環境で教育を受けることができるようにした事例である。教育への活用やスキルの向上には十分寄与するが、専門科目でのPC利用が少ない、自宅での活用がやや不十分など今後の課題もあるようである。


E-9 レポート管理機能を中心としたWeb学習支援システム
福岡女学院大学 貞野 宏之
 
 レポート提出を中心とした学習支援システムの利用事例である。Web経由で課題の提出、採点、コメント(教員)、課題レポートの提出、結果の確認、再提出(学生)などの機能がある。十分に活用した場合はきめ細かい教育指導を可能とする。


E-10 情報モラル向上支援を目的としたログオン時の出題システムの活用
高千穂大学 渡邉 恵子、笹金 光徳、鈴木 一成
 
 情報化社会においては正しい情報倫理・モラルを持つことが重要でそれを大学教育の中にとりこむ必要性もある。本発表では、大学のPCのログイン時に、まず、情報倫理に関係する問題が提示され、それに解答しない限り、PCが利用できないシステムの事例が紹介された。


E-11 演習室環境に応じたKNOPPIXのカスタマイズ
姫路獨協大学 佐藤 伸也、園田 浩一
 
 CD-ROMでブートできるKNOPPIXを活用した事例である。大学演習室で導入するための各種のノウハウが紹介されたが、質疑では、もっと簡便な対策があるのではとの指摘もあった。しかし、ネットワークアドレスの設定やユーザ認証などの具体的手法は興味深いものがある。


E-12 学習履歴管理システムの一考察
千葉経済大学短期大学部 江上 邦博
 
 標準的な各種ツールを組み合わせて構築した学習履歴管理システムに関する発表である。このシステムにより、学生は、課題がどのように出されているか、自分の出欠状況はどうかなどを確認し、それによりその時点でどのように自分の学習が評価されているかを把握できる。


E-13 コンピュータによる和文書検証作業支援
東海大学短期大学部 小堺 光芳
明治学院大学   渡邊 光太郎
 
 和文書入力の検証支援ソフトウェアについて紹介があった。そのソフトウェアでは、元文書と入力文書を比較し、変換ミスや文字抜けなどの誤入力箇所を検索し、誤入力部分を赤字で表示するものである。実験により、手作業に比べ80%以上の検証精度が得られているが、さらに検証精度の向上を図る予定をもっている。


E-14 小規模組織におけるNet-Commonsシステムの運用と学習支援
新島学園短期大学 花田 経子
 
 小規模組織においてe-Learningを可能とするネットワークシステムの運用と学習支援について報告があった。そこでは、Net-Commonsシステムを導入し、独自の学内情報提供サービスを低予算で運用することに成功した。それを用いて、課題提出や出席管理、講義資料のダウンロードなどを行い、講義で活用した。


E-15 順序関係の関連構造による理解状態解析支援システムの開発
大阪芸術大学 武村 泰宏
 
 物理学のように知識と知識の順序関係が強い科目に対しては、その順序関係に着目して学習者の理解状態を把握することが重要である。その順序関係の構造を視覚的に表現し、理解状態の把握を支援するシステムについて報告があった。テストにより学習者の知識の関連構造を描画させ、矢線の太さにより理解状態を視覚的に確認できる。


E-16 大学内PCを活用した自宅からの遠隔自習支援システムの開発と評価
東京家政大学 松木 孝幸、山口 晃子
 
 VPNを活用した遠隔自習支援システムについて報告があった。プログラミング演習受講者34名のうち、自宅からVPN接続が可能な環境の学生8名を選び、その学生には遠隔自宅学習を1ヶ月間してもらった。そして、遠隔自習を行った学生とそうでない学生とでテスト結果を比較し、有意な差があることを検証した。


E-17 食教育を支援するe-Learning教材−高学年児童と親の食生活調査結果を踏まえて−
名古屋文理大学 辻 とみ子、鷲野 嘉映、山住 富也、湯浅 聖記
 
 小学校5年生319名とその両親を対象とし、食に対する意識や知識、行動、習慣についてアンケート調査を行った。その結果、母親の食事や食教育のあり方が子供たちの食習慣形成に影響を及ぼしていることが示唆された。そこで、母親を対象とした食教育を支援するe-Learning教材を作成し、Webで公開した。


E-18 発表中止


F-1 ネットワークを介した配信型セキュリティ教育の実践
東京理科大学 西山 裕之、溝口 文雄、原田 拓、平石 広典、山崎 航
 
 配信型の教育システムを用いた学習環境を設計した。学習者は学習開始時に教材を配信サーバから一括ダウンロードし、学習している期間のネットワーク接続がなく、学習の進捗状況情報も教育ブラウザの終了時に更新・参照される。また、演習問題の出題機能およびその解答状況から理解度も認識できる。


F-2 グリッドコンピューティングによる遠隔教育システムの設計
東京理科大学 溝口 文雄、平石 広典、西山 裕之、山崎 航
 
 グリッド技術により、どこからでもアクセスできる資源共有システムの構築と、その上での教育システムの実装を行った。サーバは利用者管理、授業・会議資料の管理を行い、クライアントは資料をダウンロードし、テレビ会議機能などを利用でき、様々な拠点から遠隔教育システムの利用が可能となった。


F-3 オープンソースCMSの土木教育支援システムへの適用性に関する研究
東和大学 若菜 啓孝、大隣 昭作、吉住 和翁、古賀 理册
 
 土木工学分野における基幹科目群の授業支援として、ブレンディッドラーニングについて検討した。講義における様々な配布資料を電子化してシラバス上に掲示し、学習者のアクセスログからWWWで単純に講義資料を掲示する場合と比較して、学習履歴を得ることもできる。


F-4 携帯情報端末を用いた学生着席位置の調査と成績との関係
日本大学 遠藤 拓
 
 電気電子工学科の授業における試験について、携帯情報端末を用いて着席位置データを収集し、採点結果との相関を調査した。座席データと学生証に記載のバーコードをPDAで読み取り、ホストPCにてExcelを用いて処理する。学生間の教えあい「学生間ネットワーク」により習熟度が上がったことがわかった。


F-5 学生実験管理システムの構築について
いわき明星大学 中尾 剛、根本 俊介
 
 すでに開発した学生実験全体を一元管理するシステムの運用状況について報告している。学生は学生証をカードリーダより実験開始を登録し、個々のバーコードを含んだレポート表紙を印刷する。実験終了後にバーコードを読み込んで、終了を登録する。このシステムにより実験管理の労力を大幅に軽減できた。


F-6 GRIDとシンクライアントを利用したe-Learningシステムの設計
東京理科大学 平石 広典、溝口 文雄、西山 裕之、山崎 航
 
 GRIDコンピュータ技術とシンクライアント技術を利用したe-Learningシステムを構築・設計している。GRID環境としてはマスタホストおよび実行ホストを有し、シンクライアントとしては管理サーバを利用し、学習端末上では、Webブラウザを利用する。一つのサーバ上で教材やソフトウェアを管理するため教育の管理が容易である。


F-7 LATEXを利用した教材の作成と解答、解説文書のWebでの配信方法の作成
神奈川工科大学 平野 照比古
 
 LaTeX を用いて教材を作成し、PDF に変換してウェブで配信するシステムを開発した。各週毎に解答なしと解答つきの PDF ファイルを作り、解答つきは授業が済んでから表示することができる。


F-8 自然言語処理・音声処理技術を用いたe-Learningシステムの開発に向けて
諏訪東京理科大学 江原 暉将
 
 E-learning システムにおいて、講義音声の字幕化を行うにはどのような課題があるかを考察した。なお、認識の精度の質問に、NHK ニュースの場合はリアルタイム修正で実用になっているという回答があった。また、実用化までにはどのぐらいかかるかという質問には、リスピークなら今でも可能であるが、それ以上は不明という回答があった。


F-9 バーコードリーダを用いた出席確認システムの構築(II)−改良とその比較分析−
大阪国際大学 小林 正樹、福田 朋広
 
 出席確認のために学生証に印刷したバーコードを読み取るシステムを開発し、試行を行っている。前年度の問題点を改良し、アンケートによって有効性を調査した。なお、他の認証方式はどうかという質問には、移行できればよいが、費用が問題であるという回答があった。


F-10 遠隔教育インタラクション支援の試み
東京工業大学 金田 佳宏
 
 複数の大学を結ぶ遠隔講義の試行を行っている。具体的には、一方的な配信にならないよう、大学内のさまざまな組織間での意見交換や、履修者間での情報交換の支援などを行った。なお、遠隔授業の評価についての質問には、数値的なものはまだ出ていないという回答があった。


F-11 学生個人向けポータルサイトの構築
大阪経済大学 平田 百合、山野 紘一、菊川 和義
 
 学生個人向けのポータルサイトを構築し、運用を行った。これにより、学生への情報提供の一元化を図ることができる。なお、事務職員の入力作業についての質問には、掲示と二重作業になるが、休講情報については携帯電話用システムが既にあったので作業量は変わらないという回答があった。


F-12 Webを活用した履修登録によるカリキュラム作成支援
新島学園短期大学 細谷 聡
 
 履修登録を中心としたカリキュラム作成支援システムを構築し、運用を行った。これにより、学生が目的に応じたカリキュラムを自由に設定できる。なお、人数制限の質問には、別に抽選をしてから登録するという回答があった。また、履修できない科目については、既履修科目などの処理はできないという回答があった。


F-13 CMSを用いた英語授業改善
北海学園大学 塩川 春彦、石井 晴子、松根 マーク、浦野 研
 
 Jenzabarなどの CMS を用いた英語授業を行っている。これにより、教室外学習の効率化や、授業内容・方法の平準化などの効果があった。なお、学力の検証の質問には、最初から CMS を使用しているので、比較できるデータがないという回答があった。また、CMS の利点については、コンピュータに弱い教員でも使えるという回答であった。


F-14 英語基礎学力養成とTOEIC受験のためのe-Learningによる学習支援システム構築に向けて
日本大学 谷岡 朗、多恵 基継、鈴木 孝、葉島 千歌、Joseph Falout
 
 市販の TOEIC 学習ソフトを利用して、英語基礎学力養成もできるe-Learningシステムの構築を目指している。これまでの結果から、日本語の文法知識が重要であるという結果が得られた。なお、学生はそもそも文法用語を知らないのではないかというコメントがあった。


F-15 FLASHによる韓国語CAI教材
同志社大学 油谷 幸利
東京外国語大学   金 恩愛
 
 FLASH を用いて、ゲーム感覚で韓国語の学習ができる教材を開発した。韓国語の文字と発音の関連付けと共に、日本語と韓国語の語順がほぼ等しいことを利用して、音声と意味の関連付けもできるように工夫した。なお、自分で作ったのかという質問には、その通りであり、手間はかかるが難しくないという回答があった。


F-16 大学生のインターネット利用状況調査
同志社女子大学 川田 隆雄、Bernard Susser、有賀 妙子、佐藤 和美
同志社大学   西納 春雄
 
 E-learningシステム開発の基礎資料として、大学生のインターネット利用の実態を調査した。その結果、書籍に取って替わるほどの位置を占めていることがわかった。なお、学生がじっくり考えることが少なくなっているのではないかという質問には、library literacyを教えることが必要という回答があった。


F-17 社会福祉実践教育におけるシミュレーション型教材の開発と実践の試み
淑徳大学 松山恵美子、戸塚法子
 
 社会福祉士養成教育において、仮想の福祉現場環境を創ることで、学生が実習の疑似体験をできるシステムを開発した。なお、アニメーションはどうやって作ったのかという質問に対し、Macromedia Directorを用いて自分で作ったが、画像は外部に発注し、音声は学生に頼んだという回答があった。




第3日目(9月9日)

「e-Learningと著作権」

東京理科大学情報メディアセンター教授 鈴木 雄一氏

 近年、様々な事件により注目を集めているデジタルコンテンツに関する著作権についての解説である。まず、基本的な概念として著作権、著作者人格権、著作隣接権があることから始まり、私的使用や引用、大学教員の職務著作、教育機関における例外措置など e-Learning システムを運用する際に避けて通れない法律的問題点について、興味深い話を伺うことができた。多くの聴衆から時間を超過するほどの質問が出たが、その中で主なものは次の通りである。

Q: 著作者人格権は放棄できないということだが、同一性保持権不行使特約は放棄とは違うのか?
A: 「権利を行使しない」という契約である。ただし、公序良俗に反するという説もあるが、まだ判例がない。

Q: 引用の要件には「必然性」もあるのではないか?
A: 「引用の目的上正当な範囲内である」という要件に含まれる。

Q: 授業でコピーする場合、学生が300人いたら300部コピーしてはいけないのか?
A: 少部数ならよくても、あまり多いのはいけない(経済的損失を与えてはいけない)という説がある。

Q: 学園祭は料金をとっても非営利と言えるか?
A: 微妙な問題であるが、厳密には非営利とは言えないと思われる。

Q: copyright表示はどういう意味があるのか?
A: 日本を含めたベルヌ条約加盟国は無方式主義なので、表示は必要ない。ただし、民事訴訟では表示があった方が有利になることが多い。


「e-Learning のための授業設計」

 e-LearningやCALLシステムなど、ITを効果的に教育に活用するための授業設計について、実践事例を紹介いただいた。

「e-Learningを活用した経済学の教育」

帝塚山大学経済学部教授 中嶋 航一氏

 帝塚山大学においてe-Learningを活用した講義を行うために、これまでにシステム(TIES)を構築し、様々な教材の電子化、コンテンツの充実を進めている。ここでは、経済学の教育への活用事例が紹介された。2003年度に開始したTIESの利用は、2005年度には利用講義数が179にも達し、受講者数および教材数など3倍以上と普及している。予め作成された様々な教材コンテンツを用いて、学生が主体的に学習できるように講義シナリオとインストラクションデザインを設計できる。実際の講義の実例として、経済統計に関するデータおよびその処理(グラフ化)と活用、シミュレーションなどが紹介され、さらに、掲示板を使ったディベートとその評価が可能である。その他、ビデオを見ながらのチャットによる意見交換、アンケート、授業ライブ収録と自動配信、外部講師との打ち合わせ機能なども備えている。


「IT活用による複数言語教育プログラム」

京都外国語大学外国語学部教授 小野 隆啓氏

 外国語教育における優れた教育補助支援機器(コンピュータ、DVD、インターネットなど)の有効利用事例を紹介している。CALLの導入やインターネット利用は、新規性のため学習者が興味を持ち、ある程度の段階までは進む。しかし、その後は途中放棄など意欲が失われてしまう。この取組は、英語を主専攻とし第2外国語(フランス語、ドイツ語、スペイン語)を選択している学習者と、その逆の組合せの学習者による混合クラスで行われる。1回の授業は180分連続であり、はじめの30分の自立型CALL演習による学習の後に、映画(DVD)を用いて、詳細に準備・計画された両外国語の教員により表現形式の比較などの説明が進行する。この特色ある新しい授業システムで学習することにより、学習者は複数言語を同時に学習し、言語運用能力を向上させることができ、異文化に対する理解を深めることができた。


「学習管理システム導入の必要性」

神奈川大学大学院法務研究科 助教授 中村 寿宏氏

 eラーニングを大学で展開する際にベースとなる学習管理システム(LMS)の必要性について述べられた。まず、LMSに求められる機能として、eラーニングのポータル、つまり、そこに来ると学生は「すべての」eラーニングにアクセスできる機能、教育の効果測定を可能とし学生ごとにきめ細かく対応するとともに、教育内容の改善にフィードバックする機能、教員個人ベースでは、ともすると散逸しがちな各種コンテンツをアーカイブする機能などがある。これらについて、興味深い議論が展開された後で、LMSの様態について、講演者の豊富な経験に基づき、標準規格か独自規格か、統合型か単純機能型か、ASPか自前サーバ設置かなどの点につき詳しい議論が展開された。迫力あるウィットにあふれた話題であったが、時間不足のため事例としての神奈川大学法科大学院での具体的な内容について詳しく伺うことができなかったのが残念であった。


「市販システムの導入事例」

 市販の学習管理システムの導入事例を2大学から紹介いただいた。

「Blackboardの導入と運用利用目的に応じたプラットフォーム選択の薦め」

信州大学医学部保健学科教授 鈴木 治郎氏

 信州大学でのBlackboard導入までの経過、授業利用支援志向を選択した理由、インターネット大学院システム、授業利用支援と完全自学自習型システムの違い、今後の課題について紹介いただいた。特に、授業利用支援志向Blackboard現象に注目した理由として、1)全学での漠然とした認識(インターネット大学院でe-Learning運用経験があるため信州大学全体でもできると思えること)、2)e-Learningブームの中の2003年調査で、海外ではBlackboardがWebCTとのシェアを逆転して第1位になっていること、3)なぜよく使われるようになったのか?(授業時間外の授業支援において、課題提出機能はテスト内容に取り込まれて改善し、テスト作成形式が豊富になったこと、およびWebCTの有料化)などがあげられていた。また、ASP(Application Service Provider)を使うか自前運用かではASPは、運用の安全性、技術的専門知識を備えた要員の確保不要という利点はあるが、特定プラットフォームへのロックイン、発展途上技術では特に危険という欠点がある。一方、自前運用には、計上されにくい高価な運用コスト(技術専門員の人件費、24時間運用に向けた管理コスト)という問題がある。Blackboardライセンス価格は、e-Learningプラットフォーム導入を前提とした場合、ハードウェアおよび運用人員コストはどれでも同じであるが、Blackboardエンタープライズ版は、710万円/年で、1学年約2000名とすると、3,500円/人となり、教養授業教科書2冊分以上のサービスが実現できれば、もとはとれると考えられていた。


「電気通信大学におけるWebClassの導入」

電気通信大学大学院情報システム学研究科 助手 塚原 渉氏

 WebClass導入の背景(現代GP採択を契機にeラーニング推進センターを発足したこと)、WebClass選択の理由、電通大WebClassシステムの内容、現状での効果、今後の課題について紹介いただいた。特に、WebClass選択の理由として、1)日本の企業による開発のため小回りが利く、2)導入事例が多い(2004年度)、安価、未実装の機能について開発に前向き、学務情報システムの連携などに前向き、ロバストな動作―PHP言語、豊富なアップロードファイルタイプ、コンテンツ内スクリプトに対しロバスト、各種オーサリングソフトの結果をアップロード可能、などがあげられた。
 電通大WebClassシステムの内容に関しては、1)これまでのeラーニング教育のノウハウを反映していること、2)学務情報システムからの情報の受け渡し、例えば、学生履修情報、学生ID、XMLファイル形式でパッチ処理、パスワード情報(LDAP-内調整待ち)などに役立てている。現状での効果としては、1)コンテンツを開発、運用、2)掲示板の活用(講義内容に依存)、3)システムの統一的なアップグレード、4)eラーニング推進センターでの学生の一括管理、5)コンテンツの相互閲覧の容易性、6)メール機能、告知機能の活用、7)ロバスト(運用、コンテンツ内スクリプト)、8)解析用ログデータがあげられた。まとめとして、WebClassはロバストで、継続的な開発が行われており、ユーザと開発者の相互のフィードバックが活発に行える。また、導入が比較的容易(センター員1名)かつ、教員への説明が容易(ファイル形式、講義形式を強制しない)であり、eラーニングに王道なしということであった。


「教育研究支援のための組織改革」

明治大学教育の情報化推進本部 本部長  吉田 悦志氏
明治大学教育の情報化推進本部 副本部長 安藏 伸治氏

 明治大学では2005年に各種の委員会や機関を統廃合した上で、学長のもとに「教育の情報化推進本部」を設置し、全学的にITベースの教育支援を展開している。まず、目を引く点は、このようなケースでは情報関係組織が主導する場合が多い中で、明大では規定で本部長を教務部長と定め、あくまで「教育」を起点として情報化を進める姿勢をとっているところである。
明大は既に99年から著名なクラスウェブ/ポータルページシステムである「Oh-o! Meijiシステム」により教育支援をアクセスしやすい形で進めており、平成15年度にはそれらが文科省の特色ある大学教育プログラムにも選定されているなど、情報トップスクールとしての実績は大きい。豊富な人的サポート体制や資源など、他大学では真似し難いところもあるが、明大がこのような「骨太」の情報化改革を開始したことは注目すべきであり、今後の展開を注目していきたい。


文責: 情報化全国大会運営委員会


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