巻頭言

情報教育が目指すもの


奥田 吾朗(大阪国際大学理事長・学長)



 本学は大阪府枚方市に経営情報学部、法政経学部、大学院(経営情報学研究科、総合社会科学研究科)、大阪府守口市に人間科学部、短期大学部という2キャンパスを擁し、系列に中学校、高等学校、幼稚園がある総合学園です。学園全体としても「全人教育」という建学精神の元、学生一人ひとりの潜在的な可能性・ポテンシャルを高め、世界に貢献できる人材を育成することを目標に掲げております。その一環として、大学における情報教育があると考えます。
 さて、周りを見渡してみると、モバイルテクノロジーの急速な発展に伴い、教育のあり方も改変しなければならない時期を迎えているようです。
 例えば、携帯電話が日常生活の一部になった今日では、メールが有効なコミュニケーションツールとなり、若者の中に新しい文化を生み出す機会を与えました。今やもうそんな方はおられないと思いますが、携帯電話が普及し始めたころ、手帳の電話番号を見ながら、携帯を使用している光景をよく目にしました。今では、教育機関が携帯電話の活用方法を教えたわけでもないのに、家庭の主婦や小学生に至るまで、携帯電話が様々な情報収集に活躍しています。最近では、iPodなど、映像を含めた音楽受信が可能な端末も登場しています。このように、以前は単純な情報の配信に留まっていたWebなどの手段が、テクノロジーの発展を伴いながら、情報受発信のあり方までも変革させる情況が生まれてきています。
 以上のことから、大学の情報リテラシー教育は、今後大きな変換期を迎えることとなると思われます。従来の三種の神器的な、ワープロ・表計算・データベースなど中心の教育は終焉を迎えつつあるのではないでしょうか。本学においても、新しい情報教育のあり方について、議論を開始しております。
 当初、本学がコンピュータリテラシー教育に取り組み始めたときには、コンピュータとは部屋の中だけで使う機械であり、限られた人だけが使える特殊なツールでしたが、前述のように今は身近な存在です。その証拠に、情報基礎科目以外の各学部の専門科目にもコンピュータを利用した授業が多く実施されるようになり、平成17年度からデジタルコンテンツを利用したe-Learning講義も始まっております。情報教育の位置付けは、既に技能教育の枠をはるかに越える方向に進んでいると言えるかもしれません。なお、本学の情報教育内容やネットワーク環境については、本誌Vol.13 No.4にも詳述されておりますので、機会があれば一度ご覧下さい。
 今後も新しいトレンド、新しい技術が登場し、その変化のスピードはますます速くなるでしょう。当然、単にモノを新しくするだけが最適解とは限りません。社会に巣立つ学生のために大学としてどのような教育を施せるか、技術が激しく変わっていく中で自分を見失わない、目に見えるものだけに目を奪われない、地球・社会・自分という相関関係を理解でき、自分自身を確立できる、そういった教育を目指したいと思います。


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