文部科学省ニュース2

平成19年度情報関係補助金 文部科学省の概算要求決まる


 文部科学省は、去る8月下旬に平成19年度概算要求を財務省に提出した。
 19年度の要求にあたっては、政府は7月7日の経済財政諮問会議での今後5年間の歳出削減策を踏まえて、一般歳出の上限は46兆8千億円と18年度の基準を1.5%下回る水準とした。社会保障費の小子高齢化の自然増の抑制、公共投資の3%削減、省庁の判断で増減できる裁量的経費は抑制。その内の科学技術振興費は増減なし、政府開発援助の3%削減、防衛関係費と国立大学運営費交付金、私学助成は1%削減とする一方、「経済成長戦略推進要望」として3千億円の特別枠の新設など、9年ぶり47兆円を割ったかつてない厳しい概算要求基準をとりまとめ、歳出の徹底した見直しに努めるよう指示した。
 とりわけ、経済財政諮問会議の「骨太の方針2006」では、学生数の減少に応じた削減策として、定員割れの私学に対し改善が見られない大学等に一層の減額を強化することなどが盛り込まれ、後日の閣議で決定された。
 これを受けて文部科学省では、私立大学等経常費補助金の助成方法について、従来の一般補助、特別補助、私立大学教育研究高度化推進特別補助の3本立てを改め、一般補助2,203億7,900万円(前年度同額)、特別補助1,158億7,100万円(50億円増)の2本立てとし、全体で1.5%増、50億円増の3,362億5千万円を要求することになった。
 一般補助では、定員割れが続く大学等への減額を強化。特別補助では、意欲的な取り組み等への助成が顕著となるよう、これまでの補助事業の枠組みを大幅に改組し、「各大学等の特色を活かせるきめ細かな支援」として1,032億2,900万円、「新たな学習ニーズ等への対応」、「高等教育機関の質の確保」、「定員割れ改善に取り組んでいる大学等の支援」として126億4,200万円を要求することにした。
 各大学等の特色を活かせるきめ細かな支援は、従来の特別補助の枠組みを「地域社会のニーズに応える教育の推進」(77億2,900万円)、「個性豊かで多様な教育の推進」(473億円)、「教育研究活動の高度化・拠点化の形成」(482億円)の三つの区分に再編し、従来の補助項目を支援策として、次ページに掲載の通り、それぞれの区分に応じた大学がメニューの中で申請することになった。
 1)「地域社会のニーズに応える教育の推進」は、地域の知の拠点として地域貢献を主として指向する大学を支援するもので、メニューの例としては、「地域の子育て・ものづくり支援」、インターネットを活用したeラーニング実施に要する経費を含む「地域教育コンソーシアム形成支援」など25ある。申請大学としては、地方大学、小規模大学を想定している。
 2)「個性豊かで多様な教育の推進」は、個性を活かし、特色ある教育の実施を指向する多様な大学を支援するもので、メニューの例としては、「教育・学習方法等改善支援」、「単位互換・インターンシップの推進」、「外国大学との学生交流」など28ある。申請大学としては、中規模大学を想定している。
 3)「教育研究活動の高度化・拠点化の形成」は、科学技術基本計画等に対応した教育研究活動の高度化を指向する大学を支援するもので、メニューの例としては、「大学院の基盤整備・拠点重点化支援」、「研究連携コンソーシアム形成支援」、「学術研究高度化推進」など20ある。申請大学としては、大学院が充実した大規模大学を想定している。大学はいずれかの区分を中心に申請するが、各区分のメニュー事業すべてに取り組まなければならないことはなく、他の区分のメニュー事業を選択することもできる。
 情報化関連の事業は、高度情報化推進メニュー群として、「情報通信設備(借入)支援」、「教育学術情報ネットワーク支援」、「教育学術コンテンツ支援」、「教育研究情報利用支援」として、上記の三つの区分に共通してメニュー化されている。ただし、サイバー・キャンパス・コンソーシアムは、上記の借入支援、ネットワーク支援、コンテンツ支援にそれぞれ組み込むとともに、「地域教育コンソーシアム形成支援」として、従来の事業経費に加えてコンソーシアムの運営支援に伴う経費全般を補助できるように要求されている。
 申請は三つの区分のどれかを中心として、申請することになる。なお、予算額は三つの区分の内数となるため記載がない。以上までが経常費補助金の概算要求であるが、それ以外の情報関係補助金の仕組みについては変更はない。
 買い取り補助としての学内LANの「情報通信装置」は、2千万円増の10億2千500万円、マルチメディアの「情報通信施設」は、2千万円増の21億3,300万円を要求した。1千万円以上の買い取り補助の「情報処理関係設備」は、大学の動向を踏まえて3,500万円減額の11億8千万円を要求した。
 本協会としては、文部科学省の概算要求に先立ち、6月に全国の私立大学、短期大学等を対象に情報関係の国庫補助希望調査を実施。その結果を踏まえ私立大学側の要求をとりまとめ、7月21日に文部科学省に要望した。要望に際しては、学内LANのセキュリティや維持費を中心とする教育学術情報ネットワーク、借入設備、教育研究情報利用経費の増額を働きかけた。なお、サイバー・キャンパス整備費については、既設の経費の他に連携のための運営費を含めるよう検討を要請した。


「特別補助」の要求内容

平成19年度要求額   115,871百万円
対前年度        5,000百万円増
平成18年度予算額
  特別補助   37,160百万円
  (うちODA 5,247百万円)
  私立大学教育研究高度化推進特別補助
         73,711百万円


1.各大学等の特色を活かせるきめ細やかな支援

平成19年度要求額 103,229百万円(新規)

 私立大学等は、各々の学校規模や実施している取組み等も様々であり、必要としている補助ニーズも異なっている。このような中で、各大学等がその特色を活かした教育研究活動をより充実・発展できるよう、特別補助に3つの申請ゾーンを設け、きめ細かな支援を行う。

(申請ゾーン:A)補助対象事業経費等の上限・下限を低く設定。
【地域社会のニーズに応える教育の推進】 平成19年度概算要求 7,729百万円
◇概 要
 教育基盤の充実を図るとともに、地域の知の拠点としての高等教育機関の地域貢献を主として指向する大学を支援する。

(申請ゾーン:B)
【個性豊かで多様な教育の推進】 平成19年度概算要求 47,300百万円
◇概 要
 各々の個性を活かし、特色ある教育の実施を指向する多様な大学を支援する。

(申請ゾーン:C)補助対象事業経費等の上限・下限を高く設定。
【教育研究活動の高度化拠点の形成】 平成19年度概算要求 48,200百万円
◇概 要
 科学技術基本計画等に対応した教育研究活動の高度化を主として指向する大学を支援する。

【新規に設けるメニュー】(「各大学等の特色を活かせるきめ細かな支援」の内数。)
◎「地域の子育て・ものづくり支援」(新規)(申請ゾーン「A」)
(概 要)
 地域に役立つ子育て情報の提供など、私立大学等の地域の子育て環境の改善への貢献や、地域振興等に資するものづくり教育の推進を支援する。

◎「地域教育コンソーシアム形成支援」(新規)(申請ゾーン「A」「B」)
 (概 要)
 学校法人の枠を超えた大学等間の連携を促進する一助として、コンソーシアム形成の取組みを推進する。また、サイバーキャンパス整備事業を含むインターネット等の情報ネットワークを活用したe-ラーニングの実施に要する経費について補助し、コンソーシアムの円滑な運営を支援する。

◎「研究連携コンソーシアム形成支援」(新規)(申請ゾーン「B」「C」)
(概 要)
 各大学の多様な研究ポテンシャルのうち、大学の判断に基づく「選択と集中」の下、より競争力ある研究領域のさらなる競争力の確保を図るため、共同研究や研究装置・設備等の共同利用を促進する一大学の枠を超えたコンソーシアム形成を支援する。


2.新たな学習ニーズ等への対応(再チャレンジ支援・少子化対策等)

◎新規学習ニーズ対応プログラム支援経費(新規) 平成19年度概算要求額 1,000百万円
(概 要)
 今後減り続ける18歳人口を踏まえ、高等教育機関は、高校からの大学進学者をターゲットとした教育の提供のみでは、存続していくことが難しくなっている。一方、昨今、社会人の学び直しや再就職等に資する学習機会又は平成19年から一斉に定年退職する団塊世代等のシニア層や子育て後の主婦層等の学び意欲の高まりなど、高等教育に対する新たな学習ニーズがこれまで以上に高くなっており、大学等はこのような新たな学習需要を開拓していくことが重要である。本経費は、私立大学等の新規学習ニーズの開拓を支援し、多様なニーズに対応した実践的な教育コースの開設や、シニア層等の学びの意欲に対応した授業科目の設置、公開講座や教育訓練講座等の学習機会の提供を推進するため、これらに要する教材・プログラム開発経費やニーズ調査に係る経費、サテライト授業を実施するための教室の賃貸料等について補助する。

○授業料減免事業等支援経費 平成19年度概算要求額 4,000百万円
(平成18年度予算額   2,000百万円)
 私立大学等が経済的に修学困難な学生に対し、独自の奨学制度により授業料等の減免や奨学金の給付などを実施する場合に、その実施額の一部を補助するものである。近年、我が国の少子化は急速に進んでおり、本年6月に閣議決定された「新しい少子化対策について」において、「奨学金の充実等」により、教育費負担の軽減を図ることとされており、本経費の大幅な増額を図る。


3.高等教育機関の質の確保

○多元的評価支援経費 平成19年度概算要求額 800百万円(前年度同額)


4.特定分野の人材養成

○特定大学院支援経費 平成19年度概算要求額 1,000百万円(前年度同額)
○法科大学院支援経費 平成19年度概算要求額 4,800百万円(前年度同額)
○看護師・社会福祉士・養護学校教員等養成支援経費 平成19年度概算要求額 642百万円(前年度同額)


5.定員割れ解消等の改善に取り組んでいる大学等に対する支援

◎定員割れ改善促進特別支援経費(新規) 平成19年度概算要求額 400百万円
(概 要)
 学生定員割れをしている大学等が、経営改善・効率化のために・定員規模の適正化(学部等の改組転換、募集停止による学部等数の削減、学生定員の削減等)を図るなど、実現性の極めて高い具体的な計画を策定し、定員割れの解消に取り組む場合に、一定額を5年間程度(3年目に中間評価を実施)の補助を行う。


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