特集 大学教育への社会の期待


大学教育に対する三つの期待
〜日本ユニシス株式会社〜


南 真由美(日本ユニシス株式会社 人材育成部長)


 大学教育に期待することとして、以下の3点を挙げたい。
 1.自分でものを考え、課題を見つけ問題解決できる力をつける。
 2.コミュニケーション能力をつける。
 3.自己のアイデンティティを確立する。
 まず一つ目であるが、社会に出れば、“正解”のある課題はなく、どれだけ考えられるか、知恵を絞れるかが勝負になる。多くの子供たちが親の庇護の下、決められた家庭や学校のルールに従い、自分で考えるという訓練をほとんどせずに生きてきている中、大学では、自分でものを考え、問題を解決するスキルをしっかりと鍛える必要がある。最近はフィンランドやインドの教育方法が取りざたされているが、これらの特徴は、“正解”を求める教育ではなく、考えさせる教育である。日本の場合、小学校から高校まで、まだまだ多くの学校が“正解”を求める教育から転換できずにいる。となると、これらの“考える力”をつけるのは、大学の重要な役割とならざるを得ない。では、大学まで“正解”を求める教育をされてきた子供達が、大学に入ったらすぐに自分でものを考えられるようになるかというと、当然、NOである。そこで、大学教育の内容に工夫を凝らす必要がある。例えば、論文を書く機会を多くするというのはどうだろうか。論文をきちんと書くことは、非常に有効な手段ではないかと考える。考える力を鍛えるために、4年間の中で、都度、論文を書かせることにより、テーマを考える、情報を集める、本を読む、情報を整理する・・など、社会に出て役立つスキルも身につけることが可能となる。もちろん、きちんと指導し、厳しく内容を評価することが重要である。
 二つ目はコミュニケーション能力をつけることである。現代社会ではコンピュータや携帯電話が当たり前の世界となり、若者のコミュニケーションが文字のコミュニケーションに偏る結果、気の合うもの同志のうわべばかりの付き合いになっているのではないかと想像される。これについては、対面で、真面目なテーマで議論する(大学内の仲間でも良いが、他大学の学生と実施するのも効果的ではないか)場を作ることを一つのアイデアとしてあげておきたい。
 そして、三つ目は自己のアイデンティティは何か、ということをしっかりと見つめ、確立することである。これは本人次第であるので、非常に難しい課題であると思うが、先日、非常に興味深い話を聴いた。ワークライフバランスに関するコンサルティング会社を立ち上げたまだ30代の女性の講演を聴いたのだが、この女性は専業主婦が一番、と考える普通の女子大生だったそうだ。ある日、偶然、大学の講義で聞いた猪口元大臣の言葉が心に響き、自分の使命を強く感じ、人生を一転させている。日本では、まだまだ大学と社会との乖離が大きく、大学生が社会での使命感を持つことが難しいのかもしれない。より多くの企業人が大学教育に関わることにより、社会との接点を深めることが必要ではないだろうか。
 そして、日本人である以上、各人のアイデンティティを確立する上で、日本のことをよく理解することが大切である。日本の歴史、文化、そこに根ざす哲学をしっかりと学んでもらいたい。また、正しい日本語を使う、礼節を知ることも大事である。
 まとめると、企業として大学教育(生活)に求めるものは、しっかりと4年間で考え抜き、自己のアイデンティティを確立した心身ともに鍛えられた若者を育てることである。知識や技術の蓄積も大事であるが、それらを活かすための人間力がなにより大事である。より複雑になる社会の中で生き抜くために、心身の基礎体力をもった人材を育てていただければと期待する。


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