特集 大学教育への社会の期待

大学教育に対する企業の期待
株式会社 東芝 PC&ネットワーク社


末澤 光一(株式会社 東芝 PC&ネットワーク社PC第一事業部長)


1.東芝の採用・研修体系について

 東芝は1875年に創業された総合電機メーカーで、2006年度の連結売上高は7兆1千億円、事業領域によって七つのカンパニーと三つの事業統括に分かれており、販売・研究開発・調達等をグローバルに展開している。東芝の採用については、2008年度として事務系200名、技術系950名、合計1,150名を予定しており、応募についてはホームページから申し込むオープンエントリーと学校推薦の2種類がある。入社後は全社員を対象としたコーポレートエントリープログラムが実施される。これは東芝の経営理念や社会人としての仕組み、社会人としての心得やマナー教育等を主体に行っており、その後は各配属先のカンパニーごとに必要な教育が行われる。


2.産学連携、インターンシップについて

 東芝では大学3年生、修士1年生、高専4年生を対象とした「サマーインターンシップ」を毎年夏に実施している。2008年度については、営業・スタッフ系で30名、エンジニア系で100名の募集を行い、東京・神奈川近辺の事業所およびグループ会社にて一定期間(2週間から4週間)の就業体験の場を提供している。ホームページからの申込であり、募集人員に沿った選定となる。また産学連携については、ユビキタス社会の実現や持続型社会の実現等の重点事業領域に向けて従来の個別連携(1:1)をさらに強化するとともに、技術進歩の高速化や開発コストの上昇、多角的視点での技術開発の必要性などの要因から、新たな視点での複合連携(n:m)を期待している。


3.東芝の求める人材像

 東芝として求める人材像として、まず大切となるのは価値観の共有である。「人を大切にします」、「豊かな価値を創造します」、「社会に貢献します」という東芝の経営理念に共感していただけることが必要条件となる。その上で社会の役に立つ、新しい価値を創出することに一緒にチャレンジしていこうと思う人を求めている。企業が発展していくためには全体が絶え間なく創新(Innovation)していくことが必要である。技術を生み出す開発部門、ものづくりを担当する生産部門、販売やマーケティングなど市場と対峙する営業部門といった三つの部門で、それぞれイノベーションを引き起こし、それを他部門へ波及させ、それがまた新たなイノベーションを生み出していく(東芝ではこの一連のプロセスを体系化したプログラムをInnovationの3乗「i3/アイキューブ」と呼んでいる)。創業者である田中久重から受け継がれてきた「東芝DNA」、モノづくりに対する探求心と情熱、強い意思、実行力、そしてチャレンジ精神がイノベーションを生み出す力であり、東芝を自らのステージとして活躍したいと思う人を求めている。


4.大学への期待

 大学の使命は研究と教育であり、大学への期待もその両面がある。まず研究分野では、知の宝庫である大学との連携(産学連携)等により、国際競争力のある卓越した研究拠点が形成され、研究成果の社会的還元や将来の企業内研究者となりうる若手研究者の発掘・育成等を期待している。また教育分野では、世界に通用する人材育成、すなわち高度な専門知識や語学力のみならず、一般教養や基礎学力、コミュニケーション能力の養成を期待している。IT能力に関しては、企業においてPCはコミュニケーションツールとして必須であり、基本的な情報リテラシー教育のみならず、大学として学生が積極的に活用できる環境の設定が望まれる。以上に加えて、学生が将来の自身のキャリアビジョンを描き、夢や目標を持って果敢にチャレンジしたり困難を打開していく力の養成や、好きな分野、関わってみたい分野を見つけとことん頑張れる力の養成をお願いしたい。


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