研修事業報告1

全国大学IT活用教育方法研究発表会

 平成20年度全国大学IT活用教育方法研究発表会は、「全国の国公私立大学・短期大学教職員を対象に、教育改善のためのIT活用によるFD(ファカルティ・ディベロップメント)活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上をはかる」ことを目的として、平成20年7月5日(土)にアルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)において開催された。今年度の参加者は246名(131大学、13短期大学、賛助会員2社)で、発表会は第1次選考も兼ねて52件の研究発表が行われた。当日に発表された内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考会は9月6日(土)に行われた。選考結果については11月25日(火)の当協会の臨時総会にて発表する予定である(本誌では次号に掲載)。


Aグループ

A-1 地域研究講義における語学学習と概説授業の統合
武蔵大学 川島 浩平

 専門科目の地域研究講義にネット上のニュース報道など動画配信を系統的に導入して受講者の外国語能力を高める一方、対象国の政治思想およびメディア報道のイデオロギー性に対する関心を喚起して語学学習と概説授業の統合授業をめざす能率的な授業方法を提案し、その成果を検証した。


A-2 学生のやる気と集中力を高める英語教育のIT化
日本大学 木内  徹、福島  昇

 授業をすべてIT化することにより、学生の興味と集中力を持続させる授業方法の提案である。シラバス・受講登録をオンライン化、教材はすべてプロジェクターで提示、学習内容は授業専用ホーム・ページに貼り付け、デジタル音声を使いマークシートを使って毎回試験を行うなど、その授業方法の紹介と評価を発表した。


A-3 授業同期型eラーニングによる自宅学習について
法政大学 鈴木 靖

 学生の自宅学習の状況を随時的確に把握し、それを学習指導や成績評価に反映させる授業と自宅学習の連携(ブレンディッド・ラーニング)の試みである。報告では授業同期型eラーニング「eHomework!」の開発と、自動集計による自宅学習データ、小テストのデータ、及び授業評価アンケートのデータを総合的に検証、その効果を提案した。


A-4 Interactive Writing Communityにおける「学びの共同体創り」と「ライティング能力」の育成
慶應義塾大学 水野邦太郎、杉浦 学

 「学びの共同体」として授業外に参加するBBS実装のInteractive Writing Communityを開発し、授業中の TOEFL Writingスキル学習をブレンドすることで、「教室内」と「教室外」での学びの経験が互いに「相乗効果」を生む語学授業を提案した。評価の検証では、アンケートとともに受講生の9割がTOEFL 5.0以上のスコアを取れるようになった。


A-5 英語学習のためのITリテラシー活用法
太成学院大学  松浦 宏之
高野山大学  高倉 正行

 ネット上の情報から自らが必要なものを引き出す「情報処理能力」を徹底して活用することで、ネット上の動画や音声ファイルも活用して英語運用能「読む」「聴く」「書く」を学ばせる試みである。ネット上の無尽蔵の英語教材を用いて、学生一人ひとりの能力に応じた多種多様な学習法を構築することを目的とした。


A-6 韓国語初心者のための手書き指導および自習ソフトウェアの活用
東北学院大学  金  義鎭
久留米大学  金  惠鎭

 韓国語の特徴(階層構造と書き方の規則)を踏まえた手書きによる正誤判断を実装したソフトウェアを紹介、受講者数が多い教室と限れた講義時間で教員が個別に学生の指導が難しい現状での、書き方の教育指導と正しい文字が書ける能力を育てる支援の方法を提案した。


A-7 会計科目におけるデジタルペンの活用
阪南大学  福重 八重、前田 利之
愛媛大学  岡本 直之
大阪大学  淺田 孝幸

 カメラを内蔵して筆跡を記録するデジタルペンを学生に使用させ、会計学の授業で筆記訓練を行った。訓練後に学生はデジタルペンを提出し、教員が記録されたデータを投影して添削と解説をした。解答用紙を提出させての添削に比較して投影や保存が容易である。これにより大人数の科目での双方向コミュニケーションを実現した。


A-8 コースウェアとコールシステムを併用した情報処理入門講義システム
流通科学大学 小無 啓司

 情報処理入門科目での課題提出等の授業支援をコース管理ソフト(Moodle)を利用して行ってきたが、ネットワーク接続が必須であること、講義中のリアルタイムの管理が困難なことなどの問題があった。これらの問題をインターネットに接続してなくても講義室内での教材配布などが可能な既設のコールシステムを併用することで改善した。


A-9 学生参画型授業の携帯・Web活用によるさらなる「学び」推進実践
三重中京大学 清水  亮、岡田 良明

 専門基礎科目で橋本メソッドを導入し「教える授業」から「主体的に学ぶ授業」への改善を試みた。具体的には、グループ内でのプレゼンテーションと相互評価、シャトルカードによる教員と学生一人ひとりとの相互コメントを行った。ICTの活用として、QRコードと携帯電話による出席管理、Moodleを使用した試験の実施を行った。これにより学生の自覚的・主体的な学びを促進した。


A-10 コミュニケーション能力向上のためのPBL型IT利用教育
武蔵野大学 鈴木 洋子

 留学生に対して就職に必要なコミュニケーション能力を身につけさせるため、PBL(プロジェクト学習)を行った。製品開発をテーマとしたグループワークを推進し、グループ内および教師とのコミュニケーションに電子メールを活用した。成果のプレゼンテーションにパワーポイントを使用した。


A-11 合成音声音読と確認テストを中心としたe-Learningシステム導入による法職教育の充実

流通経済大学 坂野 喜隆、井川 信子、信太 秀一、梅村  悠、前田  聡、西島 良尚、村田  彰

 基礎学力の向上のために法学検定試験の受験を促進した。受験準備と難解な法律用語の読みや意味を自習させるために、合成音声による読み上げと確認テストが可能なeラーニングシステムを活用した。その結果、法学検定の受験者数・合格率いずれも上昇した。他の資格試験への受験意欲の向上などの副次的効果もある。


A-12 社会福祉援助技術現場実習におけるICTを活用した継続的福祉現場実習指導の取り組み
佛教大学 坂本  勉

 社会福祉士養成に必要な現場に配属しての実習において、24日間の実習中に大学教員側から継続的に指導・助言を行うためにICTを活用した。実習記録を電子化しネットワーク上で共有した。また、eラーニングシステムを活用して配属実習に参加中の学生を個別指導した。実習生は指導されているという安心感を得る他に他の実習生の記録も閲覧することで動機付けとなるという効果があった。


A-13 簡単に作ることが出来るWeb用予習復習教材
関西福祉科学大学 美濃 哲郎

 穴埋めタイプのWeb用問題を簡単に作成できるプログラムを開発し、それによって作成された問題集を心理学科目受講者に課した。2007年度学期末の試験の結果を本プログラム利用以前の2006年度の結果と比較すると、45点未満の得点分布に有意な差が認められ、学力の下位の学生に本プログラムによる課題が学力向上の効果があったことが確認できた。


A-14 画面で絵本を読み聴かせた際の内容理解促進と児童心理学実技の効率化
大阪経済大学 光田 基郎、滋野 和重

 保育現場での実習が困難になりつつある児童心理学実習での実験の効率化のために、従来の絵本の読み聴かせ実験に代えて、パソコン画面と音声による読み聴かせとタッチパネルによる選択を組み合わせた実験を実施した。その結果、実験が効率的に行えるだけでなく、実験者によるバイアス等も低減し、有効な実験結果が得られることを確認した。


Bグループ

B-1 ビデオ映像のリアルタイム合成によるバーチャル体験を利用した教育
名古屋文理大学 江上いすず、長谷川 聡、長谷川 旭

 管理栄養士臨地実習の学内事前学習で、高齢者への接し方および食事介助を学内で習得するためにクロマキー合成を用いたビデオ画像を用いた。学生がバーチャルに介護を行う映像と現場を合成した映像を見て、他の学生が介護の方法の観察評価・問題抽出を行った。高齢者に接する機会の少ない学生に対して、実践的学習として有効と考えられた。


B-2 管理栄養士国家試験対策を中心としたe-Learningシステム
女子栄養大学 山内 喜昭

 教員学生比の低い環境で効果的な管理栄養士国家試験準備学習のために、既存の表計算ソフトを用いて教員自身で作成できるテスト教材と解説から構成されるeラーニングシステムを構築した。導入2年目で教材数が約600となり、多くの学生が複数回アクセスし、実際に学習に活用されていると考えられた。


B-3 生物学演習オンライン解答システムと試験との関係
明海大学 三笠 建次

 歯学教育に必修である生物学において、高校の生物履修状況により講義の理解度に大きな違いがある。そこで事後学習用に印刷した演習問題を配布し、Web上で解答採点解説するシステムを構築した。Web解答システムを利用した学生と未利用者の定期試験結果比較では、利用群が高得点する傾向が見られた。


B-4 コンピュータを用いた医療面接シミュレーションの学習効果
日本大学 中島 一郎、山崎 晴美、松野 俊夫、尾崎 哲則、桑田 文幸、大塚吉兵衛

 医療面接、診断、治療までの過程をシミュレートするシステムを演習用教材として開発した。このシステムでは、学習者が仮想患者に設定された性格特性による感情反応に配慮しながら適切な会話文を選択することにより診療場面が進行する。また、医療器具の選択や医療行為の手順などの診療技能学習も同時進行する。学習者へのアンケートから教材としての有用性が確認され、また試験の成績から教育効果も確認することができた。


B-5 患者シミュレータを用いた様々な医療処置を体験できるシナリオ作成とその評価
九州保健福祉大学 徳永  仁、村 徳人、緒方 賢次、吉田 裕樹、松岡 俊和、小野 誠治、山本 隆一

 薬学教育の中に患者に対する医療処置の体験を組み込むために、ベッドサイド実習において万能型人形を活用した。薬物投与ルートの確認や投与体験、フィジカルアセスメントモデル、バイタルサインシミュレータの利用に加え、高機能患者シミュレータを用いた救命救急のシナリオを作成して使用したところ、学生における実習内容の必要性の認識と理解度の増加が認められた。


B-6 6年制薬学教育に展開する動画教材の開発と評価
名城大学 武田 直仁、竹内  烈、橋爪 清松、川村 智子、野田 幸裕

 学習者の学習意欲を維持させ、基盤となる知識を確実に習得させるような教育プログラムの開発を目指して、実習講義や実験操作などをビデオ撮影して動画教材を作成した。コンテンツの開示は、DVDの配布とWebからのVODによる配信で行った。アンケート調査により学習ツールとしての有用性が認められ、DVD配布の方が好まれる傾向が示された。また、教材作成の共同作業によるFD効果も示唆された。


B-7 Moodleの携帯電話のモジュールを利用した薬学共用試験演習システム
近畿大学 村上 悦子、大鳥  徹、鈴木 茂生

 薬学共用試験(国家試験)対策の教育データベース(国家試験対策問題など)を構築するとともに、その有効活用を図るために、携帯電話に基づく教育システムを導入した。本発表は、この取組の効果などを検証した。


B-8 薬学共用試験(CBT)のための自主学習システムの構築
北海道薬価大学 大野 裕昭、小林 弘幸、石突  諭、高橋 和彦

 ITによる薬学共用試験のための自主学習システムを構築・導入し、自主学習に対する動機づけをはかるために、定期試験において、自主学習システムに登録した問題を出題範囲とする試験を行い、その正解・不正解に関するデータに基づいて、良問のそろった自主学習システムの構築に努めた。


B-9 キーセンテンスの統合による知識の体系化を促進するデータベースの構築
愛知きわみ看護短期大学 藤原奈佳子、小澤 淑子、石井 成郎、御供 泰治

 看護師国家試験対策教育の効果をあげるために、キーセンテンス(約50文字からなる専門領域に必要な知識の断片)に関するデータベースを構築し、その成果を検証した。


B-10 看護学実習における学外実習と学内演習を組み合わせたIT学習法の実際
呉大学 松井 英俊、佐々木秀美、金子 潔子、岩本 由美、前信 由美、田村 和恵、迫田千加子、石川 孝則、中井芙美子、平間かなえ

 看護技術習得のための実習には、病院での臨地実習と学内での実習が含まれる。学生は、実習グループごとに臨地実習における看護技術を一つ取り上げ、その技術についてのプレゼンテーションを行った。その様子をビデオ撮影し、教員の評価をテロップとして挿入したビデオを閲覧可能とすることで、自主的な振り返り学習を推進するとともに、次年度の実習学生に対する学習教材としても有効に活用できた。


B-11 医療系高等教育機関における入学前生理学課題の試み
女子栄養大学 渋谷まさと、廣末トシ子

 「一歩一歩学ぶ医学生理学」のコンテンツでは、基礎的知識を最小単位ずつ「ステップ」として学ぶためのイラストや解説、ナレーション入り動画、練習問題などを提示するが、これを医療系高等教育機関の入学予定者に対する宿題として行わせた。その結果、授業開始前の生命科学の基礎知識が明らかに増大し、自学自習を行った者のテストの成績が高く、また入学後の授業、勉強に対する期待感、意欲も高められた。


B-12 CAI、学生主導型学習の併用による学習意欲の向上を目指した教育システム
藤田保健衛生大学 鈴木 茂孝、小菅 理子、荻津 直通、松井 俊和

 「診療情報管理士」認定試験に関わる科目において、従来の座学による学習形態に加えてCAIによる自己学習と、学生主導型の「スチューデント・チュートリアル教室」を組み合わせた学習方法を実践した。CAIによる自主学習の効果は認定試験の高い合格率や不得手科目に対する学習意欲として表れ、また学生主導型の学習では学生の能動意識、学生間の競争意識などによる学習意欲の向上が見られた。


B-13 診療技能教育へのe-Learning適用
東京慈恵会医科大学 小松 一祐、石橋 由朗、柏木 秀幸、横山 明能、福島  統

 インターネットによるビデオ教材配信を実施し、その成果を検証した。また、本取組では、地域医療者への教材CD配布を行っている。


B-14 Polling PAD、iPodを使用した双方型、携帯型IT教育
慶應義塾大学 佐藤  徹、天野 隆弘、中島 理加

 Polling PADおよびiPodを授業の導入し、その成果を検証した。Polling PADおよびiPodを授業に利用することによって、学生参加型の授業が創造できた。


Cグループ

C-1 学習者対応型知的チュータシステム
芝浦工業大学 横田  壽

 多様化する学生に対応するために、習熟度別編成クラスの分析から「対応型数学学習支援ソフト(JCALC)を開発し、自学自習の支援を行った。学生の履修歴をもとに学生の理解度を診断し、翌週の授業の復習を行うことを実践した結果、極めて有効であることが明らかになった。


C-2 トピックマップを軸に学習を広げる物理学入門e-Learning
東海大学 松浦  執

 多元的な知識表現を可能にするトピックマップの概念を物理学の授業に導入し、学生自らが知識の偏りや学習順序の問題に気づくようにすることで全方位的な学習を行わせるような仕組みを準備した。2年間にわたる調査の結果、閲覧移動の現象が生じ、広範囲な基礎学習に効果的であることが判明した。


C-3 学習効率の向上を目指すe-Learning教材の作成
城西大学 堀合 公威、福田 光良、石井  宏、赤嶺多恵子、田中  怜

 市販のLMSに対応する副教材を作成し、学生の学習効率の向上を目指した。授業中、授業後、学内、学外などの異なる環境でも利用できることから、意欲ある学生の理解力を深めることに役立っている。また、教員にもe-Learningの有効性が認識され、教材の蓄積・活用が始まっている。


C-4 化学系学生の不得意科目の補助のためのe-learning活用
近畿大学 木村 隆良

 化学系学生の物理ぎらいに対応したLMSをMOODLEで構築し、上級生が下級生をサポートできる仕組みや対面講義のVODを実現した。3年間運用した結果、理解度の向上と本システムの利用度に正の相関がみられ、効果があることが確認された。


C-5 e-Assistによる国際的通用性を指向した基礎学力の養成
近畿大学 井原 辰彦、仲宗根 薫、松田 博幸

 専門基礎科目の化学の授業テキストとして“Chang Chemistry”を導入し、英語での演習が可能となるようにe-Assistという学習環境を開発して、講義で使用したプレゼンテーションファイルやテキストの全文和訳などを閲覧できるようにした。当初は、「英語の授業か化学の授業だかわからない」といっていた学生もその主旨を理解するようになりアンケートでも効果が確認された。


C-6 多人数授業における野外観測の疑似体験化への試み
目白大学 新井 正一、小川真里江

 地球物理学の授業における新たな試みとして、教員が屋外で観測した様々なデータを携帯電話を利用して即時に教室に送り、静力学平衡を検証した。即時通信を行いながら演示実験のような授業を体験した学生と事後的なデータのみを用いた授業を体験した学生のアンケート調査から重要性を確認できた。


C-7 授業用ホームページを利用したポスターセッションの実施
金沢工業大学 北庄司信之、千徳 英一、亀井 衛一、三木 修武、上田 秀雄、岩田 節雄、濱辺 謙二、吉川 文恵、今井  悟

 1、2年生必修の工学基礎実験は、問題発見・解決型の実験授業で、学生5、6名のチーム数はおよそ360になる。8クラスに分かれて、これまではクラス内での互いの実験成果交換をポスターセッション形式で行ってきたが、今回はクラスの枠を越えての成果交換を実現するために、ホームページ上に掲載し、77%の学生が他のクラスのポスターを閲覧した実績を示された。


C-8 土壌中の物質移動を理解するためのシミュレーション実験
明治大学 登尾 浩助

 物質移動を説明する偏微分方程式のパラメータの意味を物理現象に結びつけて理解を深めさせるためのシミュレーション実験を、簡易言語によりプログラム作成し学生に提示した報告である。単なる講義では得られない現象の直観的理解が深まったとの学生の意見が示された。


C-9 教育用コンテンツのための平易な立体視3DCGアニメーション開発手法
神奈川工科大学 佐藤 智明

 大学の授業において立体視3DCGコンテンツを手軽に利用できるようにするための、平易な立体視3DCGコンテンツ上映を市販のアニメーションソフト、シルバースクリーン、偏光フィルターなどで構築できたことの報告である。全体のコストが数十万円程度に抑えられたことで、今後の発展普及の出発点となる期待が表明された。


C-10 eラーニングによる協働型仮想業務体験実習の授業設計と実施
成蹊大学  筧  宗徳、渡邉 一衛
青山学院大学  玉木 欽也

 Webアプリケーションとコミュニケーションツールによる仮想業務体験型の協調学習を導入し、学習者が講義で理論・知識を、実習で技法・手法を段階的に学習し、協調学習による問題発見・解決型の実習と討論を行うことにより、経営戦略や生産管理における知識・理論と個々の技法・手法を融合的に理解できることが示された。


C-11 学生・教員・職員間相互コミュニケー ション促進を図るポータルシステムによるFD活動支援
金沢大学 鎌田 康裕、末本 哲雄、東  昭孝、森  祥寛、堀井 祐介

 学生・教員・職員間の相互コミュニケーションを図るために、学習管理システムと連動したポータルシステムを利用することによって、学生向けには自身の学びを振り返ることができる学習ポートフォリオを整備し、学習支援体制を充実させ、教職員向けにはFD関連情報交換、学内各種資料閲覧等の情報共有に活用しFD活動を進めることができた。


C-12 費用対効果の高いIT活用支援業務組織運営方法に関する考察
筑波学院大学  松岡 東香
学習院大学  村上登志男、海老澤賢史、佐藤 友彦、浦上 大輔

 IT活用教育支援業務組織の形態や運営方法について、データベースを中心に据え、安価なツールの導入によって実現できる、少人数による効率的な業務モデルと、集合知の形成による経済的な業務遂行モデルを適用し、財政負担の軽減と、効果的なFDの両立を目指した費用対効果の高い業務体制を構築する方法が示された。


C-13 全教員による授業公開と授業研究会の組織的FD取り組みと学内LANの活用
大同工業大学 酒井 陽一、梅田 礼子、尾形 和哉、相原 美輝

 公開授業をビデオ撮影し、学内LANを用いて教員の研究室にライブ配信およびオンデマンド配信を行い、その後、授業研究会を行った結果、授業研究会への教員の出席率が高くなった。また、公開授業・授業研究会は、映像媒体も加わり、記録が保管されるようになり、これらを活用した、授業改善マニュアルを作成することができた。


Dグループ

D-1 映像コンテンツによる導入教育の有効性に関する研究
青山学院大学  安瀬美知子
中央大学  斎藤 正武

 授業ガイダンスの方法として「プロジェクトX」で行われた「サンドイッチモデル」が有用であることを示した。サンドイッチモデルの三つの異なる形式に映像のみの場合と講義を加えた5パータンにより同一科目への授業ガイダンスを行った。映像部分への学生の興味・関心度を測定したところ、サンドイッチモデルによる映像が興味・関心を喚起していることが報告された。


D-2 高齢者介護におけるロボット・セラピーを可能にする情報教育
筑波学院大学 浜田 利満

 ロボット・セラピーの体験実習を柱にデータベース演習と卒業研究を組み合わせた2年後期から4年にかけて履修される教育課程の成果報告である。ロボット・セラピーの体験学習が超高齢化社会の問題点把握に有効であるばかりでなく、実習評価データの統計解析との組み合わせで情報技術の習得にも有効であったと報告された。


D-3 グループ学習と相互評価を取り入れた授業の設計とその実践
金沢大学 松本 豊司、鈴木 恒雄、佐藤 正英、瀬川  忍、森  祥寛

 情報科目の教育方法として授業の後半にグループ学習と発表会を取り入れた。さらに教員と学生が評価基準を共有する目的でルーブリックを導入し、グループ学習のプレゼンに学生間で相互評価を行わせた。その結果、授業評価ではグループ課題、相互評価、時間外学習とも良好な評価が得られ、実習を伴う授業における指導方法のモデルが確立できた。


D-4 WikiとLMSの連携による情報活用力を支援する授業環境
兵庫大学 河野  稔、穂積 隆弘、佐竹 邦子

 教員と学生の双方の情報リテラシを支援する目的で、PukiWikiとMoodleを用いて構築した授業支援システムの概要と授業実践の報告である。このシステムを情報基礎科目に用いて学生の授業評価を行った。導入前の2006年度と導入後の2007年度の評価から、約半数の学生がやりやすいと感じていることが報告された。


D-5 携帯メディアプレイヤー(iPod)を用いた学習環境の改善
金沢星陵大学 二口  聡、村井万寿夫、山  泉、岡部 昌樹

 メディア教材の利用が教室外でも行えることを目的に新入生全員にiPodを共通教材として配布し、三つの授業で実践した報告である。実践科目は「情報基礎理論」、英語の上級科目および「基礎体力演習」である。いずれの科目においても学生が課題に対し楽しみながら能動的に参加し、勉学意欲の維持に効果があったと報告された。


D-6 デジタルコンテンツ制作のためのプログラミング演習教材の開発
大阪電気通信大学 高見 友幸

 プログラミングの未経験者に対して、画像処理機能、アニメーション制御機能をもつActionScript3.0を用いてオブジェクト指向プログラミングを教える授業の報告である。ソースコードの入力作業をCG作成ツールを操作するような直観的作業として解説した。これにより、より多くの項目を取り入れる授業が可能となり、効果的なプログラミング演習が実現したことが報告された。


D-7 薬物動態および統計解析の理解向上へ向けた系統的な情報処理教育の試み
長崎大学 西田 孝洋、和田 光弘、伊藤  潔、丸田 英徳、鈴木  斉、黒川不二雄

 薬物動態や統計解析の分野で実践的な活用能力を習得するため、1年次の基礎演習から4年次の薬物動態解析演習まで、Excel演習の題材を学生の興味を引くものにし、系統的にコンテンツ化した。さらに予習・復習を支援するために教育用LMSを十分に活用した結果、系統的な情報処理教育を受けた学生のスキルが大きく向上した。


D-8 学習意欲向上を目指したプログラミング授業の実践的展開
兵庫大学 森下  博

 プログラミング教育において、作成過程で関心をもって一つ一つ確かめながら意欲的に進めていける機会提供が重要であると考え、数字や色の記憶を題材として扱う授業を展開した。結果がすぐに確かめられるビジュアルなプログラミングが効果的であり、各自がアイデアを実現するために熱心に取り組み、授業の満足度も向上した。


D-9 ITを活用した地域活性化プロジェクトと社会人基礎力の育成
城西大学 末永啓一郎

 「社会人基礎力」を高めるため、ゼミナールにおいて、公共団体や企業と連携しながら取材や営業活動を行い、地域情報サイトの運営、ネットビジネスの実践、地域の商店のホームページ制作などのITを活用した地域活性化プロジェクトを行った。ゼミ生は社会に関する様々な経験を積め、IT能力だけでなく、常識やマナーなどに関する成長も見てとれた。


D-10 Moodleを導入したピアレビューとストーリー教材による学習意欲を高める情報教育
桜美林大学 笠見 直子

 2007年度の情報リテラシーの授業に、3I (ストーリーベースの授業紹介、課題、ピアレビュー)に加え、新たにMoodleを補完的に取り入れ、3Iとe-Learningを統合したことにより、1)効率的なピアレビュー、2)学生と教員のフィードバックの共有、3)学生参加型の課題と授業実践、が可能となり、学習効果、学生満足度、学習意欲が高まった。


D-11 電子黒板を活用した授業改善の取り組み
常葉学園大学 小田切 真

 「教員の授業改善に対する意識改革」を目標に、平成14年度より委員会を発足させ「いつの間にか改善」に取り組んできた。平成18年度から委員による提案授業を配信し、平成19年度には全学的に通常授業を休講として「公開授業研究日」を実施した。学部学科別に午前中に2本の授業を公開し午後に検討会を行い、大きなFD成果が見られた。

 

文責: 教育方法研究発表会運営委員会


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