私情協ニュース

第55回通常総会開催される

 第55回総会は、平成22年5月31(月)午後1時30分より、東京市ヶ谷の私学会館にて開催。平成21年度事業計画、同収支決算の審議の他、23年度情報関係等予算要求の基本方針、教育改革FD/ICT理事長・学長等会議の開催計画、新システムによる電子著作物相互利用事業等について報告協議した。また、総会に先立ち、21年度情報関係補助金の執行状況及び22年度申請について文部科学省、私学振興共済事業団から報告説明を受けた。
 以下に、主な議事の一部を報告する。

21年度情報関係補助金執行状況及び22年度申請

【文部科学省私学助成課説明】

1)施設装置、設備に関する補助制度は、21年度とまったく変更がない。「教育研究装置等整備費補助」は、研究装置と教育装置、ICT活用推進事業で支援している。ICTは、昨年と一切変更なく、学内LANとマルチメディアの関係装置で1千万円以上が対象となっている。

2)申請上の注意点として、「ICT活用推進事業」は、21年度から従来のマルチメディアと学内LANを統合して補助しているが、事業の中で整備するパソコンなども、ICT活用推進事業に含めて申請できるようにしている。例えば、マルチメディア教室の機械やパソコン、部屋の改造をあわせて計画をされている場合に、パソコン、機器物については「教育基盤設備」で申請し、配線、機器と機器をつなぐ工事や部屋の改造を「ICT活用推進事業」に分けて申請が可能となっているが、教育基盤設備の方が採択されて、もう一方のICTが不採択になるという可能性も否定できないことから、関連性のある一体の事業であれば、ICT活用推進事業で「機器」も含めてまとめて申請ができるようになっているので注意いただきたい。

3)教育基盤設備の補助対象について、購入経費に対する補助としていることから、リース経費は補助の対象にすることができない。また、機器を動かすために必要なソフトウエアは、見積りの中で、価格等々で切り分けができないものについては、設備と一体ということで補助しているが、切り分けができるものは、補助対象外としている。保守管理料も維持管理ということなので、補助の対象になっていない。

4)21年度の採択状況として、「ICT活用推進事業」は大学・短大等の申請が218件、補助希望金額が35億7千万円余りに対して、交付申請は202件、約33億円弱となり、92.7%補助された。但し、21年度中に残念ながら事業が完了しなかった2件は、22年度に引き続き事業を実施していただくような繰越という手続きを取ったことで、実際の採択は204件となった。教育基盤設備は、資料に誤りがあり、補助希望金額が17億6,835万7千円を17億1,380万6千円に訂正し、交付申請の件数も206件から203件に訂正があった。その内、交付申請できたのは136件となった。21年度から情報処理関係の設備以外のものも幅広く、例えば調理実習台などいろいろな教育一般に必要な設備を補助することで、補助対象範囲がかなり広くなったということもあり、採択率が結果として67%と少し低くなった。

ICT活用教育研究支援事業の21年度交付状況及び今後の方針

【私立学校振興・共済事業団説明】

1)21年度に算定方式を「所要経費の2分の1」から、「単価方式」という形に配分方法を大きく踏みなおしを行った。その結果、交付額は昨年よりも約82億円増の334億円程度を交付。特別補助全体のおよそ3割強となった。経常費補助予算全体が総額として1%と削減、また特別補助自体も交付額全体で1%ほど減額されている中での82億円の増は他の特別補助項目と比べ突出した増額となっている。学校ごとでは8割近くが増額になったが、2割ほどの学校で減額となった。

2)補助の費目別では、「情報通信設備の基盤整備及び維持」では28億円の増、「教育研究情報の電子化」では、20億円の減、「大学独自のデータベースを活用した教育研究」では、74億円の増となり、教育研究情報の電子化が減額幅が大きいという結果になった。また、減額した2割ほどの学校では、情報通信設備の基盤整備及び維持と、教育研究情報の電子化にかなり影響が出ているといったような傾向が見受けられた。今回の配分結果については、いろいろと意見があると思う。大幅な配分変更を余儀なくされたという中で、可能な限り大きな影響が及ばないように対応させていただいたことについて理解をいただければと思っている。

3)現在、事業団として21年度の配分方法の結果を踏まえ、検証を行い、どういった傾向だったのか分析している。まだ、その結果がはっきりとは見えていないし、その結果が配分方法に直接結びつくようなことになるのかどうかというところも、実は申し上げられるような状況になっていない。例えば、パソコン、サーバーの台数のカウントの仕方そのものに何か問題がなかったかどうかとか、ソフトウエアにしてもその目的をはっきりさせたほうが良いというような話もあったが、実際にそれを把握するのが非常に難しいとか、電子ジャーナルの契約形態によって閲覧できる数が学校によって非常に大きく幅がある、とそういったことに何か着目できないのかとか。もう少し時間をかけ、分析して、また文部科学省とも相談をさせていただきながら、見直しの必要があるかどうかを含めて、検討を進めていきたい。

4)今回交付して初めて最初の結果が出たが、単年度だけで判断することがいいのかどうかということもあり、場合によっては、もう少し経年、2、3年様子を見た上で考えようかということになるかもしれない。基本的に経費の2分の1から単価方式という形で変更した配分方法そのものを根本的に見直していくということは、今のところは考えていない。

5)22年度は、配分方法についてはどうなるか、まだはっきりと決めているわけではない。実は特別補助の予算総額が前年度と同額が確保されているわけではないが、この中に例えば医学部の定員増にかかる措置、授業料減免事業の拡充など、新たな要素が加わっていることから、ICTの補助項目を含めた既存の補助項目の財源について、どの程度確保できるかということについては、若干やや厳しい状況にあると考えている。これは、特別補助に限らず一般補助を含めて4億円の増となっており、特別補助は前年度同額という形になっているが、配分についても一般補助と特別補助それぞれ、非常に厳しい目で見られている。ICTについても、来年度以降、予算編成の中で、どういった形で整理をされていくかということは予断を許さないような状況にもある。いずれにしても、この支援がより良いものになっていくよう検討を進めていきたい。

 引き続き、向殿会長より『ICT活用教育支援の配分結果については、助成の配分を受けた大学については説明責任もあることから、本協会として文部科学省、私学事業団にいくつか提案をしているので参考にしていただければと思う。』との発言があった。

1.平成23年度情報関係等予算に対する私立大学側要求の基本方針

1)23年度は、歳出削減が一層厳しくなることが予測されるが、そのような中で情報関係の補助金が大学等の整備計画に必要な規模で確保できるよう要求する。基本方針として、教育・研究の高度情報化を計画的に推進・整備するため、情報通信関係の設備、装置、ネットワークと経常費補助金特別補助の「ICT活用教育研究支援」で対象としているコンピュータ、ソフト、電子ジャーナル等の利用、データベース、教育コンテンツの開発に必要な支援の実現を大学等の実態に照らして要望。経常費補助金特別補助の「ICT活用教育研究支援」は、私学事業団で検証作業が進められているが、本協会として、「高度情報化補助金活用調査」の結果を踏まえて改善案についてシミュレーションし、文部科学省、私学事業団に改善の工夫を働きかけることにする。

2)単価方式の問題点としては、コンピュータやソフトウエアなどの「数」を基礎に配分しているため、当該年度に経費が発生していなくとも補助されることになり、補助事業の効果が不明確となり、大学も国も適正に説明責任を果たすことができなくなる。持続可能な補助事業とするためにも、合理的根拠に基づく補助の仕組みにすることが必要になる。補助内容の問題点としては、ネットワークの維持管理にかかわる実態が単価に反映されていないので、新たな項目を設定する必要があること、ソフトウエア、データベースの数の定義が不明確であること、低額の一律単価では教育研究の特色発揮をしている大学等の実態が反映されないので単価設定に幅をもたせる必要があること、大学独自のデータベース等の開発は特色発揮が反映できるような単価設定が必要とした。また、計画調書の問題点として、補助金を必要とする合理的な根拠を明確にするエビデンスがないことと、点検の仕組みがないので調書の信頼性、適正性の確保が困難となっている。そこで、現行の単価方式の問題点を改善するため、次のような提案をしている。持続可能な補助とするために補助内容ごとに取り組みの実態を反映できるよう現行の算定方法を見直し、調整する工夫が必要である。

3)今後、単価の規模や評価ポイントの内容など綿密に検討する必要があるとして、一つの案として次のような改善を考えてみた。

*ICTの取り組みの実態を把握する情報として、「ICT活用の授業科目数」、「eラーニング等の実施、コンテンツのアーカイブ化、ICTによる教育・学習支援の実施」を調査し、取り組みの程度に応じた達成率で支援額を調整する。

*ネットワークの維持・管理に関わる実態を単価に反映するため、「キャンパス数」、「学外接続の通信速度」に応じた支援単価を新たに設定し、獲得ポイントにより最大1,500万円、事業経費で3千万円程度の支援ができるようにする。

*「教育研究用ソフトウエア」は、一律単価を改め、汎用機能と専用・高機能のソフトの単価とする。

*「教育研究情報の電子化」は、電子ジャーナル数及びデータベース数の単位を「使用タイトル数」とすることを明示し、その上で、使用範囲による一律の単価を改め、汎用機能と専用・高機能のソフトウエアの単価を設定する。

*「大学独自のデータベース等を活用した教育研究」は、データベース、授業用コンテンツの特徴に応じた単価とするため、製作費及び維持費が小規模なものと、大規模なものの単価を設定する。

4)計画調書の改善として、補助金を必要とする合理的根拠を明確にするため、補助内容ごとに大学等の取り組みの必要性、教育の改善計画、期待する効果をカリキュラム、シラバスを客観的な資料として用い、新たに提出させる。また、数の基準を明確にするとともに、他の補助金で導入したもの、有償の支払い時期が5年以前に完了したものは、使用の有無にかかわらず対象から除外するようにする。さらに、使用状況を点検する仕組みとして、学部、学科ごとに当該年度のICT使用教員の氏名と使用計画を所定のWebサイトに掲載させるなどの方法を提案している。

5)「ICT活用推進事業」については、22年度の申請実績と23年度の計画を調査を踏まえて所要額の2分の1を要求する予定にしている。教育基盤設備についても同様、5百万円以上4千万円未満(短期大学は3千万円未満)の実験・実習に必要なパソコンを含む基盤的設備に対する申請の希望を調査し、所要額の2分の1を要求する予定にしている。

6)以上のような要求を反映するために「高度情報化補助金活用調査」を実施することにしている。特に、「ICT活用教育研究支援」は、現行方式では教育研究でのICTの活用実態を反映したものとなっていないことから、現行方式を改善するための要素を調査することにした。また、追加調査として、機器の台数の適正性を確保するため、5年以上使用している機器を補助の対象から除外する調査を実施した。

2.教育改革FD/ICT理事長・学長等会議の開催計画

 テ−マは、「社会的・職業的自立に向けたキャリア形成教育を考える」と題し、大学の社会的責任としての人材育成の課題を社会現象になりつつある卒業生の就業力の低下、質保証の問題について、大学教育と職業生活、社会生活とのかかわりをどのように持つべきなのか、基礎的知識や体験の修得を目指す専門教育と社会との関与の仕方を目指す教養教育・共通教育との在り方を探求して、教育プログラム、教育方法の工夫・改善について理解を深めることを計画している。
 平成20年12月の文部科学省中央教育審議会の「学士課程教育の構築に向けて」の答申では、学生が社会で通用する力を確実に身に付けさせることの重要性を掲げる中で、教育課程の改善では、教育課程の体系化・構造化、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指すキャリア教育の教育課程での位置付け、共通教育や基礎教育の徹底などの取り組みを提言している。その後、同審議会質保証システム部会では、昨年の12月に「大学における社会的・職業的自立に関する指導等(キャリアガイダンス)の実施について(審議経過概要)」の中で、キャリアガイダンスを大学設置基準に規定し、義務化する予定としている。基準改正の意味するところは、就職活動の技術的な指導ではなく、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、豊かな人間形成と人生設計に資する大学教育を目的としており、専門分野の教育と職業を通じて社会にどのように関与すべきかを考え、行動する能力を身に付ける教養教育との体系化及び授業の位置づけ、授業内容・方法の工夫・改善が課題とされている。そこで、人材育成に対する大学の社会的責任の大きさを確認する中で、社会的・職業的自立に向けた大学教育の在り方について、理解を深めるとともに、優れた成果をあげている事例を踏まえ、キャリア形成教育を含む大学教育の工夫改善を模索したいと考え、22年8月3日の開催計画をとりまとめた。

3.新システムによる電子著作物相互利用事業

 電子著作物の相互利用を通じて教育の水準を高いものにするため、7年前からオンラインによる相互利用の支援をしているが、利用が拡大していないという問題が生じている。そこで、22年度から新たにいくつかの方策を講じて積極的な相互利用を図っていくことにした。
 一つは、事業を周知する広報活動を積極化するため、直接、教員の方々に情報が伝わるよう、オンデマンドのコンテンツを作成することにした。二つは、コンテンツの充実を図るため、どのような環境で、どのような授業のどのような場面で使用するコンテンツなのか明らかにするように、部品コンテンツを収集することにした。三つは、システムの経費を大幅に削減しコストパフォーマンスを高めるため、賃貸借方式による新システムに変更するとともに、大学でコンテンツサーバを設置せずに済むよう、サーバをシステム側で用意し、大学の負担軽減を図ることにした。

1)大学・短期大学の先生方が独自に作成した研究や改善例をオンライン上に持ち寄り、相互に利用できる仕組みを設けた。オンライン上で閲覧できる教育コンテンツは、実際に授業で使用している教材から、教育の改善に活用できる事例まで対象としている。講義スライドやノート、練習・演習問題や図表、各種ソフトウエア、実験実習の映像、FDに活用できる教育事例の資料など、部品化され、分野別に整理されているので、欲しいコンテンツの検索、利用に便利。

図1 システムトップ画面 http://sougo.juce.jp
事業に関する概要をビデオでも紹介
 
図2 登録コンテンツの検索(一般のWebからの検索)
システムに入らなくても、最新の登録コンテンツの検索や一覧の閲覧が可能

2)実際にコンテンツを利用するには、まず検索画面で、著作物名や分野、キーワードなどを検索し、一覧から興味がある著作物の詳細を確認する。詳細情報では、著作者やコンテンツファイルの情報など概要はもとより、授業での利用イメージや、利用の効果といった情報の確認をすることが可能。利用したいと思った著作物は、利用の申請をすればダウンロードができるようになっている。収録コンテンツは、ほとんどが無料で、参加登録いただければすぐに利用が可能。教材作成の参考にしたり、授業の実施方法を改善するための資料として閲覧いただいたり、また学生向けの教材の一部として使用することができる。

3)相互利用の場を盛り上げていくためには、閲覧するだけでなく、コンテンツを登録いただくことが重要。実際にコンテンツを登録するには、まずコンテンツのファイルをWebブラウザから簡単操作で行える。その後アップロードしたコンテンツに関する各種の情報を登録いただく。著作物名や概要の他、学系分類、授業での利用イメージや利用の効果といった他の先生が利用を検討する上で、必要となる情報を登録いただく。登録が完了するとすぐに他の先生方の利用が可能となり、相互利用が開始される。一括登録機能もあるので、たくさんのコンテンツを一度に登録する際にも便利。コンテンツを登録いただくことで、面倒なコンテンツの著作権管理を簡便化できるメリットや利用履歴から教育実績の基礎資料に活用することが可能。有料コンテンツの場合は、徴収・分配・源泉徴収まで本システムが代行するので、課金に対する事務負担を軽減できる。

4)参加対象は、国公立・私立大学・短期大学と所属の教職員となる。授業用コンテンツから教育の改善事例を対象としたコンテンツまで、効率的に閲覧、活用できるように設けた「インターネットによる教育コンテンツの相互利用」はコンテンツ登録によって盛り上がることから、登録に協力いただきたい。コンテンツはほとんど無料となっている。登録されるコンテンツがいろいろな人に影響を及ぼさないために、プライバシーの保護、肖像権、大学とか企業との権利処理の状況のチェック機能をシステムの中に設けている。不正に登録した場合には、不正なままコンテンツが使用されることになる虞れがあるので、登録時に契約書の段階やWeb上で徹底した呼びかけを心がけている。

5)コンテンツの利用状況の基礎情報を提供できるようにしていることから、教育実績の基礎資料として活用できる。さらに、著作権に関するガイドを設けている。特に、権利処理の持分をどうしたらいいのか。学内での権利処理帰属のモデル規定、権利処理の持ち分の申し合わのモデルを掲載している。


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