巻頭言

教育・研究の改革とICTの活用

岡 隆光(広島文化学園大学学長)

 高度情報社会の進展、それに伴う全世界的なグローバル化現象のうねりの中で、我々を取り巻く環境が大きく変化しています。この変化の激しい社会の中で予測困難な問題といかに格闘していくのか、少子高齢化による労働力の不足にいかに対処していくのか等、課題は山積しています。このような状況の中で、大学の果たす役割が益々大きくなっています。既に、大学への進学率は50数%を超え、多種多様な人材が大学で学んでおります。学生がいかにして主体的に学修し、自ら考えていく力を身につけ、生涯に亘って新しいことにチャレンジしていく力を蓄えるのかが、大学教育の大きなポイントになる訳です。このためには、学生一人ひとりのニーズを把握し、それぞれの学生にあった極め細い教育研究指導を行うことが重要であり、ICTの活用は大変有効であります。
 広島文化学園は、広島文化学園大学、広島文化学園短期大学を設置しています。私達は、大学は学生が「自らの夢を固める場」であり、夢に向かって踏み出す人生節目のステージだと考えています。学生の夢の実現を支援するため、ICTを活用した教育システムであるネットワーク利用型の学修ポートフォリオ「夢カルテ」を構築中です。この教育システムの特色は、学生が「成長する過程を教員が評価し、激励し、成長を促す」という点です。「夢カルテ」は、学生の学修活動や日常の活動記録を蓄積し、常に自らが振り返ることを目的としたシステムで、〔1〕学修(履修した講義の目標設定、学修に対する自己点検・評価など)、〔2〕キャリア(進路の目標設定、資格取得、就活の軌跡、キャリアに対する自己点検・評価など)、〔3〕生活(将来の目標設定、日常生活における特記記録、生活に対する自己点検・評価など)を具体な項目とし、学生自らが自己点検・評価し、それに対して、教員が助言・激励することで、学生の成長を促すシステムです。学生と教員が真摯に向かい合い、教員が個々の学生の特性を理解し、その学生にふさわしい専門知識・技術を探り出し、将来の進路について適切にアドバイスすることを支援します。この「夢カルテ」の浸透が本学の教育改革の核となり、教育の質の保証に資することを期待しています。
 さて、本学園の大学には社会情報学部(グローバルビジネス学科[平成25年度開設]、健康福祉学科)、看護学部(看護学科)、学芸学部(子ども学科、音楽学科)、大学院社会情報研究科(博士前期・後期課程)、看護学研究科(博士前期・後期課程)が設置され、そして短期大学にはコミュニティ生活学科、食物栄養学科、保育学科、三つの専攻科(生活文化専攻、栄養専攻、保育専攻)が設置されています。これらの組織が協力して、全人間的な豊かさと健康についての教育研究を推進し、広島の文化に責任を負い、地域の教育文化の発展に貢献することを目指し、教職員が一丸となって協働して取り組んでいます。広島文化学園の建学の精神は、「究理実践」です。これは「真理を追究すること」と「実践すること」の両立を図りながら、教育研究を進めるということです。つまり、理論と実際の行動の一致が重要であり、教育の現場では、教員と学生の信頼関係が求められます。このため本学では、真摯な人間関係を構築する「対話の教育」を重視しています。
 平成26(2014)年、広島文化学園は創立50年の節目の年を迎えます。これまで以上に大学、短期大学の果たす役割は多様化し、期待も大きくなり、教育・研究の推進や事務業務の効率化のツールとして、ICTおよびITの重要性は益々増すと考えます。本学園のこれからの新たな50年に向け、学生への教育・研究の推進や日常的な事務業務の効率化のため、学園の総力を挙げICTおよびITの活用に取り組むことが重要であると考えます。


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