事業活動報告No.3

平成25年度 短期大学教育改革ICT戦略会議 開催報告

 平成25年度の本会議は、平成25年9月4日にアルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)にて、短期大学教育の再構築をテーマに開催した。参加者は35名(25短期大学)であった。
 今日、グローバル化の進展や雇用環境の変容に伴い、社会や企業から短大に対し人材育成機能の一層の向上が求められており、短大はガバナンス機能の強化と、教育の質的変換を迫られている。本協会では、過去2年間に亘り短大における人材育成の強化策について、一方ではキャリア教育の観点から、他方では短大教育が卒業後に社会で求められる能力と乖離していないかどうかの観点から、会議での事例紹介、企業や参加者の意見、アンケート調査を踏まえて検討してきた。その結果、短大共通の問題点として卒業後の追跡調査が不十分であることや、求められる人材に地域性があることを認識した。
 そこで、今年度の会議では、地域社会との連携による教育の工夫や、学生の学修行動のプロセスを踏まえた教学マネジメントの在り方に関する取り組み紹介とともに、大学間と卒業生の一層の連携を図るための方策および本協会による支援の提案として、ICTを活用した卒業生アンケート収集と短大間の共有の仕組みについて紹介し、意見交換を行うことにした。詳細は以下のとおりである。

事例紹介1

「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した地域連携教育」

大分県立芸術文化短期大学 情報コミュニケーション学科講師 安倍 尚紀 氏
日本政策金融公庫大分支店課長代理 大分県立芸術文化短期大学地域貢献研究会嘱託研究員  成田 誠 氏

 全学対象の必修科目「サービスラーニング」において、学生に主体的に行動させ、体験を実践的スキルとして身に付けさせることを目的として、大分県竹田市の商店街の取材および取材結果のWebサイトでの情報発信を行っている。取材風景や取材中の小さな気付きをFacebookに投稿することによって、学びの過程を可視化し、ダイレクトに評価を受けられることから、学修意欲の向上や自己分析、教員によるきめ細かな指導を可能にしている。また、細々とした活動が記録されるため、写真や文章の蓄積による「資源化」とも言え、地域連携事業として地域住民と学生・研究者が展開する共同的な社会実践としても捉えることができる。今後、ネットワーク拡大の制御や、教育効果の検証を経ての発展が期待できる。

事例紹介2

「学修ポートフォリオを活用したキャリア形成支援の展開」

実践女子短期大学 英語コミュニケーション学科主任 武内 一良 氏
キャリアセンタ課長 鮫嶋 暢宏 氏

 学修ポートフォリオを導入して学科目・キャリア科目・就職支援・進学支援の情報を一括することで、それらの情報をもとに学生自身にキャリア教育で学んだことや就職活動を振り返らせることを可能にしている。さらに、学生を指導する教職員にとっても、学生が積み上げてきた学修ポートフォリオの活動記録を活用することで、個々の学生にきめ細かな教育支援、就職支援、進学支援が可能としている。
 今後ポートフォリオの活用率を上げ、カリキュラムと連動させて全教員の協力を得ることにより、より効果的なキャリア形成支援体制の構築が期待される一方で、情報管理の在り方の検討も進めていくことが必要である。

事例紹介3

「目標管理シートによる自学自律学習とサポーターによる個人指導」

戸板女子短期大学 キャリアセンター部長 坂 勇次郎 氏

 短期大学士として社会人に必要な対人力、社会力、家庭力を育成するために、授業と連携させた全学的な取り組み「キャリア支援プログラム」を導入した。目標管理シート(ステップアップシート)の作成と個別指導、活動の振り返りをするために、学生一人に対し6回の個人面談を行っている。入学直後の5月の「クラスアドバイザー面談」から始まり、9月には進路確認を行い、就職実践支援、内定集中支援、と面談内容が文字通り「ステップアップ」している。
 教員・アドバイザー・サポーターなど指導者の指導力強化の研修を行う一方、就職率を高めるための施策として、対象学生のゾーン分けを行って全体で95%の内定率を維持している。今後ステップアップシートのデータ化、面談記録の学内共有化を行ってさらに効率を向上する。

全体討議

「短期大学就業力コンソーシアム構想の具体化」

 司会の三ツ木丈浩運営委員より、全体討議について次のような趣旨説明があった。短大は社会的・職業的に自立できる就業力を身に付けた人材育成を組織として展開していくことが求められており、そのためには、短大は常に教育を見直し、社会とのマッチングを意識して教育に取り組むことが必要である。
 そこで、実社会で職業に従事する卒業生の意見をもとに課題を洗い出し、学生に学びの動機づけを与える仕組みとして、本協会支援による「短期大学就業力コンソーシアム」を構築して卒業生アンケートの実施や結果の短大間共有を図り、教育の質向上に役立てたい。
 まずは、教育改善を目指して卒業生アンケートを活用している取り組み事例と、「短期大学就業力コンソーシアム構想」の紹介を行い、最後に構想の具体化に向けた意見交換を行いたい。

1.卒業生アンケート活用事例

鹿児島女子短期大学 教養学科教授 大重 康雄 氏

 短大での教育が職業選択に直結したかどうか、短大で学んだ教育が役立っているかなどのアンケート実施と、それを踏まえた改革について報告された。
 学生支援体制の改善に資するため、卒業生アンケートを卒業生同窓会の協力を得て平成22年2月〜3月に卒業生5,380人を対象に実施した。調査は同窓生のデータベースのメンテナンス状況から困難もあったが、昭和56年から平成20年までの卒業生から394件の回答を得た(回収率8.0%)。質問項目は「卒業年度」、「現在の仕事の内容」、「働く理由」、「働き方」、「卒業時の就職先」、「就職活動の状況」、「(転職した人は)退職の理由」、「大学の就職支援の状況」、「大学の教育について」を設けた。
 調査の結果、働く理由については、就職するのに比較的難易度の高い教員などの職種に就いている場合は仕事のそのものへの価値が挙げられているが、大半は経済的理由が多いため、短大の教育内容が自己効力感につながるとよい結果が得られると考えられる。職場選びでは、短大での専門の学修をベースに考えている。短大の学修として不足していることは一般的な知識で、積極性や行動力も不足していると考えている。就職して初めて短大の勉強が役立ったと感じるとの回答もある。
 設置基準が変更になり、教育系の学科においても職業教育を実施するようになったため、長期事業計画の中でアンケート結果を織り込んで改革を進めている。学長のリーダーシップも発揮しながら、同窓会や関係企業との関係強化、教員の資質向上にも力を入れるようにしている。改革の第1は、学生生活や実習も統括する学生支援センターを設置したこと、第2は、求人情報の提供を携帯電話等で流すようなシステムを開発したことである。ここでは、双方向に情報をやりとりし、システムを有効に活用する仕組みの重要性も確認された。第3はライフプランを睨んで、卒業生の話を聞けるなどの教育プログラムを開発したこと、第4は、人間力養成や実務能力の養成のために基礎科目とキャリア科目、実務能力については六つのフィールドに分けて上級秘書士などの資格もとれるようにしたことである。
 アンケート実施にはコストもかかるが、改革への大きな動機付けになるため、次回アンケートではさらに向上に期待し実施したいと考えている。
 アンケートの結果については本学のホームページに掲載しているので、そちらもご覧いただきたい。(卒業生に対するアンケート調査報告書http://www.jkajyo.ac.jp/upload/atuhime_sotucyosa.pdf)。

2.短期大学就業力コンソーシアム構想の提案と就業力調査結果

自由が丘産能短期大学能率科教授 豊田 雄彦 氏(運営委員)

(1)短期大学就業力コンソーシアム構想の提案
 短大の厳しい状況を乗り切るために、実社会で多様な職業に従事する卒業生のリアルな情報を収集・公表することで、短大として取り組むべき課題を洗い出すとともに、学生に対して学びの動機づけを与える仕組みを構築することを目指している。
 具体的には卒業生調査をWeb上で実施して拠点校で運営し、本協会は参加募集や相談・助言などの支援を行う。調査対象は卒業後2、3年目を想定しているが、今後さらに検討していく。質問項目については、個人の属性と職場で発揮できている能力と十分でない能力、各大学で自由に設定できる項目、自由記述を想定している。短大共通の項目に関する単純集計は本協会運営委員会で実施し、結果はコンソーシアム内で共有する。システム利用や集計に関する費用は無料とし、卒業生への調査協力依頼等にかかる費用は各短大の負担とする。
 コンソーシアム参加のメリットは、回答情報を他の短大と合わせることで、振り返りのための有益な情報が得られること、業種別の調査により社会のニーズと教育のマッチングを図り教育改善に有効なこと、短期大学学士力の能力の要素として何が必要であるのか全容を把握することができることである。また、第三者評価を受審する際のエビデンスとしても役立つと考えられる。
 卒業生調査の回収率を上げることは困難を伴うが、短大間で共有することで、困難を乗り越えることができるのではないだろうか。

(2)自由が丘産能短期大学における就業力調査結果
 Webを使用して卒業生調査を実施しており、今回のコンソーシアム構想の提案と同様の方法である。質問項目は本学の学位授与の方針(ディプロマポリシー)に合わせて作成されており、調査結果を今後の教育プログラムの改善に活かす目的である。対象は就職先の人事担当者と卒業生である。就職先にはメールで、卒業生にはハガキで依頼しているが、ハガキのQRコードをスキャンすることによりWebにアクセスする仕組みにしてある。就職先の回収率は33%、卒業生の回収率は5%である。
 調査結果については就職先、卒業生とも概ね肯定的な結果が得られた。外国語に関しては職場で使用しないなどの回答も多く、肯定的な回答は少なかった。就職先、卒業生の質問項目ごとの回答結果は同じような状況で相関は高い。このことから一定の調査結果の妥当性は得られたと考えている。コミュニケーション能力、ビジネスマナー、パソコンスキルなどの能力には評価が高かったが、外国語、課題解決、考察といった項目は比較的評価が低かった。このことから課題解決の能力を養うプログラムを充実させるなどの対策の必要性が考えられる。このような結果から、今後、短大の拡大につながっていけばよいと考える。

3.質疑応答と主な意見

 その後に行った質疑応答や参加者・講師から寄せられた意見は次の通り。

Q:鹿児島女子短期大学で実施したアンケートは、地域のコンソーシアムと連携したものであるのか。
A:地域のコンソーシアムとは関係なく、本学で知りたい内容を中心に独自に質問を作成した。
Q:コスト面での留意すべきポイントはあるか。
A:メールで依頼できればよいが、メールアドレスをメンテナンスし続けるのは難しい。住所でも同様であるが、次善の策がハガキである。回収率を上げるには質問項目を絞ることも重要と考える。
Q:卒業生アンケートと改善結果をどう結びつけるか教えていただきたい。
A:特定の先生が実施しているだけだと共有化しづらい。長中期事業計画などとリンクして改革の根拠としてアンケートの結果を位置づけていかなければならない。
Q:就職先人事担当者の調査先は選んでいるのか。
A:メールアドレスを把握しているものを対象としている。

【主な意見】

 最後に戸高敏之運営委員長より、コンソーシアム構想について参加者からの理解はほぼ得られたと思われるため、来年度から実現できるよう準備を進めたい。ぜひ学内で検討の上、参加いただきたいとの呼びかけがなされた。

文責:短期大学会議教育改革ICT戦略運営委員会


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