事業活動報告 No.4

平成28年度 教育改革ICT戦略大会 開催報告

 各大学は、国の大学改革実行プランに沿って教育の質的転換に向けて、改革努力を続けている。例えば、三つのポリシーによる教育方針の明確化、カリキュラムマップ・シラバス改善などの教育課題の体系化、成績評価の厳格化、アクティブ・ラーニングの組織的教育の実施、ポートフォリオ・IR等による学修成果の可視化など、全学的な教学マネジメントの確立に着手したところである。しかし、これらの取り組みは制度・仕組みの整備であって、必ずしも教員個人及び教員間による教育内容の調整・改善に取り組む質的転換につながっていない。
 そこで本大会では、新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて、社会及び世界から信頼される人材育成の内部質保証のあり方について、三つのポリシーの一貫性、整合性の面から探求することを目指し、平成28年9月6日から8日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で、「教育の質的転換に向けた内部質保証を考える」をテーマとして開催した。3日間の参加者総数は、313名(134大学、14短期大学、賛助会員13社)であった。
 第1日目の全体会では、向殿政男会長(明治大学)の開会挨拶の後、三つのポリシー(入学選抜・カリキュラム・学位授与)省令化による内部質保証の課題、学修成果の可視化と改善への取り組み、アクティブ・ラーニングの振り返りと課題、地域と連携・地域を活用したPBL教育の導入と効果、ネット会議による分野横断型PBL教育の提案などの具体的な手法について情報の共有を図った。
 第2日目は、第1日目の全体会であげられた課題や提案について、より深めるため、分科会形式によるテーマ別意見交流を実施した。「ICTを活用したアクティブ・ラーニングの取り組みと課題」、「教育を客観的に振り返るための環境整備〜IRの導入の取り組みと課題」、「アクティブ・ラーニングの評価方法」、「価値の創出を目指した問題発見・解決思考の情報リテラシー教育モデル」の4つのテーマについて参加者を交えた討議を行い、大学としての取り組みと課題を共有し、課題の共有と解決の方向性について模索した。また、分科会終了後に参加者のコミュニケーションの場として情報交流会も行った。
 第3日目は、教育や支援環境へのICT活用について77件の公募による発表をA〜Eの五つの会場で、同時に実施した。また、2日目の午後から3日目にかけて大学・企業共同によるICT導入・活用の紹介として、賛助会員の企業と導入大学によるポスターセッションを実施した。

第1日目(9月6日)

全体会

【教育の質的転換に向けた内部質保証の一体改革】
三つのポリシー(入学選抜・カリキュラム・学位授与)省令化による内部質保証の課題

独立行政法人 日本学術振興会理事長 安西 祐一郎 氏

 卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程の編成及び実施に関する方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者の受け入れに関する方針(アドミッション・ポリシー)の3つのポリシーを一体化して公表し、実施していただきたいということで、本年3月31日に学校教育法施行規則が改正され、平成29年4月1日の施行となっている。省令改正の背景としては、少子高齢化とグローバル化により、産業構造や雇用市場が大きく転換してくる中で、2020〜2030年に向けて日本の人材基盤を抜本的に強化し、日本で学ぶ人達一人ひとりが幸せな人生を歩めるようにするという教育改革の目的がある。
 多くの大学がすでに3つのポリシーに対応しているが、3ポリシーと絡めて教育改革をどのように進めていけるかということが課題となる。大事なことは、ガイドラインにあるように、ポリシーそれぞれを関係付けることにある。3つのポリシーの中で一番重視すべきものは何かというと、どういう卒業生を出すかということだと思う。大学の看板を背負った卒業生が社会でどのように活躍してくれるのか、一生懸命社会に対して貢献していく人達を自分の大学が売り出せるかどうか、社会と関係付けるということが重要で、ディプロマ・ポリシーが極めて重要になる。これから社会の動向はどうなのか、採用はどうなるのか、これからの時代の就業構造はどうなっているのか、それをきちんと見込んでディプロマ・ポリシーをどのように考えていくかどうかが課題となる。
 その時にそれに対するカリキュラムはどうなっていないといけないのか、そのカリキュラムに耐える学生というのは、どうやって選抜すればいいのか、どうしたら自分の大学が社会で一人でも多くの卒業生が活躍して行ってくれるのか、専門的な保母さん、役所に勤める卒業生はじめ、それぞれの場で持って活躍をしてくれる、幸せになってくれる、そういう卒業生を何人出せるかということが大学の価値を決めると思われる。そのような入学者をどのように見つけていくかというのは、大学側が知恵を絞るところだと思う。
 高大接続改革について技術的課題が取り上げられているが、やる気があるかどうか、これを乗り超えられるかどうかということが、今、大人に問われている。アクティブ・ラーニングで主体的になれと言っても、言われたことをするのではアクティブ・ラーナーにはなれない。学生自身がどうしたらスイッチを入れられるのか、挑戦的になれるのかどうかが課題である。むしろ大人にスイッチが入っているかどうかが問われてくる。高大接続改革というのは、実は大学にとっては大学と社会の「大社接続改革」であり、大学教育の果たす役割の大きさを大人が真剣に捉え、改革に挑むことが必要になるのではないか。
 3ポリシーのガイドラインとしての基本的考え方は、どのような卒業生を社会に送り出させるのか、どのようなことを身に付けた卒業生なのかを定めた方針がディプロマ・ポリシーで、身に付けるためにはどのような教育をしているのか、教育課程の編成方針、編成内容、学修成果の評価などの基本方針を定めたものをカリキュラム・ポリシーとしている。その上でディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーに基づき、それに対応できる入学者をどのように選抜していくのかなど多様な学生を評価できる入学選抜をアドミッション・ポリシーとしており、分かりやすい内容・表現で策定していただきたい。
 多くの大学が3つのポリシーを公表しているけれども、これを関係づけて一体的に運用するとはどういうことなのか、これが本日の課題である。関係づけることはできるのか、関係付けようと思えば多様な卒業生があり、一様でない。そうするとカリキュラムもある程度多様化、柔軟化しなければならない。例えば、ナンバリングのシステム一つとっても、授業の時間割りの設定などから教員の反対もあり、大規模大学で導入するのは大変になっている。むしろ個性を持って頑張ろうとする大学にとっては、知恵の絞りどころであり、チャンスではないかと思う。その時に学生をどのように学修させ、どのように学修成果を身に付けて質保証をしていけばいいのかということが、現実に直面している課題で、これからの時代を見据えて、ある程度カリキュラムを変えていく必要がある。
 3ポリシーの留意事項として、ガイドラインの総論に3ポリシーを一貫性・整合性あるものとして策定して欲しいとしている。するかしないかは大学の責任になる。言われたからやるというものではない。言われてするのであれば、学生にアクティブに学べと言っておいて、大学側がアクティブでなくパッシブであったなら、学生に申し訳がないということである。
 3ポリシーに基づく、入学者選抜及び体系的で組織的な教育を実施していただきたい。ガイドラインには、例えばナンバリングの活用、ポートフォリオの活用などがあるが、ガイドラインにあるからナンバリングをしようということだと、いつまでたってもやらされ感がある。何故ナンバリングのシステムを入れないといけないのかを問い、自ら判断することが重要なのではないか。
 一つの例として、実例に近いあるA大学B学部C学科の3ポリシーが公表されている。他の大学と比較してみても相当きちんと書き込んである。例えば、ディプロマ・ポリシーについては、知識理解はこういうことができるようになる。技能について専門的な能力とか、汎用的な能力が身に付いてできるようになる。卒業認定ではそのような能力が身に付いていることを社会に約束している。カリキュラム・ポリシーについては、C学科の1年前期から4年後期までのカリキュラムマップが表示されている。その下に教育プログラムとして、1年次では共通科目を学ぶことも書いてある。
 アドミッション・ポリシーについては、学科の教育理念、教育プログラム、求める学生像が書いてあり、入学者選抜の基本方針、個別の学力検査の視点などが書いてある。かなり書き込まれている例を持ってきたが、このポリシーを本当に実施するのかという問題が考えられる。ディプロマ・ポリシーで「何とか的視点から、今日の経済社会の動きについて説明できる」としているが、説明できるということをどこでチェックしているのか。カリキュラムのどこに対応しているのかが書いてない。3つのポリシーはよく書かれているとは思うが、残念ながらシステム化されていない。ディプロマ・ポリシーで「・・することができる」としたならば、カリキュラムのどこで、どのように学べばこれが身に付くのかということまで、全て書くわけにいかないので、そこがリンクできるかどうかが一つのポイントとなる。結局のところディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーが独立している。特に、入学者選抜の方針は国立大学では共通していて、前期日程、後期日程ではこういう試験をしますと書いてあるが、前期日程の試験がカリキュラム・ポリシーと、どのように関係しているかほとんど書かれていない。これで3ポリシーが一体化していると言えるのか問題である。
 3ポリシーを一体的にするには、外形ではなく学生が幸せになれるように、教育の仕組みを教職員が理解し、システム的に実践することなので、簡単なことではない。私立大学の強みというのは、そういうところを大学で考え、特徴を持ち、戦略を立てて自信を持って策定し、ホームページで公表していく必要がある。また、3ポリシーが具体的に教育の場に反映されていくべきだと思う。自分の大学がどのくらい知恵を絞れるかというところで、先が決まってくるのではないか。その知恵の絞り所の一つの大きなターニングポイントが、3ポリシーの改正だと見ている。また、A大学B学部C学科の場合に推薦入試、AO入試というのはアドミッション・ポリシーになっていない。例えば、英語の授業で、英語がものすごくできるから推薦で入った学生と、一般の学生がまったく同じ英語の授業を受けており、ナンセンスではないか。推薦入試、AO入試があるということは、ナンバリングのシステムや、学年制でないカリキュラムが入っているべきだが、そこまで考えられているところは多くはないと思う。特別な入試で入ってきた1年生は英語の授業を受けなくてもいいことになるのか、というとそうでない。アドミッション・ポリシーとカリキュラム・ポリシーの間に垣根があるということで、3ポリシーを一体化するというのは、そんなに簡単ではない。これをやれるかどうかというのは、最初のご挨拶にもあった通り、魂を入れるということと同義では簡単ではない。
 今、結構長いこと学位プログラムという考え方がいろいろ取りざたされており、中々定着しない。学位プログラムの考え方は、知識、思考の仕方、情報の活用、表現の仕方など学位を取得するための能力を身に付ける大学教育で、少しずつ向かっていると思う。そこへ入試で記述式の問題を入れる、なぜなのか。書く力には知識が無ければ書けないし、自分が何を書きたいかという主体性がなければ書けない。何十字であっても答えのない問題に対して書くというのは主体性がないとできない。読む人の立場になってどう読まれるかということを考えなかったら書けないので、教室の中だけでなく、色々な経験をして、それを言葉にする経験が必要となる。
 実際に3ポリシーを合体して卒業生が活躍できていくような、そういう教育の場を作っていくことができるかどうかというのは、これからの努力次第だと思われる。規模に関わらず、私立、国立、公立の大学も含めてチャンスはある。関係者が知恵を絞るかどうか、実際に体を張って挑戦して実施するかどうかにかかっていると思うので、これからの時代に向けて若い人達を幸せにしていっていただきたいと思う。

【質疑応答】

[Q1]
以前から3ポリシーは学科でも作っているので、学部、大学でポリシーを作る必要はないのではないかと思っているが。
[A]
基本的には大学あるいは学部学科等と執行部がおやりになっていると思うので、そういうところで決めればいい。大学全体として、3ポリシーを出されても抽象的になると思うので、受験生、保護者、社会から見て具体的に学部学科がどういう教育をされて、どういう学生を輩出されようとしているかということが、分かるようにするということで、学科がベースになると思う。ただし、大学によって随分違うので、こうしなければいけないということはないというふうに見ている。
 
[Q2]
3ポシリーに魂を入れる努力をしているが、ポシリーを達成して卒業していく質保証として、科目の単位を取ったら達成したと考えていいのか。
[A]
挫折感を持っている学生もいるので、そういう学生が心にスイッチが入るかどうか、モチベーションがきちんと入るような、学びも作ってあげないといけない。個々の学生に対して、大学に入って学んで良かったと思えるような達成感が持てる学びの場を作ることが大事だと思われる。学生に自発的な動機がもたらされるような学びの場が作れれば、全部解決していく。そういうことが魂を入れることではないかと思う。
【質保証を目指した試み】
学修成果の可視化と改善への取り組み

共愛学園前橋国際大学副学長 後藤 さゆり 氏

 本学は群馬県前橋市にあり、1999年に短期大学から改組した国際社会学部の単科大学で、入学定員225名の小規模大学である。コースが5つあり、学科と同じような機能を持つ構成になっている。コースごとの専門科目を学びながら、その他のコースの科目を履修するということで、深く幅広く学ぶことができるカリキュラムになっている。教育理念は、キリスト教主義に基づく「共愛=共生の精神」で、教育の目的は「国際社会のあり方について見識と洞察力をもち、国際化に伴う地域社会の諸課題に対処することができる人材の育成」とし、「学生中心主義」を教育方針としている。例えば、大学運営への学生参画として、ITサポート、英語に関するアドミックチューター、ティーチングアシスタント、アカデミック・ライティングの日本語ピアチューターや、学生カフェでの経営、学生の意見を反映させる取り組みなどに関っている。
 授業は、50名以下が85%なので、81%がアクティブ・ラーニングで授業を進めており、専任教員全員がアクティブ・ラーニングに取り組んでいる。最初は地域貢献のために地域連携を始めたけれども、今は、「地学一体」で地域と一緒に学生を育てるシステムが特徴的となっている。
 現在、文科省の「スーパーグローバル大学等事業(GGJ)」、「大学教育再生加速プロジェクト事業(AP)」、「地(知)の拠点整備事業(COC)」、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の4事業に採択されており、グローバル化に対応したプログラム、地域に根差したサービスラーニングなどを用意したプログラムで、より実践的な教育プログラムを充実させることができた。とてもアクティブな学修が多いことから、テスト、レポートでは測りきれない能力を如何に可視化して、教育改善に繋げて質保証するかが大きな課題であった。このような取り組みの一つとして、ICTシステムとして、シラバス、図書館ベースの検索機能、ポートフォリオの3つを連携させる支援システムを構築し、それを活用してPDCAサイクルを回そうと考えたのが、APの学修成果可視化の取り組みである。
 アクティブ・ラーニングを単にやっているだけでは質保証にならないので、昨年度PROGテストで、知識を活用して問題解決する力(リテラシー)を測ったところ、6月調査の1年生ではリテラシーレベルが低い学生が沢山いるが、11月調査の3年生では高いレベルの層が厚くなっていることがわかった。アクティブ・ラーニングの成果がアセスメント調査で証明されたと言える。もう一つは、オーストラリア教育研究所と河合塾による「日本の大学生の学習経験調査」の結果によれば、1年生ではほぼ他大学と同じレベル若しくは低い状況にある中で、自主的に学修できる自信、話す力、書く力、批判的思考力、複雑な問題を解決する力、グループで協調する力、専攻分野に関する知識、仕事関連の知識技能の全てにおいて、統計的に優位に差があることが証明された。これもアクティブ・ラーニングによる教育効果と受け止めている。その一方で、将来の見通しを持たない学生は、学修意欲が低いことや、授業外学修時間が他大学に比べ多くないことなど課題も明らかになった。また、現在のカリキュラムでは、優秀な学生を効果的に教育できていないという課題も明らかになり、新たなプログラムの準備を検討している。これらの課題を解決するには、キャリア教育を充実して学修意欲高めることや、学生が自ら目標を定めて主体的に学修に取り組むことを促すことなどが求められる。その具体的な方策として、eポートフォリオ等を有効活用し、学修習慣の形成を促すとともに、学修成果の可視化を進めることにした。
 可視化を進めるにあたっては、地域や海外でのアクティブ・ラーニング、学内・学外活動、アルバイトなど卒業要件の力と区別して評価することも困難なことから、学びの総体を評価する判断材料を最も豊富に持っている学生を、評価される側ではなく、評価する側に位置づけ、学生の自己評価を可視化の一つの軸に捉え開発したシステムが「エビデンスベーストの自己評価」である。その際、学生が根拠のない偏った自己評価を行うという課題を解決するために、自己評価のための明確な規準を提示するとともに、eポートフォリオに蓄積した多様な学修成果を自己評価のエビデンスとして活用して判断できるようにシステムを整備した。
 まず、明確な評価基準として、卒業時に身に付けるべき力の規準として学修成果指標を2015年度に全教職員の意見を求め、四つの軸・12の力にまとめ、さらに地域連携協定を結んでいる前橋商工会議所に地域企業に求める人材像のアンケート結果と整合性を図った上で「共愛12の力」を確定した。また、達成度を自己評価できるように「共愛コモンルーブリック」2015年度に制定した。
 一方、自己評価の根拠となる豊富なエビデンスの提示は、2015年度後期よりeポートフォリオシステム(KCG)によって実現している(図1)。KCGには、授業の学修成果物を蓄積したり、授業外学修としてのグループワークを記録する「学内活動」、語学留学、海外旅行、ボランティア、アルバイトなどを記録する「学外活動」、「資格取得」、「読書履歴」のセクション、目標と振り返り記録する「学年振り返り」と履修年度ごとの「授業振り返り」を記録できるセクションがあり、学生は自己の学びと成長につながる学びのログを記録できるようになっている。2016年度からは2年生以上にリフレクションの時間を設けて、12の力ごとに自らの学修成果評価し、それを踏まえた新年度の学びの目標を立て、KCGに記入することを義務付けている。

図1 KCGトップ画面

 KCGの学修記録が適切なエビデンスとなるよう、「共愛コモンルーブリック」の12の力の中から対応する力を選択し、タグ付けする機能が実装されている。学生は記録する際に、その経験がどの力の伸長につながったかを選択し、その下に「エビデンスにした活動や授業」について記載する。さらに「学年の振り返り」では、4つの軸ごとに成長と課題を明確にし、新年度の学びの目標を立てて記入する。さらに、学生は蓄積した学修活動と学修成果物の中から、特に自らの特徴と成長を示す記録を「学びと成長のハイライト」として、自動的に学外へ公表するページを作成することができる。就職活動時における「公開履歴書」としての利用を想定しているが、同時に学生にeポートフォリオを活用する意義を明確にし、学修成果を自分の成長として客観的に意味づけ、他者を説得させるエビデンスを蓄積するよう意識づける役割も持っている。そのため、自己評価の妥当性を確保し、その力を支援するためにeポートフォリオに書き込まれた記録を資料として、全学生を対象に担当教員とのリフレクション面談を行う予定にしている。また、学生の自己評価やその他KCGに蓄積された情報は2015年度よりIRの取り組みにも活用して行く予定にしている。
 KCGの取り組みにより、学生は日々の学修成果の振り返りによって自らの成長と課題を明確化、教職員は個々の授業やカリキュラムの見直し等の改善、地域社会、ステークホルダーには学生自身による学びの成果を見せることが可能となる。KCGを活用して、学生、教職員、社会に対して学修成果をより見えるようにする仕組みを構築し、IRなどの活動を通じてさらに仕組みを洗練させていくことで、学修成果の可視化とカリキュラムの質保証が進み、大学としてのアカウンタビリティの達成といった課題に対応していきたい。

【質疑応答】

[Q1]
アクティブ・ラーニングの働きかけに乗ってこない学生への対応をどうしているか。
[A]
アクティブ・ラーニングの授業を履修している学生は93%にとどまっており、7%の学生は避けている。その学生に対して授業の選択を狭めていることにもなり、検討事項となっている。発言を聞いているだけであったが、最後のまとめで、自分の意見を一言でも話してくれるという立場の学生がいてもいいのではないか。不得意な学生に対して少しハードルを下げたりすることができるのではないかというふうに考えている。
【アクティブ・ラーニングの効果を高めるノウハウ】
アクティブ・ラーニングの振り返りと課題

名古屋商科大学 経営学部教授 亀倉 正彦 氏

 アクティブ・ラーニング(以下AL)に取り組む場合、1何を学ぶのか、2誰が何のために学ぶのか、3誰がその学びに責任を持つのかについて教育現場は問われる。ALとは「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」とされているが、本年8月1日に公表された中教審の審議まとめ草案では、「主体的・対話的で深い学びの実現を目指す」となっており、学生の学びに主眼が置かれている。本学を含む23大学が連携してALの実践を行う中で、アクティブ・ラーニング失敗事例ハンドブックを作成した。そこでは多くの実践事例を分析し、ALが失敗する要因を一般的な原因から具体的な原因まで、相互関係を原因マンダラと結果マンダラという形式にまとめた。様々な原因や結果を一覧にすることで、教員が自らのALがうまくゆかなかった理由を考える際にヒントとなる。いずれのマンダラも教員に関係するもの、学生に関するものに分類されている。
 また、AL失敗には3つの基本パターンがある。1つ目は、学びが「アクティブ(active)でない」こと、すなわち、学びのアクティブとは何かの問いに答えられていない場合、2つ目は、そもそも「学び(learning)がない」こと、すなわち、科目目的とALの目的が区別されていない場合、3つ目は、教員が「近視眼(myopia)となる」こと、つまり教員が自らの専門性に関わる内容を、思い通りに学生に伝えることを優先する場合である。学生の学びの目的は非常に多様なので、画一的なALを行ったのではうまくゆかない。実際面では、学生がどういうふうに学ぶのか、どうすれば活き活きと学ぶのかなど、学生行動への理解や、ALを通じて、学習項目の記憶・暗記なのか、学習項目の活用なのか、あるいは社会人基礎力の養成なのかといった科目目的やその学習の狙いに沿った課題設計が必要になる。また、教員には、時代の要求を完璧に反映するのは困難とはいうものの、時代を見据えて科目の説明責任を果たすことが求められる。
 ALの効果を高めるノウハウとしては、1ALの学習環境を構造的に理解する、2ALがなぜ注目されるのかということについて地域社会や産業界の要請を理解し取り込む、3全学生が等しく学びを得られるよう工夫する、4課題の設計を工夫することが指摘できる。
 ALの教育環境については、教員を中心に置き、教育技術、教育体制、価値観、関係者の4つについて、それぞれクラス、学内環境、マクロ環境の3つの視点から考慮しなければならない。こうしたことを踏まえ、大学として責任をもって、社会で学ぶ素地を持った学生を送り出すには、建学理念や人材育成理念に照らし、カリキュラムやシラバスに位置付けされた「科目の学習目標」を設定することが大切である。本学では、社会人基礎力の考え方をもとに、学習プロセスで習得する資質能力について「基礎力(学び・学ぼうとする力)」、「実践的思考力(シンキング)」、「主体的行動力(アクション)」、「発展的コミュニケーション力」の4要素が螺旋的に関係するモデルを想定して取り組んでいる。各要素はそれぞれ3つの能力を含んでいる。
 ALではグループワーク(以下GW)の難しさがあるが、それは以下のような指摘に基づいている。すなわち、「学生自身がGWに慣れていない」、「時間が無駄」、「学生の知識が不足」、より深刻なのは「GWでは何が成功か失敗かの判断が難しい」といった指摘である。例えば、表面的にはGWで発言が活発であっても、発言者が限られたり、発言内容が課題から外れたりしておれば成功したとはいえない。つまり、GWでは個々の学生の学びが保証されているかという点が重要になる。
 さらに、ALが成功するかどうかに課題の良し悪しが関わってくる。課題設計については、3つの観点が指摘できる。つまり、1「正解を問うのか、自分の考えを問うのか」、2「作業の手続きや段取りは教員が主導するのか、学生任せか」、3「作業に取り組もうと感じる意欲・動機は内的か外的か」といった点を踏まえて課題の最適化を図る必要がある。3の「内的か外的か」の見極めは難しい面もあるが、仮に外的であったとしても活動を通じて学生が自ら学ぶ方向に変化することもありうる。
 結論としては、ALはこの形を作れば正解というものはなく、置かれた状況、学習目的、許される作業時間、学生の受講目的などを踏まえ、バランスよく組み立てることが大事である。

【アクティブ・ラーニングを導入した地域連携教育】
地域と連携・地域を活用したPBL教育の導入と効果

信州大学キャリア教育・サポートセンター 副センター長 林 靖人 氏

 本学では地域拠点大学を目指し、大学と地域が連携し、地勢や自然資源、環境を活かす基盤的研究、地域の産業基盤を活かす産学連携実践研究を推進し、学生が地域に目を向け主体的に地域活動を行っている。今後は、地域を活用した学生教育の体系化、地域連繋活動の志向浸透とシステム化・体制づくり、地域の人材育成と大学教育の循環システムを構築する。
 ところで地域とは、地勢、行政など空間的・形式的なまとまりであり、エリアのレベルから地方自治体・国レベルまであるが、人の生活・文化的営みに基づくまとまりを考える必要がある。連繋については、Partnership、Relationship、Collaboration、Engagementといったレベルがあるが、最初から地域と「つながり」があるという意味ではEngagementと理解し、地域連繋と表すのがふさわしい。さらに地域連繋を進める上で大切なのは、「うまく調整する」という意味合いのマネジメントである。地域連繋マネジメントでは、活動理念を全員が同じものを共有しているわけではないので、コミュニティのレベルで考える必要がある。
 現在、本学では文部科学省の地(知)の拠点整備事業に取り組み、大学が自治体等と連携し、地域を志向した「教育・研究・地域貢献活動」を一体的、全学的に進めている。平成25年度に始まり、平成29年度に事業は終るが、地域や産業界と連携し継続予定である。現在、「中山間地域、歴史・芸術文化、環境共生、防災減災、健康長寿、多文化共生」のテーマそれぞれの未来について取り組んでいる。その際、研究者の知と実践者の知を掛け合わせ、課題解決知を産み出す。つまり、大学が持つ分析力や体系化の能力を使い、現場の実践の分析を行う一方、現場の実践者には体系化の術を習得してもらう。また、自ら地域の課題解決を目指す人を集め、パイオニア人材やコーディネーターとして育成する、あるいは本学に進学してもらい、プロ人材に育てる。こうした段階を経て大学教育にも関わることにより教育の質も担保できる。
 一方、大学も地域課題を通じ、専門分野の融合や一貫教育を進め、学問と社会の繋がりを高める改革を行い、学生が目的を持ってテーマを学べる仕組みを作る。すなわち、地域人材育成による地域戦略プロフェッショナルが地域講師としてゼミを担当し、実践学習の場を提供しつつ、学生は課題実践学習や地域活用学習に取り組む。また、現場で先進的な事例を行う人に学び、ソーシャルイノベーターを育てる地域貢献事業も行っている。
 こうした取り組みで学生の育成ができたかどうかは、ゼミ受講前後で主体性など11項目の調査を行ったが、伸びはあるが半年後に下がる結果が出たため、刺激を与える機会と活動するチャンスを与えることが課題になる。現在、全授業を“地域課題テーマ”から逆引きし、総合力を修得できる分野融合的・学際的な教育環境を構築しつつある。平成29年度からはローカル・イノベーター、グローバル・イノベーターを育成する少数選抜コースの全学横断特別教育プログラムを予定している。
 PBL教育では、授業内容や実施は各教員が担うため押し付けはできない上、地域との調整・授業内容の設計・経験の蓄積それぞれに時間がかかることや、学生を学外に連れ出すことに伴う経費の発生や、授業ルール等との調整など、課題がある。このため、地域連携研究員制度を設け、自治体から人を派遣してもらい、共同研究契約のもとで教育を重視した共同研究を行い、これらと連動したPBL型教育(授業)を行う。この制度では、問題解決の学びを自治体の職員で行うことや自治体職員には教えることが最大の学びになる点が特徴である。研究員はテーマに関し考え方を学ぶ機会や大学教員からヒアリングを受ける機会があり、大学図書館も利用できる。また、学生はゼミ経験を通じ地域のファンになることが期待できる。
 筆者の1年生対象「地域ブランド実践ゼミ」では、講義、インタビュートレーニングや、学外活動としてイメージ形成フィールドワーク、市議会との対話、複数企業取材型インターンシップ、課題解決プラン作成、学外での成果発表会などを行っている。フィールドワークの調整は地域の自治体職員や連携研究員が行っている。
 PBL教育の地域への効果は、いつの時点でとるか、大局的に見るかで異なる。現在参考にしているのは、日経の地域貢献度ランキングである。4年連続で本学が総合第1位だが、これが学生や教員のやる気に結びついている。また、キャリア面での評価に日経の「就職力ランキング」も参考にしている。授業に関しては、それぞれ目標を設定し評価する必要がある。筆者のゼミでは、企画力と行動力、表現力の点から評価するとともに、自治体職員も評価に関わっている。こうした取り組みでは、自分たちで行動するようになったかという点を重視している。

【知識の創造を目指したアクティブ・ラーニングの考察】
ネット会議による分野横断型PBL教育の提案

本協会 学系別FD/ICT活用研究委員会委員、昭和大学 歯学部教授 片岡 竜太 氏

 分野横断型PBL提案の背景には、2011年の日本学術会議提言「我が国の医学教育はいかにあるべきか」で、医学と歯学、薬学、看護学などの多分野が相互連繋を深めることを指摘したことがある。歯学教育モデルコアカリキュラムの平成22年の改訂版で、多様な社会ニーズへの対応のため、患者中心のチーム医療が加わったが、歯学系では単科大学も多く、多職種連携教育の実践には困難を伴う。
 米国歯科医学教育学会ではコンピテンシーとベンチマークとして、クリティカルシンキング(以下CT)を第1に置いている。CTとは、与えられた情報や知識を鵜呑みにするのではなく、複数の視点から注意深く論理的に分析する能力や態度を指す。厚生労働省の健康施策も臓器型モデルから全身健康管理型モデルへと移行しており、CT中心のチーム学修や多分野学生によるネット活用アクティブ・ラーニングを考える必要がある。
 本日紹介する分野横断型PBLでは、ICTを活用しグループディスカッションを通して、学生に学ぶ機会を与え、共通の基盤や各職種の役割を認識した上で、学修の動機づけ、振り返りを促し、人材育成の基盤を地域で構築することを目指している。教育目標は、高齢者、家族を取り巻く問題を把握し、改善を図るため必要な知識を理解し、具体的改善策をグループで検討し提案することの基本を修得することである。
 多職種連携教育の定義では、IPE(Interprofessional Education)が「2つ以上の専門職が、協働とケアの質を改善するため、ともに学び、お互いに学び合いながら、お互いのことを学ぶこと」であり、IPL(Interprofessional Learning)が「2つ以上の学生も含む専門職が、職場や学習環境において、専門職連携の成果や自発的なもののいずれでも、相互交流することからの学習のこと」である。今回の提案では、第1段階は2年生でIPLとして、ICTを活用し分野横断型のPBLを体験し多分野の意見を集約して、グループとしてのプロダクトを作成し、第2段階で3年生でのIPEとして、実際臨床的なシナリオと分野横断型PBLを行う。
 本学は医、歯、薬、保健医療の4学部からなる医療系総合大学であるが、学部連携PBLを実践している。1年生では、全員1年間寮で生活し異なる学部の学生4人が相部屋となる。さらに、学部連携PBL、初年次体験実習が、医療人マインドを獲得し共感を得るというIPLの基盤となる。3年生で学部連携PBL、4年生で病棟実習をシミュレーションした学部連携PBL、5年生で医歯薬5年生と保健医療3年生が学部連携病棟実習、6年生は選択で学部連携の地域医療実習、アドバンスの病院実習を行い、全体としてIPLからIPEに段階的に移行する教育体系となっている。
 現在、文科省の大学間連携協働教育推進事業として、超高齢社会に対応できる歯科医師養成プロジェクトを、本学と北海医療、岩手医科の2大学と関連9歯科医師会が連携して取り組んでいる。参加大学の学生は臨床実習の内容をパワーポイントにまとめ、Web上に提出しWeb上でディスカッション後、Skypeによる15分ずつの発表と講義という形で学生間交流を行なっている。その後、改良した成果物を最終提出するという授業を5年生が行っている。
 さらに、電子ポートフォリオシステムも開発し、医療人としての長期目標設定、授業前の目標に対する授業後の振り返り、次の授業に向けた短期目標設定を繰り返し、自己評価と生涯学習できる医療人を育成している。また、1年生から卒業まで活動をアーカイブし、学生の個性と習熟度に応じた指導を行っている。
 本学の分野横断型PBL教育では、第1段階は、取り組みテーマに関するe-ラーニングによる事前学習、仮想PBL室でのシナリオの提示とネット会議による取り組みの共有、グループで作成したプロブレムマップに基づいた各自の治療ケアプラン作成、グループとしての治療ケアプランの作成と発表を行い、最後に電子ポートフォリオを用いた個人としての振り返りとなる。
 第2段階は、例えば脳梗塞患者の急性・回復・維持の各期の臨床シナリオをWeb上に提示し、多職種学生グループがこれについてディスカッションを行い、具体的な改善策を提案する。授業後、電子ポートフォリオを活用して、取り組みや学びについて省察を深める。これら2つの段階を経て、臨床推論、問題解決能力を育成する。
 こうした取り組みには、医療系分野の他、臨床心理学、介護福祉学、行政学、法学、経済学などの専門家の参加が期待される。これら関係者の協力も得て、健康長寿社会実現のため、ICTを活用し、超高齢社会の課題に多学部、多学科の学生がグループで取り組むことによって、共通の基盤とそれぞれの専門性を有する人材を育成することが可能ではないか。

第2日目(9月7日)

テーマ別意見交流

分科会A:ICTを活用したアクティブ・ラーニングの取り組みと課題

・人文・社会科学系

「大人数授業での双方向型アクティブ・ラーニング」

小樽商科大学 社会情報学科准教授 大津 晶 氏

 コミュニティワークを基軸に、大規模クラスにおける効率的・持続的・議論の多様性の向上を目的としたアクティブ・ラーニングの形態と開発した大規模クラスのアクティブ・ラーニング手法について紹介された。学修管理システムmanabaを活用した反転授業を実施しており、テキストや動画資料を用いた予習、講義・演習など振り返りと定着などの事前事後学修を強化した授業構成になっている。また、コミュニケーション支援アプリresponを出席や自習時間などの確認に積極的活用しており、これらの実情についても説明された。引き続き、意見交換に入り、どれほどの人数を大規模と考えて授業設計をしているのか、スマホ・携帯を持っていない学生への対応、ICTの活用に加え、実際のビジネス現場での役立つコミュニケーション力の向上についての留意点、成績評価などが話題となった。

・理工系

「学修マネジメントシステムを用いた事前・事後学修」

東海大学教育研究所所長代理 理学部准教授 及川 義道 氏

 学修マネージメントシステムを利用して、予習、授業、復習など授業内外における学修支援について、理学部共通科目である科学Cを例に、授業の流れとアクティブ・ラーニング戦略などについて詳細に紹介された。また、授業についてのアンケ−ト調査結果や他の科目への応用、課題および問題点などについても言及された。引き続き、意見交換に入り、事前学修システムでの教材(ビデオなど)処理(著作権など)の方法、授業設計に関わる教員側の体制、評価、などが話題となった。

・医療系

「双方向性遠隔教育システムを活用したPBL教育」

岐阜大学医学部教授 丹羽 雅之 氏

 岐阜大学医学部では、学習環境の向上、全国ならびに世界の学生との交流を通じた学習環境の提供、医療系教員のFDおよび職員のSDを全国展開することなどを目的にe-Leaning Systemを構築している。このシステムを活用してアクティブ・ラーニングの一手法であるPBL教育を展開するとともに、医学教育セミナーとワークショップを全国の大学と共催しており、これらの実施状況について詳細に紹介された。引き続き、意見交換に入り、PBLが授業科目全体に占める割合と具体的な実施方法について、医療系での個人情報の管理とICTの活用、などが話題となった。

分科会B:教育を客観的に振り返るための環境整備〜IRの導入の取り組みと課題

「質保証としてのIR導入の現状と課題」

筑波大学 大学研究センター特命教授 金子 元久 氏

 IRとは何か、教育データの分析、役割と課題などについて報告された。
 現在、大学の質保証に向け、どのような授業が行われ、どのように学修し、どのような教育効果を獲得しているか、その教育運営はどのような意思決定の元に資源が配分され、どのようなカリキュラムで授業が行われているかなどが問われ、さらにこれら必要な情報が社会や国、そして進学を希望する保護者に的確に提供されているかが問われている。
 IRはこれら学内情報の収集蓄積と、分析、評価、報告書の作成、そしてその学内外への公開、広報、提供を機能としている。集積が必須な学内情報としては学習行動の把握に関わる学習時間、授業での学生の経験や意識などが重要となる。それらは授業改善、改革、教育効果向上、学生満足度向上に向けた大学の教育運営改善に戦略的に活用されることになる。すなわちIRの役割は収集された様々な情報の分析と十分な説明を通し、教育運営の点検評価と問題点の把握を支援し、そしてその改善改革への方策提案と学内合意形成を支援することと言える。
 これらの役割を担うIR実施上の現状課題は、情報分析の方向性や教育運営改善課題設定のあり方、情報公開の範囲とそのあり方、そして大学運営上の課題に関する責任部署が不明確なことと、多くの教員がこれらに無関心であることである。また、IR実施での必要情報の調査方法やデータベース構築とその分析に関するスキルを保有した要員の確保とIR部門の適正な位置付けが重要な課題となっている。報告の後、内容に関する質問があり、詳細な説明がなされ、引き続いて、活発な意見交換があった。

「大学に求められるIR機能の実現に向けて〜IR活動展開の課題と学修成果の可視化」

京都光華女子大学 副学長、EM・IR部長 水野 豊 氏

 京都光華女子大学は、この10年間の大学改革の流れの中で、学生を総合的に手厚く支援すべく学長直轄組織EM・IR部を設置すると共に、経営戦略として学部設置・改編による教育研究再構築を行った。更に女性の社会における課題提供等に取り組むためのセンター組織の整備を行い、私立大学改革総合支援とAPの採択に至った。入学から卒業まで学生を総合的かつ組織横断的に支援する体制をEM(エンロールメント)と捉え、データに基づくエビデンスベースによる支援を実現すべくIRに取り組んでいる。その基本方針は学生成長支援・教育の質向上・経営戦略支援に置くが、別途ビッグデータベースの構築は困難なため、既存情報を適切に収集・管理・活用する方向でのIRを展開した。学科・入試・学生活動等のデータがどのような形でどこに保持されているかをリスト化(京都光華IR辞書)して全学に公開し、個々の学生の入学から卒業までの追跡情報を紐付けてEMのベースとしている。EM・IR活動のアセスメント体系化は、直接・間接指標設定、ベンチマーク活用等の方向で推進。学修アセスメント体系化については、大学生・社会人基礎力に関する業者テストやDPルーブリックにより学生自身の自覚と自己評価を促している。EM・IRのアセスメントは、関係部署への意見聴取、結果のフィードバック、課題の共有化による優先課題の選択、そして最高機関である大学運営会議への報告、というPDCAサイクルの流れがうまく回っているかにより評価している。APに関連してアクティブ・ラーナー水準のアセスメントを現在開発中である。今後は、学生支援の強化、アセスメントポリシーの確立、高大接続・三位一体改革への対応などが課題であることが報告された。報告につづいて、意見交換があり、教員のモチベーション、アクティブ・ラーナーの指標、調査分析の掘り下げ等が話題となった。

分科会C:アクティブ・ラーニングの評価方法

「ルーブリックの導入効果と課題」

創価大学総合学習支援センター長 経済学部教授 関田 一彦 氏

 アクティブ・ラーニングを通じて、どのような能力がどの程度身に付いたか、学生自身に自己点検するためのアセスメント科目を設定している。アセスメント科目では、自己評価ルーブリックを使って学生自身が汎用能力の伸長を点検するとともに、学修ポートフォリオを使った振り返りで相互評価して更なる成長を促している。また、教員はアセスメント結果を踏まえて、カリキュラムの効果を点検し、点検結果を共有して、チームとして改善計画を策定・遂行している。また、ルーブリックのスコアとPDF化した自己成長記録シートをデータベースに蓄積して、自身の学びを再点検する機会を提供していることなどが紹介された。

「ピア評価の導入効果と課題」

摂南大学薬学部特任助教 串畑 太郎 氏

 アウトカムを重視したSGD(スモールグループディスカッション)の教育にピア評価の導入が効果的であること、ピア評価は回数を重ねることでチューター(教員)評価と差が少なくなり評価者として成長すること、自己評価とピア評価が相関すること、TBL(チームベースラーニング)でチームを育てるにはピア評価は必須であると考えられることなどが紹介された。ただし、事前にピア評価の目的・意義を真摯に説明しておかなければならない、1回目のフィードバックで不正等を指摘することで2回目以降は良くなることなどの注意点も併せて紹介された。
 意見交流に入り、ピア評価を成績に含めることの是々非々、グループサイズや欠席者の扱い、アセスメント科目のCP(カリキュラム・ポリシー)、DP(ディプロマ・ポリシー)での位置づけ、科目とDPの整合性の問題、同一科目複数担当でALの手法が担当者ごとに異なる場合での評価、反転授業の効果などについての質問が寄せられ、詳細な説明がなされた。
 医歯薬、看護、リハビリの分野では、チーム医療としてPBL(プロジェクトベースラーニング)やSGD、TBLが重要な要素になっている。学生時代から、チームでの議論に習熟することは、これらの分野で社会に出るときの重要なスキルでもある。ただし、アウトカムとして国家試験に合格することとの連関は明確にはなっていない。摂南大学の取り組み成果を待ちたい。また、この分野でAPを獲得し、先進的に取り組んでいる創価大学の事例は、これからALやルーブリックの導入を検討している大学へのヒントとなる点が多く含まれていた。
 形態の問題ではなく、学生がアクティブになるかどうかが最重要課題であることの認識は共有できたと思われる。ただし、取り組みには教員組織の意識改革が急務であり、その課題への特効薬は無く、各大学の意識に任された格好になった。

分科会D:価値の創出を目指した問題発見・解決思考の情報リテラシー教育モデル

<紹介>

情報教育研究委員会

情報リテラシー・情報倫理分科会 主査 玉田 和恵 氏(江戸川大学)

分野別情報教育分科会 文系(社会科学・経済学分野) 児島 完二 氏(名古屋学院大学)

理系(機械工学分野) 角田 和巳 氏(芝浦工業大学)

医療系(薬学分野) 大谷 壽一 氏(慶應義塾大学)

 まず、情報教育研究委員会を構成する3分科会の役割と活動について、次のような簡単な説明がなされた。

1情報リテラシー・情報倫理分科会は、1、2年次を中心とする分野共通の情報リテラシーを如何に育成するかを検討しており、本分科会では、モデル案を提示すること、

2分野別情報教育分科会は、専門教育の中で、情報リテラシーを如何に育成するかを検討しており、本分科会では3分野からモデル案を紹介すること、

3情報専門教育分科会は、本分科会では話題提供はされないが、情報のプロパーの育成について検討していること。

 次に、分野共通の情報リテラシーについて、2011年頃からの取り組みの概略(ソフトウェアの操作技能が中心で、問題解決、モデル化やシミュレーション、情報の扱い方、情報倫理等については、あまり扱われていない状況にあることを明らかにした調査など)が報告され、私情協が考えている「情報リテラシー教育」のガイドラインは、従来からの機器操作主体の初年次教育ではなく、予測困難な時代における答えの無い問題に対し、より良い解を追求できる問題解決力が求められていることに対応するものであること、その育成のために、初等中等教育段階からの連続性を踏まえ、卒業時までに培われるべき「学士力」のひとつと位置づけていることが示された。
 今回、2012年度版ガイドラインの土台とした初等中等教育段階の情報活用能力(情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度)を踏まえ、大学教育に引き継ぐように(学士力としての)情報リテラシーガイドライン(2016年度版)を提案し、問題解決の枠組みや到達目標を紹介していること、多様な問題を解決するための様々な要領を個別の知識として教えるのではなく、物の見方や考え方の要領を扱うことで、それぞれの要領の探し方を扱うことが大切であり、学生の主体的な学びを実現するためのカリキュラムが必要であることが説明された(詳細は大会資料参照)。
 その後、専門教育における情報リテラシー育成のための授業展開例について、文系科目の例として、児島氏から社会科学・経済学分野の2年生対象の「大学が立地する自治体に関する調査(問題発見)」及び、3年生対象の「地方創生のための政策立案(問題解決)」というモデル案が、理系科目の例として、角田氏から機械工学分野の3年生対象の「あなたが提案する日本のエネルギービジョン(日本の長期エネルギービジョンを考える)」というモデル案が、医療系科目の例として、大谷氏から薬学部4年生対象の「特定患者向け『くすり説明書』の作成」というモデル案が紹介された(各モデル案には、到達目標と対応付けた3回程度の具体的な授業計画が示されている)。
 セッション後半では、参加者からの質問等に基づき、意見交流が行われた。
 特に、問題解決型の授業実施後、評価をどうすべきかが話題となり、ルーブリックによる評価が好ましいとの方向性が示された。また、実際の運営や仕掛けをどうすべきかが話題となり、別の活動に変更するのではなく、従来型の操作技能中心の授業展開の中に、問題解決的な活動を含めて、徐々に移行することが現実的であることが示唆された。
 その他、他の領域のモデル案も示して欲しいこと、倫理面を含めた具体的な内容や教材を提供して欲しいこと、並びに、現行のスタッフに対する研修や具体的な運用方法などのノウハウを提供して欲しいことなどの要望が寄せられた。
 最後に井端事務局長から、関係者が協力し、数年かけて、情報リテラシー教育の基盤を作り上げていく必要があるなど、私情協としての今後の見通しが示された。また、木村アドバイザー(上智大学)から、授業実施後、どの様なフォローアップが必要かも考える必要があるとの助言を得て、セッションを終了した。

第3日目(9月8日)

大会発表

※以下の発表者は発表代表者のみ掲載。

A-1 キャリア科目課題:社会人訪問による学びへの授業支援システム利用
東海大学   鹿田 光一

 3年次キャリア教育科目では“社会人訪問”を設定し、知識取得、組織学習を課題としている。LMSを利用して、この課題と、生きる力、自己肯定感の獲得は、概ね達成している。今後の課題は、一定の評価精度は保持しているが、到達レベルを数値的に評価できる方法を確立することである。

A-2 就職情報サイトのデータ分析によるキャリア支援
産業能率大学   白土 由佳

 3年次向け科目「進路支援ゼミI」における就職情報サイトのデータ分析に関する取り組みについて報告し、キャリア設計での各自の探索的目標設定と主体的学修への支援について説明している。今後の課題として、キャリア設計での短、中、長期の具体的な目標設定のために、その方法修得を挙げている。

A-3 Web会議システムを用いた遠隔インターンシップの試み
東海大学   白澤 秀剛

 Web会議を活用し、首都圏学生が授業休みや、交通費負担をせず、地方企業のインターンシップに参加できる仕組みを作り、実施している。事前事後の研修や、特別なインターンシッププログラムなどの実現性に当初は懐疑的な企業も実施後は人事担当者、経営者、役職者から継続希望が有ることなどについても報告している。

A-4 アクティブ・ラーニングによる技術力と数理力の向上
金沢工業大学   三嶋 昭臣

 2極化する新入生の数学と物理の学力に対し、課外活動「理工学基礎プロジェクト」による自主的な物創り支援や、数学や物理の正課授業でのICTを活用したグループ学修・発表などで、数理力・技術力・コミュニケーション力などの向上を支援しており、参加者は継続希望であることなども報告している。

A-5 ICTを活用したアクティブラーニング型スポーツ授業の実践報告
日本福祉大学   高村 秀史

 初年次教育として「大学生活への適応」と「大学で必要な学習技術の習得」を目的とし、(ICT機器を利用した学習記録の作成)と(その記録を用いた指導体験と練習計画の立案)の実践内容について報告している。実践内容はまだ改良の余地があるが、スマートフォン等の有効性について確認している。

A-6 アクティブラーニング「異文化コミュニケーション」学習者が主体的に学ぶ教室
東北工業大学   大石 加奈子

 「異文化コミュニケーション」授業でのPBLで、多文化理解を深め、協働で課題解決に取り組み、自己学習力、課題解決能力、協働力、プレゼン能力、等のアクティブラーニングでしか得られない力を如何に修得したかについて説明があり、今後の課題として、継続的な実践場作りを挙げている。

A-7 「博物館情報メディア論」におけるアクティブ・ラーニング利用の学習効果について
広島女学院大学   中田 美喜子

 SNSを活用し、学生間の情報交換を促進することによって、学生の理解度が高まる効果があることを示している。また、グループ学習、アクティブ・ラーニング、反転授業を取り入れることによって、授業が活性化し、学生からは理解度が上がるなどの感想を得ていることも報告している。

A-8 特徴的なICTルームにおける工科系アクティブ・ラーニング型授業の試み
湘南工科大学   佐藤 博之

 戦略的に設計されたICTルームを活用したAL型工科系の授業の展開について、従来は講義中心の知識習得型科目であったとしても、やり方次第でAL型に変容させることが可能であることを示し、「学び合い」によって学修効果が高まる可能性があることを明らかにしている。

A-9 大学講義における情報科目を対象とした部品組み立て型概念マップの実践事例
近畿大学   山元 翔

 本研究では、教師が教える内容を概念マップで表現し、これを分解して部品として学習者に与え、組み立てさせることで授業内容を構造化させる、部品組み立て型概念マップを用いた授業を提案している。また、情報科目での実践利用から、マップに基づく能動的な授業理解等の効果について確認している。

A-10 フリーソフトによる予習教材作成とその効果
松山大学   安田 俊一

 学生に授業の予習をさせるためには予習教材の作成が必須であるが、反転授業でよく使われているビデオ教材は作成の手間が大きい。そこで、パワーポイントの「メモ」に記載した解説をフリーソフトウェアを用いて音声ファイルへ変換してスライドに組み込んで配布する方法および効果について報告している。

A-11 事前事後学修に向けた小テストの試み
甲子園大学   梶木 克則

 事前学習としての本読みを促すためにeラーニングによる穴埋め式の小テストを昨年度から始め、本年度は記述式から多肢選択の解答形式に変更している。これにより、入力トラブルの削減と得点表示時間の短縮を実現して、学修の動機づけに結びついているが、小テスト直前の本読みだけになっている学生が多いなどの課題があることを報告している。

A-12 中堅私立大学の経済学教育における事前事後学習
東北学院大学   篠崎 剛

 ICTを活用することにより、学生の授業外学習時間が大幅に増え、e-ラーニング教材による事前事後学習を促すことによって、学生の習熟度が向上し、また、e-ラーニングによる学習支援により、授業外学習が習慣づけられるなど、学習効果があることも報告している。

A-13 反転授業を取り入れた小児科シミュレーション実習
近畿大学   岡田 満

 小児シミュレーション実習に反転授業を取り入れ、これにより学生は積極的に実習に参加することが出来たと考えている。しかし、通常の授業に導入することに対しては学生に賛否両論があることから、取り入れる授業の選定や準備など十分な検討を必要としている。

A-14 数理科目の反転授業におけるICTの活用
金沢工業大学   西 誠

 反転授業とアクティブ・ラーニングをより効果的に行うために、e-シラバス、ビデオ配信、e-ラーニング教材などのICTを活用し、さらに、クリッカーを利用したピア・インストラクションを行って、学生の理解を深め、学習効果を上げている。

A-15 作業療法士の育成における反転授業の試み
九州栄養福祉大学   宮田 浩紀

 実際の患者とふれあう機会が少ない学生に、実場面の様子を動画で配信し、事前学修させることによって、学生の理解度が高まり、効果的な反転授業を実現している。スマートフォン利用により、動画視聴率も高く、学生のみならず教員にとってもよい効果があることにも言及している。

A-16 反転学習を促進するための授業展開
聖隷クリストファー大学   石津 希代子

 反転授業で、どのような授業内活動をすれば協働学修がより活発になるかを探るため、様々な教材や方法でグループ活動を行っている。単に学生間で事前学習の内容を説明し合うよりも、テーマを議論し、まとめ、発表する活動は、学生にとって満足度が高く、より深い学びに繋がっている。

B-1 リアルとネットを組み合わせた地域・大学連携
西南学院大学   小出 秀雄

 リアルな場であるコミュニティカフェとバーチャルな場であるFaceBookを組み合わせることで実践コミュニティを醸成し活発化させる、学生の社会力向上と地域活性化を目的とした地域・大学連携の取り組みについての報告している。2015年度からの取り組みであり、現在までのFaceBookアクセス状況を分析した結果も示している。

B-2 就業力育成と地域振興を目指した産学連携デジタルサイネージ運用プロジェクト
東北工業大学   亀井 あかね

 震災被災地の地域振興推進、学生の就業力育成、地域産業の抱える問題解決のためのデジタルサイネージによる測定調査を目的としたプロジェクト研究であり、銀座で実施したサイネージによる地域・商品の紹介と意見聴取や宮城県の自治振興発表会での着地型観光ビジネスモデル等について報告している。また、指導教員の負荷・責任増大が課題であることに言及している。

B-3 Web地図を活用した出身地のレポート作成
立命館大学   笹谷 康之

 Web地図・地域統計・写真の適切な利用とそのレポート作成の学修において、客観的・具体的・簡潔な文章作成、クラウドコンピューティングとWebサイトへの投稿、そして各種地図の活用・作成を目的としたWebライティング演習についての報告であり、いずれの目的においても学生の自己評価度も高かったことも紹介している。

B-4 ICTを活用した作業療法技術(動作分析能力)習得の試み
神戸学院大学   大瀧 誠

 作業治療法実施計画立案において不可欠な動作分析能力を養うため、疾患症例のビデオを事前学習させ、その分析を授業に持ち寄ってのグループ学習についての報告であり、ビデオの視聴状況、気分(肯定・抑うつ・不安)、および効力感について学生自己評価のアンケート結果を分析し紹介している。

B-5 教職科目「教育原理」における情報活用能力の育成を視野に入れたICTの利用
浜松学院大学   坂本 雄士

 教職課程科目において、情報検索ツールを利用し、レポート作成や発表、討論などを通じて情報活用能力を育成するとともに、教職に関する知識・理解を深化に加え、教育現場における諸問題の解決能力の醸成を目指した授業についての報告である。

B-6 授業外でLMS(学習管理システム)を有効活用する初年次導入科目のデザイン
文教大学   森本 奈理

 初年次導入科目にグループ学修によるアクティブラーニングを取り入れたが、グループのメンバーに恵まれるか否かで個人評価に影響があることから、毎回の小テストと授業外課題とレポートをして課している。本報告は、LMSを活用して回収のレポートの取り扱いと評価に関するものである。

B-7 「テキストチャットを利用した対面ディスカッション」の試み
広島工業大学   遠藤 直子

 初年次教育において学習者のコミュニケーション能力の育成を目的に、グループチャットを対面ディスカッションに先行する学習過程に導入している。これにより、積極的な発言がみられない学習者の発話を促し、当該学習者のコミュニケーション能力を段階的に育成することを目指した。

B-8 ゲーミフィケーションを活用した簿記教育に関する試案
北海学園大学   庄司 樹古

 e-learningを活用し、学生自身に練習問題を作成させることを事前学習とし、事後には蓄積されたこの問題を解かせることで、簿記・会計に関する本質的理解を助長と正答率の向上を目指している。ゲーミフィケーションの要素を採用することで、学生の能動的な学習環境を提供することを目指した。

B-9 学生による演習問題の解答解説発表を中心に据えたCG基礎教育
産業技術短期大学   小池 稔

 検定合格を目指した技術系短大の2年次科目「CG基礎」において、反転授業の要素を取り込むことで、学習者の理解度の低下と合格者の減少に歯止めをかける試みについて報告している。学習者と教員から一定の評価が与えられ、プレゼンテーション能力の向上などに波及効果があることも明らかにしている。

B-10 学習者のコミュニケーション特性に基づくスペイン語事後学修eラーニング教材使用分析
東海大学   結城 健太郎

 スペイン語の指導法・学習法を探るために、CSIを用いて学習者のコミュニケーション特性を分析した。初級から中級段階に進むにあたりで、アナライザー・タイプの学習者が相対的に多く脱落していることなどが分かり、この結果に基づく学習環境改善に向けた検討も行っている。

B-11 被服教育における「基礎縫い」デジタル教材の開発とその効果
武庫川女子大学   末弘 由佳理

 家庭科教育の時間削減から、技術的な体験が不足したまま大学や短大に進学してくる学生が多い。これらの学生の被服構成学実習に対する苦手意識を解消するために、自由に閲覧可能なデジタル教材の配布を試みている。縫製技術の基礎技術を示す教材では、概ね良好な結果を得ている。

B-12 短大ビジネス系学科における統計学教育のあり方について
新島学園短期大学   大塚 敬義

 四大編入を希望する学生の学力面での質保証を目標とした、統計学入門レベルの講義をExcelを用いて展開している。授業に関わる50の専門用語について、初回授業時と最終授業時における理解度を調査したところ、いくつかの項目を除いては顕著な理解度の深化が見られることを明らかにしている。

B-13 授業評価アンケートをWeb回答にしたことで得られたこと
名古屋学院大学   牧野 雅

 授業評価アンケートをWeb化することで、事務負担の軽減、教員へのフィードバックの迅速化などの利点がある。授業内回収をWeb化することによる回収率の低下はなく、情報の電子化によって、学生や授業ごとの属性情報と結合した高度な分析が行える可能性があることを明らかにしている。

B-14 教学IRによる授業評価アンケートのデータ活用への取り組み
清泉女子大学   有田 亜希子

 授業評価アンケートをWeb化し、設問の自由度の向上と省力化を図っている。回答を成績や履修者数、教室の定員と言った他のデータと合わせて分析し、授業に活かしやすい形で教員にフィードバックすることで、学生の授業満足度や学習意欲を向上させる授業改善に役立てている。また、教員の顕彰制度に役立てると共に、学生の学修支援に活用することにも言及している。

B-15 教養課程におけるマネジメント技術教育プログラムの開発
金沢工業大学   石井 和克

 技術マネジメントを「技術を駆使して社会に役立つ製品やサービスおよびシステムを開発、維持、改善、廃棄する体系」と定義し、工科系教養課程における同教育プログラム開発のためのモデルと方法を構築し、実証講義を通じてその有効性と課題を明らかにしている。

B-16 情報教育ガイドラインの実施にかかわる諸課題についての一考察
江戸川大学   波多野 和彦

 私情協による「情報教育ガイドライン」には、展開指針の不足がアンケートにより指摘されている。実際には、経費負担や教育人材確保の困難、高等学校段階までの関連学修不足など、数多くの課題が存在している。これらの諸課題を整理するとともに、その解決に向けた方策を提案している。

C-1 演習におけるVR(バーチャルリアリティ)教材の活用とその可能性
旭川大学   宮崎 剛司

 看護に関するVR教材を作成して、視聴後に活用と学習効果について調査し、分析した結果について詳細に報告している。なお、今回の調査が学習者の主観的な回答であることから、より客観的な学習効果の測定と教材改良に取り組むことを今後の課題としている。今後は、VRへの利点を応用し、更なる教材の開発と評価の方法を探求することにしている。

C-2 仮想病棟の動画を活用した教育効果
産業医科大学   児玉 裕美

 臨床環境の想定が困難な実習前の看護学生に対し、ICTを活用し仮想病棟を移動する疑似体験をすることでの効果を検証し、疑似体験により、臨床経験のない学生でも、臨床の環境について、看護師の視点や患者の安全の視点で考えることができていることを患者、看護師、学生の回答から見出している。

C-3 動画学習教材導入の効果に関する研究−文系学部の情報実習科目を素材として
大阪商業大学   小林 俊和

 動画を活用した効果的な教育法開発の基礎研究として、解説動画を授業に導入することの有用性を調査するため、あらかじめ作成しておいた解説動画を視聴するクラスと視聴しないクラスに分けて確認試験を行い、その成績の差異を分析して成績への貢献度を明らかにしている。

C-4 DVDを活用した教育実践〜学生-社会人ギャップを乗り越える育成モデルの構築
追手門学院大学   田上 正範

 社会人と学生とのコミュニケーション・ギャップが慢性化する中、学生に社会の現実的側面を理解させる、短時間かつ効率的な方法として、テレビドラマや映画等のDVD動画に着目し、その教材化プロセスのポイントをまとめた、平成26年度からの成果報告である。

C-5 講義収録システムの運用とその評価
京都産業大学   大本 英徹

 「講義収録システムLecRec」にて収録された講義科目Aにおける予備的調査の結果、収録ビデオ全体の50%以上を視聴している者は全受講生の10%程度であるなどシステムが十分に活用されていない事が明白となり、単純にビデオ収録を提供しても教育効果の向上が望めないことから、今後は、反転学習への活用など、さらにシステムの有用性を向上させる施策を検討している。

C-6 LMSを利用した動画教材提供方式の検討と動画教材を利用した反転授業の試み
広島国際大学   出木原 裕順

 広島国際大学総合教育センターの活動として、動画教材を作成できる環境を整備し、反転授業促進に関する研修動画資料などを教員向けに配信している。そのアクセス状況を調査するとともに、LMSを使った動画教材の提供方式を活用して、反転授業教材を用いた試験的な授業を行い、学生の満足度などについてアンケート調査し、それらの結果を報告している。また、反転授業を目的として、LMSを使った動画教材の提供方法を試験的に展開した結果も報告している。

C-7 いまどきの大学生のネット依存に関する調査研究
九州栄養福祉大学   岩田 一男

 入試偏差値レベルのやや上位校、中位校、やや下位校の3大学を対象に、Young20判定法を用いたネット依存度の調査では、入試難易度とネット依存度との関係は認められなかったが、入試偏差値レベルの高い学生の方が、ネットを幅広く頻繁に活用していると考えられ、この調査結果は、授業のみならず学生生活の指導に役立つ可能性があることに言及している。

C-8 問題解決のための処理手順の組み立てとプログラミングへの段階的展開
兵庫大学   森下 博

 アルゴリズムを正確にプログラムの記述につなげるかという過程で、プログラミング初学者はフローチャートからプログラムを作成する時点で躊躇することが多いが、ビジュアルプログラミング環境でScratchを活用することで、文法エラーを回避できるなど、ビジュアルプログラミング環境を取り入れることが効果的であることを報告している。

C-9 私的デバイスを活用する多様な端末に対応した情報リテラシー教育
北海道科学大学短期大学部   亘理 修

 情報リテラシー教育の授業における文書作成、データ処理、プレゼンテーションなどで、PCのみならずタブレット、スマートフォンなど学生の私的デバイス(BYOD)を使用することの効果を検証し、教室外での事前事後学修と教室内での演習がスムーズに連携が取れるようになり、教室外での学修時間が増加することを明らかにしている。

C-10 小型無線多機能センサによるIoT型モバイル実験装置
北海道科学大学短期大学部   高 香滋

 小型無線多機能センサとPCを利用したIoT(Internet of Things)型のモバイル実験環境を構築して、数理リテラシー特別講座(基礎編:力学と電磁気)で実験を行い、今回の小型で移動性に優れた装置で、観測・計測が可能でああることを実証している。

C-11 情報教育へのアイデアソン・ハッカソンの導入効果
立正大学   後藤 真太郎

 環境情報分野で情報教育に対する取り組み意欲を向上させるため方法を検討している。従来のように課題を与えてプログラミングするのではなく、アイデアソン、ハッカソンの手法を用いたグループワークを通してシステム設計、構築を行って、アクティブ・ラーニングの効果について検証している。

C-12 全学的な情報教育科目の検証:情報リテラシー教育の基盤科目として
広島修道大学   記谷 康之

 2011年度から全学共通情報リテラシー基盤科目として開講している2科目について、アンケート調査により検証を行い、基本的なスキルの習得に一定の学修効果があり、実践力の向上を示す自己評価も得られており、情報処理に関する基本的な操作は履修後も、情報科目の授業以外の科目や大学生活にも活用されている様子が見られることも報告している。

C-13 デュアルブート環境を導入した情報教育システムの構築
札幌学院大学   渡邊 愼哉

 UIの考え方の違いや、社会で多種OSを使う事を考えると、学生が複数OSを学ぶ利点が大きいため、情報教育システムをBootCampによるOSXとWindowsのデュアルブート環境で構築した。環境へ変更している。デュアルブート環境導入の経緯や利点、また運用管理についても特有の問題点があることからその対応に関しても報告している。

C-14 多目的多用途情報基盤構築について
日本大学   谷口 郁生

 2学部が同一キャンパスに新設され、学系の全く異なる学部の教職員と学生が共有する形で利用可能な各種情報環境を構築することに至った経緯やその後の運用状況などについて報告している。なお、今後年次進行に従い、4年後の完成年度に充分なパフォーマンスを発揮するかが最大の懸案事項であり、改めて報告する予定としている。

C-15 ICT学習支援システムを使用した全学部必修科目(演習)のSA募集
帝京平成大学   照屋 健作

 コンピュータ演習Iが演習形式であり、スチューデンスアシスタント(SA)の協力が必要である。各教員がSAを募集することは困難であり、FD委員会のワーキンググループが募集など行っているが、この募集においては、SAに応募する学生と教員とのマッチングを短期間で処理するなどの課題がある。この課題の対応にLMSを活用しており、その状況について報告している。

C-16 クラウドサービスとBYOD機器の活用によるICT専門基礎教育の実践
横浜商科大学   遠山 緑生

 ICT専門基礎教育の教育目標達成には、BYODでクラウドサービスを利用する環境が必要であると考え、これを実践している。その結果、保守コストの低減し、教室外での継続的な学修が可能になり、スマホとの容易な連携による演習の幅が広がる、という得られた効果とともに、いくつかの問題点や課題についても紹介している。

D-1 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用(1)〜人材育成〜
広島工業大学   大谷 幸三

 教育の質を保証するためポートフォリオシステムを独自に開発して、学生に学修や活動に対して自ら目標たて、このシステムを活用して、実施、記録、振り返りといったPDCAを実践している。また、教職員はシステムに蓄積されたエビデンスをもとに、学力の定着度と人間力を育む活動実績の定量測定などに活用しており、これらの活用事例とシステムの機能について紹介している。

D-2 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用(2)〜人間力育成プログラム〜
広島工業大学   久保川 淳司

 人間力を向上させる取り組みにHITポイントと呼ばれるポイントを付与し、評価する仕組みを構築し運用している。この制度では、人間力に関する能力に基づいて、課外活動を課外教育活動、社会教育活動、自己啓発活動、大学協力活動の4つに大分類して、その取り組みの活動期間、取り組み状況、役割など観点からポイント数を決めて付与している。本報告では、このHITポイント制度と管理運営システムHITPOの機能について説明している。

D-3 技術系大学におけるポートフォリオシステムの活用(3)〜事前事後学修〜
広島工業大学   濱崎 利彦

 事前事後学修として筆記式課題を課すことが、能動的な学修習慣を身につけるために重要である。これを電子化システムに取り込むため、学生番号を記載した入力シートと共にスキャンすると自動的にコース管理システムに登録されるようにして、迅速な理解状況の把握を可能にしている。

D-4 「あるLMSを活用した法学教育の実践の取り組み」
宮崎産業経営大学   村田 治彦

 問題解決力をつけるには、直線上でなくクモの巣状の知識構造が重要である。これをGoogle Appsで実現するには、LMSとしての使い方を工夫する必要がある。各種ドキュメントをハイパーリンクでつなぎ、論理的な順番を付けてナビゲーションする支援方法が有効であることなど、Google Siteを工夫することによるLMSの取り組みについて紹介している。

D-5 Moodleを用いたLMS上の自動採点システムの試作
名古屋外国語大学   山本 恵

 レポートの評価基準のうち、客観的に計測可能なものを自動採点することを目指している。ルーブリックのStyle項目については教員の評価との相関が高く、自動採点が指標となりうることを明らかにしている。しかし、Skill項目については相関が低く、アルゴリズムの再検討など精度を高める必要があることも紹介している。

D-6 moodleによる入学前教育の実施方法およびシステムの改良について
九州産業大学   石田 俊一

 入学時の国語および数学のプレースメントテストでは一般合格者よりAO・推薦合格者の方が点数が低いので、moodleを用いて入学前教育を行っている。以前は業者によるe-learningを行っていたが、それと比較して課題の進捗状況による個別指導がやりやすくなり、学力向上につながり、学力の可視化により、教員の能力把握に関する負担が軽減されたことなどを紹介している。

D-7 LMSを活用した専門ゼミにおける能動的・主体的学修活動推進の試み
創価大学   山中 正樹

 文学部の3年次配当の専門ゼミにおいて、学生一人ひとりの目標設定や進捗状況の把握、それをもとにした指導・アドバイスを行うことなどを目標にLMSを活用している。これにより、提出させている「予習課題」の内容の質的向上、プレゼンテーション内容の充実、討議の活性化およびアンケート結果からLMSの活用によって当初の目標をある程度達成していることなどについて報告している。

D-8 初年次教育のための教材開発と教員コミュニティ形成による教材の共有と改善の試み
長崎大学   北村 史

 初年次セミナー開講期間に合わせて、LMSを活用して教員コミュニティの形成および教材の共有化を実践し、その有効性を検証した報告である。アンケート調査では、LMSに公開された教材の利用は15%にとどまる一方で、教材の提供自体に関しては肯定的な評価もあったが、必ずしも活発に利用されたとは言えず、その要因として、教材の準備だけでなく授業展開例などの情報提供も必要であることなどについて紹介している。

D-9 LMSによるクリッカー相当機能の実現とその評価
清泉女子大学   福田 健

 LMSの機能として実装されているクリッカー機能を受講者数90〜150名の1年次教養科目4授業において試用し、問題点と効果について検証した報告である。利用端末は学生個人が所有するスマートフォンなどであった。「通信料・電池の消費」、「表示の遅さ」、「操作のしにくさ」などの指摘があったが、充分に実用的であり、またより広い目的に活用できる可能性があることを紹介している。

D-10 クリッカーを使った教養教育
豊橋創造大学短期大学部   伊藤 圭一

 2つの講義「社会科学基礎」および「数的処理」にクリッカーを導入している。その結果、双方向の講義の実現や他人の意見への興味喚起などの成果が上がったほか、クリッカーの集計結果を見ることによりリアルタイムに学生の理解度を把握することができ授業を効率的にすすめることができることを報告している。

D-11 スマホ+タブレットをクリッカーとして利用させる授業法の検討
近畿大学   井原 辰彦

 Moodleで管理集計できるスマートフォン・タブレットPC対応のクリッカーシステムを構築し、新入生ガイダンスおよび2年次配当専門科目「無機化学」で試用している。結果として成績上位層の少テストの結果が従来よりも改善されるが、その一方で、操作の慣れが必要であることも明らかにしている。

D-12  学内授業支援システムを利用した講義効率化およびモチベーション向上への取り組み
東海大学   土屋 秀和

 情報処理入門レベルの授業におけるLMSの活用と学生の講義内容に対する興味を引き出す演習を考案して実施するモチベーション向上の取り組みの報告である。アンケートの結果61.2%以上の学生が講義に対して興味を示した一方で実習時間が足りないと感じた学生の割合は6.3%に留まっている。これは演習問題の回収、情報提供などをLMSで完結して授業効率を向上させていることが要因であることなどを紹介している。

D-13  業受講態度評価システムの開発
近畿大学   大木 優

 教室に設置した複数台の監視カメラの画像を用いて、授業中の受講生の態度を自動的に評価するシステムに関する報告である。顔の重なりの検出、机の色と肌の色の分離などの解決すべき課題が明らかになった。今後、個別の画像を処理することにより、まじめ度の分類を行う予定である。しかし、精度を上げることも大事な課題であるが、この評価の活用方法も大きな課題であることについて言及している。

D-14 初年次教育プログラムの支援を狙った共通基盤システムの整備
千歳科学技術大学   山川 広人

 大学関連携共同教育推進事業「学士力養成のための共通基盤システムを活用した主体的学びの促進」のために共通基盤システム上に整備した1到達度テスト2テスト結果を可視化できるシート3教育プログラム用の教材などについての報告であり、教育プログラム用の教材やLMSの一部を本事校以外の教育機関にも提供しおり、多くの大学での利活用に関する知見を基に教材の新規追加・改良を続けていくことにしている。

D-15 ウェアラブル端末を用いた大学生の学習意欲喚起のための研究
大谷大学   上田 敏樹

 Apple WatchやFitbit、JINS MEME等の市販されているウェアブル端末情報からの情報と、Moodleから得られる学習情報との相関を求めるべくシステムの検討を行っている。また、個人情報保護に配慮しながらウェアブル端末を利用した学習方法のモデル化と実用化を進めることとしている。

E-1 TBLで著作権および自動公衆送信を学ぶ
日本大学   小林 宏司

 反転学習並びにTBL(Team-based Learning)による著作権や自動公衆送可能化権等の侵害について学ばせる試みである。受講した初年次学生は、写真撮影や送信については細心の注意を払うようになったと回答しており、意識改革に一定の効果があることを確認している。

E-2 ICTロボット活用PBL授業における学習効果の向上に向けて
芝浦工業大学   菅谷 みどり

 情報系の初学プログラミングの授業において、ロボットを用いたPBLを設計し、実施した。ロボットは、PCのみならず様々な応用方法の理解やICT の活用力の向上、競技による協調学習の機会の創出に適した教材であり、学生同士の協調学習経験や学習意欲の向上に有効である。

E-3 線形代数学入門におけるクリッカーを活用したピア・インストラクション型講義の実践
金沢工業大学   工藤 知草

 数学の本質的な理解を得るためには、学生同士のディスカッションや教え合いを講義に取り入れ、数学の概念を形成する必要がある。線形代数学入門でクリッカーを活用し、能動的に講義に参加するピア・インストラクション型講義の実践は一定の効果があることを確認している。

E-4 手書きノートの電子ポートフォリオ化を通じた協調学習支援システムの運用
大阪大谷大学   開沼 太郎

 調べ学習・論述学習課題として提出される手書きノートを電子ポートフォリオ化し、学習成果として作成した「あわせるノート」を活用した協調学習についての報告であり、当事者意識の喚起を通じた学習習慣の確立並びに、協調学習の意義を認識させる効果が期待できることなどを紹介している。

E-5 学生相互の短時間講義によるアクティブ・ラーニング−ICTの有効性に関する検討−
愛知学院大学   泉 雅浩

 歯学教育において、学生が専門分野のごく限られた領域をそれぞれ学修し、お互いに短時間講義を行うことにより、必要とされる知識を修得するというアクティブ・ラーニングを試み、その有用性について報告している。今回は、ICTが充分活用できる状態とICTを利用しない状態での学修効果の違いについて検討し、殆ど学修成果に差異が認められないことを紹介している。

E-6 ワークショップの手法と事前学習を組み合わせたグループワーク活性化の取り組み
東京医療保健大学   駒崎 俊剛

 医療情報学科の二年生のキャリア教育において事前学習を課すことによって、グループワークの活性化を図り、導入前の前年に較べ再履修者数は0という成果を得ている。今後は事前学習に取り組んでいない学生への対応、創発的な議論においても活発な意見交換が行われるよう工夫の必要性などにも言及している。

E-7 理系学科における英語教育モデルの再構築:2年目までの成果とこれからの課題
中部大学   小栗 成子

 ロボット理工学科(ER)の学生の英語力は、入学時点では英検準2級から5級という格差があるが、学士力の到達目標として工学者としての英語コミュニケーション能力の習得と新たな英語教育の取り組みを実践しER学科における人材育成描像との差を打破するための、英語教育方法について報告している。

E-8 生命科学の学びを豊かにするための英語のよい教育を模索する
京都産業大学   佐藤 賢一

 生命システム英語講読I、同II、同IIIを共通教育の必修英語科目に加えて開講し「生命科学の学びにおいて、汎用的英語運用能力と生命科学の学びと連動させた英語運用能力を涵養する不断の修錬・努力が必要である」というコンセンサスのもと、授業手法に創意工夫を重ねてきた実践内容とその成果・課題についての報告である。

E-9 スマホを利用した緩やかな英語学習コミュニティの形成
清和大学   加藤 貴之

 授業時間内外の学修の連動を図るためのスマートフォンアプリ「みなチャレ」を利用した英語学習コミュニティの活用に関する報告である。アプリの活用により、小数ではあるが、共通の宿題の他に課外学修の自主的な取り組みなどが見られたことなどが紹介されている。

E-10 P-CHECK:ペアフィードバックを利用した発音協働練習
北海学園大学   上野 之江

 コンピュータを利用した発音訓練法として、学習者が練習した発音をGlexaというLMS上で録音し、Glexaはその録音ファイルを他の学習者に自動的に配信し、学習者がお互いの発音を評価しあうという協働作業を通じて、自らの発音を修正し向上させるプラグインPCHECKを開発しており、その機能・活用について報告している。

E-11 実践的英語力強化のための課外活動評価システムの活用
崇城大学   ロブ ハーシェル

 全学の英語教育を統一して実施する教育センター「SILC(Sojo International Learning Center)」では、通常の講義だけでなく英語を使った課外活動を実施することで、学生の能動的な学習活動を支援するための仕組みとして「SALC(Self Access Learning Center)」を設置し、サポートする教職員の負担を減らし、より効果の高い教育へつなげるコンピュータシステムを新たに導入しており、このシステムを利用した英語教育について報告している。

E-12 教室外の課題と授業を結びつける英語講読の授業
同志社女子大学   飯田 毅

 英語教育の改革を目指した「Super英語Academic Express 2」というオンラインの教材を使った「英語講読」の授業で学生は「Super英語」の中から、1週間に2回の課題が与えられ、決められた曜日までに終了させている。授業中、学生は課題で学んだことを復習、内容を深め、日本語及び英語で話したり書いたりして英語の基礎力を身につけさせており、他のクラスの学生による授業評価より高いことなどを報告している。

E-13 思考プロセスの強化を目指す自己学習用e-learning教材の開発
東京医療保健大学   島田 多佳子

 既習のフィジカルアセスメントと関連づけながら取り組めるような仕みの導入、及びイメージ化につながるような画像の多用や臨地おいて用いられている診療記録の形式などを一部導入し、授業外の空き時間や自宅においても勉強できる自己学習用e-learning教材を開発しており、その内容と活用状況について報告している。

E-14 看護OSCE(客観的能力試験)に活用したeラーニングの学習効果
産業医科大学   佐藤 亜紀

 初めて看護OSCEOSCEOSCEを受験する看護学生に1.試験のイメージ化・主体的な学習に向けた学習ポイントの提示、2.実施後のフィードバックを通した自己課題の明確化を目的に「呼吸困難を訴える患者の状態観察」をテーマとしたeラーニングコンテンツを作成しており、その内容と学習効果について報告している。

 

文責:教育改革ICT戦略大会運営委員会


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