巻頭言

教育改革とeポートフォリオ

藤本 元啓(崇城大学 教育改革本部長)

 崇城大学では教育改革のスタートとして、2011年度に「崇城大学教育刷新プロジェクト」SEIP(Sojo Educational Innovation Project)を設置した。2013年度には教職協働体制で取り組むために、「教育力」「研究力」「社会連携」「大学環境」をキーワードに中長期計画(2014年度開始、5年×Ⅱ期)を策定し、その推進に努めてきた。熊本地震の影響でおくれたものの、2018年度開始のⅡ期目を目指して、昨年9月に教育改革WGが編成された。その答申のもと、2017年度から具体的な施策検討を行うSEIPⅡが始動し、先の中長期計画をもとにⅠ期を4年間とするⅡ期8年間にわたる新たな教育改革を行うことになった。
 第Ⅰ期(2018〜2021年度)では「学修させる大学づくり」、つまり学修させるための教育方略や仕掛けの開発と試行とによって学修する習慣を身につけさせ、日常的に学修する学生を育成し、この修学姿勢を大学の文化とする。第Ⅱ期(2022〜2025年度)では「主体的に学修する大学づくり」、つまり教育カリキュラムによって修得した知識・技能を道具として活用し、内外に発信できる学生の育成とそれを支援できる大学構築を目指すこととした。
 その眼目は、学生に自身の強みと弱みとを気づかせ、強みの向上と弱みの克服とを実行できるための仕掛けづくり、そしてその結果として自己改革を継続できる学生を育て輩出することにある。
 そのツールのひとつとして、現在、紙媒体で試行中のポートフォリオの電子版「SOJOポートフォリオシステム(仮称)」を開発中である。その実施目的は学生が自然にPDCAサイクルを回す習慣を身につけ、学修エビデンスにもとづく自己評価と相互評価とによる振り返りの誘発、その結果としての学修意欲の促進を図ることにある。これは、「教えられる」「与えられる」という受動的な学びの姿勢から、「自ら学び、発見し、解決する」学修スタイルへの転換のための自己データベース作成と、振り返りによる自己管理・将来設計を目指すツールでもある。
 学生からみたポートフォリオは、学びのプロセスや成果のエビデンスを継続的に蓄積し、学修の達成度を確認して、新たに取り組むべき課題を発見する。さらに教職員からの指導により学びを深化させ、知識と技能とを修得することができる。この繰り返しによって、生涯にわたるキャリアデザイン能力の基盤を身につけることになる。
 教職員からみたポートフォリオは、学びと教育プロセスを可視化し学生と共有することで、学生の学修行動を把握し授業の評価・改善を行い、教育プログラムの効果を確認できる。また個人面談、学生相談、就職活動面談、保護者面談などの面談カルテ(eポートフォリオ)とともに活用すれば、学生個々に対する大学側の指導エビデンスになり、教学マネジメントや教育の質保証を点検する教学IR(Institutional Research)としても活用できる。
 本学が目指す大学像は、「学生の個性を生かし、夢を育てる大学」であり、「徹底した人材教育」、「学生の人的成長を促す教育を実践する大学」である。そのための様々な教育・研究施策を具現化するためには、教職員はもとより、学生自身の意識改革をもともなわなければならない。そのツールとしてeポートフォリオの活用成果に期待している。
 最後に申し添えたい。今次改革の主要項目は、①科目の精選と必修化、授業内容と方略、科目間連携、配当年次、学修の集中と効率化、②教学情報の収集・分析・発信の一元化、③学修環境の整備などであり、実は当たり前のことばかりである。奇をてらった改革を標榜するのではなく、また改革のための、ましてや補助金獲得のための改革でもない。そしてその成否は、本学の構成員全体がすべては学生のため、学生本位のものであることをどれだけ認識し、着実で確実にスピード感を持って実践できるかに尽きる。この成功なくして次のステージである「大学変革」への道は開けない。


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