巻頭言

「グローバル社会で輝く女性リーダー」を目指して

金子 朝子(昭和女子大学 学長)

 昭和女子大学は2020年に創立100周年を迎えます。様々な変化や情報に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決し、新たな価値の創造を生み出すことのできる「グローバル社会で輝く女性リーダー」となる力を学生達に身に付けてもらうことを目指し、「世界につながる」グローバル人材の育成と、「社会とつながる」キャリア力の育成に力を入れています。
 1988年にアメリカのマサチューセッツ州、ボストンに設立したボストン校を基盤に、アジア・ヨーロッパを含めた数多くの海外大学との交換留学や研修プログラムを準備し、国際学部では、ボストン留学後に海外の大学や大学院に進学する者や、海外大学と本学とのダブルディグリー取得者も輩出しています。また、非英語系の学生にもグローバル化の波は拡がり、官民協働プログラム「トビタテ留学JAPAN!」に継続して採択され、全学部・学科のカリキュラムに1学期間あるいは1か月程度のボストン校プログラムも組込まれています。
 毎年の卒業生1,000名以上の女子大学の中で、7年間連続して就職率トップを維持しているキャリア力育成の成果は、学生達が先輩をロールモデルとして将来の夢の実現のために日々研鑚を重ね、また、教職員のサポート体制も整っているからこそであると思います。学生達が携帯するポートフォリオ形式の「ドリーム手帳」には、「夢を実現する7つの力」として、身につけるべき7つの力(グローバルに生きる、外国語を使う、ITを使いこなす、 コミュニケーションをとる、問題を発見し目標を設定する、 一歩踏み出して行動する、自分を大切にする)を示しています。
 本学の学生が、グローバル力とキャリア力を次第に身に付けていくための重要な機会を提供しているのが、プロジェクト学習(PBL)です。入学した時から、卒業までにどれだけ成長するのか、そして、いかにその成長を教職員がサポートするのか。そこが「グローバル社会で輝く女性リーダー」育成のための鍵となるポイントだと考えています。クラスアドバイザーやゼミ指導教員の丁寧な指導や、座学で学ぶ専門知識も、もちろん重要です。しかし、これからの新しい世界を創り上げていく若者には、そうした知識を基に思考力や創造性を活かし、何をどう生み出していくのかを学ぶ機会と環境が必要です。その学びの場を創り出してくれるのがPBLです。本学では現在、理事長・総長が主催するリーターズ・アカデミーでのリーダー養成プロジェクト、現役の企業人等で構成されるビジネス研究所の研究員と共に行うプロジェクト、サービス・ラーニングセンターが扱うボランティア・プロジェクト、地域連携センターが担当する地域の企業や住民の皆様とのプロジェクト、各学科のゼミ等が主体となるプロジェクト等々、110件を超えるPBLが進行中です。成功するまでの道のりは容易いものではありませんが、その中で、課題を発見し、協働して最善の解決策を見つけ出すことを学びます。そして、その貴重な体験が主体的で深い学びをもたらしてくれます。
 こうした様々な学びを更に深めるための授業改善の手段として、ICTの活用は欠かせないものです。全教職員、学生が利用できる授業支援システムを用意するとともに、学生との情報共有や学習管理などに、クラウドアプリケーションも取り入れています。学生達がICカード学生証で、キャンパス内の様々な場所でのコンピューターへのログインや授業出欠確認時などに本人認証を行ったり、ボストン校やアジア各地の大学との共同開催の講義やシンポジウム等でテレビ会議システムを利用したりするなど、ICTの活用も活発になりつつあります。しかし、教員の中には、PBLやアクティブ・ラーニングの授業設計がよくわからない、準備時間が足りない、詳細についての相談・助言をしてもらいたい、等の不安や要望があります。このため、個々人がICTを活用した授業改善に向き合うのに任せるのではなく、FD活動の一環として、学科や教科ごとにチームを作ってWEB上に成功事例を蓄積するなどの取り組みを始める予定です。
 変化の激しい世の中にあって、社会の様々な動きを先取りし、学生の成長のために多種多様な情報を活用するには、教職員の構想力や学外との協力の構築力を高めなければなりません。今後も世界中から多彩な教育資源を手に入れることを可能にするめざましいICTの進展に注目し、その大学教育への活用について、更に研究を深めていきたいと考えています。


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