特集 問題発見・解決思考の情報リテラシー教育の研究

文系(経済学)教育における
情報リテラシー教育授業モデル案の例

本協会情報教育研究委員会分野別情報教育分科会委員

児島 完二(名古屋学院大学経済学部教授教務部長)

1.はじめに

 文系での授業モデル案は、経済学としていますが社会科学分野で応用可能なテーマです。大学周辺の課題発見と解決策の提案として、地域の課題を扱います。COC参加校は実施しやすいと思います。

2.授業概要

 実際のまち歩きから生活者(学生)目線で地域の課題を発見します。また、情報通信技術を活用して自治体などに関する知識やデータを収集し、それらについての理解を深めます。学修は数名でチームを構成して実施します。なお、対象学年は1年生、授業回数は90分授業3回を想定しています。

3.授業の到達目標

 以下のような3つの到達目標を設定します。

4.学修活動の詳細と対応する到達目標

  授業内容・学修活動 到達
目標
大学周辺の地域課題を「まち歩き」で探します。  
目標:これからの学修内容(問題発見・解決)が理解できます。
画像データの基本が理解できます。
 
大学周辺の問題発見・解決の枠組みに基づいて、具体的な調査内容・調査方法を決定します。 B2
スマートフォンでマップやカメラ・グループウェアなどの情報通信手段を適宜活用します。  
教室でコース確認などまち歩きでの留意事項を事前説明します。  
個人情報に配慮し撮影します。(情報倫理の説明) A1
  【授業の流れ】  
4名一組のチームを決定:アイスブレイク後、チーム名と注目すべき点を決定
周辺マップでまち歩きコースを事前にGoogle mapsなどで確認
実際にコースを歩きながら(50分)、スマートフォンで現場の写真撮影
教室に戻り、写真の確認とチーム内で共有:LMS活用、画像データの処理チームごとに調査内容、調査方法、調査対象などを議論して作業
【事後学修】
チームで決定した課題について調査
チームで発見した課題をまとめ、データを活用しながらスライドを作成します。  
目標:チーム内で発見した課題に関する知識を深め、関連データを収集し、解決策に近づくことができます。  
チームとして扱う課題をまとめ、調査からプレゼン準備までの計画を立案します。 A2
信頼性、正確性、専門性に優れたデータベースの存在を認識し、それらの基本的な使用方法を理解します。
B1
ネットからデータを収集し、加工・グラフ作成・スライド作成ができ、チーム内でファイルを共有します。  
  【事前学修】  
撮影画像ファイルを確認し、課題に関する周辺知識およびデータを収集
【授業の流れ】
チーム毎にホワイトボードや付箋などを利用し意見を集約
関連ホームページとデータベースで現状および課題を詳細に調査
関連データを収集(官公庁ホームページ)し、表計算ソフトで適切なグラフを描画
【事後学修】
プレゼンソフトでスライドを作成
クラウドにあるファイルを更新
課題の発表と内容を相互にチェックします。
 
目標:効果的な発表に向けてチームで十分な準備ができます。
改善へ向けた内容の指摘や建設的な提案ができます。
 
リハーサルやスライドショーに関わる詳細な機能をチームで確認します。  
プレゼンソフトによる発表で周辺機器の基本的操作を理解します。  
グラフの元データおよび出所などの引用元を明示します。 B2
他チームの内容や些末なミスを含めて相互に指摘します。 A3
  【事前学修】  
発表ファイルをLMSにアップし、チーム内で事前にチェックし完成
【授業の流れ】
チームごとにプレゼンソフトで発表・スマートフォンで発表を収録(発表15分)
発表内容に関して全員で指摘(5分)
意見を検討し、チームで修正編集
【事後学修】
授業で指摘された内容を加筆・修正

5.評価

 授業の評価は、①課題調査40点、②その他の課題60点、の内訳で採点し、合計点60点以上を合格とします。上記3週分の課題実習に関する成果は①で扱い、①の採点はルーブリックに基づきます。問題発見力・課題解決力・情報活用力・チームワーク力を中心に評価します。

6.おわりに

 本授業モデルは本学のCOC事業で実践している「まちづくり提言コンペ」を題材にして作成しました。大学周辺という身近な課題なので、多くの学問分野で活用できると思います。また、対象学年を上級生にすれば、経済学で扱う分析ツールが解決策に応用できます。


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