特集 問題発見・解決思考の情報リテラシー教育の研究

理系(機械工学)教育における
情報リテラシー教育授業モデル案の例

本協会情報教育研究委員会分野別情報教育分科会委員

角田 和巳(芝浦工業大学工学部教授学術情報センター長)

1.はじめに

 理系分野で共通に求められる情報リテラシーとして、「正確な情報を収集し活用する能力」「技術計算に代表されるシミュレーションスキルと結果に対する仮説検証能力」などがあげられます。これらの能力を専門科目の中で向上させるためには、初年次における情報教育の成果を基盤にし、分野固有のテーマに沿って情報教育を行う必要があります。その際、取り上げるテーマが専門性に特化し過ぎることなく、取り組みの深浅に応じて能力が評価できるような課題であれば、様々な授業へ展開することが期待できます。そのような授業モデルの一例として、「あなたの提案する日本の長期的なエネルギービジョン」を紹介します。

2.授業概要

 この授業は、3年生を対象とした半期開講の専門科目内で11〜13週目の3コマを利用して実施します。課題には数名から成るチームで取り組み、ICTを活用して現在のエネルギー情勢に関する知識やデータを収集し、それらについての理解を深め、調査結果に基づくシミュレーションを行います。また、この経験を通じて、シミュレーションを仮説検証の手段として効果的に活用することも学びます。最後に、各チームから長期ビジョンを提案してもらい、ディスカッションを行います。

3.授業の到達目標

 授業の到達目標は、大学における情報リテラシー教育のガイドラインに基づき、以下のように設定しています。

4.授業内容・学修活動と対応する到達目標

  授業内容・学修活動 到達
目標
エネルギー利用に関するトレンドを調査します。 A2
問題発見・解決の枠組みに基づいて、具体的な調査内容・調査方法を決定します。調査結果の整理・体系化、行動計画の策定・調整などの協働作業を効率的に行うため、グループウェアなどのICTを活用します。また、信頼性や専門性に優れたデータベースを利用し、異なる情報源から得られたデータを照合することによって調査結果の妥当性を保証します。 B1
エネルギーシステムの将来像をシミュレーションします。 C2
調査データに基づき、表計算ソフトなどを活用してエネルギービジョンのシミュレーションを行います。仮説検証手段としてのシミュレーション技術を身につけるとともに、統計的な推量方法や専門知識を活用した考察などにも挑戦します。
長期エネルギービジョンについて理由を付して提案します。 A3
プレゼンテーションソフトを用いて、チームごとに将来予測の結果を発表します。発表内容に関する議論を通じて検討結果を整理し、どのようなエネルギーバランスが望ましいか理由を付して提案します。

5.評価

 上記の活動による学修成果はルーブリックに基づいて採点し、問題発見力・構想力、問題解決力、情報活用基礎力、情報技術応用力、チームワーク力について評価を行います。


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