特集 データサイエンス教育を知る

 あらゆるモノがネットにつながるIoTの普及に伴い、膨大なデータが世界各地で毎日生み出されている。企業や組織の活動はもとより、一人ひとりの生活や行動に至るまでビッグデータとして記録・分析され、使い方次第では生きとし生けるものの幸せに大きく貢献する。有限な資源の「石油」に対して、無限に近い資源の「データ」は正にデジタル世紀が創り出す「新たな資源」である。そのような背景から、データから社会やビジネスのニーズに対応した課題を発見し、問題解決や価値創造に関与できる人材の育成が喫緊の課題となっている。世界からは遅れているが、日本の大学でもデータサイエンス教育への取り組みが始まった。産学連携による教育イノベーションが課題と言われているが、どのような教育プログラムでチャレンジしていくのか、たずねてみた。

大学の数理・データサイエンス
教育強化に向けた取り組み

文部科学省
高等教育局専門教育課

 Society5.0の実現に向け、あらゆる産業で情報技術との組み合わせが進行する中で、より多くの人材がAI、IoT、ビッグデータ、セキュリティといった情報技術を使いこなす能力を身に付けることが必要とされており、その能力のベースとなる、データをとらえ、その本質を見極め、問題を発見・整理分析・解決する力、数学を活用した論理的思考力などを持つ人材の育成が文系理系を問わず喫緊の課題となっています。
 このため、文部科学省では、大学における数理及びデータサイエンス教育の強化の方策を検討するため、学識経験者等の有識者で構成する「数理及びデータサイエンス教育の強化に関する懇談会」を設置し、平成28年12月に議論の取りまとめを公表しました。

図1 大学の数理及びデータサイエンスに係る教育強化

 本とりまとめにおいて、大学における数理・データサイエンス教育の現状は、

@ 数学や統計を一般教育・専門基礎教育科目として設けている大学もあるが、その多くは自由選択や理系のみ必修・選択必修となっている

A 数理・データサイエンスが社会においてどのように活用しうるかを教えられる教員は少ない

 といった指摘がなされ、今後は、専門分野を超えて、数理・データサイエンスを中心とした全学的・組織的な教育を行う組織を整備し、人材育成の取り組み等を支援することが必要であるとしています。
 これを受け、複数の大学からの提案に対する本懇談会の評価結果を踏まえ、平成28年12月に文部科学省において拠点校(6大学(北海道大学、東京大学、滋賀大学、京都大学、大阪大学、九州大学))を選定し、平成29年度より、従来の文系理系の枠を超えた全学的な数理及びデータサイエンス教育を実施するとともに、拠点間においてコンソーシアムを形成し、標準カリキュラムの作成や教材の開発等による全国の大学への数理・データサイエンス教育の普及・展開に向けた取り組みを実施しているところです。
 加えて、平成30年度からは、新たに、産官学による実践的な教育ネットワークを構築し、文系理系を問わず様々な分野へデータサイエンスの応用展開を図り、それぞれの分野でデータから価値を創出し、ビジネス課題時に応えを出す人材、いわゆる独り立ちレベルのデータサイエンティストを育成する「超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業」を実施します。具体的には、大学が産業界や地方公共団体等と強力な連携体制を構築し、ビッグデータの提供を受け、社会の実課題によるPBL(共同研究)やインターンシップ等からなる実践的な教育プログラムの開発・実施するものです。

図2 超スマート社会の実現に向けたデータサイエンティスト育成事業

 文部科学省では、全ての大学学部生を対象とした数理・データサイエンス教育の計画的かつ着実な全国的展開・普及に加え、データサイエンティストといった専門人材の育成通じ、ビッグデータの時代において、社会から求められる人材の育成を推進していきます。


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