農学の情報教育

近畿大学農学部における情報教育


山根 猛(近畿大学農学部助教授)



1.はじめに

 21世紀は『情報』の時代といわれて久しい。農学部に在籍する学生にとっても彼等を取り巻く社会状況(環境)は大きく変化してきている。周辺で起こっている様々な出来事から必要な情報を早く獲得し、そして的確に解析評価することが要求される状況下で、学生に情報教育をどのように実施するかは重要な問題である。近畿大学農学部で実施されている情報教育について簡単に述べる。


2.情報教育の現状

 本学部は農学科、水産学科、農芸化学科、食品栄養学科、国際資源管理学科から構成されている。したがって専門分野は多岐にわたっている。学部としてすべての学生を対象に情報専門教育を実施することはせず、情報教育共通基礎科目に相当する講義と演習を4学科の選択科目として3年次に電子計算機計算法、国際資源管理学科2年次に電算情報処理演習I-A,B(必修)を開講している。講義・実習を交え簡単な数値計算とデータ処理に必要なプログラミング技術の修得を目的に前・後期に本学理工学部教員が講義を担当している。国際資源管理学科では3年次に電算情報処理専門演習(必修)を開講している。学部教員が担当する情報教育内容は各学科の特徴を反映して、演習、実験、講義といった異なる形式で学科独自に実施している。


3.情報処理実習室利用状況

 情報教育と本学教員との係わりについては、学科間で相違はあるものの、各学科内で様々な取り組みが行われている。本学部には、情報処理実習室1(定員42)、2(定員48)がありこれらの実習室を利用して前述の講義、演習が実施される。実習室の利用は前・後期とも盛況で、利用者は年々増加していることから、現有の設備での対応はできなくなりつつある。
 1996年度の情報処理実習室Iを例に講義・実験・実習での利用状況について表1に示す。情報処理実習室IIの利用状況は表1とほぼ同じ状況である。講義科目は2単位になっている関係から、利用人数のピークは、講義時間、そしてオープン時間とも5月と11月に現われる。その他講義、実験において随時使用される場合がある。過去5年間の利用者の推移からみると、現有のスペースでは利用者増に十分な対応をすることは困難になることが予想される。


4.専門教育(水産学科)での情報教育

 筆者が分担している科目では、水産基礎実験(2年次)において各自が得た測定値を用いて、統計基礎(正規分布、最小自乗法、相関と回帰)を修得できるように電算機を利用した実習を行っている。また、3年次では時系列解析の基本を概説後、漁場学実習、海洋環境学実験において学生自身が計測した結果を用いて、時系列データの処理法の基本を修得させるようにしている。電算機使用に際して、制約は設けず、学生自身がBASICによるプログラムを作成する場合もあれば、ライブラリを使用する場合もある。上記実験・実習結果のグラフ表示についても学生自身のセンスにまかせている。データのグラフ化処理、種々の統計計算処理は、学生自身がオープン利用時間を有効に利用して行っている。筆者の講義科目(漁業解析学)では講義時間内に情報処理実習を行うのが困難なことから、統計学基礎、微分方程式基礎を講義後、情報処理実習室のオープン利用時間を利用して、課題をなるべく電算機処理(グラフ化を含む)して提出するように働きかけている。


5.その他

 地域環境モニタリングに関する衛星画像情報処理は、大学院、そして4年次の学生が主として行っている。また、水域環境モニタリングシステムから得られる水域環境データ処理なども大学院、4年次の学生が行っている。
 1996年度現在、学部教職員、そして大学院生にはe-mailアドレスが与えられている。Internetを介した情報検索が行われている。学部内LANが研究室に接続されていない場合、情報検索は情報処理実習室から行っている。1997年度から4年次の学生にもe-mailアドレスが与えられることから、利用者増加に対応したInternet専用施設を早急に設置する必要がある。
 ティーチングアシスタント制度は本学部に設けられているが、情報教育との関係については、各学科間で統一されていないので、具体的な事項についてはここで言及できない。筆者の所属する研究室を例にすると、研究室内のパーソナルコンピュータ使用に当たり、大学院生が4年生の卒業研究遂行を積極的に援助して、データ処理、そしてグラフ化に関する方法を教えている。
 学部としての取り組みは、各学科の開講科目に見られるように基礎的な共通科目のみが実施されている。学生が本格的に情報処理技術を修得するのは、3年次、4年次にそれぞれの専攻に分属した後である。したがって情報教育内容は学科の研究内容に密接に関係することから、現段階では学部としての統一的な情報処理教育は基礎的なものにならざるを得ない。情報教育を積極的かつ効果的に実施するためには、上級学年で実施される情報教育関係科目との関連を考慮する必要がある。


6.まとめ

 上述した内容は、本学部のシラバスを参考にしたもので、学部内の情報教育の一端を紹介したに過ぎない。各々の学科内の情報教育、特に4年次学生については、卒業研究遂行と平行して情報教育がなされている。現時点での情報教育は、各々の研究室が単位として実施しているといえる。学部として情報教育を積極的かつ効果的に実施するには、情報基礎教育科目を現在より下級学年に開講するといったカリキュラムの研究も必要になる。
表1 情報処理実習Iの利用状況
時限/曜日
前期 1時限 水産 電算機 *1 - - - -
後期 1時限 食品 電算機 *1 - - - -
2 農学 電算機 *1 - - - -
2 農化 電算機 *1 - - - -
3 国資 演習IA - 農学 専演I - -
3 国資 演習IA 農化 実験IV 農学 専実験 水産 海環実 *2 水産 漁場実 *3
4 - 国資 演習II 国資 演習II - -
4 - 農化 実験IV 国資 演習II 水産 海環実 *2 水産 漁場実 *2
5 国資 演習IB 国資 演習II 農学 専演I - -
5 国資 演習IB 国資 演習II 農学 専実験 国資 演習II 水産 漁場実 *2
6 - - - - -

1 電子計算機計算法
2 海洋環境学実験
3 漁場学実習
表中空欄はオープン利用時間


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