特集 大学のマルチメディア環境

語学教育におけるマルチメディアの活用


成蹊大学



1.はじめに

 成蹊大学においては、平成2年から始まったキャンパス再開発計画の一環としてマルチメディア教室棟が建設された。その教室棟内に設置する視聴覚システムの構築に当たって、授業担当者から、 等の要望が出された。しかし、従来のアナログ方式の視聴覚システムではこれらに対して応えることができず、また時代の要求に応える教育支援システムの形成も困難であることが判明したので、ディジタルAV機能を使用する「ビデオ・オン・デマンド」(VOD)システムを付加したマルチメディア視聴覚システムの導入を図った。


2.マルチメディア視聴覚システム

 図1にシステムの概要を示す。従来のアナログ映像をMPEG1のフォーマットでディジタル化したデータを、ビデオ・サーバーに記憶しておき、ディジタルAVネットワークを通して視聴覚教室あるいは個人視聴覚ブースのパソコンから映像を呼び出したり、それを大型プロジェクターを使用してスクリーンに表示する「ビデオ・オン・デマンド」システムが本システムの中核である。

(1)教室

(2)教材制作室

 ビデオ・オン・デマンドのためのビデオ・サーバー、MPEG1エンコーダーシステム、オーサリング・システム(教材ビルダー)、ファイルサーバーが設置されている。更に、教材作成用のビデオスタジオ、ビデオ編集システムも完備している。

(3)ネットワーク

 各教室のパソコンは、CATV視聴用のアナログAVネットワーク、VOD用のディジタルAVネットワークに接続されている。更に、教材制作室のファイルサーバを介して大学の基幹FDDI・LANに接続され、さらにそれはSINETに接続されている(図1では略)ので、これらのパソコンを介してインターネットへのアクセスが可能である。


3.ビデオ・オン・デマンド対応のCALL教室

 パソコンを使用して授業中の学生の進捗状況を把握したり個別指導を可能にしたCALLに、VODシステムを加えたことによりVHSデッキ、8mmVTRデッキ、カセットデッキなどからの教材はもとより、ビデオサーバに格納されているオーサリングされたマルチメディア教材やファイルサーバに格納されている教材の提示が可能である。VOD+CALLシステムを起動し、教卓パソコンから上記の教材やCATVからのテレビ放送を学生のパソコン画面に送出することにより授業を進めることができる。
 VODはこれまでのビデオと比較して頭出しや巻き戻しが格段に便利であり、それらによって試行が中断することなく学習に集中できること、画像の拡大縮小が容易で教材の作成に便利なことなど学生、教員双方から好評を得て運用されている。また頭出しのために提示教材に付したインデックス機能を利用して繰り返しヒアリングをさせるなどVODならではの授業が行われている。


4.おわりに

 平成8年度では、VOD対応のCALL教室では、VOD教材利用の授業以外にも、アナログビデオによる授業、システムの双方向性を利用した情報処理教育など多様な利用がされている。現時点ではCALL教室または個人視聴ブースに来ないと学生はその環境を利用することができないが、今後は利用環境の拡大が必要であろう。
図1 成蹊大学・マルチメディア視聴覚システム



文責: 成蹊大学
  学務部学務課課長補佐 虻川 雅一
  工学部教授 飯田 善久

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