情報教育と環境

拓殖大学における教育・研究情報ネットワークシステムと情報教育



1.はじめに

 本学は明治33年(西暦1900年)、桂太郎氏によって設立された。現在、商学部、政経学部、外国語学部、工学部、短期大学及び大学院から成る総合大学である(学生数、約1万人)。
 「積極進取の気概に満ちた国際人の養成」という建学の精神に則り、世界7か国に分校を持ち、国際交流が密であること、また、アジア等の留学生(現在、780名)の多いことが特徴である。


2.拓殖大学におけるネットワークの導入

 1995年8月、拓殖大学は、文部省より私立大学等経常費補助金(情報化推進特別経費−情報処理関係設備)を受け、都内茗荷谷にある文京キャンパスと八王子キャンパスを結び、全学にネットワークシステムを導入した。それに伴い学内には、教育・研究システム、学生情報システム、図書館情報システム等、6つの委員会から成る情報ネットワーク推進委員会を組織し、各LANの管理・運営にあたって検討し、推進することとした。
 導入時のネットワークシステムのコンセプトは次のようであった。
  1. 学術研究の進展と社会の養成に応えうるシステムであること。
  2. キャンパスライフの快適化を目指す学内のニーズに対応できるシステムであること。
  3. 全学教員と全学生がエンドユーザーであり、全員のリテラシーの向上を目指し、その需要に応えるシステムであること。


3.ネットワーク及び、情報環境

 上記のコンセプトに従い、図の拓殖大学ネットワーク幹線図で示すように、学内を光ファイバーケーブル(FDDI)とイーサネットで接続したネットワークシステムで構築した。学内は文京キャンパスと八王子キャンパスのそれぞれにおいて、教育研究用、事務用、図書館情報、学生情報用のLANが組まれ、それぞれのサーバーに接続されて、サーバー群を形成している。八王子・文京間はディジタル専用回線(1.5Mbps、TTNET)で繋がっている。また、学外へは、東京大学(1.5Mbps、TTNET)との間をディジタル専用回線で結び、インターネット(SINET)へと接続されている。
 学内のネットワークは、NetWare(IPX/SPXプロトコル)とTCP/IPプロトコルの2つが利用されており、教育研究ネットワーク及び事務用ネットワークでは、これらのプロトコルが同一媒体上で共存している。NetWare上では、主にパソコンによるローカルなメールシステムJoinus-PCが稼働しているが、文京・八王子両キャンパスに3台のゲートウェイが設置され、Joinusにおいてもインターネットメールを利用することができる。

(1)研究用ネットワーク

 研究用ネットワークでは、クライアントとして各研究室の全教員にノート型パソコン1台とページプリンタが供給されている。機種はNEC、PC-9821Nf が主であるが、ユーザーの希望によりIBM社、アップル社、東芝製のパソコンが導入されており、学内ではマルチベンダー体制が敷かれている。
 それらのパソコンは、Windows3.1・漢字talk7.5及びNetwareといったOSを搭載し、ワードプロセッサ/表計算/データベース/ネットワーク関係の各アプリケーションソフトを提供している。そのため、全教員が研究室に居ながらにして、研究・作業を効率的にこなし、プリントアウトすることができる。さらに、ネットワークでは電子メール及び電子掲示板等が提供されているので、学内外のメールの送受信はもちろん、学内の伝達事項やお知らせは、現在、電子掲示版により送られている。
 また、一部のクライアントはインターネット(SINET)に接続され、そこでは、WWW、電子メール、FTPといった情報検索及び、ファイルのダウンロードといった一連のサービスを受けることができる。

(2)教育用ネットワーク

 クライアントサーバーは八王子キャンパスに3台、文京キャンパスに3台、計6台が設置され6つの実習室、合計160台のパソコンに接続され、各実習室での実習室内LANを形成している。
 パソコンの機種はNEC 9821-Xaで、Windows95上の各アプリケーション、MS-DOS上でのエディタやプログラミング言語ソフト、及びJoinus-PC による電子メールや電子掲示板といった一連の内容を提供し、学習を進めることができる。
 このシステムでは学生間のメールのやりとりを始め、ネットワークツール上のドライブの共有による教材やデータの共有、教員側クライアントから学生側クライアントへのファイルの一斉転送、及び受信が可能である。そのため、質問やレポートをメールで受けたり、テスト問題を送信し、書き込ませて受信するというペーパーレス・テストを行うこと、また、授業時においては、教員側から生徒側に転送したファイルを情報加工させた後、教員側クライアントに転送させて教員がチェックすること等、情報教育をきめ細かく、さらに効率よく進めることができるようになった。
 Joinus-PC上の電子メールでは、同封ファイルとして、各アプリケーションのファイル及びCD等を添付することもできる。このためイメージスキャナやCDによる、音声や画像を伴ったファイルを転送し加工させるといった、ネットワークとマルチメディアを組み合わせた総合的リテラシー教育も進めている。


4.情報教育

 拓殖大学は総合大学であるが、ここでは文科系学部、特に商学部に焦点を当てて紹介する。商学部には経営学科と貿易学科が設置されているが、経営学科にはさらに、経営コース、会計コース、経営情報コース、流通コースという4つのコースが設けられている。また、貿易学科は国際ビジネスコース、国際コミュニケーションコースという2つのコースに分かれる。学生は専門課程への進級時に、これらのコースを選択することになる。
 このうち、経営情報コースでは、「システム・エンジニアおよび、エンド・ユーザーの双方の立場を理解することができ、諸問題の調整、対応を行える人材の育成」をその教育目標としている。具体的には、下記のようなカリキュラムを組んでいる。1年次で「電子計算機論」、2年次で「情報基礎論」及び「プログラム演習(I)」を必修科目として履修する。3,4年次では、これらの内容を基礎として「プログラミング演習(II)」、「ネットワーク論」、「情報処理特殊講義(I)、(II)」、「システム設計論」、「経営情報管理論」を学び、知識・技能を深めていく。
 経営情報コースに限らず、商学部及び短期大学においては、1,2年時に電子計算機論が必修科目として位置付けられている。この講座では、コンピュータに対する基礎概念を形成させると共に、ワープロ/表計算/電子メールなど、情報を加工し表現するためのコンピュータ活用法を、実習を通して修得する。選択科目ではあるが、1、2年次には、「プログラム演習(プログラミング言語は、現在、Visual Basic 4.0)」、及び、「情報基礎論」が設けられている。「情報基礎論」では、人間・情報・社会とコンピュータとの関わり、さらに、情報倫理について触れる。「電子計算機論」及び、「プログラム演習」は定員が40名であり、1997年度は合計18クラスが開講されている。


5.今後の課題

 以上、本学の教育・研究情報ネットワーク及び教育を紹介した。学内の情報リテラシーが高まり情報教育のみならず、計量経済学、統計学、論文記述、ゼミナール等、その利用も多岐に渡り進む一方、まだまだ、学内外の研究・及び情報教育の需要に追いつけていない状況である。
 研究ネットワークにおいては、各研究室にWWW等、学術情報検索ができるシステムの導入が必要であろう。
 また、教育ネットワークにおいても、インターネットの導入、現在教師側クライアントからの画像転送のシステムは急務であると考えている。さらに実習室の授業時間以外の利用が急増している。実習室の利用時間の拡大、インストラクタの増員、パソコン台数の増加など課題は多い。
 激動する情報環境の変化と技術進歩であるが、流行に振り回されることなく、「情報とは何か」を見つめながら、大学における情報教育のあり方を検討していく所存である。



文責: 拓殖短期大学講師 森 園子
E-mail:smori@fc.takushoku-u.ac.jp

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】