私情協ニュース2

第11回私情協大会開催される



第1日目:9月2日(火)


 私情協の最も大きなイベントの一つである私情協大会は、今年で11回目を迎え、平成9年9月2日(火)から9月4日(木)の3日間、例年通り、私学会館で開催された。
 本大会の目的は、本協会の事業計画にもあるように、「私立大学等における情報教育並びに教育・研究・事務に亘る高度情報化に関する種々の問題について、関係者に的確な情報を提供すると共に討議および情報交換を通じて相互理解を深め、以って会員大学の発展に寄与する」ことである。この目的のために、毎回、1)大学における最先端の情報教育や情報環境の在り方等の紹介、2)大学の情報化に関する現実的な課題について参加教職員による討議、3)各大学の教職員による情報教育・情報環境の活用事例の報告、等を行っている。また、これと共に、会員大学の教職員による事例発表会と賛助会員による展示会が催されている。
 本年度は、メインのテーマを「大学におけるネットワークの活用とその課題」に置き、まず初日には、「知のキャンパスにおけるインターネットの展望」と題して基調講演を行った。続いて、「情報環境を活用した大学連携」に対する本協会の取組みについて紹介した後、現在、各大学で問題視している「ネットワークのトラフィック問題」について現状報告がなされ、それと共に、「教育現場におけるインターネットの課題」と称して情報倫理についてのガイドラインを行った。そして、最後の3日目には、「ネットワーク運用政策の在り方」と題して、3大学からネットワークのアウトソーシングとプロバイダ活用の事例の紹介が行われた。最後は、各大学からの「教育へのホームページ活用紹介」と、郵政省及び企業より「モバイルコンピューティング技術動向」の報告がなされた。2日目は例年通り、全体を事例発表に当てられ、約70件の発表申込の中から運営委員会での調整を経て、58件の発表が行われた。
 なお、2日目の午後からは、賛助会員26企業による展示会が行われ、この日の最後には、恒例の懇親会が開催された。
 今回の参加者数は、述べ人数で600人を、各日でも優に400人を越えており、会場の点からもほぼこのくらいの数が適正数の最大限のように思われた。講演・討議・報告等はアンケートからはほぼ満足のいくものであったと思われるが、人数が多いセッションでは、質問等を活発に行いにくい雰囲気が感じられ、これは今後の運営の課題といえよう。また、事例発表では、プレゼンテーションはかなり改善されてきているように思われ、ネットワーク関係の発表には満杯で座り切れないような部屋も出たが、内容は高度なものから、概略の報告程度までと幅があった。そして、運営面では発表中止や順序入れ替えなどの問題が残された。
 なお、賛助会員による展示会は充実しており、参加者からも評判が良かったが、時間の配分都合で十分に見られないという意見が聞かれ、これも次回の検討課題と言えよう。


基調講演
 「知のキャンパスにおけるインターネットの展望」

慶應義塾大学環境情報学部長 斎藤 信男氏

 最近のインターネットの発展状況から、これからはインターネットによるネットワークコンピューティングの時代になる。ネットワークコンピューティング時代に大学の本来の役割(知的生産、人材育成、文明継承)を実現するためには、インターネットに基づくキャンパス内、キャンパス間のイントラネットの構築、及び異なった大学間を相互接続するエキストラネットの構築が必須となると同氏はまず述べられた。そして、そのためには、ネットワークを利用した大学環境は、ディジタルキャンパスの徹底を目指すべきである。そこでは、高速マルチメディアネットワークを通して、高品質ディスプレイ、ビデオカメラ、VOD、個人用コンピュータ、モバイル端末等が接続され、シラバスデータベース、レポート提出、電子図書館、大学管理情報、オンデマンド講義等々をオンライン・ディジタルで利用して、集合型教育環境でも、個別型教育環境でも教育は行われるはずである。そして今後は、セキュリティ、プライバシー、知的所有権、情報倫理、情報発信・受信、等の課題を要素とした、従来の工学を越えたインターネットエンジニアリングの確立が必要であると示された。


「情報環境を活用した大学連携」

私立大学情報教育協会 井端事務局長

 マルチメディアによる情報技術を取り込んだ授業を進めていくためには、授業方法や教材の研究について、意欲のある大学が協力できる範囲内で、連携していくことが必要であり、私情協は、現在、この情報環境整備のための大学連携事業を構想中であることを報告された。
 連携の具体的な内容は、平成9年度には、テキスト教材情報・素材データの共有、情報技術の修得及び相談・助言、及び交換授業・共同授業の実現を、そして、平成10年度には、シラバス情報の相互公開、バーチャルな個別学習システムの開発、著作権許諾申請の相談・助言を考えている。推進方法としては、インターネット上にバーチャルな形で“共同支援センター”を構築するが、実際には、各大学のLAN上に分散的に配置されたWWWサーバ上に各々の得意な分野のデータベースを構築してもらい、私情協のWWWサーバには、各々の情報を分担する各大学のリンク先を載せておく形をとりたい旨、紹介された。


文責: 明治大学 向殿政男


「ネットワークのトラフィック問題」

文部省学術情報課学術情報基盤整備推進室室長 諫山 親氏
学術情報係長 山本 日出夫氏
学術情報センター研究開発部助教授 松方 純氏
山梨大学工学部教授 林 英輔氏

 インターネットの急激な普及により、そのトラフィックの急増に伴う通信障害やシステムの維持管理体制の問題が顕在化してきた。最近の状況では通信障害と思われる遅延やパケットロスの発生が慢性化しており、大学の研究教育に重大な影響を与えつつある。このような現状と問題点を正しく認識し、今後の学術・教育ネットワークについて考える場とした。
 そのために上記の方々に講師を依頼し、行政、ネットワーク運用機関および大学の立場から問題点を整理し、改善策を討議した。
 まず最初に、林氏から大学および学術系地域ネットワークの立場から次のような問題点と課題が指摘された。

 続いて、学術情報センターの松方氏より学情の現状と問題点の改善について報告された。  最後に、文部省の諫山氏より「現状は十分認識している」が財政改革下で国立大学特別会計、一般会計共に昨年度同額あるいはマイナス予算の基本方針であることに理解をして欲しいとの厳しい前置きに続いて、 等々行政の立場から見解が示された。
 3氏の報告から、インターネットの現状と問題点および短期的な改善策の一端が明らかになった。ほとんどの大学が我が国の学術ネットワークであるSINETTに依存しており、その安定的な強く望まれ、各大学が問題意識を高めるとともに関係機関の一層の努力と継続的な検討の必要性を痛感した。


文責: 東海大学 井上 靖


「教育現場におけるインターネットの課題」

情報倫理教育振興研究委員会
東京農業大学助教授 熊谷 惟明氏
立教大学教授 荒木 伸怡氏
産能大学研究員 小野寺 明氏
中部大学助教授 尾関 修治氏
南山大学助教授 後藤 邦夫氏

 初めに後藤委員より、このセッションでは私情協の情報倫理教育振興研究委員会の事業実施経過と、現在検討している情報倫理教育ガイドラインについて報告を行い、後半で参加者からの意見を伺う旨、説明がなされた。情報倫理教育ガイドラインは、運営・管理体制と情報倫理教育について基本的な考え方をまとめたものであり、運営・管理体制については、荒木委員より次のような説明がなされた。
 インターネットについての運営・管理体制としては、1)セキュリティ技術の導入とその限界への対応策、2)大学の管理責任に基づく対応策、3)急激な利用増加への対応策が必要であり、教育・研究以外の利用を含むすべての利用、特に学生の利用については大学の責任ある対応が望まれるとのことであった。そして、小野寺委員より、大学のセキュリティ対応については、加害者と被害者の双方を想定し、大学独自の視点でセキュリティ対応が必要である旨、補足された。
 次に、情報倫理教育については熊谷委員より次のような説明がなされた。
 インターネット社会は、不特定多数の人々とのコミュニケーションであるだけに、様々な問題が発生する恐れがある。これらの問題を解決するためには、1)インターネット接続の基本的注意、2)インターネットを介した情報倫理、3)学生個人がトラブルに巻き込まれた場合の対応策、4)インターネット情報倫理の周知徹底が必要である。そして、尾関委員よりWebに関する教育では、公開する場合のコンテンツの教育、見る側としての価値判断の教育という2つが必要であり、学生がコミュニケーションでトラブルを起こした場合、教員のフォローが大切である旨、補足説明がなされた。
 この後、ガイドラインについて会場からいくつか意見が寄せられ、事前の説明不足もあって誤解を招いた部分もあったが、テーマへの関心の高さは伺えた。今後は大会での意見を参考にガイドラインをまとめ、具体的事例を紹介していくことを確認した。




第2日目:9月3日(水)


事例発表

Aコース:インターネット


A-1 インターネットを利用した仮想スクールシステムの開発
武庫川女子大学 井上和郎氏、濱谷英次氏、中植雅彦氏、小野賢太郎氏

 キャンパス・ネットワークを活用して、学生所有機器を端末とする「仮想学習ネットワークシステム」を構築している。学習希望者には、ネットワークの基礎指導等の予備教育を行っているが、このことがインターネット利用学習を成功させるためのキー・ポイントであろう。

A-2 World Wide Webを用いた教示等提示システム−電子メイルの併用による運用−
大阪産業大学 大垣 斉氏、中村 孝氏

 ホームページを利用した。「プログラミング」教育の自習システムである。本研究によると、単にWWWを開設しているだけよりも、「呼びかけメール」で学生に情報提供をすると、学生のホームページへのアクセス数が増加する。教員の学習への関与は重要である。

A-3 一斉授業で個別指導を狙うスペイン語作文
南山大学 高橋 覚二氏

 スペイン語の作文を自宅で作成させて、e-mailで送付する。教員はそれをまとめて、事前に学生の間違いのパターンをすべて把握する。こうすれば授業のときに、きめ細かい個別指導ができることになる。

A-5 ホームページを使った学生の自習用ページ
帝塚山大学 堀 真寿美氏

 コンピュータに始めて触れる学生に、Windowsの基本操作等、コンピュータやインターネットの基礎知識を自習できるためのホームページである。大変工夫されているので、著作権の問題等がクリアできれば、広く公開していただきたいシステムである。

A-6 学内LANとホームページを利用した学習支援
熊本学園大学 笹山 茂氏

 経済学の講義と演習にホームページをどのように活用するかという指針を与えてくれる。ホームページに講義ノートの掲示すれば企業へのリンクも貼れるし、演習問題のデータ等も学生がダウンロードできるメリットがある。

A-7 情報教育環境におけるWindowsNTとUNIXの共存
大阪国際大学 太田忠一氏、平野和義氏

 文化系大学にオフィス系アプリケーションやマルチメディア環境を実現するため、ネットワーク環境を管理するUNIX系のシステムにWindows-NTベースのPCを導入した。ファイル共有はしていないがPOPによりメール環境は統一した。

A-8 インターネット上での教材開発
広島工業大学 横田 壽氏

 ブラウザにより数学の自習を行わせるための教材の開発をWEB上で行った。数式表現のためLatexで作った教材をHTMLに変換し、課題も不正解の場合は戻ってリトライさせるなど、補間授業として役立つように工夫している。

A-9 Mathematicaを利用した数学教育
中部大学 手嶋忠之氏、竹中俊美氏

 講義と併用する形でゼミでの数学教育にMathematicaを利用した。WEBの使い方から始める必要があったが、数式やグラフの活用で、理系の学生だけでなく、文系の学生にも興味を持たせることができた。

A-10 シラバスデータベースとマルチメディア教材の連携
東洋大学 上原 稔氏

 キーワードでの検索やWEB上の教材とのリンク機能を持つシラバスデータベースを開発した。利用状況の調査結果では、履修科目の選択などでの検索目的より、講義や自習目的で使うものが多く、教材との連携の有効性が確かめられた。

A-11 異なる大学間におけるサーバーによる学習支援の研究
立教大学 小林悦雄氏、長島 忍氏
三重大学 早瀬光秋氏

 英作文用の学生個人のホームページを作成させ、距離的に離れた大学間で作品を公開して評価しあい、学習の相乗効果をねらう試みを行った。E-mailやホームページで課題やスケジュールを提示することで効果的な学習ができた。

A-12 衛星利用遠隔教育の可能性
東海大学福岡短期大学 伊津信之介氏、矢原充敏氏、池永美智子氏
NTT(株) 水野秀樹氏、大幡浩平氏

 ISDN回線により地方から衛星地上局へ映像・音声を送ることで衛星回線を利用したり、戻り回線に地上回線を用いて質疑や聴衆の状況を送ったりすることで、安価に双方向の衛星利用の講義を行う試みを行った。

A-13 インターネットの教育利用に関する研究
安田女子大学 染岡慎一氏、広川紀夫氏

 小学校との共同研究により、大学に開設した小学校のホームページを通じての海外の小学校との交流や、被爆の痕跡・災害訓練といった、社会とのつながりを意識したテーマでの学習で、学生の意欲向上を図ることができた。

A-14 情報端末としてコンピュータを活用するための環境と教育
東京理科大学諏訪短期大学 小林由美氏、山田和也氏、広瀬啓雄氏、奥原正夫氏

 リモートアクセス回線を開設し、電子メールの利用率から学生の情報環境利用状況の調査を行った。PCを持つ学生はリモートアクセス回線や電子メールの利用頻度が高く、情報端末としての利用に対する環境整備の必要性が確認できた。

A-15 文科系大学でのインターネット利用意識調査報告
桜美林大学 大道 卓氏、出光直樹氏

 全学生に対してe-mail利用環境を整備し、一部授業で利用法の教育を行い、その効果について状況調査を行った。授業で利用法を受講した者の利用率が高く、e-mailについては学生間の私的な目的での利用が多いことがわかった。

A-16 授業への電子メール導入がコンピュータへの態度変容に及ぼす効果について
青山学院大学 遠藤健治氏

 電子メールの効果について、利用法の受講者と非受講者、および受講前と受講後(いずれも電子メールによるレポートが課題)について、コンピュータ利用についての意識の変化を調査した。いずれも受講により前向きに変わることが確かめられた。


文責: 東京理科大学 平林 隆一
  湘南工科大学 後藤 宣之



Bコース:支援システム


B-1 WindowsNT環境における授業支援システムの開発
帝塚山大学 井戸田博樹氏

 コンピュータ教室で行われる授業の出席とレポートの提出管理をするシステムの開発。従来のシステムでの難点の解決をした。また外部に開発を委託しており、委託先の選択、契約上の注意、検収などに考慮が払われている。

B-2 コンピュータを用いた教育のためのサポートシステム
獨協大学 本田 勝氏、立田ルミ氏

 全学に導入したコンピュータネットワーク教育システムがスムーズに、特に全教員に使って貰うための、講習会、ヘルプデスクなどのサポートのための体制の詳細が紹介された。

B-3 クライアント・サーバーシステムによるオンライン履修申告システムの構築
東京電機大学 坂田一也氏

 学生に学期始めの履修登録を書面ではなく、PCの画面の上で各自に行わせるために開発されたシステム。履修上のかなり細かい条件のチェックもする。1学部3,000名余りの学生が80台のPCで、1週間で十分に登録できるという。

B-4 VBを利用したオンラインユーザ申請システム
日本女子大学 久東光代氏、山内美恵子氏、山崎礼子氏、野村泰朗氏

 一般学生向けのインターネット講習会の申し込みを、Windowsの画面で受付るシステム。操作に不慣れな新入生でも扱えるように、入力を最小限にしたもの。これにより手作業の煩雑さとミスを無くした。

B-5 CALL運営における補助スタッフの役割&−その1−学生アシスタントの役割を中心にして
東京国際大学 五十嵐義行氏、堀口 六寿氏、渡辺浩行氏
帝京科学技術大学 山本涼一氏

 Computer Assisted Language Learningを支援するために、かなりの数の学生をアシスタントとして使っている。学生のアシスタントの重要さと、その教育の中での位置付け、活動の内容、役割を評価したもの。


文責: 文教大学 真鍋龍太郎



Cグループ:ネットワーキング


C-1/B> 安定性を重視したネットワークを目指して
明星大学 長岡秀行氏、小峰一純氏、江面 敦氏、和田好司氏

 キャンパスネットワークを向こう4年間の利用に耐えられ能力で、しかも、安定的に運用できるものを業者に依存しないで導入しようという試みを、旧システムからの移行も留意して行った事例の紹介。

C-2 動的アドレッシングの導入と今後の課題
関西学院大学 武田俊之氏 増居 隆氏

 報告者の大学では、いままで研究室に付設されていたSharpSS・NETから、今後のIPネットワークの増大を見越して、動的アドシング(DHCP)方式を導入した。今報告はその導入理由、運用計画および実績とその評価に関するものであった。

C-3 金蘭短期大学における情報リテラシー教育への取り組み(2)
金蘭短期大学 柳瀬優二氏、工藤尊弘氏

 短大生の情報教育をより効果あるものにするためには、情報系教育の充実に加えて、日常の中でコンピュータを活用する実践利用が必要であるとの認識に立って、初心者でも理解し易いように作成された利用ハンドブックの内容と成果についての報告がなされた。

C-4 無線を活用したネットワーク学習環境の構築について
道都大学短期大学部 野口光孝氏、由水 伸氏

 演者が構築した無線LANシステムの概要と、運用成果について報告された。それによると、耐久性、性能、運用性あるいはコストなど総合的な観点から、無線LANは実用に耐え得るインフラであるとのことであった。

C-5 学内モバイルLANによる教育支援システム
東海大学 濱本和彦氏、松尾守之氏

無線LAN基地局を数カ所に設置し、既設のLANに接続した学内モバイルLANによる教育システムについての運用実績について述べられた。同発表によると、現在の同システムは教育支援システムとして利用可能としたが、大量のデータ送信などの利用には今後の検討が必要とした。

C-6 環境情報学のための情報活用環境の構築
武蔵工業大学 横井利彰氏、武山政直氏、中村雅子氏、山田豊通氏、厳 網林氏

 今春、開設された演者の所属する学部の目的である、高度で適切な情報活用能力を有する人材の育成に適った情報システムの構築にあたって、留意した点、実績について発表された。

C-7 医学専門教育におけるPCとネットワークの活用
愛知医科大学 安藤裕明氏、安田治郎氏、前田吉則氏、細田尚孝氏、宮城浩昭氏、春日井佳代氏、山辺康夫氏、宮田伸樹氏

 医学専門教育に活用するために実施しているサービスの一部と、今後の課題について発表された。サービスの内容としてインターネットの環境整備などを具体的に挙げ、今後の課題としてはこれらのサービスの内容をより充実にすることと、セキュリティ確保であるとした。

C-8 マルチプラットフォーム対応型情報教育システムII
日本工業大学 飯倉道雄氏、吉岡 亨氏、樺澤康夫氏

 演者らは、近年の学生は大学入試前の情報教育レベルは多様であり、その多様な情報知的レベルの学生に応じた情報環境として複数のプラットホームをスター状に結合されたシステムを構築し、成果を上げているとのことであった。

C-9 WindowsNT4.0とWindows95によるネットワークシステムの構築
大阪国際女子短期大学 前川 武
大阪国際女子大学   山本 博氏

 従来のネットワーク演習で発生する問題点を解決するために、新たにWindowsNT4.0と同95によるネットワークシステムを採用した。報告では、従来のシステムの問題点と、3ヶ月間の新システムの運用実績と今後の課題について触れた。


文責: 中京女子大学 朝山 正巳



Dグループ:教育・学習評価

D-1 情報処理教育がもたらす「情報」イメージと行動の変化
武蔵工業大学 中村雅子氏、山田豊通氏、厳 網林氏、横井利彰氏、武山政直氏

 大学入学直後と、1年前期の「情報処理入門」の履修後における、「情報」に対するイメージの変化を調査し、入学時に漫然とコンピュータに対して抱いていた幻想や期待が、実際のカリキュラムを経験して、より現実的な評価を下すようになったことが報告された。

D-2 情報処理教育前後における学生の対コンピュータ意識の変化
立正大学 山下倫範氏、加藤吉則氏、青木智子氏、宮崎智絵氏、町田 靜氏、友永昌治氏、木川 裕氏
千葉商科大学 上山俊幸氏
大東文化大学 永田 清氏
駿河台大学 河本 進氏
工学院大学 竹本宜弘氏

 ソフトウエアの利用技術、および情報・コンピュータ文化に関する様々な問題提起を中心にした情報教育の前後における、学生の意識の変化を調査した結果、「コンピュータ操作に対する自信」について効果があったことが報告された。

D-3 環境情報学部における情報処理教育カリキュラムの設計
武蔵工業大学 厳 網林氏、横井利彰氏、武山正直氏、中村雅子氏、山田豊道氏

 新たに開設された環境情報学部の情報教育のコンセプトと、情報処理関係科目等の内容についての詳細な説明があり、入学時点と前期終了時点で実施されたアンケート調査により学生の期待とカリキュラムが対応していることが報告された。

D-6 新入生に対するネットワークリテラシ教育の試み
成蹊大学 白井裕司氏、恵良和代氏、千葉邦子氏

 新入生全員に対して入学直後に、ネットワーク利用のための基礎教育、および電子メールの実際の操作を行う講習会を実施し、その後の6ヶ月間のパスワード忘れを追跡調査し、講習会の有効性が証明されたことが報告された。

D-7 基礎的情報教育における総合的演習としの「ビジネス体験」の試み
園田学園女子大学 堀田博史氏

 充実した基礎的情報教育システムを構築し成果をあげているが、今回加えて各ユニットの学習だけでは習得しきれない総合的な能力育成のため、将来社会で経験すると予測される仮想場面とリンクさせた、ロールプレーイング的演習の試行が報告された。

D-8 文章解析と表計算ソフト
獨協大学 前田功雄氏、高柳敏子氏

 英語学科言語情報コース2年次の「言語情報処理I」の後期に、手入力やインターネットで得た英文を表計算ソフト上にデータベース化し、同ソフトの機能を駆使して出現単語の頻度分析やKWICインデックスの作成など各種文書解析手法を演習した報告。

D-9 パソコンシステムを用いたコンピュータリテラシィ教育
日本女子大学 坂牧貴子氏、吉井彰氏

 1年次の情報リテラシィ授業の終了時に、学生の情報処理に対する意識や興味の変化について調査された分析結果が報告された。情報科学に対する期待は高かった。現状の正確な認識と分析により継続的な改善努力の必要性が強調された。

D-10 国際文化学科の情報関連科目における授業実施の工夫
東海大学福岡短期大学 竹田敏雄氏、斎藤守正氏、李 奉賢氏、矢原充敏氏

 当学科の情報基礎教育のうち、情報処理の基礎を学ぶ重要な講義の選択率が極めて低い。そこで講義ではパソコンの実演やOHPの多用そしてネットワークによる教材の自由参照などの工夫がなされた。また関連する実習科目の工夫も報告された。

D-11 学生の自主的活動による日本語ワープロ検定受験対策
東京家政学院短期大学 土屋富雄氏
東京家政学院筑波女子大学 平木茂子氏

 筆者らの長年の経験から学習効果の向上のためには1)いつでも使えるコンピュータ設備、2)いつでも練習できるプログラム問題集、3)いつでも聞ける要員配置が必須であり、加えていかに学生の自主性を引き出すかが重要である。との報告。

D-12 薬科大学におけるコンピュータリテラシー
北海道薬科大学 森田一彦氏、島森美光氏、和田浩二氏

 「高度な技術を有する薬剤師の養成」のため、情報処理の目標を簡単に操作でき、きめ細かい教育が誰にでもできるようなシステムを作り上げ、1年生に対して行われたリテラシー教育の結果と課題について報告された。

D-13 情報通信ネットワーク利用技術の基礎教育に関する試み
関西女学院短期大学 陳 那森氏

 グループ授業と疑似体験中心の個別指導並立型という新しい授業形態を考え、学生個々人の進度に合わせた授業を行い、ネットワーク利用技術に関する基礎教育の手段として、大多数の学生に支持され効果的であったことが報告された。


文責: 成蹊大学 飯田善久
  関西大学 東村高良



Eグループ:教材ソフト・CAI


E-1 World Wide Web を利用したC言語プログラミング演習支援ソフトウエア
福山大学 田中始男氏、瀬川 健氏、美咲隆吉氏、小林富士男氏

 演習が比較的苦手な学生用に、自分のペースで学習できるソフトウエアの開発を行った。学生は使い慣れたブラウザソフトウエアで簡単に答案が作成できる。ニューラルネットワークの学習過程を応用しているのも特徴である。

E-2 C言語統合開発環境の構築
山口東京理科大学 岡崎世雄氏、大島邦夫氏

 初心者に使いやすいC言語プログラムの開発と実行環境を実現するために、独自のエディタ、デバッガおよびインタプリタを開発して学生の実習に供している。実験的な評価では、エディタの機能を除いて良い結果を得ている。

E-3 アルゴリズム教育のためのランダムデータサーバー
早稲田大学 二村良彦氏、根本 強氏、矢農正紀氏

 アルゴリズムの評価を精密に行うためには、その性能に影響をおよぼす性質を持ったランダムデータを使う必要がある。この報告は、こうしたデータを簡単な操作でかつ短い実行時間で生成する方式の提案である。データそのものはサーバにアクセスして利用できる。

E-4 仮想実験室を用いた「ディジタル信号処理」の授業について
久留米工業大学 元石浩二氏、山田貴裕氏、安岡宏典氏

 学生の興味を引く授業を手間と時間をかけないで実現するために、コンピュータの上で仮想的に実験を行うシステムを開発した。興味を引くことはできたが、授業に2倍の時間をかける必要があったとの結果が報告された。

E-5 中国語CAI開発と実践結果
東海大学福岡短期大学 李 奉賢氏、伊津信之介氏、斎藤守正氏

 中国語の発音の練習に重点を置いたCAIである。このソフトを使ったグループと従来通りの授業のグループに分けて実験した結果、正確に発音できる学生が増えた、正確な発音が持続する、進んで学習する、などの点で有効であった。

E-6 CAI教材「自分探しのコンピュータの旅」について
関西学院大学 中澤 清氏

 心理実験を自分のパーソナリティを探求するという興味の湧くテーマで行い、良好な結果が得られたと報告された。ハイパカードによって制作された3種の質問紙法検査、3種の投影法検査の、計6種の心理検査スタックで行う。


文責: 専修大学 魚田勝臣

E-7 インターネットを用いた教育の評価
獨協大学 立田ルミ氏

 イリノイ大学留学中に開発、実践した”Chado-The Way of Tea”について報告し、日本におけるユース開発のサポート体制を求める提言、すなわち、資金のサポーターや開発スタッフの問題などが述べられた。

E-8 社会学におけるCD-ROM辞書の開発と利用−マルチメディア辞書で学ぶ社会学−
佛教大学 荒木 功氏

 いわば「辞書」とのインタラクテビティが形成されることにより、学習者の積極性関与・参加性を引出し、学習の効果が拡大される。その反面、原書にない写真等の利用時の、著作権クリアの問題が将来の大きな課題であることが報告された。




Fグループ:教授法



F-1 マルチメディア教育カリキュラムに関する一考察−試行錯誤を通した情報教育の試み−
文化女子大学 梶谷哲也氏

 静止画とそれを利用した動画および簡単な音声を手入力(手作業)とプログラムで適切に利用する能力を、学生の試行錯誤を通して育成することを目的としたカリキュラム開発であり、LOGO言語の採用がそれに役立ったことが報告された。

F-2 GISとインターネットを用いた教育実践
立命館大学 笹谷康之氏

 土木工学科の情報処理カリキュラムの中に、GIS(地理情報システム)の実習を取り入れた実態、到達点と課題とを紹介された。また今後、最終前レポートをホームページ作成にして、最終レポートは他人のホームページの相互評価にする予定などを報告された。

F-3 Visual Basicによるプログラミング教育の実践
大阪国際女子短期大学 谷口るり子氏

 Quick Basicによる従前のプログラミング演習に比し、Visual Basicによる新しい試みに、学生が興味を持って取り組んでいる実態が報告された。

F-4 帝京大学理工学部における総合情報教育の試み
帝京大学 佐藤直史氏、横山明子氏、筒井多圭志氏、武井惠雄氏

 インターネットイングリッシュの実践、教職科目のインターネット活用などの実績をふまえて、セミナー形式の授業やグループ学習を進めることができる、「学習者主導のディジタル方式ラーニングラボ」の計画が報告された。

F-5 参画授業による情報リテラシー基盤教育と創造性開発−複写式ラベルを用いたラベルワークの新展開−
武蔵大学 林 義樹氏

 「ある関心のもとに、あるまとまった観念を、操作可能な物理的媒体に記録したもの、またその意味内容」と定義されるラベルを用いて、「知が自らの知を批判的に吟味コントロールする」メタ思考への教育方法論が展開された。

F-6 相互通信システムを用いた遠隔地域間教育の試み
名城大学 細川壮平氏

 資格試験・公務員採用試験等のための課外教育機関として活動している、同大学法職研究センター・法学部国家試験研究会(略称:国研)のテレビ会議システムを応用した、相互通信システムの実態が報告された。

F-7 Notes Domino活用による授業改革の試み
岐阜経済大学 松島桂樹氏、坂 覚則氏

 Notes Dominoの導入によって、ブラウザーが利用可能な場所でさえあれば、学内外を問わず、どこからでもグループウエアを利用できるという、バーチャルな環境の構築が報告された。


文責: 園田学園女子大学 棚町 知彌



第3日目:9月4日(木)


事例紹介


「ネットワーク運用政策の在り方−アウトソーシングとプロバイダ活用−」

 学内LANの整備が急速に進展し、インターネットの利用も次第に多様化しつつある今日、大学におけるネットワーク運用政策のあり方についても様々な問題や課題が起こりつつある。そこで、本セッションでは、「アウトソーシングとプロバイダ活用」の観点から、今後の方向性を模索するため、3つの大学に事例紹介を依頼し、その取り組みについてご報告を頂いた。
 フロアからは、特に商用プロバイダの導入について多くの関心が示され、導入経費や業者の選択方法、経路制御の必要性や手法等について多くのご意見や質問が寄せられた。また、同時にネットワークの運用を商用プロバイダへ任せることの是非についても意見が出だされた。


「アウトソーシングとプロバイダ活用 (立教大学の場合)」

立教大学法学部教授 荒木 伸怡氏

 立教大学におけるネットワーク環境の問題点やアウトソーシングの必要性について紹介がなされるとともに、学生にとって、無料プロバイダー的役割を果たしている大学の今後のあり方、その対処策として、商用プロバイダーの活用方法等について、問題提起がなされた。また、各商用プロバイダーの反応についても紹介をして頂いた。

「インターネット時代における大学教育情報システムの設計運用政策」

東洋大学経営学部助教授 内木 哲也氏

 東洋大学における情報システム構築の基本政策やその取り組み方についての紹介がなされた。また、「情報交換の場の拡大」としてのシステム構築を目指す具体的事例として、来年4月から新1年生全員に実施予定である商用プロバイダー活用に向けての導入経過ならびに具体的実施方法等が紹介された。

「マルチホームの運用事例」

麗澤大学国際経済学部助教授 大塚 秀治氏

 トラフィック問題を含め、学術、商用を含めたインターネットにおけるルーティングの現状を紹介して頂くとともに、マルチホーム接続の必要性や目的、接続の際の留意点などについて説明を頂いた。また、マルチホーム接続事例として、麗澤大学における、KUI(柏インターネットユニオン)との連携について、その目的や経路制御の実際、問題点などについて紹介がなされた。


文責: 長崎総合科学大学 横山 正人



「教育へのホームページ活用紹介」

 最終日午後の「教育へのホームページ活用紹介」において、次の3つの事例の紹介があった。


「教育に活かすホームページの多機能性」

麗澤大学国際経済学部教授 高辻 秀興氏

 「情報科学」の授業で活用されているホームページのCAI的活用である、表計算ソフトの操作を習得するためのドリル形式演習課題の実例と、日経NEEDS-MTのデータを独自にデータベース化され、ホームページ上から各種の角度からデータ検索できるようにした「経済・経営・地域統計データベース」の活用事例とその課題(地域データ等の取り扱い方、究極的なSQL化の検討等)について紹介があった。氏の要望でもあるが、教材としての外部/実務での生きた素材データベースのまさにオープンなインターネット上での活用環境の整備と相互利用、産学での共有化の取り組みが今後必要であると思われる。

「WWWを利用した協調的語学学習環境:WebNotebook」

中部大学講師 小栗 成子氏
南山大学講師 河村 晴美氏

 中部大学で開発されたWWWページとCGIプログラムを組み合わせたWebNotebookの概要、その英語教育での活用事例と、中部大学・南山大学間での大学間利用の紹介が行われた。CGIを利用した投稿システムは珍しいものではないが、内容を共有し得る協調的学習ノートの実現と、カリキュラム上で位置づけした教育技法としての新鮮さがみられた。しかしながら、その特徴である「共有可能なノート」そのものの運用課題、例えば投稿への動機付け、投稿された/書き込まれた文例等の正確性のチェックや引用に関しての著作権を含めた問題、さらに関連ホームページとのリンクの責任所在等、オープンなインターネット上の投稿者の品位を含めた諸問題に質疑が集中した。

「ネットワークを用いたディベートの試み」

明治大学理工学部教授 中所 武司氏

 明治大学で進められている「パソコンとインターネットを用いた実験授業」(PCプロジェクト)の一環として、講義形式の授業に電子ディベートの導入を試みている氏の授業についての事例の紹介が行われた。自ら問題を発見して、それを解決していく独創性の育成のため、まず「議論に強くなる」ことに重点を置いた、インターネットのローカル・ニュース・グループを活用した電子ディベートの実験報告や学生からのアンケート結果報告が行われた。また会場から同様な試みの事例報告もあり、電子ディベートを進めるに当たっての工夫、教授法等についてのアイデアなども出され、示唆に富む事例報告であった。


文責: 立正大学 山崎 和海



「モバイルコンピューティングの技術動向」

 このセッションは、行政側の技術動向および政策に関する講演と、メーカ側の技術および応用の動向に関する講演の2つのパートで構成されていた。

「移動体通信網の現状と将来」

郵政省電気通信局電波部移動通信課長 稲田 修一氏

 同氏からは、モバイルコンピューティングの効用、普及の条件、適用領域および今後の発展動向などについての報告があった。PHSが今後爆発的に伸びる可能性があり、これがモバイルコンピューティングの中心をなす。また、道路交通システムの高度化を例にして、これからはハード面での設備の増強ばかりでなく、既設のハードを効率的に使うシステムを実現するという視点が必要で、そのためにモバイルコンピューティングが利用できる、といった興味深い話があった。

「PHS32Kデータ通信によるモバイルコンピューティング」

松下通信工業(株)情報システム事業部法人営業部課長 秋場 国夫氏

 PHSデータ通信の高度化に関し技術的側面から詳細な報告があった。ディジタルデータ通信としてはPHSが本命であり、その32Kbps通信システムの仕組みが紹介された。また、この会社で進めているPHSを利用したキャンパスネットワークの構築についても触れられた。

「モバイルLANを利用した大学情報流通サービス」

日本電信電話(株)マルチメディア情報流通推進部 友田 郁雄氏

 モバイルLANのモビリティおよび概要、システム構成と特徴などの基礎知識をはじめとし、大学情報流通サービスシステムについて、サービスの内容、特徴および期待される導入効果など、興味が持てる内容であった。

「モバイルコンピューティングの事例」

(株)インテック首都圏本部担当部長 田窪 昭夫氏

 企業における9件の適用事例について報告があった。内容は企業向けであるが、情報の発生、収集、蓄積、参照、発信および利用という見方で、大学の活動に置き換えると、これらの事例からいろいろなヒントを得ることができる。事例に先立ってモバイルコンピューティングの基礎と応用についてのまとめの話もあり、このセッションを締めくくるにふさわしい内容であった。


文責: 専修大学 魚田勝臣

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