情報教育と環境

九州産業大学の情報教育環境
-学内情報ネットワーク[KIND]を中心として-



1.はじめに

 本学は、昭和35年に商科大学として開学以来、社会の動きに対応して学部・学科を増設し、今日では、7学部15学科・大学院6研究科を擁する総合大学に成長した。「市民的自覚と中道精神の振興」、「実践的な学風の確立」を建学の理念に、広い視野と優れた判断力を持ち、社会において指導的役割を果たすことができる人材の育成に努めてきた。
 本学の情報処理センターは、昭和37年、西日本地区の他大学に先駆け、産業経営研究所電子計算機室に電子計算機(OKITAC)の導入を行った。昭和44年に産業経営研究所電子計算機室は組織改革により計算センターとなり、昭和57年に大型汎用計算機(ACOS700S)が導入されると同時に、情報処理センターとして、本格的な情報教育・研究の中心となった。さらに、平成元年9月に大型汎用計算機(FACOM M-760/10)を導入し、教育研究に大いに効果を上げてきた。しかし、その後著しい高度情報化社会の発展に伴い、より一層高性能な計算機システムを望む声が高まり、平成6年9月に現在の計算機システムを導入した。このシステムは、従来の大型汎用機による一極集中システムではなく、パソコンとワークステーションを高速なネットワークで接続した分散システムとなっている。これにより、コスト・パフォーマンスの飛躍的な向上、インターネットの活用、マルチメディア情報への対応が実現された。また、平成7年11月には学内LAN[KIND]を設置し、教育・研究における学内外ネットワークの利用効率の向上を図った。本稿では、学内情報ネットワーク[KIND]を中心とした情報教育環境について報告する。


2.キャンパスネットワーク KIND

 九州産業大学には、図1に示されるようなKIND(Kyushu sangyo university Information Network Data highway system)と呼ばれるキャンパスネットワークがあり、情報通信基盤として学内の約9割が整備されている。KINDは平成7年10月運用当時約900台のパソコンあるいはワークステーションが接続されスタートしたが、足掛け3年を経過した現在、約1,200台となり1.3倍強に増加し、さらに拡大を続けている。学生数約16,000人であるから、計算上は学生13人に一台の割合で、コンピュータネットワークに接続されたパソコンが使える環境にあるということになる。
 電子メール、WWW(World Wide Web)、ネットニュースによる情報交換が主な利用ということになるが、講義、ゼミ、実験等の報告書、卒業研究、就職情報などの情報収集などへの活用がますます増加しているようである。最近では、演習の報告書、講義や実験の質疑応答、卒論生の就職活動報告、本学卒業生(社会人)と在学生、先生間との情報交換などにも利用されており、KINDの安定したサービスが不可欠となってきている。
 本学はアジア各国からの留学生を多く受け入れていることもあり、KINDは外国人留学生と彼らの母国とのコミュニケーションにも一役買っているようである。また、学会や公共の機関との情報交換にもインターネットが使われつつあり、教職員の利用も次第に増えているようである。
 一方、コンピュータネットワークはなくても今のところ困らないという人がいるのも事実である。しかし、入学して来る学生はすでに、パソコン社会や情報社会に相当影響されており、KINDの役割はさらに重要になると考えられる。
図1

2.1 KIND上で提供されているサービス

 本学では、以前は利用者登録をした人だけが情報処理センター内計算機の利用が可能であったが、平成6年9月に現在の計算機システムに移行を機会に、学部学生、大学院生、研究生及びすべての教職員に手続きなしで利用者登録を行うことにし、全員にユーザーアカウントを発行している。従って、利用を希望する人は、利用ガイドラインを守れば即座に、KINDを使って情報処理センターの計算機資源や学外のインターネット資源を利用できる。
 情報処理センターには、汎用計算機はなく、すべて機能分散したワークステーション群が整備されている。ファイルサーバ、計算サーバ、メールサーバ、ニュースサーバ、DNSサーバ、コミュニケーションサーバ等の計算機資源が、情報処理センター内のパソコンやワークステーションから、滞ることなくいつでも利用できる環境になっている。もちろん、KINDを通じて学内研究室内パソコンから24時間利用も可能である。現在のところ、工学部電気工学科と国際文化学部物理教室を除いて、学内で独立にメールサーバを運用しているところはないので、これら以外の学生、教職員の人はすべて情報処理センター管理下のメールサーバを利用している。その他、ネットニュース、遠隔利用(telnet)、ファイル転送(ftp)、WWW等の利用が可能である。
 学内での利用についてはこれまで述べた通りであるが、学外からの本学計算機資源の利用サービスについては、コンピュータネットワークのセキュリティー対策とともに目下検討中である。電話回線からの利用については、計算機管理者のうち別途登録した人だけが可能で、一般利用者には現在のところ開放されていない。電子メールや電子掲示版等を利用する授業計画が進めば、学外からの本学学生、教職員の利用も検討することになるであろう。

2.2 KINDとインターネット

 KINDは、情報処理センターからインターネットの世界に接続されている。電子メールはネットワークプロバイダー経由(128K)で、その他のトラフィックはSINET経由(1.5M)で接続されている。学術機関以外との電子メールの信頼性向上のために、本年5月からこのような形態を採っている。
 現在のところ、授業などの演習で一斉にKINDに負荷をかけない限り著しい機能低下はない。しかし、平成7年に現在の KINDを計画する際に、情報処理センター内の計算機資源を有効に利用するという方針で進めたので、センター内外のトラフィック分散が不十分であり、そのことによる通信速度低下は否めない。次期センター計算機入れ替え計画時には、本格的なインターネット授業にも耐え得るよう改善する予定である。

2.3 KINDの運用

 情報処理センターは KIND の運用管理部所であるが、センター外のパソコンやワークスステーションのアドレス管理は各部所で行うことになっている。したがって、例えば研究室でパソコンをKINDに接続したいときには、各部所内のネットワークアドレス(IPアドレス)管理者に、アドレス取得の申請をし、各部所で独立に決められた範囲内のアドレスを発行してもらう体制が整えられている。もちろん、申請書は情報処理センターの運営委員会の承認によって正式に認められることになる。申請が認められると、IPアドレスとともに、ゲートウェイ、メールサーバ、DNSサーバ等のアドレスが指定される。これだけの手続きで、KINDを通して本学の情報処理資源とインターネットの環境を利用できる。
 この他に、情報処理センターのサーバ機あるいは研究室のサーバー機にWWWのホームページを載せ情報発信をすることも可能となっている。ただし、情報処理センターで用意したKIND運用ガイドラインを守らなければならないし、学外への発信に関しては、情報処理センター運営委員会の承認を得なければならない。例えば、目的の明確でないもの、教育機関での情報発信として望ましくないものなどは認められていない。ネットワークセキュリティー向上とともに、運用ガイドラインの見直しも現在検討中である。


3.パソコン教室とKIND

 情報処理センター管理下に6ヵ所(含ワークステーション教室1ヵ所)、工学部に4ヵ所、芸術学部に1ヵ所あるパソコン教室のうち9ヵ所はKINDに接続されている。それぞれ、パソコンの機種や性能が異なるので、すべてのKINDのサービスを利用できるわけではないが、ネットワーク接続された教室では、少なくとも、電子メールやネットニュースの利用は可能である。


4.マルチメディアとKIND

 本学には二つの特色ある教室がある。一つは3次元CGモデリングが高速に行え画像取り込みカメラが標準装備されているシリコングラッフィクス社のindyを51台擁したGWS演習室であり、それぞれのマシンで制作したCGモデリングをネットワークで共用することができる。もう一つはLL教室であり、ここのLLライブラリーには語学学習用パソコンが40台整備されている。本学は地理上アジアからの留学生を多く受け入れていることからもマルチリンガルOSを搭載して、なおかつ映像、音声を容易に取り込むことができ、インターナショナルコミュニケーションの訓練の場として、広く利用されている。これらはすべてKINDに接続されており、マルチメディア素材をネットワークで利用することが可能である。


5.まとめ

 以上ご紹介したように、本学の情報処理施設はネットワークの基盤整備と共に飛躍的に利用者が増え、その成果がようやく出てきたところである。
 今後情報処理の技術の発達はますます加速されると思われるが、目先の変化に捕らわれない情報化社会の担い手を育てていきたいと思っている。



文責: 九州産業大学
  情報処理センター事務室長 田中 正耕

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