情報教育と環境

広島国際学院大学におけるパソコン利用管理
−マルチメディア演習室−


1.はじめに

 昨年度、老朽化した視聴覚教室(1989年)のリプレースを行った。構築にあたり情報教育・研究部会を中心に、利用者の意見収集を行い、学生が自由に使える時間をできるだけ増やすよう教務課に働きかけるなど、学生がコンピュータを利用する機会が多くなるよう努力している。
 マルチメディア演習室は工学部で利用しており、電気工学科、電子工学科、機械工学科、情報工学科に所属する学生が対象の講義に利用している。また、本学の学生全員を対象とするインターネット利用者講習会や地域共同教育研究センターが主催する公開講座等でも利用することがあり、その利用内容もタイプ練習からプログラミング言語教育までと多目的になっている。
 特に教室を不特定多数の学生に対して開放するため、パソコンの資源管理やユーザ管理が重要な課題となった。マルチメディア演習室にはWindows98パソコンを設置し、OSの持つ機能をできるだけ生かしながらデスクトップやスタートメニュー等の管理を行うよう工夫した。


2.目標としたユーザ管理

 ユーザ認証には学生のE-mailを管理している既存のサーバを用い、個人の情報はこのサーバに格納されるようにした。これによりユーザの資産を教室単位に閉じて管理するのではなく、キャンパス単位で管理することを目標とした。
  1. 利用者が教室の何処に座っても個人の情報が引き継がれる
  2. 学生卓のデスクトップやスタートメニューの編集を教卓で可能とする
  3. 個人のファイルを納めるプライベートな領域を設ける
  4. 電子メールの参照結果についてもサーバで管理し、何回も同じ参照作業を行わない


3.システム構成と主な機能

 マルチメディア演習室には、サーバとしてSun Enterprise 450×1台とWindows98パソコン×92台を設置し、学内・外との通信制御のため、パソコン用UNIX(Linux)サーバ×2台を設置した。

(1)学内LANと通信制御

 ネットワークを通じて学内・外と通信するため、教室から学内LANとの接続に2台のLinuxサーバを設置してipforwardingやportforwadを使って特定のパケット以外を教室の外に出さないよう簡単なファイアウォールを作成している。また、講義等では受講者が特定のホームページを一斉にアクセスすることが多いことを考慮して教室専用のProxyサーバを設けた。
 これらの機能を連携して、例えば教室からProxyサーバを利用せずに外部へアクセスしようとすると、Linuxサーバがアクセスしようとしたホームページの代わりにProxyの利用を要求するメッセージを返すようになっている。
 図は、広島国際学院大学のネットワーク構成を示したものである。

(2)利用者管理

 学生卓の利用には、Windowsに標準で用意してあるドメインサーバへのLoginダイアログを利用した。まず、利用者は自分のメールサーバにアクセスするのと同じアカウントとパスワードを入力し、ドメイン名に教室専用のドメイン名を入力する。この、ドメインへのLogin要求はSun Enterprise 450が受取り、キャンパス毎に設置してある学生メールサーバで認証を行う。

(3)資源管理(デスクトップやスタートメニュー等)

 学生卓利用のため、ユーザ認証を行うとポリシー情報ファイルを取得する。このポリシー情報ファイルにはパソコンおよびユーザ毎に設定する利用環境を定義してあり、パソコンはこの情報を基に利用者独自の環境へと設定を変更する。さらに、デスクトップやスタートメニューの情報をネットワークから取得するようにしており、教卓で学生のデスクトップ情報を変更することを可能にしている。

(4)特定アプリケーションの利用制限

 ポリシー情報による利用環境管理では、Windowsが持つ機能の利用をユーザ単位に制限できる。特にIPアドレスやドメイン名等のネットワーク環境の設定変更、および運用に関わる重要な設定を変更する機能については、特定ユーザ以外が利用できないように設定している。
 このようにユーザの利用権限を制御することで、教員のアカウントでLoginしたパソコンが教卓の機能を持つような設定が可能となった。



図 広島国際学院大学ネットワーク構成


4.パソコン資源の管理と教材提示

 教室で利用可能な機能としてはインターネットはもちろん、ビデオやレーザディスクの映像をWindows内に表示できるほか、島単位にカメラを備えてビデオ会議等の簡単な演習を可能とした。
 また、サーバと連携して利用情報を管理することで、利用者がどこの席に移動しても利用者個人の環境が引き継がれるようになっている。さらに、資源管理により学生卓のデスクトップやスタートメニューを教卓から編集できるようにすることで、教材提示や利用可能なアプリケーションソフトの制限等を実現している。

(1)教材配布

 教室に設置したサーバに学生卓から参照可能な共有フォルダを設け、このフォルダに教卓や研究室からファイルを格納することで、教材提示ができるようにしてある。さらに、フォルダ内には教室を利用する教員名のフォルダがあり、学生はこのフォルダに対してレポート等を提出することも可能である。

(2)ホームページの利用

 教室に設置したSun Enterprise450に学内専用のWWWサーバとしての機能を持たせ、ホームページを利用した教材提示も可能にしている。具体的には、教材提示に使うフォルダ内に教員名のフォルダを設け、この内容をWebブラウザーで参照できるようにしている。


5.教室利用とリテラシー教育

 パソコンの基本操作やインターネット利用などは学生が講義を受ける前に身につけておいてほしい事柄であるが、そう理想どおりにはいかない。
 近年インターネット利用者が急増する中、一般社会では利用にあたって留意すべきことなど何も知らないまま、まったく予備知識を持たないままに利用する者がほとんどといえる。こういった状況の中で学生が安全にインターネットを利用するには、トラブルを回避するための充分な知識とモラルを身につけておく必要がある。
 情報教育・研究部会では、情報処理センターや関連部署に呼びかけて電子メールアドレスの配布時に特定の講習を受けるような方法を取っている。具体的には5月中に隔週土曜の定期講習を行った後、6月1日から7月23日までの月、火、木にマルチメディア演習室を使って利用者講習を行った。
 また、情報教育・研究部会員から所属する科に対して、コンピュータを利用する講義の中でもインターネット利用にあたってのモラルについて一言触れてもらうよう働きかけるなど、全学としてモラル教育に取組んでいくよう努力している。


6.学内への展開

 本学にはこのマルチメディア演習室の他にパソコンを設置した教室がいくつかあるが、全学利用施設として情報処理センターが直接管理を行っておらず、各学科単位に管理する教室であることと、今年度からこのような管理方法での運用を始めたことから、他のパソコン設置教室ではまだ今回紹介させていただいたユーザ管理を行っていない。
 しかし、この方法は比較的簡単に適用できることから相談や要求を受けて徐々に他の教室にも適用できればと考えている。その手始めとして、本年9月から現代社会学部のマルチメディア教室にこのユーザ管理を適用するため、学生の夏期休暇中に教室の利用環境の設定変更を行っている。


7.今後の課題

 現在、文中で紹介したインターネット利用者講習は情報処理センターが担当している。今後、インターネットの更なる普及と発展によりその仕事量は増大するものと思われる。さらに技術的な知識を身につけた学生が増えることで、学内からのセキュリティ崩壊が起きる可能性も高くなる。
 大学としては、これらに対して利用制限などの強化で規制するのではなく、モラル教育などで対処していく必要があると考える。


文責: 広島国際学院大学 情報処理センター
情報教育・研究部会


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