会員の声

発言促進手段としての電子メール


大門正幸(中部大学人文学部英語英米文化学科)



1.はじめに

 学生の発言の少なさが問題になっている。「平成10年度私立大学教員による授業での情報機器使用調査の報告」によれば、学系にかかわらず、およそ5割もの教員が、学生の「発言・質問が少ない」ことを嘆いている。筆者も授業では学生に対して同じ思いを抱き続けている。しかしながら、授業では決して発言しない学生も、研究室で個別に会えば大抵の場合、比較的積極的に発言する。したがって、授業において学生達の発言を妨げている主な原因は、人前で話すことに対する抵抗であると言うことができる。そこで、学生の発言を促す試みとして、人前で直接話す必要のない、電子メールを使用し、その発言促進手段としての有効性を検証した。


2.授業形態

 検証の対象とした授業は『英語の諸相A』で、学生に対して英語学の基礎的な考え方を体得させることを目標としている。検証期間は平成11年度前期である。学生数は約70名(2クラスに分割)で、受講生は全て筆者の所属する英語英米文化学科の学生である。授業の場所は学内の学術情報センターで、学生はWindows用電子メールソフト(AlMail)を利用した。また、実習機のネットワークに筆者のコンピュータ(PowerBook G3)をイーサネットおよび、Sビデオケーブルを通じて接続し、その中身を学生に提示できるようにした。このような環境において、以下のような形式で授業を行った。
  1. 予め学生に、授業で最も重要視するのは、「自分で考えること、自分の意見を持つこと、そしてそれを他人に効果的に伝えること」であることを述べる。
  2. 各授業時間の話題に合わせて作成した教材を学生に提示する。
  3. 教材を元に学生に問題を提起する。
  4. 学生に問題に対する答え/意見を書かせ、一定時間内に筆者宛てに電子メールで送らせる。
  5. 送られて来たメールを実習機のディスプレイに提示し、筆者の考えを述べたり、提示されたメールや筆者の考えに対する意見のメールを送らせたりする。
  6. 授業時間の最後に宿題を出し、次回の授業までに電子メールで提出させる。


3.学生の反応

 学生の反応は非常に良好であった。毎時間送られてくる解答の中身には大きなばらつきがあるものの、出席を続けた学生は全員積極的に意見を提出した。学生の感想も、この授業形式に好意的なものがほとんどであった。以下にそのいくつかを記す。  これらの意見が示すように、学生の発言を促進する手段として電子メールはかなり有効であると結論付けることができる。


4.今後の課題

 電子メールが学生の発言を引き出すのに有効であることは実証されたが、それをいかに口頭での発言に移行させていくのかが問題である。電子メールの送信により、自分の意見を表すことがきっかけとなり、口頭でも積極的に発言できるようになれるのが理想であるが、この点は今後検証していかなければならない。ただし、次のような意見を書いた学生もいたので、電子メールから発言への移行は意外に容易に進むかもしれない。

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