第6回産学連携人材ニーズ交流会開催概要報告

T.開催日時

平成27年3月4日(水)13:30〜17:00 人材ニーズ交流
              17:15〜19:00 情報交流会

U.開催場所

新宿住友ホール:東京都新宿区西新宿2-6-1

V.参加申込者

大学関係者 53大学 75名

企業関係者 24企業 53名

経済産業省 1名

計 128名

W.開催趣旨

 成長社会から成熟社会への大きな変化が始まっており、これまでの成功モデルやシステムへの依存から新しい価値創造を目指した社会へ脱皮することが避けて通れなくなっている。このようなイノベーションをもたらす時代を切り拓いていくには、常識に囚われることなく、さまざまな領域から多様な情報や考えを組み合わせ、新しい視点を提案して挑戦し行動できる実践的な人材力が要請される。そこで、今回は社会を変革するエンジンになる情報通信分野の人材教育の在り方についてグローバルな視点から理解を深め、私立大学としてどのように情報通信分野の教育改善に活用できるかを考える場とする。

X.プログラム

1.開会挨拶

  向殿 政男 氏 (公益社団法人 私立大学情報教育協会会長)

2.基調講演「新しい社会を築き、経済成長を加速させるITによる社会変革を考える」

  小池 雅行 氏 (経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室長)

 ICTによるイノベーションの創出に取組む諸外国の状況や技術動向について説明の後、日本企業ではデータ活用によるイノベーション創出の取組みが遅れている。あらゆるモノがネットワークで繋がりリアルタイムでデータ化されるIoTの重要性に関する認識が不足しており、従来のビジネスモデルを変えていく必要性に迫られている。今後はICTによる現状の「改善」という発想ではなく全く新しいイノベーションを生み出すという発想への転換が重要である。そのため、経営革新や新しいビジネスモデル創出に必要な人材の育成と確保、技術やビジネスモデルに革新をもたらすベンチャーの育成などが大きな課題であることが強調された。

    基調講演資料

3.課題提起
(1)「情報通信分野の人材教育に必要な「デザイン思考」と「分野横断教育」の重要性を考える」
  栄藤 稔  氏 (株式会社NTTドコモ R&Dイノベーション本部 執行役員)

 システムをつくるための技術よりもシステムを利用する人達に感動を与えられるようにすることが重要である。建築家のように図面、模型を用いて作品をプロト化し、「利用者にもたらす価値はなんなのか?」と自問しながら、目的を達成するデザインの力が求められてくる。環境、経済、人間工学などを総合的に学び、夢を追求し、俯瞰してデザインできることが「イノベーションの創出」に不可欠となる。このような人材育成には、従来の教育に加えて「デザイン思考」を加えた大学教育の変革が大きな課題となることが強調された。

    課題提起資料

(2)「情報通信分野の人材教育に必要なビッグデータの利活用力の重要性を考える」
  佐藤 一郎 氏 (国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 教授)

 グローバル化、パーソナル化する情報化社会の中であらゆるモノがインターネットを通じて接続されるIoTの時代を迎え 、膨大で多様なビッグデータをいかに扱い、ビジネスや社会課題の解決に役立てることの重要性がこれまで以上に増している。

 それには、ICTの知識だけでなく、現場の気付きをデータ分析に活かせる現実世界の知見が必須となる。

 このような人材の育成には、これまでの教育に加えて統計学や自然科学など分野を横断した学びを通じてデータに基づいた判断能力を身に付けさせる大学教育が必要であることが強調された。

    課題提起資料

4.情報通信分野の人材育成の方向性を考える全体討議

 最初に情報系人材の分野横断型オープンイノベーションによる学びの仕組みについて情報専門教育分科会から問題認識の整理が行われた後に、課題提起者を交えて情報系人材の教育の方向性について意見交換し、分野横断型教育への転換を考察した。主な意見を以下に示す。

  1. @ 問題認識として、企業や他大学の開発力を活用したオープンイノベーションの学びの仕組みについて学内での意思統一、大学間の意思統一、産学連携による取組みが進んでいない。最大の問題は学内における学部・学科間の壁と教員自身の閉鎖性にある。その上でオープンイノベーションの人材を育成していくには、構想力とそれを実現できる能力が重要になる。その手段として、モチベーションを持たせるとともに、常識に囚われないオープンな発想力の育成が必要となる。知識偏重教育から脱出し、個人の多様性を気付かせる教養教育と専門教育との統合の観点に立った教育はなされてきたであろうか。教員は個々の思い込み教育から離脱し、実社会に目を向け、学内外との学びの協働体制を構築していくことが急がれる。
  2. A 従来は知識・技術中心の基礎教育に重点が置かれており、社会の現場を理解させる教育が不足していたが、今後の教育には「起業」の実際化に取組む人材育成に向けて知識や技術を統合する教育が必要になる。
  3. B ICTはあらゆる分野にかかわることから分野の枠に囚われず他分野と連携した教育の必要がある。
  4. C 教員ができる授業でなく、最高の教育資源を用意し、多様性の中で考えさせる教育が重要。
  5. D 現場経験のない学生に課題発見の授業は難しいと思い込んでいるが、学生なりに現場観は持っており、やる気やアイデアを引き出して総合的な力を付けさせるのが大学教育ではないか、知識を身につけるだけの教育ならば専門学校と変わらない。
  6. E イノベーションは組み合わせから生まれる。海外ではコンピュータサイエンスと他分野の教育を組み合わせて実施しており日本も変えて行かないと日本の卒業生は生き残れない。
  7. F 分野、科目、教員の壁を越えて教育を改善していくには問題点を学内で議論し、大学全体として改革していく取り組みが必要である。交流会も6回を迎えその認識を深めるという段階になってきたと思う。

5.教員の教育力の向上を目指すための「企業現場研修」の取り組み報告

 本年度の「大学教員の企業現場研修」の実施状況について4回の概要を説明し、年々参加希望が増えていることから非常に好評であり、今後も継続・充実していくことを確認した。

    開催報告

6.学生に気づきを喚起させるための「社会スタディ」の取り組み報告

 96名の応募の中から未来を切り拓く志の高い1・2年生76名が参加した。4名の有識者から気づきを喚起させるための情報提供が行われた。質疑応答では、自分の意見を持って批判的に捉える学生の質問も多く見受けられ参加者の高い意識が確認された。

 さらに、グループ討議においても初対面の学生同士が熱心に議論しており、未来に向けた学びの目標を考えさせる場として非常に有益であることが認識された。

    開催報告

7.情報交換会

 約70名が参加し、今後の取り組拡大に向けた活動を継続していくことへの前向きなご意見を数多くいただいた。


今後の事業や委員会活動に
反映させていただきますので、
ご意見ご要望をお寄せ下さい。

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