平成30年3月14日(水)13:00〜17:00
AP市ヶ谷 Learning Space
大学関係者 69 大学 114名(前年 65大学 94名)
企業関係者 24 企業 46名(前年 18企業 35名)
計 160名(前年 129名)
IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新は、社会や産業にどのようなインパクトを与え、新しい価値を創造していくのか、期待と不安が入り混じる中で産業構造の変革が進んでいます。
このような社会の変化に大学教育はどのように対応していくべきでしょうか。そこで今回は、産学が連携して社会が抱える問題解決に関与できる構想力・問題解決力育成に向けた分野横断型のPBL授業モデルについて考えるとともに、データを活用して問題解決や価値の創造につなげられる人材の育成について、大学教育をどのように変革していくべきかを探求する場にしたいと思います。
1.開会挨拶
向殿 政男 氏 (公益社団法人 私立大学情報教育協会 会長)
2.情報提供
(1)データを活用して問題解決や価値の創造につなげられる人材の育成について
須藤 修 氏(東京大学 大学院 情報学環 教授)
AIロボットなどの技術革新により、これまでの職能とスキルでは通用しない時代が来ることもあって、米国のMOOCではデータサイエンスとディープラーニングが最も人気が高くなっている。しかし、日本では、AI、ビッグデータを活用できる人材教育が遅れており、データを応用して問題解決や価値の創造につなげられる教育をしていかないと世界の競争に取り残されることが強調された。
(2)データサイエンスを育成する大学教育の取り組みについて
竹村 彰通 氏(滋賀大学 教授 データサイエンス学部長)
国立大学法人滋賀大学の取組として、21世紀の石油とも言われる「データ」を資源として活用できる人材育成に向け、データサイエンス学部を設立した。データの処理・分析から新たな知見を得て、ビジネスや政策などの領域で課題を読み取り、問題解決や価値創造に繋げられる文理融合の教育モデルに産業界と連携して取り組んでいることが紹介された。
(3)産学連携によるフィンテック人材育成の取り組みについて
中妻 照雄 氏(慶應義塾大学 経済学部 教授)
金融とAI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなどのIT技術を融合することで、金融業などを始めとする企業サービスが激変することに備え、3年次、4年次を対象にフィンテックの理論と実践の演習を行い、チームでフィンテック・ビジネスの起業提案の報告会を行い、外部企業による審査で優れた提案を選考し、表彰している。大学の教員は自分の専門を教えるだけで、学生の将来を考えた教育をしていないので、人材育成の意識改革が課題であることが強調された。
(4)構想力・問題解決力の育成に向けた産学連携による分野横断PBL授業モデルの提案
大原 茂之 氏(本協会 情報専門教育分科会 主査)
佐野 典秀 氏(本協会 情報専門教育分科会 委員)提案の背景として、大学が社会の課題や技術革新と世界の教育の潮流を把握し、イノベーションに関与できる人材教育へ取り組まなければ、やがて消滅の危機を招くようになる。正規授業の中で複数の大学、地域社会又は企業を巻き込んで、分野が異なる学生チームを編成し、社会が抱える問題を多面的に考察し、将来あるべき姿を発想して実現への道筋を構想する分野横断型のPBL授業を、小規模でも良いので進めるべきであることが強調された。
3.全体討議
「今後のICT活用人材を考える」をテーマに三つの視点で意見交流した。
一つは、AI、ビッグデータ、IoTなどが進展することにより、社会の産業構造や仕事の質が変化することについて認識の共有を図った。その中で、AIは正解を答えることができるが、何故正しいのかは説明できない。20年先に仕事で求められる基礎力としては、論理的に説明できる論理構成力、いわゆるクリティカルシンキングが重要であり、そこに大学教育の役割がある。また、AIでビッグデータの処理を行うには、データを処理しやすい形に整えるデータクレンジングが不可欠となるが、日本では人材が育成されておらず、データサイエンス教育による人材育成が急務となっていることが確認された。
二つは、オープンイノベーションの重要性と産学連携による分野横断型教育モデルの必要性について認識の共有を図った。その中で、教育におけるオープンイノベーションとしては、縦割で教員個人に依存する教育から、分野横断で社会や産業界と連携していくPBL授業モデルの必要性が確認された。また、授業を継続していくには、学生の提案が企業に役に立つことが重要である。一つの方法として、PBLの評価をクラウドファンディングを用いることで失敗を経験させるなど、学びに真剣に向かい合うようにすることが有効であることが確認された。
三つは、データサイエンス教育の重要性とこれからの取り組みで、オープンイノベーションの基盤力として、データサイエンス教育への取り組みが、世界から見て日本では非常に遅れていることが確認された。
また、産学連携していくには企業が期待する人材を大学教育に反映できるようにするなど、企業のメリットを考える必要があること。今後データサイエンス教育に取り組むに当たって、先進的に取り組んでいる滋賀大学と私立大学間が連携できるようにすることが確認された。4.会場の様子
本年度の「大学教員の企業現場研修」及び「社会スタディ」の実施状況を報告し、参加者からの高い評価を受けていることから今後も継続・充実・拡大していくことが報告された。
話題提供 全体討議
今後の事業や委員会活動に |