社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第2回化学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成17年9月20日(火)午後2時から午後4時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:小中原委員長、高野、及川副委員長、堀合、庄野、幅田、梅村、武岡各委員
  井端事務局長、木田

W.議事進行

 議事に先立ち、本年度より、梅村 和夫 氏(武蔵工業大学工学部)に委員として就任いただいた旨の報告がなされ、自己紹介がなされた。

1.報告書の授業モデルについて

 前回の委員会にて、事務局より18年度11月に発刊を予定している報告書のテーマについて下記の旨の説明がなされた。

「18年度の報告書では、中教審大学分科会の答申「我が国の高等教育の将来像」において、今後10年?20年のうちに各学問分野別のコア・カリキュラムを作成することが提言されたことを踏まえて、各学問分野別にコア・カリキュラムを想定し、具体的な教育目標の達成に向けて有効な、ITを活用した教育方法を紹介することにしている。そこで、まずは本委員会でも、化学分野におけるコア・カリキュラムの枠組みを検討いただきたい。」

 以上の説明に基づき、報告書のテーマや内容について、自由討議したところ、下記の旨の意見があった。

  • 今回事務局より配布された「授業改善に関する調査」の回答結果を見ても、未だ授業にITを活用していない教員の数が多いことが窺える。そのような教員の注目を集めるためにも、ITを活用した教育方法の将来的な理想像を描く必要があるのではないか。
  • コア・カリキュラムをテーマとしても、大学及び教員の関心を引き寄せることは難しい。むしろ今回配布された資料にもあるように、化学教育における社会連携をテーマとした方が、時勢的にも適切であり、またこれまで委員会で検討してきた実験動画データベースとの連関性も強いのではないか。
  • 社会支援に関して言うと、東邦大学理学部では、一年生を対象とした科目「化学セミナー」において工場見学を実施しているが、限られた学生数しか受け入れてもらえないのが現状である。それ故、ネットワークを介して企業に協力いただく場合にも、企業側の積極的な協力を得ない限り、実現できないことが予想される。また、工場見学できない学生のために、HP上で工場見学をバーチャルに体験できるよう個人で尽力されている教員もいるが、そのような教員を組織化して裾野を広げていくことが始めに必要ではないか。
  • ITを活用した教育の社会支援を実現するためには、教員側に対して関連情報を容易に引き出すことが可能な仕組み、授業との関連性の提示、教室内の環境整備が必要である。特に、環境整備の面では教員一人で容易にセッティングができるシステムが必要である。
  • 単に企業現場を学生に見せるだけでは教育効果は期待できない。しかし、昨今の学生は、実験に対する洞察力や現象を理解する能力が乏しいことから、企業の高機能なシミュレータを用いた実験を見せることによって、化学と社会との接点を気付かせ、統合的な思考力を育成することに役立つのではないか。
  • 昨今、環境ホルモン、浮遊物質、化学物質などから起因した事故が多発している。それ故、企業から事故事例を紹介いただくことによって、化学物質を取り扱う上で安全性を確保することが、いかに重要であるかを学生に教えることができるのではないか。

以上の意見から、化学教育では、化学実験と安全教育を切り口として、企業との連携が可能であるとの共通認識を得た。次に、具体的な構想について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 「有機物の取り扱い」、「ガス」、「廃液」、「浮遊物質」、「静電気」など4〜5つ程度テーマを設け、それぞれ専門家による基調講演、企業人によるケーススタディを織り交ぜた90分程度の授業とする。
  • 講義をビデオ撮影し、後日ビデオ編集を行いコンテンツ化し、無料で配布・配信する。
  • 一年以内に4〜5つの授業実験を行うことはスケジュール的に困難であるから、4〜5ヵ年計画で年に1〜2回の実施を目指すことが現実的である。
  • 対象学年は、就職を間近に控える3年生をターゲットにした方が、教育効果を期待できる。
  • 企業では、安全教育用のビデオを大学に無償提供しているところもあるから、許諾を得ることができれば、コンテンツかすることも可能ではないか。

以上の意見を踏まえ、来年4月以降の実施に向けて、今年度中に企画・構想を確定することとした。なお、次回委員会までに、委員各位安全教育に関する情報を提供いただくこととした。

2. 化学演習問題データベース、基礎化学実験動画データベースについて
基礎化学実験動画データベースについて、動画の解像度やファイル形式等について、下記の旨の確認がなされた。

  • 動画の解像は、一般的な視聴に耐えられるよう、320×240とする
  • ファイル形式は、前回Flash形式にした方が良い旨の意見があったが、利用者がフレキシブルに扱うことができるよう、mpeg2とする。
  • 担当委員各位は、動画と実験に関するメモをexcelにまとめ、それらを高野副委員長が取りまとめる。
  • ビデオ撮影等に人件費が必要な場合は、私情協が負担する。
  • 最終的にはDVD-ROMに収録し、希望者に無料配布するが、利用に掛かる権利処理は、私情協事務局が行う。