社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第1回歯学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成16年5月18日(火)午後3時から午後5時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:神原委員長、藤井、小菅、森實、岡本、上村委員

      井端事務局長、木田

W.検討事項

 1.歯学教育情報データベースについて

  前回の委員会において、国内の歯科系大学にコアカリキュラムに関わる授業情報の提供を求めた結果、5大学からしか回答が無かったことが報告されたことを受け、今後の方針について意見を交わした結果、下記の旨の意見があった。

  • 唐突に協力を呼びかけても、訝しがられる可能性が高い。まずは委員校の授業情報を収集し、それをサンプルとして、加盟校、非加盟校に段階的に協力を呼びかけるのが良いのではないか。
  • 17年度のCBT実施に向けて、各大学とも授業内容やシラバスの策定に試行錯誤している時期であり、詳細な授業内容を公開したがらない可能性もある。ただ、シラバス程度の相互に公開し、参照しあうことには意義があると思う。将来的には、CBTや国家試験の結果と授業内容・シラバスの相関性を確認できるような仕組みも必要だが、大学間でどのような授業が実施されているのかも把握できていない現状に鑑みると、まずはシラバスを一覧視できるようなデータベースの構築を目指すべきではないか。
  • 歯科医師協会ではなく、私情協として実施することの大義名分を明確にしなければならない。例えば、歯学教育におけるIT活用の基盤環境の整備のために、シラバスデータを収集することが必要となるということを各大学に伝えなければならない。
  • 本委員会で作成したフォーマットにあるようなSBOsは、各大学のシラバスを見てもその内容がまちまちである。委員会で授業情報データベースのサンプルを作成し、SBOsの望ましい記入例を提示することも必要ではないか。

以上の意見を踏まえ、今後の方針としては、まず委員校でのシラバスを収集し、できる限り委員会作成のフォーマットへと(特にSBOsの記入を重視する)変換し、私情協のWebサイト上に掲載することとした。また、コアカリキュラムのどの項目に該当しているのかも、各科目に明記することとした。

 2.複数大学間での遠隔授業実験について

前回の委員会において、神原委員長より委員校間での遠隔授業実験の提案がなされたことを踏まえ、実施可能性について意見を交わしたところ、下記の旨の意見があった。

<運営について>

  • 大学間で環境が整備できれば、技術的に実施することは可能である。しかし、授業運営に辺り、大学間でのカリキュラムを如何に調整していくのかが大きな課題としてある。
  • 委員会として実験するのであれば、特別授業という形式で通常の授業とは別枠で実施することも可能ではないか。
  • 大阪歯科大学で導入した授業自動収録システムのようなものを用いれば、リアルタイムの遠隔授業でなくても、オンデマンド形式で実施することも可能ではないか。

<遠隔講義の効果について>

  • 授業を収録するためのビデオ撮影を行うだけでも、学生は普段よりもまじめ授業を受ける。また授業をそのまま収録し、いつでも閲覧できるような仕組みを作れば、授業評価を行うことも可能である。また、OBに授業を売ることによってビジネスとして成立するのではないか。
  • 他大学とリアルタイムによる遠隔授業を実施する場合には、自大学に無い授業を相手校の先生に講義してもらうのが最も望ましい。また、既存の知識詰め込み方の講義を遠隔授業しても、あまり教育効果は無いように思われる。臨床科目であれば、一つの問題について、大学間でディスカッションできるなど、比較的やり易い。
  • オンデマンド型の授業であれば、自大学に無い授業を学生がいつでも閲覧できたり、また教員自身が自分の授業の中で、素材として用いることも可能である。オンデマンド授業に限らず、稀な症例のデータや教材などを共有化して、その効果を測定することも可能ではないか。
  • オンデマンド授業や教材であれば、将来的には授業情報データベースと連携して、科目ごとにリンクを張ることが可能となるのではないか。
  • 一つの授業科目で複数の大学の教員が協力して、教材の共有を図れば、教育内容の豊富化に繋がるのではないか。

また、事務局より、オンデマンド授業の一例として、カリフォルニア大学バークリー校の「Digital Chemistry」プロジェクトについて紹介があった(http://socrates.berkeley.edu/~kubinec/index.shtml)。このWebサイトには、基礎化学の一年間の授業がオンデマンド形式で一般公開されており、演習問題やその解答も掲載されている。またアニメーションによる実験シミュレーションなども掲載されている。

以上を踏まえ、次回の委員会では、リアルタイムの遠隔授業形式に拘らず、オンデマンド授業、教材の共有化など、可能な実験授業の様式を検討することとした。