社団法人私立大学情報教育協会

平成 17 年度第 3 回英語教育 IT 活用研究委員会議事概要

 

機テ時:平成 17 年 11 月 26 日(土)午後 3 時から午後 5 時まで

供ゾ貊蝓Щ箴雍┿務局会議室

掘ソ仞兵圈北出委員長、安間副委員長、熊井、鈴木、原田、小野、田中、西納各委員、山本 英一 氏、木田

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•  小野 隆啓 委員による授業事例報告

 小野委員より、「複数言語同時学習プログラム」と題した IT 活用授業事例を報告いただいた。要旨は以下の通りである。

 日本の大学における外国語学習の形態は、中学・高校と同様に個別言語学習に陥りやすい。外国語大学における第二言語も同様に、専門とする第一言語と独立した無縁のものとして教授されてしまうため、言語間の相違点、共通点、類似点が不明瞭になり、結果として文法・語彙・発音などが定着しない。このような問題を解決するために、京都外国語大学では、英語を機軸とした二言語同時学習を実践し、学習動機の増進を試みている。

 具体的な授業方略としては、 CALL EX とチームティーチングの融合である。 CALL EX の ”EX” は授業科目名で、英語( E )と第二言語( X )を意味する。対応している第二言語は、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ポルトガル語、イタリア語である(ポルトガル語とイタリア語は 2006 年度より実施)。この授業は、 2 講義連続授業( 180 分)で、英語の教員と第二言語の教員が合同で授業を行う(チームティーチング)。

 この授業は、自律型 CALL 演習 (40 分 ) 、 Homework review 、二言語対照言語学的アプローチ、 Reading 、 Report 、 Tutorial Class によって構成されている。自律型 CALL 演習では、 ALC Net Academy を利用した TOEIC practice 、 ALC Power Word を利用した Vocabulary Development 、 AmiVoice CALL 、 Acoustic Core を利用した Pronunciation Clinic を実施している。 Homework review では、ホームページ上に掲載された課題のレビューを行う。二言語対照言語学的アプローチでは、映画教材(ハリー・ポッター)を活用し、各言語の字幕や翻訳を対照しながら文法、表現、文化的差異の教授している。 Reading では、 POP 辞典 を活用した読解と Cloze Test (穴埋めテスト)を実施している。 Report では、インターネット上のニュースサイト( CNN や MSN Video )を中心に、 POP 辞典を活用しながらその要旨をまとめさせている。

 このような取組みに対する学生の反応を測定するために、アンケート(20項目について 5 件評価)を実施したところ、 20 項目中 13 項目で 4.0 以上の評価、 7 項目で 3.0 以上と概ね良い評価を得た。なかでも学習内容、チームティーチング、教材に関しては高い満足度を得た。その他にも、両言語に対する興味を促進することにより、 CALL を用いない他の授業への参加意欲を向上させることにも役立った。さらに成績に関しても、プリテストとポストテストの平均点を比較した結果、ポストテストの平均点が高かったことから、成績の向上に寄与したと言える。

 今後の方向性として、同時学習の対象言語の拡大を計画している。 CALL とチームティーチングによる二言語同時授業は、 2003 年に英語とフランス語間で始めて実施された。その後、 2004 年にはドイツ語とスペイン語、 2005 年には中国語が加わった。また、 2006 年には、ポルトガル語とイタリア語でも実施する予定である。それに伴う CALL 教室の増設と教材の増加が当面の課題である。このような二言語同時授業を拡大することによって、将来的には二言語を主専攻とする実力を備えた学生の育成と、一般教養科目への適用拡大を図りたい。

 以上の報告について、下記の旨の質疑応答がなされた。

Q1. チームティーチングの議論の際に、学生からは帰納的に意見を求めているのか。それとも教員が演繹的なルールを提示した上で議論を進めているのか。

A1. 両方採用しているが、学生のレベルに応じて使い分けている。積極的に意見を発する学生の多いクラスや教員が話題を振らないと議論の活性化しないクラスもある。

Q2. この科目は必修であるか。

A2. CALL EX は必修ではなく選択科目である。

Q3 . 教員同士の打ち合わせはどのように行っているのか。

A3. 対面で話す機会は限られているので、殆どはメールで意見交換している。そこでは扱うテーマの刷り合わせを行っているが、詳細までは決定していない。むしろ、ある程度授業内容の自由度を残すことで、突発的な議論や出来事が生じ、授業の活性化に役立つ。

Q4. POP 辞典を使うことは、必ずしも学生の語彙力の向上に寄与するとは言えないが、どのような目的で用いているのか。

A4. Reading では語彙力の向上というよりも長文への拒否反応を解消することを目的としているが、毎回類似したテーマを取り上げていることため文章中に同一の単語が繰り返し現れることも多く、その過程で語彙を増やすこともできる。

•  山本 英一 氏による授業事例報告

 山本英一氏より「授業支援型 e-Learning システム CEAS & CEAS が創出する新しい学びのスタイル」と題して、英語教育における e-Learning の活用実例を報告いただいた。要旨は以下の通りである。

CEAS は ” Web-Based Coordinated Education Activation System” の略称である。このシステムは、関西大学工学部によって開発され、英語教育での活用も工学部との共同プロジェクトとして実施している。市販の LMS は、自宅での個別学習を支援するものが多いが、 CEAS はあくまでも対面授業を支援するために構築されたシステムである。つまり、システム内で全ての学習が完結する訳ではない。この点が市販のシステムと大きく異なる点である。つまり、 CEAS は 1 回 1 回の授業の進捗や学生のレベルに応じて、レポートや課題、アンケートを提示することに主眼を置いている。

 英語教育で CEAS を活用するに至った経緯として、既存の1.授業支援システム、2.既存の e- ラーニングシステム、3. Web シラバスシステムそれぞれに問題点があったことに存する。具体的に述べると、1については、学生数が 2 万人を超えるにもかかわらず CALL 教室が 6 教室しかなかったため、コンピュータを利用した授業展開をすることが困難であったこと、 CALL システムでは授業進行や成績評価との連携が希薄であったことが挙げられる。2については、先述した通り、既存の e-Learning システムは個別学習向きであり、授業進行との連携が希薄であったこと、3については、単に学生が科目登録するためのシステムとして機能しているのみで実際の授業との連携は希薄であること、さらに授業データが蓄積されていないために外部評価対応力が弱いことを挙げられる。

 このような問題点を解消し、教育の質の向上と教員の負担の軽減を図ることが、 CEAS の活用によって実現できると考える。

CEAS を活用することで実現可能な機能としては、以下のものがある。

•  教材呈示 / 配布(著作権の問題上、閲覧・コピーは科目履修者のみ可能)

•  提出物の受付(科目履修者のみ閲覧・提出可能。提出物は名列表に入る)

•  アンケート

•  レポート

•  授業中の小テスト(選択式 / 記述式 / 記号入力式 テストの作成が可能)

•  出席確認( CSV 出力により出席表の編集の編集可能)

•  学期末の成績評価(連結一覧評価表)

•  学生へのお知らせ(科目履修者に対して)

•  質問受付と回答( FAQ 。個別に電子メールで回答、または科目履修者全員に公開も可 )

•  電子掲示板( BBS)

 

e-Learning の具体的なコンテンツとしては、「多様化」への対応が一つのポイントとなる。具体的には入試の多様化( AO 入試、スポーツ推薦、一般入試)、学習経験の多様化 ( 英語化科・帰国学生 ) 、学習スタイルの多様化( ALT による授業・情報メディアの利用)により、学生の習熟度やモチベーションにも格差が生じており、これに対応したコンテンツを提供しなければならない。さらに、教員と学生間では英語教育に求めるものに違いがあることから(例えば教員は時事問題、オーセンティックな英語教育を実現したいと考える一方、学生は娯楽的な話題、わかりやすい平易な表現法を求める)、両者の折り合いをつけ、実効性の高い工夫を施す必要も生じる。その一環として、関西大学では BBC をベースとしたコンテンツを実験的に作成している。コンテンツは、学生のレベルに応じて、初級・中級レベルと上級レベルの二つ用意している。初級・中級レベルのコンテンツは、使用語彙を制限し、さらに発話速度も変更している。上級レベルは、改変を加えずに活用している。

 学生が CEAS にアクセスした時間を分析すると、夜間及びは授業日の午前中にアクセスが集中している。このことから、 CEAS を半強制的に利用させることによって、学生の自立学習と学習習慣の形成を誘導することができたと言える。また、掲示板やチャットの利用状況を見ると、学習コミュニティが形成されていることも窺える。さらに、上級者クラスにおいて TA を配置したところ、学生は教員に対して質問しづらい点などについて積極的に TA に助言を求める動きが見られたことから、一層密度の高い学習コミュニティの形成が可能となったと言える。

 2007年度からは、 CEAS をベースとした授業が正規カリキュラムに組み込まれる予定である。具体的には、各学部2年次配当科目の英語掘 e-Learning )で、各学部に2クラス開設(1クラス80人)する。ここでは、 CEAS を使った自己学習と対面授業の成績を50%ずつ評価することにしている。自己学習では主に小テストを課し、対面授業では自己学習に基づく小テスト・フィードバックとレクチャースタイルの授業を展開する。テキストは、 BBC をベースとした教科書を利用する。

 今後の方向性としては、 e-Learning による事前・事後学習を定着化することによって、対面授業のイメージを一新するとともに、 TA の配置によって、教員サイドの役割分担と学生の継続的ケアを実践し、教育の質的向上を図りたい。

 以上の報告について、下記の旨の質疑応答がなされた。

 

Q1. 学生の自宅のネットワーク環境はどの程度整備されているか。

A1. 個人差があり、必ずしも全員ブロードバンドに対応しているとは限らない。現状では学内の PC ルームからアクセスする学生の割合が高い。このような状況に鑑みて、現在学内の PC 数を増設することを計画している。

Q2.TA に対する組織的な教育は実施しているか。

A2. 行っていない。 TA は外国語研究科に属する大学院生であり、彼らも将来は外国語の教員を目指している。また、教員とも日常的に連携していることから、特別な教育は必要ではないと考えている。

Q3. CEAS を活用した授業科目を正規カリキュラムとして組み込む際に、各学部に対してはどのような触れ込みで折衝したか。

A3. 学生数に鑑みて教室内での学習だけでは限界があり、学生の語学力を向上するには授業時間外の学習を確保する必要があるが、そのためには e-Learning は不可欠であるとの説得を行ったところ、理解を得られた。

 

Q4. 各学部から、専門に必要とされる英語を教育するよう要望が上がってくると思うが、それに対してはどのように対処しているか。

A4. 確かにそのような要望はあるが、外国語教育研究機構の教員でそれを対処することはできないから、各学部の教員との連携が必要である。そこで現在工学部の教員とともに ESP 教育の方法を検討している。

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