社団法人私立大学情報教育協会
平成19年度第2回英語教育FD/IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成19年9月14日(金)午後2時から午後4時まで

供ゲ饐譟Д▲襯ディア市ヶ谷私学会館

掘ソ仞兵圈Щ核椣儖長、田中副委員長、五十嵐、小林、原田、小野、西納各委員、伊藤氏(内田洋行)、井端事務局長、木田

検サ鳥進行

1.英語教育における産学連携授業に向けて
 
議事に先立ち、井端事務局長より経済同友会の報告書「教育の視点から大学を変える」及び文部科学省大学分科会制度・教育部会学士課程教育の在り方に関する小委員会による「学士課程教育の再構築に向けて」について下記の旨の説明がなされた。

  • 報告書「教育の視点から大学を変える」では、大学には研究よりも人材育成に重点を置いたミッションがあるが、人材育成について社会の要請と大学との間にミスマッチがあり、ミスマッチ解消のためには、「大学人一人ひとりの意識変革を通じ、大学が『日本のイノベーションを担う人材』育成の場として、自らの活路を拓いていくことを強く期待」するとともに、「企業経営者としても、こうした変革を支えるための努力を重ねていきたい」と訴えている。つまり、企業サイドとしても大学教育に対して積極的に支援したいとの意志を表明するものである。
  • 教育再生会議においても教育における産学連携を推奨しているが、同報告書を基として考案されたものと思われる。
  • 学士課程教育の再構築に向けてでは、大学全入時代の到来に備えて、大卒者の質を確保するための指標として、学士力の定義を提案している。
  • 学士力は、「知識」、「技能」、「態度」、「創造的思考力」の4分野13項目により定義付けられるものである。併せて、それらを評価するために卒業認定試験による厳格な評価の導入も提案されている。
  • このように、大学教育に対する社会からの要請が強くなっている。本委員会としても産学連携を通じて授業改善に寄与することを期待したい。

次に、山本委員長より、資料「産学連携教育<大学英語教育からの要望>」について説明がなされた。要旨は以下の通り。詳細は配布された資料を参照されたい。

○ 前回の議論におけるポイントの説明

・ TOEFL、TOEICの点数では学生自身具体的な英語能力を判断できない
・ 大学の英語教育の効果を測定するためには、卒後の長期追跡調査が必要
・ 大学の授業だけでは学生の英語力向上を測定するのが困難
・ 学生が自分の英語力を判断できるような場の提供が必要

○ 企業との連携方法について

‖膤悒リキュラム上での授業支援

・ 授業への社会実務者による参画・支援
・ 大学授業と実務現場との遠隔連携授業
・ 学生による地域社会でのボランティア活動や実務現場へ体験入学
・ 企業側が開発した教育プログラムへの参加
・ 授業外での共同イベント

▲灰鵐謄鵐弔筌魁璽好Ε┘△粒発・流通に関する連携

・ 出版業界などから提供されるテキスト関連(や教育産業界から提供されるソフトウエア・コンテンツ
・ 教員が自ら作成した教材コンテンツの汎用性やネット上で利用可能な教育リソースの活用
・ 研究開発に準じた教育教材やコースウエアの共同開発

授業支援システムの産学連携

ち竿姪な教育環境の改善に関する産学協同開発

次に、出席者各位コメントを求めたところ、以下のような意見があった。

<委員からの実情報告と要望>

○ 大学にも企業出身の教員がいるが、管理職者だった者が多く、人事管理等について詳しくても、所謂現場的な話には弱い。企業の現場で働いている人たちの声を、オンデマンドなどの形式によって学生に伝え、今現在学んでいる内容と現場の繋がりを、英語分野においても認識させることができれば理想的である。

○ 英語教育も一般英語教育と専門英語教育の二つに分類することができる。大学の英語教育は殆どが一般英語教育であるが、それが専門英語教育と内容的に結びつかないことが問題として挙げられる。

○ 資料にも書かれているような、機密情報に抵触しない範囲で、商品企画、販売企画、人事考査、経営会議に関するパッケージ化されたビデオ教材が望まれる。大学にもビジネス英語やプレゼンテーション英語の授業はあるが、ビジネスの実務に携わったことのある教員は少ないので、そのようなビデオがあると授業を実践する上で参考になる。ただし、市販化されたものは内容が一般化されてしまい、学生にとっても自分には関係ないものと認識されてしまうので、こうした産学連携が適えばより緊迫感のある教材を作成できる。

○ 教材自体の内容よりもそれに付随する名前の問題も大きい。先程の意見のように、ビジネス英語という名前の科目があっても、学生にとっては教員が授業を担当するという事実だけで興味を失ってしまうが、教材に具体的な企業の名前が貼られているだけでも学生の意欲は変わるのではないか。

<具体的な方法について>

○ 私情協では産学連携事業として、企業に対してビデオ教材の共同作成を検討していたが、先生方の授業内容を自己点検いただくためにも、企業の現場に訪問して、実務においてどのような英語が活用されているのか把握するとともに、企業人と英語教育内容について意見交換することが必要ではないか。そのような方向性も委員会として検討していただきたい。

○ 産学連携を考える上で、教員と企業間がいかに連携するか、産学連携を通じて学生にどのようなインパクトを与えたいのか、具体的なコンテンツを授業のなかでどのように組み込むか、この3つのレベルで議論した方が良い。教員の企業現場訪問については、教員と企業間の連携であるが、例えば昨今「仕事で英語が使える日本人」というキーワードが流通しているが、大学教員が仕事で使う英語がどのようなものか十全には理解できないし、また企業の経営陣や人事研修担当者、営業現場ではそれぞれ観点も異なる。様々な部署からヒアリングして、企業現場の研修内容や評価制度と大学の英語教育の内容との間の整合性を考える上でも、教員の会社訪問は重要である。

○ 外国に行くと英語で話さない限り生きていくことができない。海外で働く企業人にはそのような緊迫感があり必死に英語を学習するが、学生にはその緊迫感が欠落している。そのような苦労話を企業の方から学生に体験談として話してもらうだけでも効果があるのではないか。

○ 企業の実態を言うと、契約を交わす場合には通訳のスペシャリストを介してコミュニケーションを図るが、先生方が教育する学生にそこまでのレベルを求めないのであれば、英語でプレゼンする場合でも聴衆に助けてもらいながら実際には話すというような内容を紹介できるかもしれない。

○ 高いレベルのものを学生に提示すると、他人事として興味を示さない。昨今の学生は将来のビジョンが欠落しているので、普通の日本人でも頑張ればここまでできるという、手の届きそうな範囲のものを提示するのが良い。

○ 英語の教員が実感を持ってある特定の英語スキルが必要であると学生に伝えるためには、社会においてどのような場面でどのようなスキルが活用されているのか、教員自身網羅的に把握する必要があり、そのようなデータベースの構築が望まれる。そのようなデータベースに基づけば、教員も学生に対して英語を活用することで具体的に何ができるのか明示することも可能となる。

<企業訪問・インターンシップ>

○ 事務局からの提案のように、教員が企業に赴き現場を参観することは可能か。

○ 某地方自治体では管理職研修として、3週間程民間企業に出向させているが、内田洋行でもその受け入れを行っている。機密情報(特に仕入関連)には抵触しないよう心がけているが、それでも商談の現場などに連れて行くことでビジネスを体感させるような研修を行っている。それ故社内調整ができれば教員の現場参観も可能かもしれない。

○ 大学でも学生の企業へのインターンシップを行っているが、教員は座学中心で、現場のことはインターンシップに丸投げと、分業化されているが、教員が企業にインターンシップとして赴くことも重要である。教員が企業現場の体験することにより、学内にフィードバックすることができるのではないか。

○ 理工学部の学部一年生を夏休みにシリコンバレーにインターンシップとして派遣する計画があったが、受け入れ側の企業にとってみれば、オーガナイズの問題、つまり人的負担・労力・コストの問題で一向に話が進まない。それゆえ時間や期間等スケジュールの問題や、受け入れ先の企業に対して学生がどのような貢献が可能であるか見越さないことには海外インターンシップは難しい。

○ インターンシップは民間企業に拘る必要は無く、例えば国際協力関連のNPOやNGOでは、英語を母語としない外国人同士が協力して途上国の援助に携わるようなボランティア活動がある。そこでは、英語を母語としない外国人同士が、英語をツールとしてコミュニケーションを図るよう努力しており、現に学生でも参加する者が多い。そのような学生の体験談を語っていただくことは、学生の目線に近く共感を呼ぶのではないか。

<企業内研修について>

○ 内田洋行では外国語の研修所などに社員を派遣することはあるか。

○ 過去には半年ほど海外研修させることもあったが、現在は現場に飛び込ませて経験させるケースが多い。

○ 外国語の勉強会などは行っているか。

○ 例えば中国に出張する場合には、中国人の方を招いた勉強会を開催する。

○ 社内において、英語を習得するためのインセンティブを高めるような制度はあるか。例えば認定試験の得点によって給与に反映されるというような動機付けはあるか。

○ 英語に限らずある一定の資格(例えばシステム監査)を取得すると管理職手当が支給されるという制度はある。ただし、これらの資格取得のための研修などは行われず、個々人が独習する必要がある。特に英語については特別視されることもない。

<学生に関するトピックス>

○ 就職活動にPCが必須となった時、学生はPCを所有するようになった。それ故、採用試験においても英語で面接を行うようになれば、学生も必死に英語を身に付けようとするのではないか。ただしその場合には企業側にも英語を流暢に話せる者が面接を担当しなければならないので負担が掛かる。

○ 面接試験を英語で行った場合、日本語では内容のある話のできる者が英語だと表現できず、企業にとっても有能な人材を取りこぼしてしまう可能性もある。

○ TOEIC800点の学生と600点の学生が同じ企業の採用試験を受けて、600点の者が採用され800点の者が不採用である場合もある。企業にとっては、英語力よりも総合的なコミュニケーション能力の方を重視しているのが現状である。

○ 大学で英語教育の再編を行おうとした場合、どの学生の水準にターゲットを絞るのかが問題になる。上位レベルの学生の英語力をより伸ばすべきなのか、あるいは下位レベルの学生の底上げを図るべきなのか議論の分かれるところである。

○ 今回の産学連携プロジェクトにおいては、高いレベルにターゲットを絞ると対象となる大学も上位校に限られてしまう。

<産学連携に伴う企業側のメリット>

○ 産学連携を実現する上で、企業側のメリットも考えねばならない。私情協としては、人材育成の一環として企業への協力を求めているが、やはり目に見える形でメリットがないとなかなか動かないのが実情である。そこで、将来的には人材育成に貢献した企業に対しては、法人税の免税措置を行うなどの制度の確立を政府に訴えていきたい。

 以上を踏まえ、産学連携に関する第一ステップとして、教員による企業現場の参観の可能性を、内田洋行伊藤氏に調整いただくこととした。

2.その他
 
山本委員長より、資料「教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性」について説明がなされた。要旨は以下の通り。

○ この資料は、報告書にも掲載した言語活動の目標を抜粋したものである。本委員会では、このような目標を達成するための授業設計方法を昨年検討してきたが、報告書に掲載した内容だけでは具体的にどのように授業設計すべきか示唆することはできない。具体的な示唆を与えるためには、この目標に対する授業のシナリオ(90分、半年間、一年間などタームごとに)活用する教材、素材、学習・教育環境を検討し、また目標の体系をCEFRを参照しながらCanDoリストなどを肉付けしていく必要があるのではないか。

○ 私情協としては、底辺の学生を底上げすることが重要であると考える。社会が要請する最低限の能力を大学で育成できていないことが喫緊の課題であり、まずその課題を解決するための戦術を委員会として検討いただきたい。

○ CEFRのようなフレームワークを構築することができれば、例えば企業の要求するレベルと大学教育の目標の刷り合わせを行うことで、産学連携の円滑化も図ることが可能となるのではないか。

○ FDの報告会などでは、個別の授業報告ばかりであり、いくら報告者が学生のレベルが上がったと言っても、聞いている側からすると具体的にどのような能力が育成されたのか判然としない。このようなフレームワークがあれば、客観的な尺度として学習効果が明確化されるし、また効果のあった教育方法を教員間で共有化することも可能となるのではないか。

 以上の意見を踏まえ、フレームワークの体系化は一旦保留しつつも、企業で求められるスキルと大学における英語教育の目標の刷り合わせという面において産学連携が実現できるよう、主に外資系の企業を対象に連携の可能性を打診することとした。