社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第1回社会福祉学教育IT活用研究委員会議事概要

Ⅰ.日時:平成18年6月26日(月)午後2時から午後4時まで

Ⅱ.場所:私情協事務局会議室

Ⅲ.出席者:安西委員長、戸塚、井村、武田、前田、錦織各委員、井端事務局長、木田

1. ITを活用した授業モデルについて
(1) 前田委員(高齢者福祉)

 前田委員より、高齢者福祉における授業モデルについて報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、授業効果については7月中に検証する旨の補足説明がなされた。
  本報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 授業のねらいは、ここで紹介された1回の授業のねらいを記述いただきたい。
  • ⑤のロールプレイのねらいは?
    → 100名の授業で一人ひとり実際にロールプレイすることは難しいので、予め一部の学生がロールプレイしたものを見ながら、自分の視点でどのように問題に対する解決方法を導くのか洞察させることにある。
    → その場合、学生自らの解決方法をどのように表現させているか。
    → ロールプレイでは、望ましい例と望ましくない例を提示するが、そこにはどちらが望ましいか望ましくないかは記載せずに、観察のポイント等のみを記している。そこで学生自ら気づいたことを発言させている。
    → そのやり取りは録画しているか?
    → していない。学生が、間違った意見が録画されることを嫌がる。
    → 学生の反応を先生だけがキャッチしているが、実際のワーカーの方に見てもらって、授業の内容が社会で通用するかどうかを確認してもらえばなお良い。例えば、学生に反応をWebCTで入力させ、社会の方々から意見を取り入れると、先生自身も自分のやっている授業のFDにも繋がるし、先生自身も思いがけずに気付くこともあるのではないか
  • 電子教材Mmoaとは具体的にはどのようなものか。
    → 企業と共同開発したシステムである。動画、静止画、インデクッス、スライドを同時収録する教材である。
  • 学生がロールプレイ行った望ましい例と望ましく無い例はここにデータが保存されているのか。
    → している。最初の場面設定のみ教員が行い、その後のロールプレイは、学生自ら考えさせながら演じてもらっている。収録は一回のリハーサルを挟み撮影している。学生の画像を掲載する場合には、本人に了承を得る。
  • ロールプレイの場面を画像で掲載するとよりわかりやすくなる。ただし学生のプライバシー保護のために、学生の許可を得ることや個人を特定できないよう画像処理する必要がある。
  • 授業効果(1)の「場面設定以上の・・・」をもう少し具体的に教えて欲しい。
    → 場面は実習指導室にあるベッドを用いて実施した。学生が実際にボランティアやアルバイト先で、相手からこういう反応があったからこのような関わりを持たなければいけないなど、学生が自ら体験した状況を加えてフィードバックするようになってきた。こちらの設定はシンプルであったにも関わらず、既存のVTRでは出てこなかったような状況が描写された。具体的にこれを示すような学生の言葉も記述したい。
  • ここでの想像力とは情報のことか。
    → 例えば高齢者の反応に対する予測など、先の状況を推測する能力と考えていただきたい。
    → 想像力というよりも、臨機応変に対応できる力や、当初想定した以上の応用力が身についたとかの方が良いのではないか。
  • 授業効果(1)の末尾「確認できた」は、教員が確認できたということか。
    → 学生同士がお互いに確認できたという意味である。学生自身がロールプレイする教材のおかげで、各学生のコメントについてグループディスカッションしたり、学生間で共有したりするなど、一方向から双方向型の授業へと転換することが可能となった。
    → この点は重要な教授業効果だと思うので、強調されたほうが良い。

 

 以上の意見を踏まえ、今後は学生の許可を得てロールプレイの場面を録画し専門家の方にコメントいただくとともに、webCTにも学生に反応書いてもらうことを検討いただくことにした。

(2)錦織委員(地域福祉)

 錦織委員より、地域福祉におけるITを活用した授業モデルについて報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。本報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 授業の狙いは?
    → 研究のための予備訓練である。
    → 研究者育成と言うよりも、地域福祉のどの能力を体得させるのかといった点に焦点を絞って記述いただきたい。

ここで、安西委員長より授業のねらいについて補足説明がなされた。要旨は下記の通り。

マルチメディアモニタリングシステムは、もともと龍谷大学が開発したものだが、現在は大学にシステムが無く、吉備国際大学にシステムが移行した。当初の狙いはいくつかあって、1つは文献学習である。具体的には文献を通じて地域の社会問題や福祉問題を把握し、学生が自らの視点により解決策を検討することにある。2つ目は疑似体験、シミュレーションの場を学生自身が作ることにある。3つ目は事例を学生が作り上げて、集計、考察、分析するのかという論理的思考力を育成することにある。4つ目は、手法自体を学ばせることである。具体的には最適な情報の収集方法を習得するとともに、社会問題をシミュレーションで作り上げて、分析するための手法を学生自らに考えさせる。5つ目は想像力、クリエイティブなものの考え方を育成すること。通年30回でこれが完成するように、段階的に狙いを考えて当初は設定した。

  • マルチメディアモニタリングシステムとデータベースの活用と授業の流れをもう少しリンクさせたほうが良い。あるいはマルチメディアモニタリングシステムを活用した点をクローズアップして欲しい。また、通年のシナリオ出したとしても、どこかの一回をクローズアップし、そこでの具体的なIT活用方法を論じていただきたい。

以上の意見を踏まえて、錦織委員には原稿を加筆修正いただくことにした。具体的には、授業のねらい、シナリオ、IT活用の詳細、授業効果、問題点という目次に則り再構成いただくことにした。

(3) 井村委員(障害者福祉)
  井村委員より、障害者福祉における授業モデルについて報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、井村委員自身は障害者福祉や実習指導を担当していないが、周辺科目として福祉機器入門を担当している旨が説明されたとともに、講義の補足説明と質問を受け付けるためにblogも使っているが、なかなか学生が書き込まないとの説明もなされた。

 以上の説明を踏まえ協議した結果、井村委員の授業モデルのタイトルは「VODとblogを活用した個別学習指導」にすることとした。なお、井村委員にも、次回委員会までに事務局の設定した構成に従い加筆修正いただくことにした。

(4)戸塚委員(児童福祉)
  戸塚委員より、児童福祉における授業モデルについて報告がなされた。詳細は配布資料を参照されたい。なお、本報告について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • 具体的にはどのようなコンテンツなのか。
    → イラストによる32のストーリーが用意されているが、いきなりそれを提示しても学生は困惑してしまうので、予め登場人物の設定や環境、注意すべき視点を提示し、さらにストーリーの最後には学習ポイントの補足などが提示される。さらに、学習履歴も保存できるようにしており、学籍番号何番の学生がアクセスしたとか、アクセス時間、滞在時間等も把握できる。また、イラストのアングルも、学習者を当事者として参与させるように工夫もしている。

 以上の説明、意見を踏まえて、戸塚委員の授業モデルのタイトルは「学習支援システムを活用した疑似体験教育」とすることにした。

 最後に、安西委員長より、報告書執筆の方針について確認がなされた。要旨は下記の通り。

  • 1回の授業の狙いを入れる。(トータルな授業目標と事例として取り上げる1回分の授業の目標)
  • シナリオは上記の1回分のものとする。
  • 授業効果、評価方法についても具体的に加筆いただく。
  • 授業モデル以外の1,2,3,5については委員各位より意見をお寄せいただき、安西委員長が集約する。(キーワード:疑似体験、学生と教員の双方向、現場の再現性、いつでもどこでも自学自習できる、現場実習前の事前教育に役立てる)
  • 1,2,3,5のページ分量は合わせて3ページ(1,2,5、それぞれ0.5ページ、3が1.5ページ)。4は1モデル3ページ。