社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第3回法律学教育IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成17年1月28日(金)午後4時から午後6時まで

供ゾ貊蝓Щ箴雍┿務局会議室

掘ソ仞兵圈У般邂儖長、野口、中村、高嶌各委員、井端事務局長、木田

検ジ‘せ項

1. 高嶌委員による法科大学院におけるITの活用に関する報告

 高嶌委員より、京都産業大学法科大学院におけるITを活用した授業事例についての報告が予定されていたが、今回はIT活用主体ではなく、自身の担当されている法情報学の授業内容について報告いただいた。なお、京都産業大学法科大学院のIT活用事例としては、授業およびホワイトボードの収録した動画のオンデマンド配信を実施しているほか、今後はオンデマンドコンテンツとレジュメの連携を画策している。
 
・法情報学について
  現在あらゆる法科大学院において、法情報学の講義は開講されているが、学習内容の体系化はまだ図られておらず、議論もされていない。そこで、京都産業大学法科大学院における法情報学の授業への取り組みを紹介することで、議論の糸口を提供したい。

(1) 法情報学の対象者と講義目的
(a)対象者
法情報学は、学部ではあまり授業が開講されていないことも考慮して、法学既習者、未習者のいずれも対象とする。京都産業法科大学院では、入学者の殆どが未習者であることから、法律学の初心者でもあり、かつコンピュータ初心者が多い。

(b)講義の目的
法情報取得のノウハウを習得する。基本的な判例集や論文はデジタル化されていることから、短時間で自己の学習に必要な素材を収集する能力が必要である。
法情報の利用・分析。学習や実務において過度の情報、信頼性の無い情報に振り回されないためには、自ら利用目的に沿って情報を分析する能力が必要である。新司法試験でも、単なる情報収集能力だけでなく、情報を分析・利用する能力が求められている。
法と情報の関わり全体に対する基本的な視点の涵養。言うは易し行うは難しであるが、日々膨大する情報及び情報を巡る社会システム全体を捉える基本的視点を育成しなければならない。

(2) ねらいを達成するためのシステム
入学時に1日5時間×3日間連続=15時間分の集中講義(これに先立ち,コンピュータ基礎実習,財産法基礎講義1日5時間×3日間連続=15時間分)を実施する。最初の1週間に集中させる意味は、基本的なノウハウは授業開始前に 一通り身につけておかなければ意味がないが,他方で「法情報」に関するノウハウを身に付けるには法律学のイロハは認識されていなければならない、というアンビヴァレンツへの対処することである。
法情報学総論と法情報学各論(民法,商法,知的財産法,憲法,行政法など)の分離。法情報学では、教科書レベルの情報を用いた情報分析演習の「まねごと」を実施している。具体的には、序説、法令×2回、判例×3回、文献×3回、図書館演習、インターネット演習、市販データベース演習、総合演習×2という構成で授業運営を行っている。例えば文献3「学説の読み方」であれば、各学説の文献を配布し、見解、具体的帰結、根拠、定義の各学説間の差異を分析する。本授業では、総論的内容のみに触れているが、民法、刑法等各論においても法情報学が必要であり、今後は各論担当教員との意思疎通を通じて、引き継ぎいただけるよう検討している。
「情報と法」講義の試み(上記各論領域における問題の総合的分析)。近時の社会変化、組織の高度化、労働の細分化、社会のシステム的な情報化に伴い、様々な弊害が生じている。その弊害に対して、法律はどのように対処していくべきであるか。一つには、情報提供義務及び情報公開法により、専門化と一般人の情報の非対称性を解消することが考えられる。他方では、守秘されるべき情報として、個人情報、企業情報を保護するための法整備も必要である。このように、法的対処の対極的な方向性があるにも関わらず、法的分析に関わる視点が殆ど議論されていない。しかしながら、情報化社会の中で法曹家を目指す学生に対して、このような視点を提供していくことは必要であり、できれば法学入門授業の位置付けとして実施したいが、内容的にはまだ検討の余地がある。

(3) 今後の方向
情報システムの進化・複雑化と法律学における情報システム利用・情報システム規制が進むと、法律学自体の構造的・原理的変化をもたらすものか、単に量的変化にすぎないのか? 皆さまよりご意見を拝聴したい。

以上の報告に対して、下記の旨の質疑応答および意見交換がなされた。

・ 京都産業大学法科大学院では、ローヤリングの講義は実施されているか。
・ 2回生後期から3回生開講科目として設置されている。授業内容としては、は弁護士同伴のもと、法律業務を一通り体験してもらう。しかし、法情報学における、事件の概要を聞き取り、その事件と条文の関係を判断して、その条文に関する論考を調べた上で、関係判例を特定し、総合的な考察を加えるプロセスは、ローヤリングにおいクライアントから事案を聞き取り分析して訴状を書くこと通底しており、法情報学の講義の後であればローヤリングの講義へとスムーズに移行できる。
・ 学部の一年生に対していきなり民法総則の授業を聞かせても、現実感が無いためか学習意欲が向上せず、却って法律嫌いになる可能性もある。高嶌委員の報告はロースクールの法情報学であったが、例えば学部の学生にゲームのような感覚で、法情報学のプロセスを通じて民法総則に興味を持たせることも可能ではないか。
・ 現実に近いプロブレムを与えて学生に考えさせるためには、ビデオの活用が有効ではないか。例えば会社法であったら株主総会のビデオを見せることで、学生の興味を惹くとともに、具体的なイメージから法的問題を誘引する機会を与えることができる。
・ ビデオの中で、裁判で確定されるべき事実関係が収録されていると、学部学生はバイアスが掛かった上で事実と見做してしまう。それ故に、予め、再現されている事件は一つの可能性ある事実であり、裁判でこの通りに事実認定される訳ではないことに注意を促さなければならない。
・ 法的には要件事実にあたる事件に対して、二つの意見の対立があるということを映像化すれば先入観を解消できるのではないか。例えば、相争う二人が事件についての証言を話す様子を、交互に映す手法は有効ではないか。
・ 学説の対立を講義する場合、教員の趣味により一つの立場に偏った講義内容に陥り、学説の対立の意味するところが通じなく可能性は無いか。
・ ロースクールの講義で、教員の個人的な主観で一つの学説に偏った講義はされないであろう。その意味では、法情報学でもプレーンな形で、客観的に具体的な解決の差異が確認できれば、比較としては意味があるのではないか。

2. 中村委員によるITを活用した授業事例の報告

中村委員より、神奈川大学法科大学院全体のe-Learningに対する取組について報告があった。

(1) なぜ法科大学院でe-learningを使うのか。
法科大学院の教育理念としては、 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ、∀静声腟舛ら実務と理論の架橋へ、「専門性重視」から「多様性重視」へ、の3つを挙げることができる。これらの理念と課題を比較考察した上で、神奈川大学法科大学院個別の対応を説明する。
法科大学院の理念と課題
 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ
新司法試験の科目数が増加し、かつプロセス重視から司法試験と関連しない科目も履修する必要があることから、学生の学習量が増大した。反面、そのために費やす学習時間は短縮している(現行の司法試験合格のためには、平均的年限として6年費やすと言われているが、法科大学院では3年である)。その結果、学生は予習復習に終われ、消化不良のまま次の講義を受講しなければならない。
論点主義から実務と理論の架橋へ
実務家教員は、実務と教育の両立が課題だが、時間の問題だけでなく物理的にどこに肉体を定置すべきかという問題がある。また、実務家教員と研究者教員の協働が上手く機能するかという問題も挙げられる。例えば演習で実務家教員と研究者教員共同で授業を実施する場合、両者の意見の対立が顕著であれば、授業運営に支障が生じる。そのために、授業運営方法について両者が綿密に意見交換する必要があるが、実務家教員の実務に支障を与えるほどの時間的拘束を掛ける訳にはいかない。
専門性重視から多様性重視へ
法学未習枠で入学してきた学生の中にも、純粋未習者とある程度法的知識のある学生が存在し、割合的には半々である。基本的には、法学部出身者のレベルに併せて講義を行っているが、純粋未習者を放置する訳にもいかないので、格差を是正するためにe-Learningを導入している。
神奈川大学法科大学院の対応
 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ
基礎的事項に関しては、基本的事項は講義で扱わず,充分な予習を義務づけ、
全学生が基本的事項を理解しているという前提で講義を実施する。理解度把握のためには、ミニテスト・レポートを課して理解度を確認している。しかし、間違った予習をしてきた学生への対応や、ミニテスト・レポートの採点・添削を誰が担当するのかという問題もあり、一筋縄にはいかない。そこで、e-Learningを活用し、講義で取り扱う内容の共通かつ正確な情報を与え、間違った予習をしないよう学生を促すことが期待される。また、ミニテスト・レポートにもe-Learningを活用すれば、自動採点や学習履歴により個々の学生の理解度や弱点を把握することが可能である。
論点主義から実務と理論の架橋へ
実務家教員の実務に支障が生じることから、四六時中キャンパスに拘束することは不可能である。その解決のために、テレビ会議システムを用いれば、実務家教員が法律事務所にいても学生に対してリアルタイムで指導することが可能である。また、 地域の弁護士会等と協力すれば、実務家教員以外の法律家とも議論することが可能となり、より授業内容の充実化を図ることができる。また、電子掲示板を用いて学生からの質問を受け付ければ、時間に拘束されることなく応答することが可能であり、またその質問と回答が蓄積されることにより、知識ベースの構築も可能となる。
「専門性重視」から「多様性重視」へ
法学未習者への対応としては、レベル別クラスの開講や未習者用の補習講座を実施するなどの対策が考えられるが、講義回数が増えれば学生の体力・気力が持続しないし、また教員の負担も増大する。その問題解決のためにも、e-Learningを活用して、基礎的知識の習得を中心とした自学自習の可能な環境を整備することが有効である。
(2)e-Learningの構成と実施例
学習ポータルがメインページとなり、講義情報データベース、遠隔双方向通信システム、SCROM対応学習管理システムが下位ディレクトリとして構成されている。学習ポータルには、更新情報、ミニテストが表示され、また講義情報データベース、ディスカッションデータベースにアクセスすることが可能である。
(3)講義情報データベース
講義情報データベースでは、各授業の概要、目的、配布資料、教員からのお知らせを、講義科目別、担当教員別、開講日別にリスト表示して閲覧することができる。
また、下位ディレクトリには、教員−学生間、学生同士が議論を行うためのディスカッションデータベースがある。
(4) Learning Management System
LMSを通じて、学生は自分の受講しているクラスや学習の進捗状況を閲覧することが可能になるなど、標準的なLMSの機能が実装されている。
(5)e-Learningの問題点。
問題点として、.灰鵐謄鵐弔足りない、∀力の問題、e-learningでは法科大学院の教育を肩代わりできない、を挙げることができる。,砲弔い討蓮△虜鄒は誰もが容易にコSCORM対応コンテンツを作成することの可能なツールが求められる。△砲弔い討蓮特定の教員や職員に労力が集中することから、いかにそれを分散するかが求められる。については、e-Learningと実際の講義の境界線をどこに引くべきか、教員間でのコモンセンスを醸成する必要がある。e-Learning活用のガイドラインなど検討するべきでは無いか。

以上の報告に対して、下記の旨の質疑応答がなされた。

Q.神奈川大学のe-Learningシステムは、市販の製品を利用しているのか?
A.学習ポータルは、IBM Lotus Dominoにより、自身でプログラムしたものである。Learning Management Systemに関しては、IBMの既製品をカスタマイズして利用しているが、他社製品よりも比較的安価と言える。