社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第4回法律学教育IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成17年3月7日(月)午後3時から午後5時まで

供ゾ貊蝓明治学院大学白金キャンパス本館8F法律科学研究所会議

掘ソ仞兵圈У般邂儖長、野口、中村、笠原、町村、武士俣各委員、井端事務局長、木田

検ジ‘せ項
1.法科大学院における予習復習とIT機器の効果 ― 南山法科大学院の取り組み
  町村委員より、南山大学法科大学院における世修復す湯のためのIT活用方法について報告いただいた。
○ 南山大学法科大学院の環境
一学年の学生数は、50名(うち既修10名/未修40名)であり、講義は一クラス、演習は二クラスに分けて実施している。校舎内には学生研究室、教員研究室、図書室が集約されており、ネットワークは認証VLANにより個人管理がなされている。それ故、学内で学習が完結する限りでは、e-Learningの必要性は生じないが、社会人学生も多数存在し、彼らは学内で学習する時間が限られているために、主に予習復習を目的としてe-Learningシステムを活用している。

○ ITツールの活用方法
  現在は、主にオンラインデータベースと学習支援を目的とした諸ツールを活用している。将来的には、国内外のロースクール間と連携した共通プラットフォームの構築を図りたい。

○ 具体的な授業での活用方法
予習時には、基本書による学習と、WebClassを活用して、ドリル問題の出題と基本説例及びその関連の判例を提示している。
対面授業では、予習の際に疑問や誤答の多かった箇所に対する解説を行うほか、判例の理解や疑問点の解消を図る。
復習時には、WebClassを活用して小テストや授業の質問を受け付けている。その他に、メールによりレポートの提出や電子掲示板でのディスカッションも課している。

○ 民事訴訟法兇砲ける活用例
<予習>
基本書(伊藤眞『民事訴訟法』)を読み、その後WebClass上の短答式問題に取り組む。短答式問題の回答中に疑問点が生じた場合には、基本書の該当ページを再読させることにより、極力疑問点は予習中に解消するよう促している。
同時に、判例データベースを用いて基本判例の購読を課している。購読を通じて生じた疑問点、例えば当該判決の意義や射程の理解、判例の理論的または実際的問題点、具体的事例の応用などに関しては、質問を受け付け、次回の授業で説明することにしている。
<対面授業>
予習で課した短答問題の疑問や誤答に関して説明を加える。また、併せて予習として課していた基本判例の事案・判旨について学生をランダムに指して説明させ、さらに学生に対して発展的な質問を投げかける。最終的には、判例から基本原理へと遡及する。訴訟物を例として挙げると、損害賠償請求権の訴訟物と一部請求の構成へ結びつける。
<復習>
対面授業に対するフィードバックを図るため、学生自身に理解したポイントをまとめさせ、疑問点が残る場合には掲示板を用いて学生間で共有することにしているが、学生はあまり積極的に活用しないことが今後解消すべき課題として挙げられる。さらに予習、事業中に取り扱った基本説例に関するレポートを課している。これらの復習に対するフィードバックは、毎回の授業で行っている。
なお、学生からの授業アンケートから、予習に時間を掛けることが手一杯で復習する時間がないとの意見が多数あったことを受け、毎回授業後のレポート提出を取り止め、長期休暇中に連続レポートを課す方式に変更した。ここでは、3〜4日に1回の割合でGoingSyllabus上に課題を提示し、電子メールにより質問の受付、レポート提出を行っている。レポートの締め切り後に解説を提示するが、添削は行わないことにしている。その上、WebClassによる短答式の確認テストも行った。レポート提出数の割合は、既習者は毎回全員が提出し、未習者は毎回32〜6人の回答があった。

最後に今後の課題として、ITを活用した試験スケジュールや教員間の情報共有を実現したいと述べられた。

○質疑応答、意見交換
<学生の質問に対する回答方法について>
・ 学生からの質問は、ある程度類型化することが可能であるので、FAQとしてWeb上に掲載すれば省力化に繋がるのではないか。また、将来的には他大学と教材の共有を図れば、一層の負担軽減が見込まれるのではないか。
・ 講義内容は毎年若干変更を加える予定であるので、将来的に学生の質問を類型化して蓄積することが可能であるか判断が難しい。また、教材の共有化については、大学間で共通の教科書を使用しているケースもあり、また吉野委員長が発足したビデオ教材共有化のプロジェクトなど、実際に始動している例もあるので、可能だと思われる。
・ 良質な質問については、収拾して次年度問題集を作成することも可能ではないか。
・ 問題集を作成すると、学生は何の疑問も持たず受容してしまい、自ら思考すること習慣を損ねてしまうので、慎重に検討すべきではないか。
   <課題レポートについて>
・レポートは添削して返したほうが良いと思われる。如何にITを活用してその負担を軽減するかが今後の課題と思われる。
・一人一人に対してレポートを添削して返すことは非常に労力が掛かるので、例えば学生のレポートの良い箇所を寄せ集め、その上で教員が補足を加えた模擬レポートを作成すれば、学生は自らの欠点を自覚できるのではないか。
・模擬的なレポートを提示すると、学生は自分の提出したレポートを見直す時に、模擬レポートを鵜呑みにして、自分の欠落していた箇所を見直すことをしなくなる恐れもあるのではないか。
2.神奈川大学法科大学院におけるITの活用事例
中村委員より、神奈川大学法科大学院全体のe-Learningに対する取組について報告があった。
(1) なぜ法科大学院でe-learningを使うのか。
法科大学院の教育理念としては、 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ、∀静声腟舛ら実務と理論の架橋へ、「専門性重視」から「多様性重視」へ、の3つを挙げることができる。これらの理念と課題を比較考察した上で、神奈川大学法科大学院個別の対応を説明する。
法科大学院の理念と課題
 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ
新司法試験の科目数が増加し、かつプロセス重視から司法試験と関連しない科目も履修する必要があることから、学生の学習量が増大した。反面、そのために費やす学習時間は短縮している(現行の司法試験合格のためには、平均的年限として6年費やすと言われているが、法科大学院では3年である)。その結果、学生は予習復習に終われ、消化不良のまま次の講義を受講しなければならない。
論点主義から実務と理論の架橋へ
実務家教員は、実務と教育の両立が課題だが、時間の問題だけでなく物理的にどこに肉体を定置すべきかという問題がある。また、実務家教員と研究者教員の協働が上手く機能するかという問題も挙げられる。例えば演習で実務家教員と研究者教員共同で授業を実施する場合、両者の意見の対立が顕著であれば、授業運営に支障が生じる。そのために、授業運営方法について両者が綿密に意見交換する必要があるが、実務家教員の実務に支障を与えるほどの時間的拘束を掛ける訳にはいかない。
専門性重視から多様性重視へ
法学未習枠で入学してきた学生の中にも、純粋未習者とある程度法的知識のある学生が存在し、割合的には半々である。基本的には、法学部出身者のレベルに併せて講義を行っているが、純粋未習者を放置する訳にもいかないので、格差を是正するためにe-Learningを導入している。
神奈川大学法科大学院の対応
 岼貪斉庸法廚ら「プロセス」へ
基礎的事項に関しては、基本的事項は講義で扱わず,充分な予習を義務づけ、
全学生が基本的事項を理解しているという前提で講義を実施する。理解度把握のためには、ミニテスト・レポートを課して理解度を確認している。しかし、間違った予習をしてきた学生への対応や、ミニテスト・レポートの採点・添削を誰が担当するのかという問題もあり、一筋縄にはいかない。そこで、e-Learningを活用し、講義で取り扱う内容の共通かつ正確な情報を与え、間違った予習をしないよう学生を促すことが期待される。また、ミニテスト・レポートにもe-Learningを活用すれば、自動採点や学習履歴により個々の学生の理解度や弱点を把握することが可能である。
論点主義から実務と理論の架橋へ
実務家教員の実務に支障が生じることから、四六時中キャンパスに拘束することは不可能である。その解決のために、テレビ会議システムを用いれば、実務家教員が法律事務所にいても学生に対してリアルタイムで指導することが可能である。また、 地域の弁護士会等と協力すれば、実務家教員以外の法律家とも議論することが可能となり、より授業内容の充実化を図ることができる。また、電子掲示板を用いて学生からの質問を受け付ければ、時間に拘束されることなく応答することが可能であり、またその質問と回答が蓄積されることにより、知識ベースの構築も可能となる。

「専門性重視」から「多様性重視」へ
法学未習者への対応としては、レベル別クラスの開講や未習者用の補習講座を実施するなどの対策が考えられるが、講義回数が増えれば学生の体力・気力が持続しないし、また教員の負担も増大する。その問題解決のためにも、e-Learningを活用して、基礎的知識の習得を中心とした自学自習の可能な環境を整備することが有効である。
(2)e-Learningの構成と実施例
学習ポータルがメインページとなり、講義情報データベース、遠隔双方向通信システム、SCROM対応学習管理システムが下位ディレクトリとして構成されている。学習ポータルには、更新情報、ミニテストが表示され、また講義情報データベース、ディスカッションデータベースにアクセスすることが可能である。
(3)講義情報データベース
講義情報データベースでは、各授業の概要、目的、配布資料、教員からのお知らせを、講義科目別、担当教員別、開講日別にリスト表示して閲覧することができる。
また、下位ディレクトリには、教員−学生間、学生同士が議論を行うためのディスカッションデータベースがある。
(4) Learning Management System
LMSを通じて、学生は自分の受講しているクラスや学習の進捗状況を閲覧することが可能になるなど、標準的なLMSの機能が実装されている。
(5)e-Learningの問題点。
問題点として、.灰鵐謄鵐弔足りない、∀力の問題、e-learningでは法科大学院の教育を肩代わりできない、を挙げることができる。,砲弔い討蓮△虜鄒は誰もが容易にコSCORM対応コンテンツを作成することの可能なツールが求められる。△砲弔い討蓮特定の教員や職員に労力が集中することから、いかにそれを分散するかが求められる。については、e-Learningと実際の講義の境界線をどこに引くべきか、教員間でのコモンセンスを醸成する必要がある。e-Learning活用のガイドラインなど検討するべきでは無いか。

○質疑応答・意見交換
・ 市販のLMSと比較して、自己開発したLMSのメリット・デメリットは何か。
・ メリットとしては、拡張性が高いこと、細かいカスタマイズが可能であることを挙げられる。デメリットとしては、システム管理者が、中村委員本人であるため、万が一事故に遭ったりすると、システムが停止してしまうことである。
・ e−Learningを活用した場合に、既習者と未習者間の理解度の差は縮まったか。
・ 既習者と未習者が一緒のクラスで授業を受けることはないので、直接比較することはできない。確かにディスカッション機能を用いても、既習者が議論をリードしているのが現状であるが、既習者が未習者に対して知識や情報の伝達を行うなど、学習者間で学びあう現象も生じている。
・ e-Learningの最大の特徴は、学習者一人一人に対してきめの細かい指導のできることにあるが、1人の教員が個別指導することは困難である。大学として、インストラクショナルデザイナーを採用し、授業設計や運営方法を検討しない限り、成績の向上を図ることは難しいのではないか。
・ 日本においては、インストラクショナルデザイナーが存在しないことが大きな問題である。神奈川大学でも、インストラクショナルデザイナーを公募したが、思うような人材は現れず、業務委託で1人契約することにした。