社団法人私立大学情報教育協会

第3回法律学教育IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成17年12月16日(金)午後4時30分より午後6時30分まで

供ゾ貊蝓Щ箴雍┿務局会議室

掘ソ仞兵圈У般邂儖長、野口、執行、加賀山、中村、高嶌各委員、井端事務局長、木田

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1.18年度発刊予定の報告書について

前回の委員会にて、事務局より18年度発刊予定報告書について、「コア・カリキュラムを一つのキーワードとして、各分野でのITを活用した授業モデルを報告することにしており、法律学分野では、法科大学院、学部教育それぞれの到達目標を検討いただいたうえで、目標の達成に有効な授業モデルを紹介いただきたい」との旨の説明がなされた。それに従い、今回の委員会では、法科大学院のコア科目の体系や教育方法、学部教育と法科大学院の関連性について自由討議をした。主な意見は下記の通り。

(1)法学部教育の方向性について

  • 法科大学院の設立に力を奪われ学部が弱体化した大学では、法学部教育の将来に関して大きな問題が圧し掛かっている。進むべき方向性としては、司法試験以外の法務キャリア教育あるいは良き市民を育成するための法学教育など挙げられるが、ロースクールに多くの教員が引き抜かれた現状に鑑みると、人的不足な面は否めない。一部では法学部を廃止すべきとの意見も挙がっている。
  • 法科大学院が設置されて以来、法学部は法曹家育成という目標を失い、新たなる教育目標や理念を模索している。勿論これまでも学部卒業生が全員法曹家になるわけではなく、現実には一般企業に就く者や公務員志望者が9割を占めていたが、法曹家育成という従来の目標を失ってしまったことにより、法学部の「法学」部たる所以、アイデンティティを再構築する必要はあるし、また今後サラリーマン、公務員にも高度な専門能力を求められることに鑑みれば、均一的な労働力の供給ではなく専門性の帯びた人材の育成を目指すべきである。そのように考えると、企業法務、パラリーガル、公務員の法務職などに相当する人材を育成することも一つの目標として考えられるが、そのような職種は法科大学院卒で司法試験を合格できなかった者とパイを競う可能性も高く、一筋縄にはいかない。
  • 法学部廃止論に関して言うと、将来初等中等教育で法律の授業が開始された場合、さらに拍車を掛ける事態に陥るであろう。そのような事態を回避するためには、小中高までは法的知識の供与、大学では法的思考力の育成など、それぞれの役割分担やカリキュラムを検討するべきではないか。
  • 法学部でも知識の供与は必要である。また、法律は多分に技巧的なものでもあるから、むしろ初頭中等教育の段階では、法的知識や概念よりも、一般的ルールや倫理観の醸成に努めるべきではないか。
  • 現在の大学受験システムに変革が起こらない限り、法学教育の改革も難しいのではないか。たとえ初等中等教育で法学が導入されたとしても、受験に不必要な科目を勉強するとは限らない。現状の受験システム下では、結局法律について何も知らないまま卒業するだけではないか。
  • 2001年に発刊した報告書では、法学部教育の目標として、)_並膤惘,某覆倏塾呂鮨箸防佞韻襪海函↓∨〜皸奮阿瞭擦某覆牾慇犬砲亘‥思考能力の育成、の二つを掲げたが、実際問題リーガルマインドを涵養するのであれば、大教室の講義では困難であり、演習形態の授業を主体にせざるを得ない。また、現状の授業は、基礎法学を疎かにされる傾向もある。私立大学の経営を考えると大教室講義を無くすことは難しいかもしれないが、基礎法学を復権することは可能ではないか。

(2)法科大学院のカリキュラム

  • 法科大学院での授業方法、試験方法、カリキュラムの統一化を図ることは可能かもしれないが、その必要があるかどうか議論の分かれるところである。本委員会でその議論を行うと収拾がつかなくなる恐れがあるから、報告書では、各大学・読者に法科大学院の授業を運営する上での基本的方向性を検討するための選択肢として、ITを活用した先進授業事例をいくつか紹介するに留めた方が良いのではないか。
  • 現在法科大学院では、設立当初の理念と現実の乖離に各大学とも頭を悩ませている。理念に関してはあまり触れず、むしろ授業の実態を紹介することに主眼を置いたほうが良いのではないか。
  • 法科大学院の理念として、学問と実務を有機的に結びつけることがあると思うが、司法試験合格のための予備校化する恐れを拭い去ることができない。今年から新司法試験が始まるが、その合格率によりその傾向にさらに拍車を掛けることが予想される。しかしながら、ロースクール出身者には無制限に法曹家の資格を与えるべきであり、その後の競争で能力の無い者が淘汰されていくべきなのが本来である。このシステムを変えない限り、法科大学院の予備校化は免れないのではないか。
  • 確かに学生は司法試験のことばかり気に掛けており、通説の無い問題に対して自ら考えるのではなく、教員に答えを求める傾向が強い。さらに、試験に出ない科目を軽視しがちである。

(3)報告書の方針など

  • 単に授業でのIT活用事例を紹介するだけでなく、授業の理想、目的を達成するための手法を論述し、その結果学生にどのような効果があったかまで踏み込むと、教員が授業運営を考える上で非常に参考になるのではないか。
  • 憲法、民法、刑法がコア科目であるとは限らない。例えばリーガルライティング、リーガルメソッドを法学基礎と喩えるのであれば、それを土台として実定法が成り立ち、さらにその上にリーガルクリニック、模擬裁判、エクスターンシップなどの実務的応用科目が成立している。報告書でも、法学基礎、実定法、実務応用を一つのコア・カリキュラムとして想定したほうが、法学教育の一連の流れを俯瞰することができる。
  • 授業モデルごとに、具体的なIT活用方法が異なる方がよい。例えば、掲示板の活用モデルをある委員が紹介するとしたら、他の委員は掲示板以外のIT活用方法を紹介すべきである。

ここで、IT活用の実践例について意見交換したところ、各委員より下記の紹介がなされた。

  • 中村委員・・・法科大学院の倒産法の授業では、学生を破産者グループと債権者グループに分けて、それぞれ独立した掲示板で問題点や両者の齟齬を議論させている。その過程で破産者は破産者同士、債権者は債権者同士の連帯感が醸成されるが、最終的には両者の対立軸と妥協点を倒産法のなかで見出すよう促している。
  • 加賀山委員・・・前回の委員会で報告したとおり、Excelを活用した答案採点システムは、これまでに無い厳正かつ客観的な評価方法として紹介することは可能である。
  • 吉野委員長・・・法科大学院の授業「リーガルメソッド」では、法的論理、法的推論能力育成のために掲示板を活用している。具体的には、模擬裁判形式で学生を原告と被告に分け、それぞれの弁護士の立場から口頭弁論を行う。各学生の議論内容は掲示板を通して公開されていることを利用し、一人一人の学生に議論全体の論理構造を評価させている。学生が評価を加えたものに対して、さらに吉野委員長がコメントを加えてフィードバックを行っている。また、法創造開発の研究においては、教育効果を測定するための評価方法を研究している。
  • 野口委員・・・学生の日常生活において、民法は馴染みの無い法律であり、例えば民法総則や物権法から導入しても、興味を持たず挫折してしまうケースが多い。そこで、大東文化大学では、次年度より民法のカリキュラムを改革し、導入部分では民法の構造の全体像を理解させ、その後も総則、物権法、債権法など各論別に独立して教えるのではなく、手続きの流れに沿って各法の関連性を教育する。IT活用方法としては、Web上の画像、図表、条文にカーソルを合わせると、説明文がポップアップで表示されるよう検討したい。

以上の意見を踏まえ、報告書執筆の暫定的な担当は、下記の通りになった。

  • 法科大学院教育・・・吉野委員長(リーガルメソッド)、中村委員(倒産法)、加賀山委員(民事法、答案集計システム)
  • 法学部教育・・・野口委員(民法)、笠原委員(サイバーコート)

なお、各担当委員は次回委員会までに、担当授業の目標、授業運営のためのシナリオ、IT活用方法、教育効果を記載したメモを提出いただくことにした。