社団法人私立大学情報教育協会

平成17年度第4回法律学教育IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成18年2月20日(月)午後2時から午後4時まで

供ゾ貊蝓Щ箴雍┿務局会議室

掘ソ仞兵圈У般邂儖長、野口、加賀山、笠原、町村各委員、井端事務局長、木田

検ジ‘せ項

1.18年度発刊予定の報告書について

(1) 法学部教育におけるITを活用した授業モデル
野口委員の報告
はじめに、野口委員より「法科大学院に連携する法学部の民法教育」について報告がなされた。
要旨は以下の通り。

<授業の目標>

  • 法科大学院設立後、法学部教育における司法試験教育のウェイトが軽くなった。今後法学部教育では、高度なリーガルマインド教育と同時に法科大学院での教育を前提とした専門教育が要請される。

<これまでの民法教育の問題点>

  • 民法は、初学者にとって難しいと思われがちであるが、その理由は二点挙げられる。一点目は、条文が膨大にあるうえ、学生は社会的経験が乏しいことから自らの生活との関わりを見出せず理解しにくいこと、二点目は、ひとつの問題に対して複数の学説が並存することは、高校までの暗記型学習に慣れ親しんだ学生にとって、理解しがたいことである。
  • それ故学部教育の早い段階(一年生)では、民法総則、債権法、物権法、親族法・相続法を個別に教えるのではなく、各規定の相互連関性を通じて、民法の全体像を教える必要がある。

<IT活用方法>

  • 授業の運営方法としては、パンデクテン方式を分解し、紛争解決の展開に即した授業展開をする。例えば、契約法の「契約の合意と成立」を挙げると、〃戚鷂鮠津喘罎慮鮠椎亡と契約の成立、契約締結上の過失と損害賠償、L誼里望茲犬△襪い詫ケ枦地位を利用したなどの公序良俗違反の契約、つ村攜⊂談任魏樵曚靴燭覆匹猟緬典意表示、ヅ事者、契約条件などを錯誤した意思表示、β絛盪拱能力があるかのように装った詐欺による意思表示、Э醜の意思表示と承諾の意思表示の撤回など、一つの事実に対して民法総則、物権法、債権法、親族法など民法典のあらゆる規定が適用され、さらに多くの特別法も関連する。このような問題解決のプロセスを習得するために、必要な民法関連条文と特別法および判例法のデータベース化と要件事実を整理した図解の提示、または事前事後学習のためにWebサイトに関連サイトや資料を掲示する必要があると考える。

<教育効果>

  • 問題解決プロセスのために必要な資料提供を効率化すること、事前事後学習を促すことで、講義自体の運営を効率化することが期待できる。


以上の報告に対して、下記の旨の意見があった。

 

  • 教育効果に関していうと、教員の作業負担の効率化に主眼が置かれている。例えば、学生の学習意欲の向上や学習指導の周知徹底など、学生の側から見た効果を強調いただきたい。
  • 資料の題名に「法科大学院に連携する」と記されているが、法学部の学生が全員法科大学院に入学する訳ではないので表現を再考した方が良いのではないか。
  • 資料一枚目の本文3行目に「・・・法科大学院での司法試験教育を前提とした・・・」と記されているが、これでは法科大学院が司法試験のための予備校と誤解される恐れがあるので、表現を変えたほうが良い。

以上の意見を踏まえ、教育効果を再考いただくとともに、教育目標、特に法科大学院との関わりについての表現も再考いただくことにした。

また、吉野委員長より、自身の作成されたケーススタディ用ビデオ教材を、野口委員の授業のなかで活用することが提案され、野口委員には、授業での活用方法を考案いただくことにした。

笠原委員

次に、笠原委員より、サイバーキャンパス・サイバーコートプロジェクトに関する報告がなされた。要旨は下記の通り。

<概要>

・ ソクラティックメソッド実現のための遠隔授業
→ 知識の伝達をオンライン上で実現することにより、講義の活性化を図る。

・ デジタルアーカイブの作成
→ サヴィニー文庫のデジタル化

・ サイバーコートの実証実験
→ 司法のIT化を実験するために、遠隔裁判、e-filingを実施。また講義科目サイバーコートを設置。ここでは遠隔模擬裁判を実施。

上記三つの項目は、相互補完的に機能している。サイバーコートシステムの自動収録機能、リア
ルタイム遠隔配信機能、テレビ会議システム機能をサイバーキャンパスシステムにも組み込む。

<基本方針>

・ オープンソースの利用
→ 大学間連携を視野に入れると、コンテンツの相互利用が必要となり、汎用的なシステムが必
要となる。ここではLinuxベースのexCampusを使用している。

・ デファクトスタンダードの採用
→ 特定の機種に依存しないよう、Linuxでシステムを構築する。

・ 互換性の確保
→ 大学間でのコンテンツの相互利用を図るため、SCORMに準拠したシステムを整備する。

 

<目的>

・ 従来型講義の活性化
→ 一方向型授業から双方向型授業への転換を図る。知識の伝達をオンライン上で予め学習させ
ることで、対面授業では議論主体の授業、ソクラティックメソッド主体の授業が展開できる。

・ ユビキタス環境の実現
→ VODによる在宅学習、電子掲示板で24時間いつでも議論を行うことができる。さらには、
他大学の学生や卒業生、社会人も議論に加わることが可能となり、授業の活性化を図ること
ができる。

・ リアルタイム遠隔講義
→ 社会人のために六本木のサテライト校舎を設立したこともあり、横浜本校での講義をリアル
タイムで配信する必要がある。


 

<4つのフレーム>

・ 情報資料提供のためのWeb
→ 授業前に伝達すべき知識、授業では伝え切れなかった詳細な情報、資料をWebに掲載。そ
のための作業に負担が掛かると思われがちだが、一度作ってしまえば大変ではない。

・ ヴァーチャルセミナー
→ 電子掲示板を活用し、授業前に与えられた課題を議論する。ここでの議論は成績に加味して
いる。これによって、知識、問題点、把握した上で学生は授業に参加するので、ソクラティ
ックメソッドの実現が可能となる。授業後も疑問点を解消する場として利用することができ
る。

・ ヴァーチャルオフィスアワー
→ チャット機能を活用し、他の学生に知られたくない質問を教員のみに相談することが可能と
なる。

・ ヴァーチャル講義
デジタルビデオで収録された講義を、ストリーミングでリアルタイム配信するとともに、ビデオオンデマンドでいつでも閲覧することもできる。


 

<教育上の効果>

・ リーガルスパイラルトレーニング
→ 特に法科大学院の授業では、一つのテーマに関して、〇前に資料を精読した後に、掲示板で議論を行い、その上で講義に参加し、ぜ業後に再び議論を行う。つまり、4回同じテーマについて触れる機会を設けることで、理解度の促進、記憶の定着を図る。

・ 受身的な授業から主体的・参加型授業への展開
・ 講義のオープン化
→ 他大学の学生やOBの参加により授業が活性化する。

・ 成績評価の客観化
→ 掲示板での議論の内容、レポートによって成績評価を行う。それにより、成績評価に対する苦情も減った。


 

<問題点と課題>

・ 教員の過重負担


・ コンピュータリテラシー
→ 学生と教員双方に問題がある。学生はPC操作に早く慣れるので問題ではないが、教員のなかにはPCの使用に拒絶反応を示す者も多く、なかなか浸透しない。法科大学院では教員全員がサイバーキャンパスシステムを活用することを義務付けているが、学部では3人の教員しか活用しなかった。

・ 本人認証
→ 騙り、なりすましを回避するために、認証用のサーバーを構築する必要がある。将来的には、学生カードに電子証明書・秘密鍵・公開鍵を格納する必要も生じる。

 

<京都産業大学とのリアルタイム遠隔合同講義>

・ 15年度に実験的に行い、16年度、17年度の正式科目として設置。18年度は台湾の中興大学も参加する予定である。

以上の報告に対して、下記の旨の意見があった。

○ ソクラティックメソッドはうまく展開できたのか。
→ 毎回の授業でソクラティックメソッドを実施すると、教員の過重な負担が掛かるので、月に
1回実施している。法科大学院の授業では学生の反応も良かったが、学部ではなかなかうまく機能しない。

○ 模擬裁判では、裁判での振舞い方などのテクニックを学ぶのではなく、法的思考の応用力を習得するよう工夫が必要である。例えばウィーンで開催される模擬裁判の国際大会では、世界各国の法科大学院の学生が集まりコンペティションを行うが、そこでは法的な論理構成力を競っている。サイバーコートシステムを活用すれば、移動することなく国内外の大学とコンペティションを行うことが可能となるし、実際そのように活用すべきではないか。


○ 今回の報告では、サイバーコートシステムを具体的に授業でどのように活用しているのか判然としなかった。実際の授業でどのような教育効果があったのか(例えば他大学、他国の大学と合同授業することで学生のモチベーションが向上したなど)、もう少し詳しい説明を報告書では願いたい。

(2) 法科大学院教育におけるITを活用した授業モデル
加賀山委員

加賀山委員より、法科大学院の法学未習者を対象とした、民法の学修方法に関して報告がなされた。
要旨は下記の通り。

<民法の条文全体の見通しを示すために>

・ インターネット上で判決を検索すれば、民法のどの条文がどの程度判決に適用されているかがわかる。実際に調べたところ、1位が709条、2位が415条、3位が1条、4位が715条、5位が715条、6位が710条、7位が722条、8位が177条、9位が90条、10位が541条であった。各条文に着目すると、4位の715条が特別法である以外は全て一般法であることがわかる。例えば、民法の教科書では「1条の信義則は伝家の宝刀でありむやみに抜くべからず」と表されることがあるが、実際にはそんなことはない。


・ 刑法では、罪刑法定主義に則り、いかなる行為が犯罪として刑罰の対象となるか明確化されている。それも、為政者の権力の濫用を未然に防止し、国民の人権を保護するために不可欠だからである。それに対して、民法は類型では国民を救済することのできないケースも生じてしまい、類型とは別の一般的な条項をもって救済する必要がある。


・ 特別法の特徴としては、被害者の過失証明が不要なことにある。説明責任が加害者に転換されることで救済される、つまり類型に該当しなくても救済されるが、類型化されたものがわかれば、より救済されることになる。このような一般法と特別法との関連性を理解する必要がある。

<民法を使う>

・ パングテン方式に従うと、契約の場合、有効無効は5条、効力の発生は127条、履行は415条、成立は501条などバラバラに規定されているため、学生も理解することが難しくなる、紛争解決のための道具として条文を用いるためには、実際の紛争解決の流れに沿った思考能力を育成する必要がある。


・ 民法の条文全体を見渡すと、全体の原則を規定する総則(民法総則)もあれば、各論(債権法、物権法、親族法、相続法)にも総則があり、その下にさらに各論がある。そのような体系をうまく利用し、ある事件が起きたらまず各論の適用可能性を調べ、該当する条文が無ければ総則へと遡っていくような思考パターンを訓練する必要がある。つまり、適用条文の深みにはまらずに、一般法を常に意識して脱出する能力を身に付けなければならない。

<まとめ>

・ これまでの民法教育では、一般法を用いず特別法を用いて紛争解決に努めよという風潮が強かったが、そのためには条文をいくつも覚える必要があり、結局条文の暗記に教育が終始してしまいがちであった。それよりも、いつでも条文の深みにはまらず、常に一般法を参照しながら具体的妥当な解決方法を導くような能力を身に付ける教育が必要である。

以上の報告に対して、下記の旨の意見があった。

 

○ 今回の報告は、教育でのIT活用方法というよりも加賀山委員の教育理論を基礎付けるためにITを活用してデータを取得した、という趣が強い。以前報告いただいた試験問題自動採点システムは非常に参考に資するものであったので、報告書で是非紹介いただきたい。


○ しかしながら、今回の提言は従来の民法教育に対して大きなインパクトを与えるものと期待できる。実践的な法曹家を育成するためには、実際の判決に適用される条文を駆使して論理構成する能力を養う必要がある。

吉野委員長

最後に、吉野委員長より、「リーガルメソッド ー事例問題に基づく法創造教育」について報告がなされた。要旨は下記の通り。なお、今回提出された資料は、報告書の書式を想定して作成されたものである。

<1 はじめに>

・ ここでは、リーガルメソッドの概括と、「法創造的な思考力の養成」というリーガルメソッドの教育目標を説明する。

<2 教育目標>

・ リーガルメソッドの教育目標をより具体的に説明する。

<3 目標実現のアプローチ>

・ 伝統的な法学教育の欠点(抽象的な概念説明に終始し学生が興味をなくしてしまう)を指摘したうえで、リーガルメソッドのアプローチを紹介する。具体的には、〇例問題の解決を教育の中心に置くこと(プロブレムメソッド)、¬狼失枷修鯆未犬針‥思考力の育成とモチベーションの向上、ソクラティックメソッドとディスカッションメソッドの統合、に〜和づ推論能力育成のためのシステム紹介が挙げられる。

<4 授業運営のシナリオ>

・ 実際の授業運営方法を時系列に説明する。紙幅に余裕がある場合には、シラバスも掲載する。

<5 ITの活用>

・ 電子掲示板、LESS、法律知識ベースシステム、ソクラティックメソッド支援システムの活用方法の紹介がなされる。IT活用の観点からすると、多様な活用方法を紹介することが望ましいが、却って焦点が呆ける可能性も免れないので、今後検討する余地がある。

<6 教育効果>

・ 各IT活用方法の教育効果を取りまとめる。

<7 むすび>

最後に、事務局より報告書の方針について説明がなされた。要旨は下記の通り。

機ナ鷙霆颪離織ぅ肇

「大学教育への提言 ファカルテイ・デベロップメントとしてのIT活用」

供ナ埆己針

ファカルテイ・デベロップメントとの視点から教育改善のための課題を整理し、解決に向けた方策を大学のガバナンス、教育政策、教員の意識改革、IT戦略など「総論」として網羅的に報告する。その上で、学系別教育におけるコア・カリキュラムを意識して、教育成果として求める能力を整理し、能力達成に必要な授業設計の在り方を概括する中で、ITを活用した授業の事例を「各論」で紹介する。

掘ヌ楴々柔

<総論> 「人材育成のためのIT活用」(事務局担当)

1.大学教育における人材育成の課題

2.教育改革のための大学戦略

3.大学教員に求められる教育力(教育の業績評価制度の導入、望まれる教育力)

4.ファカルテイ・デベロップメント改善のIT活用(教育での多様なIT活用を紹介)

5.教育の支援体制と今後の課題

 

検FD改善のためのIT活用授業モデル(1モデル:15ページ)

1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目榛

(学部教育を中心とするが、必要に応じて大学院教育も対象とする)


2.教育現場での課題

3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性

4.ITを活用した授業モデルの事例紹介(4モデル×3ページ程度)

(授業のねらい、シナリオ、IT活用の詳細」授業効果、問題点)

5.IT活用に伴う課題

 

后セ駑繊Д灰◆Εリキュラム等

2.その他

次回委員会は、3月31日(金)に開催することとした。なお、次回委員会では、18年度前期授業の構想等を整理することにした。