社団法人私立大学情報教育協会

平成15年度第1回経営学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成15年8月29日(金)午後1時から3時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:高津委員長、安田、岩井、松島、和泉、野澤、林委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

 1.遠隔授業について

前年度第2回の委員会において、野澤委員より複数大学間のリアルタイム遠隔授業実施の提案がなされたことに伴い、野澤委員より改めて複数大学間遠隔授業の企画案について説明いただいた。企画案は下記の通りである。

テーマ:「ネットワーク社会の新しい企業経営(仮題)」

ネットワーク社会の進展に対応して、企業経営は急速に変化しており、この現状と展望をつかむことは、経営学の緊急の課題であると考えられます。また、この内容であれば、遠隔講義の実験にふさわしいと思われます。

日 時:未定

講 師:2名

  • 大学教員1名(慶應義塾大学環境情報学部 國領 二郎 先生 )
  • 電子商取引推進協議会(ECOM)から推薦される企業の専門家1名

進め方:未定(多地点のシンポジウム形式、または、お二人の講演会)

技 術:未定(インターネット会議、またはISDNテレビ会議)

発信地:東京など2〜3箇所(発信拠点:私情協事務局や慶應義塾大学SFC)

参加大学:未定

専用回線を用いたテレビ会議システムのほかに、私情協事務局でも使用しているインターネット会議システム“bizmate”を活用することも考えられる。インターネット会議システムは、専用回線程には帯域を確保することはできないが、画像音声とも実用に耐えうる程の品質であり、最大12ユーザーまで参加可能であることから、ネットワークの接続方法も容易である。また、インターネット会議システムでは通常USB接続のWebカメラを用いて撮影を行うが、ビデオキャプチャーカードを用いてDVカメラによる撮影を行えば、画質の向上と撮影範囲を広域化することが可能となる。音声については通常ヘッドマイク等を用いるが、教室内の学生に発言を求める場合などに鑑みて、ハンドマイク等用いた方が好ましい。

以上の説明に対して、下記の質疑応答がなされた。

Q:この実験の目的としては、教育の通用性を向上させることなのか、あるいは新しい技術の実験なのか。

A:企業経営のIT化という最新のトピックについて、専門家より講演いただくとともに議論することは、学生のモチベーションを高める要因となる。また、授業運営の手法としてITを活用することも、講演内容を実践化する意味合いがある。

Q:遠隔授業の運営方法として、学生が講演を聞いた後の講師とのコミュニケーションなどはどのように考えているか。

A:シンポジウム形式にして、講師と学生間で質疑応答することを考えている。また、遠隔地の講師同士の意見交換などもできればよい。

続いて、下記の旨の意見があった。

  • ただの講義形式だと学生は寝てしまう可能性が高い。何らかのインパクトを与えるような授業シナリオを作らない限り、学習意欲を向上させないのではないか。
  • 各大学のカリキュラムは決まっているから、どのタイムテーブルで、またどのような位置付けとして実施するのか検討する余地がある。また、クラス規模や議論の形式、例えば講師と学生間の議論なのか、学生同士の議論なのか、そのような運営方法も検討しなければならない。
  • 一方的な講義だと確かに学生は寝てしまうので、講師が絶えず学生に質問を投げれば緊張感を与えると思われるが、ただ複数大学で実施するのには困難があると思われる。
  • 各大学で議論を促すチューターが必要になると思われる。講師、チューター、学生間でうまく情報の遣り取りをしないと通常の授業と同じになるのではいか。
  • 遠隔講義を複数大学間で実施する場合には、講師学生間のインタラクティブ性が十分に確保される必要がある。つまり教室に講師がいるのと同様な環境を整備しなければならない。5大学10大学でリアルタイムの遠隔授業を行った場合、どの程度インタラクティブ性を確保できるかはわからない。
  • 90分通して遠隔講義を続けることには無理が生じる。30分はシンポジウム、15分はオフラインにして小テストやディスカッションの実施という構成にすれば、インタラクティブ性は確保できるのではないか。
  • 学生の意見を集約する際に、一人一人発言させる程の時間は無いので、Webやメールを用いてアンケートを取る必要があるのではないか。
  • Web用のアンケートフォーマットは、OSやPCの機種に依存する可能性が高いので、メールや携帯電話を用いて意見を送信させた方が現実的である。

 

 以上の意見を踏まえ、複数大学間の遠隔講義の実施については、本年度内に実施することを目標とし、以後継続して検討することとした。なお、各大学での授業の位置付けは、正規授業外の特別授業として協力を得ることとした。また、実験実施校はインタラクティブ性を確保するためにも3校程度に留めるが、閲覧に限定した参加も認めるべきであるとの意見もあり、その可否については継続して検討することとした。実験校としては、専修大学(高津委員長)、武蔵大学(松島委員)、阪南大学(野澤委員)を予定することとした。

 なお、実験するに当たっては、上記意見にもあった通り、(1)授業効果や目的の明確化、(2)授業シナリオの策定が必要であることが確認され、実施までに詳細について検討していくこととした。