社団法人私立大学情報教育協会

平成15年度第1回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成15年6月16日(月)午後6時から午後8時まで

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U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:渡辺委員長、越島、玉木、米内山、細野委員、富澤、筧アドバイザー、

井端事務局長、木田

W.検討事項

(1)渡辺委員長、玉木委員による教材作成プロセスの紹介

これまで、玉木委員よりAMLUプロジェクトについて、組織面、システム面、コンテンツ面から包括的に紹介をいただいたが、今回は、授業レベルでの取り組みについて、玉木委員、AMLUプロジェクトに参画している渡辺委員長並びに成蹊大学の筧宗徳氏より紹介いただくこととした。

まず、玉木委員より、@e-Learningの特徴、Aアーキテクチャ、Bインストラクショナルデザイン、C教材開発の進め方、De-Leaningの学習効果法について総括いただいた。

@e-Learningの特徴

e-Learningは、情報技術によるコミュニケーション・ネットワーク等を使った主体的な学習であるが、単に教材を電子化するだけではなく、学習者とコンテンツ提供者(教員)の間にインタラクティブ性が必要である。

Aアーキテクチャ

e-Learningシステムを構成するアーキテクチャとして、e-Learningメソッドとコンテンツ、学習管理システム、学習環境の3つが挙げられる。

Bインストラクショナルデザイン

インストラクショナルデザインとは、教育を科学的に調査・分析して、短期間で効率的かつ効果的に組織体の目的に適う人材を経済的に育成する知恵を体系化した手法である。具体的には、解決すべき問題やタスク、ニーズを分析し、そこから得た情報を統合して問題の解決方法を設計し、設計に従って情報を順次よく提示し、問題解決能力を付与するというプロセスを踏む。(定義および分析→学習コースの設計→学習コースの開発→学習コースの実施→学習成果の設定と評価)

C教材開発の進め方

全体のカリキュラム体系のなかには一つ一つの学習コースがある。さらにそれは、いくつかの学習テーマ(モジュール、単元)から成り立っている。一方、教材の最小単位としてはエレメント(理論の解説、演習問題、テスト)があり、エレメントをいくつか組み合わせたもの(エレメントセット)が、モジュールを構成する。

また、それらのコンテンツを企画制作する際には、それぞれの教授戦略の特色、各学習課題の種類に応じた特性を考えて、教材に含める学習項目や要素と相互の関係を明らかにする必要がある。

De-Learningの学習効果評価法

e-Learningでは、学習目標と学習課題を明確にする必要がある。AMLUプロジェクトでは、4段階評価方法を用いて成績評価を測定している。4段階とは、1反応、

2学習、3行動、4成果のことで、1では単元テスト、2では小テストとセルフラーニング教材の確認テストと進捗データ、3では単元ごとの単元テストに対する成績データ、電子質問データのログ解析、4学生の単元ごとの総合成績データ、学習者へのポストアンケートによって測定を行う。

Eまとめ

e-Learningの実施により、教員の負担は軽減せずにむしろ今まで以上の負担を要することになる。しかし、大学教員は研究者だけでなく教育者であることも鑑みれば、学習効果の向上のために労力を費やすことは当然である。e-Learningを用いて学習効果の向上を目指すのであれば、このような教員の意識改革が必要である。

次に、筧氏より、AMLUプロジェクトで実施されている「サイバーマニファクチュアリング演習」での授業設計について、下記の旨の紹介があった。

 本演習は、青山学院大学経営学部3年生と成蹊大学工学部を対象としてそれぞれの大学にて実施されている。青山学院大学では、生産システム設計や生産管理システムの業務プロセス、技法、手法を習得し、最終的に生産ラインを設計することである。

 授業運営方法は、まず授業内容を科目全体、ステップ(章、節)、学習項目に細分化し、それぞれに対応した教育目標やレベルを設定する。そうすることによって、授業シナリオ、教材、評価の対象が明確化される。例えば2章1節ライン設計のツールでは、学習項目が「組立分解図、状態推移図、先行関係、先行順位図」に細分化され、それに応じて学習項目レベルとして、「ライン設計で必要な組立分解図、先行順位図、状態推移図の見方、使い方を習得する」が設定される。さらに、その学習項目レベルを達成するために必要な教授方法や評価方法、適した教材決定される。

 実際の授業では、通常の講義のほかに、実習を中心に行うために、シミュレーションソフト等を使用している。実習の際には、グループに分かれ学生同士ディスカッションをしながら行われる。

 学習効果の測定のために、学生に対する事前アンケートと事後アンケートを対比した結果、事前アンケートではライン設計に関する用語や概念の意味を理解していなかった学生が大半を占めていたが、事後アンケートでは概ねの学生が理解できるようになったと回答した。具体的にどの時点において理解ができたかという問いに対しては、グループ実習後と回答した回答した学生が大半を占めた。

(2)その他

次回委員会では、細野委員より自身で開発された電子化教材を用いた事例を紹介いただくこととした