社団法人私立大学情報教育協会

第2回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成15年9月22日(月)午後6時から8時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:渡辺委員長、越島、玉木、米内山、細野各委員、富澤アドバイザー

W.検討事項

(1) 細野委員による教材コンテンツの作成と授業活用事例の紹介

細野委員より、生産システムに関するマルチメディア教材の活用事例について報告いただいた。まず、マルチメディア教材を用いるに至った経緯について下記の旨の説明があった。

昨今の学生は、生産システムが実際に稼動している工場について何も知らない。少しでも現場を理解させるために、工場を疑似体験・見学できる教材が必要であると思い、現場の動画や経営工学の理論に基づく解説を加えたマルチメディア教材を使用するに至った。なお、以下のコンテンツは、全て学生が卒業研究として作成したものである。

コンテンツは、以下の3つのテーマ(1)生産システム入門のためのマルチメディア教材、(2)特定テーマのマルチメディア教材、(3)生産システム技術を演習するためのマルチメディア教材に基づき9種類作成されている。

まず(1)のコンテンツとしては、@生産専用ラインによる連続生産システム、A手作業による生産システム、B多品種少量の生産システムがある。

@は、ビールの生産の実態を、実際の現場映像を用いて解説する教材である。当初は自ら工場で撮影したビデオ画像を用いたが、画質等あまり良くないため、会社案内のビデオを借用した。A、Bでも同様に、それぞれ医療機器の組立生産の現場、ハム・ソーセージの生産現場の動画を収録している。(C「生産システムの専門用語」に関しては省略。)

(2)のコンテンツとしては、Dガラスビンの循環型生産システム、Eリアル映像による生産情報システムがある。(1)の教材は、主に工場見学を疑似体験させることを目的としていたが、(2)のコンテンツでは、現場における生産システムの流れを確認させることに主眼を置いている。

Dは、ガラスビンを用いて製品を作る飲料会社の工場、使用済みガラスビンの回収会社、ガラスの欠片を用いて新しいガラスビンを製造する製ビン工場の3社間におけるリサイクル過程を現場の映像に解説を加えたものである。

Eは、生産情報の流れを視覚化することを目的として、水道工事工具メーカーでの受注生産や在庫管理の現場映像に解説を加えたものである。

(3)のコンテンツには、Fリアル映像による組立工程コンベヤの選定、GJob Shop Scheduling Simulator、HPlant Layout Web 教材があるが、これらは生産システム技術を演習させることを目的としたものである。

Fは、エアコンプレッサ製造会社のコンプレッサの製造過程において、最も効率的なコンベアの選定方法をアルゴリズムに基づき演習するコンテンツである。

Gはdispatching法を用いたJob Shop型スケジューリングの解法を演習するコンテンツであるが、今回の委員会では、実際のデモを交えてプレゼンテーションいただいた。

本コンテンツは、スケジューリングに関する基礎知識から、実際のスケジューリングのオペレーション、スケジューリング結果に対する評価方法を、ブラウザ上のマウス操作のみで学ぶことができる。構成としては、まずスケジューリングに関する基礎知識の説明に始まり、操作方法の説明、SPT規則を用いたdispatching法によるスケジュール作成、作成されたスケジュールの評価、その他のdispatching法の演習と評価、というプロセスの下、学習できるようになっている。なお、コンテンツはMacromedia Flashで作成されているため、前述したコンテンツと比較しても容量が非常に小さいため、Web上での配布も可能である。

Hは、工場計画の演習を、シミュレーションを用いて学ばせる教材である。以前は武蔵工業大学でも半期間通じて講義を行っていたが、現在は2〜3コマ程度しか授業時間を確保できないため、授業内容を補充するために用いている。今回は、工場計画の細部レイアウトに関するコンテンツをプレゼンテーションいただいた。

コンテンツ内では、PCケースの製造工場が想定され、組立職場と機械加工職場のレイアウトを演習することができる。組立職場では、サイクルタイムの算出とステーション数の決定、要素作業の割り当てを演習できる。機械加工職場では、リレーションシップ・チャートをもとに、運搬距離を最短にするために機械設備を配置する演習である。なお、このコンテンツもMacromedia Flashを用いて作成されているため、マウスにより容易に操作することが可能であり、かつWeb上で配信することも可能である。

以上のプレゼンテーションに関して、以下の質疑応答がなされた。

Q:これらのコンテンツを学生は難なく作ることが可能なのか。

A:容易に作成しているとは言い難い。学生はコンピュータに関する知識が殆ど無いため、PCに関する基礎知識からソフトの操作方法まで一つ一つ教えている。

Q:卒業研究として、学生の作り上げたシステムをどのように評価しているのか。

A:教育システムの設計として評価しているが、最終的なシステムの出来具合よりも、それまでに至る、システムの検証や再構築などのプロセスを重視している。

Q:卒研生の技術を下級生に継承させていくことはどのように考えているか。

A:基本的に継承することは考えていない。毎年卒業テーマや使用ソフトを変更しているので、次の学生にはまた一から技術を習得させている。

Q:卒業研究として教材を作成することの目的は何か。

A:教材作成を通じて、システム設計能力を育成することを目的としている。具体的には、システム開発に必要とされるプログラミング能力の習得と併せて、教材の被験者である卒研生の後輩を顧客と見立て、ユーザーの求める機能・条件を検証することで、実際のシステム設計のプロセスや考え方を習得させることに主眼を置いている。

(2) その他

  次回委員会では、越島委員より授業事例を報告いただくこととした。