ゥ. Ouchterlony法による抗原特異性の解析と抗体価測定 (目的) Micro-Ouchterlony法を実施して抗原抗体反応の特異性を学ぶ。また、Micro-Ouchterlony法を利用して免疫ウサギ血清中の沈降抗体価の測定も行う。  各班とも3 枚の寒天板を準備し、1枚目と2枚目で沈降線のパターンを観察し、抗原抗体反応における特異性を考察する。3枚目でアルツス現象惹起用ウサギの血清について沈降抗体価を測定し、抗体の定量を行う。 (材料) 標準試験抗原: ニワトリ卵白アルブミン 0.5ml ウズラ卵白アルブミン 0.5ml ウシ血清アルブミン 0.5ml 標準ウサギ抗血清: 抗-ニワトリ卵白アルブミン抗血清 0.5ml 混合抗血清 0.5ml  ・抗-ニワトリ卵白アルブミン抗血清  ・抗-ウシ血清アルブミン抗血清 アルツス現象惹起ウサギ血清: ニワトリ卵白アルブミンで免疫されたウサギ血清 0.3ml 正常ウサギ血清(アルツス用対照) 0.3ml 試薬:希釈用生理食塩水 1ml 1.2%寒天 100ml 器具:スライドガラス 3枚 駒込ピペット 1本 キャップ 1個 反応用湿潤箱 全体で2箱 インキュベータ(80℃) 全体で1台 鋳型 2班で1個 アスピレータ 全体で2セット マイクロピペット、10 オlおよび100オl 各2本 チップ 1箱 エッペンドルフチューブ 8本 試験管立て 2台 観察箱 全体で2台 (手技) ^予め準備された1.2%寒天液(一枚あたり5ml程度)をスライドガラス上にピペットの先を用いて広げ、厚さ2mmの寒天層の板を3枚つくる。 _寒天板の2枚にはそれぞれ1組7穴を、残りの1枚には2組の小穴を鋳型で開ける。 `寒天板にはその番号と班の番号を油性ペン(マジック)等でしっかりとしるしをする。左右が区別出来るように記号を付ける。 a特異性観察用として抗原3種類(ニワトリ卵白アルブミン、ウズラ卵白アルブミン、ウシ血清アルブミン)と抗血清2種類(抗-ニワトリ卵白アルブミン、ウサギ抗血清と混合抗血清)を、また、アルツス現象惹起ウサギにおける抗体価測定用にアルツスウサギ抗血清と正常ウサギ血清を配布する。 b 特異性の観察 @ 寒天板No.1と2では図ゥ-1のように特異性観察用に配布された抗原と抗血清(抗体)を穴に注入する。この操作ではマイクロピペットを用いて微量の抗原と抗体を一定量添加する(10 オl/穴)。 A 湿潤箱に寒天板を入れ、静かに反応を進行させる。 B翌日観察し、生じた沈降線のパターンを記録する。沈降線のパターンより反応の意味を考察する。 c アルツス現象惹起ウサギ血清の抗体価測定 @抗体価測定用に配布されたウサギ血清を生理食塩水で2〜256倍まで2倍連続希釈する。エッペンドルフチューブとマイクロピペット(100 オl用)を用いて表ゥ-1を参照し希釈する。 A 図ゥ-1の寒天板No.3の抗原抗体注入配置図にしたがい、順次希釈したウサギ抗血清(抗体)及び正常ウサギ血清を周囲の穴に、また中央の穴に抗原(特異性観察用のニワトリ卵白アルブミンを用いる)を入れる(10オl/穴)。希釈血清は薄い順に入れればチップを取り替えなくてもよい。 B翌日沈降線の有無を観察し、何倍希釈まで沈降線が出現したかを判定する。沈降線が出現したもののうち、最高希釈倍数を沈降抗体価とする。 図ゥ-1. 抗原抗体組合わせ  1). 寒天板No.1 寒天坂の中央に鋳型(7穴1組)で穴を開ける。   以下の配置で抗原と抗体を入れる。   ニワトリ卵白アルブミン ニワトリ卵白アルブミン ウシ血清アルブミン          ウシ血清アルブミン 混合抗血清(抗-ニワトリ卵白アルブミン    +抗-ウシ血清アルブミン) ニワトリ卵白アルブミン    ウシ血清アルブミン  2). 寒天板No.2 7穴1組を寒天坂の中央に開ける。  ニワトリ卵白アルブミン ウズラ卵白アルブミン   ニワトリ卵白アルブミン ウズラ卵白アルブミン      抗-ニワトリ卵白アルブミン抗血清   ウズラ卵白アルブミン ニワトリ卵白アルブミン  3). 寒天板No.3 7穴2組を寒天板に開ける。 アルツス惹起用ウサギ血清 x1 x2 x32 x4            ニワトリ卵白アルブミン x16 x8 アルツス惹起用ウサギ血清 x64 x128    正常ウサギ血清 x1 x256     ニワトリ卵白アルブミン          抗-ニワトリ卵白 x4          アルブミン抗血清 表ゥ-1 アルツス現象惹起ウサギ血清の希釈 試験管    1 2 3 4 5 6 7 8 希釈倍数   x2 x4 x8 x16 x32 x64 x128 x256 ウサギ血清 0.1ml 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 生理食塩水 0.1ml 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 (観察の要点)  ニワトリあるいはウズラの卵白アルブミン(抗原)あるいはウシ血清アルブミン(抗原)と各抗血清との間に生じた沈降線の観察(融合、交差、部分融合)から、各々の抗原間の共通抗原の有無を観察する。図ゥ-2の 4 種類の反応パターンを参考にして各自の記録した沈降線のパターンを考察する。 図 ゥ-2 Ouchterlony法の反応のパターン I 型 同一反応(融合) II 型 非同一反応(交差) III型 部分的同一反応(部分融合) IV 型 抑制反応(沈降線形成阻止) 図 ゥ-3 ウサギ抗血清の抗体価測定の例 A1〜6は系列希釈ウサギ抗血清を、aは抗原を示す 判定 抗体価(沈降線出現を示す血清の最高希釈倍数)は 1:8(または8倍)である