論文誌「情報教育方法研究」 第3巻 第1号
− 概 要 −
研究論文
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「マルチメディア教材を用いた薬剤師のためのコミュニケーション教育について」
北陸大学 大嶋 耐之、河島 進、北海道薬科大学 黒澤菜穂子、北海道医療大学 齋藤 浩司
本研究において、薬剤師資質の向上に寄与することを目的とし、薬学生のコミュニケーション能力向上と、行動科学に基づく服薬時のためのカウンセリング技法を用いた問題解決能力の育成を図るための指導法を、現状と照らし合わせ、新たな教材を作成した。次に、この教材を用いた具体的な教育プログラムを提示し、教材の有用性、学生の意識の差異について考察を加えた。その結果、現状ではコミュニケーションスキルが十分に備わっていない薬学生が多く、作成したマルチメディア教材を討論、ロールプレイを交えながら有効に利用し教育することで、薬剤師としての基礎的素養が習得できることが示唆された。また、作成したマルチメディア教材は有用であり、今後の薬剤師教育に活用できるものであることが示唆された。加えて、医療従事者としての意識については希薄な部分が一部の学生に見受けられ、医療倫理・モラルについての講義の重要性も改めて認識された。
「マルチプラットフォーム型情報教育支援システム」
日本工業大学 飯倉 道雄、吉岡 亨、樺澤 康夫
今日、高等学校などの教育機関において、情報教育が多様なプラットフォームを利用して行われるようになった。大学への入学者の情報技術に関する継続した学習を期待する場合、画一的な情報技術学習環境は学生個々の学習履歴や学習進度に適合しないことがある。そこで、複数のプラットフォームに対応した情報処理システムを採用した情報技術学習環境を整備した。この環境下で情報教育を行うためには、プラットフォームに依存しない教育・学習支援ソフトウェアが必要である。著者らは、WWWブラウザとJava Appletプログラムなどを利用して、プラットフォームに依存しない情報技術学習支援ソフトウェアの開発を行ってきた。本論文は、マルチプラットフォーム型情報技術学習環境およびプラットフォーム非依存型学習支援ソフトウェアの構成法について提案し、その運用結果について報告するものである。
「フィールドワーク活用による情報リテラシー教育」
愛知学院大学 清水 和美、村田 尚生、續 伯彦、別府 良孝、泉 寛幸
情報通信技術の進展に伴い、情報リテラシー教育の充実が望まれている。愛知学院大学情報社会政策学部においては、コンピュータリテラシーおよび情報リテラシーを効率的に習得することを目的とし、フィールド調査を含む1年次生を対象のカリキュラムを設定し授業を行っている。この内容は、文書作成、LAN操作、ネットワーク検索等の基礎技能を身につけた後、1年次後半の3ヶ月間に渡りクラスを数グループにわけ実施される。カリキュラムは「応用技能習得」「調査設計」「フィールド調査」「分析・発表準備」「発表・反省」の五つの段階から構成され、調査分析結果及び導き出された提言はクラス内でのプレゼンテーション発表、学内イントラネットによるWWW情報により発信される。学生はこの過程を通じて、情報ネットワークを活用しての情報収集、登録、加工、分析し本質を掴んで発信する能力他の習得を図る。
「ハンズオンによるモノづくりとデジタルポートフォリオ作成を取り入れた情報教育」
東京家政学院筑波女子大学短期大学部 余田 義彦
課題探求能力の育成を目的として、ハンズオン活動とポートフォリオ評価を取り入れた情報教育を4年にわたり行ってきた。この授業は、学生にグループを組ませ、次のステップで進める。1)課題を与え、解決に必要な概念・原理を手短に説明する。2)解決方針を考えさせ、ハンズオンで解決に取り組ませる。3)活動の過程と成果をポートフォリオとしてまとめさせ、ホームページで公開させる。この授業は計測と制御の初歩を学ばせるもので、ハンズオン活動としてロボット作りを取り上げた。ポートフォリオの作成と公開は、メタ認知的活動や学生間での相互啓発の促進、活動への迫真性の付与などを意図して取り入れた。授業実践の成果は、本指導法が、学生の能動的な学習活動を引き出し、課題探求能力を育成する方法として有効であったことを示唆している。
「Web上のゲーミングによる仮想経済システムの構築と経済学の教育支援」
追手門学院大学 太田 拓男、杤尾 真一
最小限の経済主体と財を設定して、Web上のゲーミングとしての仮想的な経済システムを構築した。これによって経済システムに関する基本原理を教えることが目的である。このシステムは経済主体の役割を演じる参加者同士の取引のみから構築されている。さらにシステムを単純にするため、得点源となる消費財は1種類とし、各主体のもつ効用関数、生産関数も単純なものを採用した。しかし、各主体は最も単純な証券であるゼロ・クーポンボンドを発行して市場の取引に用いることができるようにしているため、このゲーミングによって金融経済の基礎的な構造を学ぶことができる。 参加者を結び付け、市場と各主体の簿記システムを管理するためにネットワークコンピューティングシステムが活用されている。Webシステムの採用によって、特別なプログラムを用意することなく、データベースをアクセスするゲームに参加することができる。
「バーチャル・デザイン・スタジオのシステム構築とその実践」
芝浦工業大学 衣袋 洋一
本研究の目的は、前発表(1998年度第6回情報教育方法研究発表会「製図板のない建築設計教育とイントラネット」)の電子メールによる通信、WWWによる表示、及びデータベース等々として個別に構築された在来の「イントラネット」及び「VDS」(Virtual Design Studio)を、統一された、よりレスポンスの高い外部者参加型「Webコミュニケーションツール」として再構築し、情報技術IT(Information Technology)による新たな教育方法としての可能性とその意義及び実践結果を発表するものである。
「記述問題の自動評価を目指した教育支援情報システムによるInteractive Education」
大阪産業大学 長坂 悦敬、金沢学院大学 阿手 雅博
現在の教育現場の抱えている状況を踏まえ、Interactive Education 環境を構築するために必要な教育支援情報システムの具体像を検討、要件を整理した。さらに、Webコンピューティングの技術を用いたシステムを念頭に、個人の学習レベル評価、双方向の学習指導、記述問題の評価支援、学生同士の相互啓発を可能にするための各モジュールの設計を行い、それらを統合した教育支援システムを開発した。特徴の一つにテキストマイニング技術を活用した記述問題の評価支援モジュールがある。この技術では、予め文書データベースから単語間の関連度を学習し、その知識を基に文所間の関連性を判断して、概念的な検索機能や連想性による分類機能を実現する。これにより、文書の趣旨に沿った検索・分類が可能となり、模範回答との関連度を定量的に表すことができる。本システムについて複数の大学で実証実験を実施、その有効性を確認した後、実際の授業で継続運用している。
「対話作成を中心とした授業支援用中国語コンピュータ教材」
早稲田大学 村上 公一
1999年度に学部共通の中国語教科書のコンピュータ教材化を行った。本稿は開発した教材の目的、内容、使用方法及びその学習効果についての報告である。本教材はコンピュータ教室の個人端末での使用に加え、一般教室でのビデオやプロジェクタによる電子黒板的な使用にも対応し、またWeb化してあるので使用場所を問わない。教材は、文法説明用の提示画面である[文法画面]、単語キャストを動かして対話(スキット)を作成することにより文法(語順)を学習する[作成画面]、リピート練習、オーバーラップ練習、ロールプレイ練習等のための機能をそろえた[対話画面]からなる。本教材を使用した学生のアンケートでは肯定的な評価がなされ、また使用クラスと未使用クラスの学生の成績比較からも、中国語の習得、特に文法(語順)の習得に有効であることが確認された。
研究ノート
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「音声合成ガイダンスを併用したリアルタイムな履修登録システムの試作と学習意識の向上」
大阪芸術大学短期大学部 武村 泰宏
本研究では、新入生の履修登録における問題に対処する支援システムの試作を行い、履修登録に関する問題と概念を抽出し、履修登録と学習について解析した。新入生にとって履修登録は、学習のための第一歩の作業で、今後の大学生活を左右する大きな事柄であるが、履修登録の支援事例や定量的な解析データが見あたらない。履修登録の支援に音声合成と画面表示を併用したガイダンスを提案し、新入生の履修登録をシミュレーションで支援するクライアントサーバー型のシステムを試作した。システム利用者と非利用者へのアンケートの基本的な統計処理と因子分析により、履修登録の影響を解析した。システム非利用者の手作業では、「わかりにくさ」といった概念から、「点検や正確性への不安」といた状態が形成されている。システム利用者においては、履修登録に関わる3つの因子を抽出し、第二因子の「学習への関心」から履修登録と学習意識の関連を解明した。
「コンピュータ入門教育への個別復習システムの導入」
東京電機大学 土肥 紳一、大井 尚一
近年、教育へのコンピュータ技術の導入が盛んに行われている。コンピュータ支援による教育として、プログラムされた教育内容に基づいて学習者が自習により学ぶ人間の教師なしの様式と、教師が授業中の教材提示などの手段として情報機器を駆使する様式がおもに行われており、それぞれ効果を上げている。しかし、授業内容の復習にコンピュータを積極的に使用する試みの報告はなされていないようである。著者らは、授業時間内で十分に理解できない学生に対する学習遅延の改善を目的に、授業時間後の復習に使用するマルチメディアを活用した個別復習システムを開発した。現在までコンピュータ入門教育に対するいくつかの授業テーマについて復習用コンテンツを準備して実用に供しているが、学習遅延者などの復習に効果的であるとの評価を得ることができた。
「教育道具としての汎用電子アンケートシステムの開発と活用」
明海大学 疋田 春水、白野 伊津夫、石川 博久
アンケートシステムは教育効果を評価するための有効な道具であるが、あまり扱いやすい道具ではなかった。我々はWWWブラウザから一連の操作でアンケート作成、実施、回収、集計を行える汎用電子アンケートシステムを開発した。このシステムは、選択式や記述式の回答形式を自由に組み合わせて、目的に適したアンケートが効率よく迅速に作成できる。さらに、画像や音声を使用した非言語アンケートも可能になっている。集計結果はリアルタイムでグラフ表示できると同時に、クライアントのパソコンにデータがダウンロードできる。我々は開発したシステムのさまざま可能性を調べるため、次の三つの場合について活用し検証した。 (1)情報処理教育における基礎データ収集 (2)異文化コミュニケーション授業における教材としての活用 (3)物理学の授業における教育方法の改善 この結果、開発したシステムは使いやすい強力な道具であることがわかった。
「総合情報処理教育としての統計分析能力の育成法とインターネット上の支援教材開発について」
東洋大学 渡辺 美智子、早稲田大学 櫻井 尚子
立教大学 山口 和範、井上 達紀、倉敷芸術科学大学 中川 重和
ネットワーク化が急速に加速化し情報が氾濫する社会環境にあって、自発的な問題設定から問題と関連する資料・データの迅速な収集、計量分析を含めた資料およびデータの的確な分析、分析結果の効果的な情報発信に至る総合的な情報処理能力を有する人材への需要は大きく、実際、計量分析を中心とした人材育成教育が盛んに社会で実施されている。このため、私立文科系大学に対しても、大学での情報教育、とくに計量分析を含む総合的情報処理能力の涵養が重要視されている。 本論文では、実践型の統計・計量経済分析教育を通して総合的情報処理能力の育成を図る具体的な教育方法論を提示し、同時に、計量分析教育を効果的に実現するため共同開発された教育用Webサイトの概要を示している。具体的には、会話型の電子テキスト、検索機能を持つ電子図書システム、Excel上でのインターフェイスを有する教育用統計分析ツールなどを開発し、広く一般に提供し共同利用に供している。