「初等音楽教育システムの開発とその実践」
武蔵野学院大学 荻原 尚、木川 裕
音楽教育は感覚的な理解を伴う知識の教授が必要な教育分野である。しかし、従来の講義方法では各学習者のレベル差に配慮しながら実現することは困難であった。また、感覚的理解には音楽的基礎能力の育成が不可欠だが、これを講義形式で育成するカリキュラムは存在しなかった。そこでマルチメディア教材を作成し講義に導入することで、感覚的理解を伴った知識の教授を可能とし、また、音楽的基礎能力を育成するself-Learningプログラムを併用することで、より効果的な教育を可能にした。本プログラムの使用により、各学生の能力に合わせた講義が可能になり、学生の講義に対するモチベーションを向上させることができた。さらに、インターネット上の本講義のコンテンツを併用し、講義内容についてのアンケート・質問を随時行うことで、より教育効果を高めることができた。
「患者データベースを用いた臨床実習システム」
慶應義塾大学 高橋孝雄、小崎健次郎、嶋田博之、三橋隆行
「知識を使って問題を発見し、自ら解決する能力の育成」という文部科学省の答申にもかかわらず、医学部臨床実習の実態は、全国医学部の多くにおいて「参加型」ではなく「見学型」にとどまっている。本研究では、学生が診療チームに参加する際の情報収集を支援しつつ個人情報を保護し、さらに現場医師の思考過程を医学生に効果的かつ自立的に学ばせるためのインフラストラクチャーとして、画像データを含むあらゆる診療情報を包括的に管理するデータベースを開発した。学生の診療参加を念頭においたデータベースの開発・運用により、診療参加型臨床実習が極めて有効な学習方法であることを実証した。加えて、電子カルテを含む従来の概念に基づく"カルテ"が、医学生の診療参加にとって障壁となりうることが明らかになった。
「日本文学文化についてのインターネット利用の国際間の共同授業」
専修大学 板坂則子、高橋龍夫、西野 強、松永賢次
専修大学日本文学文化専攻では、学生たちに1)古典と近現代の枠を越えた視点を持たせる、2)日本文学文化に対する国際的な視点を持たせる、3)情報処理機器の利用を推し進める、等を目的として、「国際間のネットワーク利用共同授業」計画を行っている。本稿ではその中から、日文専攻学生と外国大学で日本学を学ぶ学生とが共同で行うリアルタイム共同授業について取り上げる。これはインターネットで双方の教室を繋ぎ、ネット会議ソフトで互いの画像と音声を送り、事前作製のコンテンツを用いて共同で授業を行うものであり、日本語を基本言語としている。これらの「ネット授業」を通じて、学生達には「国際的な視野」の開発と「情報機器への関心」の増加が顕著に見られた。この試みが今後も、さまざまな可能性を持って進められていくことを願う。
「分散型反復学習アドバイスを活用したe-Learningによる初等物理の学習促進」
東海大学 松浦 執
初等物理学の授業時間外学習を支援するe-Learningシステムを構築した。対面授業を教育のコアとし、予習・復習ドリルを通じた授業時間外学習のためのコンテンツをe-Learningにおいて提供した。予習には記述ドリルを、復習には選択肢型および計算型ドリルを中心としたドリルを提供し、この成績を中心に学習管理を行うとともに、授業時の各種テストの成績とを合わせて学習進捗状況をまとめたページを提供した。物理学は積み上げ学習が必要であり、先に学ぶ知識は後で新しい内容を学ぶときに、その理解度に応じた復習の反復が必要である。このシステムでは、ドリル成績に対する、学習後経過時間に依存する累積正答率を導入し、分散学習理論に基づいた適切な反復学習のアドバイスを導入した。この結果、かなりの反復学習が行われ、ドリルの学習反復回数とともに正答率が増加することが見られた。この反復学習アドバイスシステムにより、よりよい正答率を得ようとする動機づけが促進されることが示唆された。
「有機的なCALLによる言語学習支援」
福岡女学院大学短期大学部 メイヨー デビッド
高価格で制限の多い市販CALL製品とは対照的な有機的なCALLのモデルを5年間開発し、短期大学での英語学習支援に応用してきた。HTMLウェブのベースにPHP・MySQL・JavaScriptを加え、1)ユーザの学習スタイルや目的を考慮した複数のエントリーポイント、2)統合性の高いインターアクティブな教材、3)テスト問題の提示・入力・処理のシームレス化、4)毎日自動的に変わるTodayページや教材のランダム提示を含む体制をほぼゼロコストで形成した。また、第三者作のオープンソースPHPアプリケーションの導入によりプライベートフォーラムをサポートする電子掲示板や、学生トラッキングの機能を設けた。最近は動画を作成し、課題のフォローに使い始めたが、これからは事前の説明用の動画も作成する予定である。このシステムは低コストで柔軟性のあるCALLモデルとしてさまざまな教育分野に共通性があると言えよう。
「アセスメント能力開発を重視した看護過程学習支援システム」
日本赤十字豊田看護大学 杉浦美佐子、小林純子、松田日登美、桂川純子、高見精一郎、水野智
岐阜聖徳学園大学 磯本征雄
アセスメント、看護診断、計画立案、実施、評価の要素で構成される看護過程は、看護学基礎教育のなかで、最も時間をかけた指導が求められる領域である。このうち特にアセスメントは、看護診断や看護ケアを大きく左右するため、その教育は必要性が高い。我々は旧来使用してきたサーバークライアント型の看護過程学習支援システムにWeb化を中心としたバージョンアップを施し、新たにCASYSNUPL(ComputerAssistedSystemforNursingProcessLearning)」を開発した。このシステムは、OS:RedHatEnterpriseLinuxES、Webサーバー(Apache2+PHP4)およびDBサーバー(PowerGres)で構成され、本学ネットワークDMZに設置した。学習者は、インターネットを経由してCASYSNUPLにログイン、テンプレートファイルと演習用症例データをダウンロードした上で、学習を進める。必要に応じ、編集途中のデータをCASYSNUPLのDBに保存し、教員がこれを閲覧し、指導を与えることができる。演習への導入で多くの効果を得、学習者・教員によるシステム評価は概ね良好であった。
「eラーニングによるビジネス教育システムの開発と実践」
横浜商科大学 柳田義継、立川丈夫、野々山隆幸
関東学院大学 荒川峰彦
株式会社テクニカルユニオン 戸倉貴史、戸倉正貴
本研究の目的は、大学等におけるビジネス実務教育を支援する、ビジネス教育システムを開発・実践することである。実社会において実際に活用されている販売管理システムをベースとして、学生が容易にビジネス実務を理解できるように教育用に再構築した、eラーニングによるビジネス教育システム"ビジネスセンター"を開発し、その実践を通して、ビジネス実務教育の確立を目指している。
ビジネスセンターのシステムは、インターネット経由でのeラーニング形式、CD-ROM形式を選択することができる。ビジネスセンターを活用し、一連のビジネスプロセスを実際に体験することで、ビジネスプロセスの全体像を理解することができるようになっている。また、ビジネスセンターにおける様々な情報をもとに、データ分析を行うといった、情報活用能力の育成にも有効である。
「使える英語力を養成する総合的英語CALLシステムの開発とその評価」
文京学院大学 竹蓋幸生、高橋秀夫、土肥 充、草ヶ谷順子、与那覇信恵
本研究は、外国語としての英語の教育方法の抜本的な改善により、国際語としての英語が使える日本人の効率的な養成を可能にする英語教育総合システムの構築を目的に実践されたものである。基礎的な研究の実践には学際的、総合的視点を導入し、さらに指導理論、指導法、教材はシステム科学の知見を基に開発し、英語力の基礎である聴解力や語彙力のCALLによる効果的な養成を重視した、中核、複合、集積、包括の4システムからなる多重総合システムを構築した。構築したシステムを試用した結果、外部試験の得点、学生の印象評価、教育環境の改善、いずれの面から見ても期待される効果の得られることが再現性を含めて検証された。また、この多重総合システムの構想は英語以外の外国語の指導にも効果的に使えることが確認されている。
「PBL(Problem-BasedLearning)による問題発見解決型情報教育」
甲南大学 井上 明
本研究は、ProblemBasedLearning(PBL)を情報教育へ適用した教育手法を提案する。PBLは、問題発見解決能力と専門知識を習得する教育手法であり、これまで主に医学教育などで用いられるなど、その教育効果が実証されている。ただ、情報教育へ応用した事例はほとんどない。
今回、モデルケースとして、大学での教職科目において、教師に求められる情報利活用能力を習得するPBL授業をおこなった。そして、PBLを適用した授業と、PBLを適用していない授業との学習効果の比較を行い、問題発見解決能力や情報リテラシー能力などの違いを検証した。
その結果、学習効果の比較から、PBLによる情報教育は、問題発見解決能力、自己学習、情報リテラシー、対人能力のすべての項目において、PBLでない教育に比べ優位差が見られた。
「3次元CAD用e-Learningコンテンツの開発」
近畿大学 加藤暢宏、藤井雅雄
三菱電機エンジニアリング株式会社 田口晋也、清水隆紀
3次元CAD(Pro/ENGINEER2001R)の操作スキルを修得するためのe-Learning教材を産学協同で開発した。受講者に興味深く受講させ、終了時に達成感を獲得させるために、全体を通してモデルを少しずつ完成させる構成をとった。「電車」「飛行機」「船」などの身近なものを題材として用い、学習動機が容易に維持できるように配慮した。また、演習を途中で放棄させない為に、様々な救済措置を準備すると同時に、受講者に不要なストレスを与えないために、アプリケーションのレスポンスを向上させることに注力した。解説演習ウィンドウと、実際のCADアプリケーションを同一のディスプレイに同時に表示することにより、操作スキルを確実に修得させることを目指した。本コンテンツの有効性を実技テストの結果等によって確認した。
「プログラミング演習における評価方法の改善」
芝浦工業大学 松浦佐江子
情報技術教育においてプログラミング技術の習熟は必須事項である。プログラミング演習の実施方法は教員が提示した課題を学生が授業時間に解いて提出し、提出したプログラムを教員が評価するという方法が一般的である。しかし、提出されたプログラムのみを評価していたのでは、学生がどのようにプログラムを考えて作成したのか、自力でプログラムを作成したのかを判断することはできない。われわれは、プログラミング演習レポートをコードレビューによる審査方式によって評価することにより、学生がどのように考えてプログラミングしたかを評価し、学生の学習意欲の向上を図る工夫を試みた。本稿では授業支援システムによるレポート管理支援および自動採点のためのテストプログラムに基づき、効率よく公平に評価を行う方法ならびに演習への適用結果を報告する。
「Wikiを利用した協調的プログラミング学習」
大阪国際大学短期大学部 谷口るり子
短大情報系コースのプログラミングの演習で、自分で何かプログラム(作品)を作るという課題を、以前は毎年学生に課していた。しかし、年々学生が作品作りに熱心に取り組まなくなったため、数年間中断せざるを得なくなった。そして2004年度、この課題を再開したが、今回は各学生が作品案・進捗報告書・完成作品をSwikiシステム上に提出するようにした。学生は、Swiki上に自分の作品のキャプチャ画像を載せてから、作品の説明やコードや場合によっては質問を書き込み、教員は、コメントや質問に対する回答を書き込んだ。この結果、学生はSwikiシステムにアクセスするだけで、他の学生の作品の概略と進捗状況が目に入った。そして、他の学生の作品の進み具合・内容・コードに良い影響を受けながら、以前に比べ熱心に作品に取り組んだ。つまり、プログラミング学習において作品の作成過程における情報を共有することにより、協調的で効果的な学習が行われたことがわかった。
「携帯電話回線を用いた遠隔授業の試みについて」
神戸学院大学 五十嵐真子、大西慶作、中内真人
講義において、従来以上に多様な情報を、学生がより身近に感じられる方法で提示するための新たな授業方法として、2003年度より遠隔地と教室をつないで、双方向にコミュニケーションしながら講義を進める試みを行ってきた。2004年度までに合計7回実施し、その過程から携帯電話回線を用いる方法が最も安全性が高く、かつインターネット設備を必要としないので、屋外等の遠隔地との連携も可能なため、汎用性が高いことが判明した。また、遠隔地へはデジタルビデオとノート型パソコン操作するスタッフが最低1名確保されれば可能となるため、非常に利便性が高いことがわかった。画像にブロックノイズが残る、音声が途切れたり、雑音が入るなどの改善点が残されているが、学生にとっては、最新の情報を生で得ることができ、かつ学外の専門家との質疑応答が可能となるため非常に印象に残る授業方法といえる。また、多人数の講義にも、少人数のゼミへも利用可能なため、汎用性は非常に高いといえる。
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