論文誌「IT活用教育方法研究」
 第12巻 第1号

− 概 要 −
 

研究論文


薬・医・歯・保健医療学部横断PBLにおける自己主導型学習

 昭和大学 大林 真幸、馬谷原光織、片岡 竜太、高宮 有介、鈴木 雅隆、鈴木 久義、佐藤 満、中村 明弘
        戸部  敞、 山元 俊憲、木内 祐二

 本学では医療チームによる問題解決能力の養成を目指して計600名/学生を越える大規模4学部(薬・医・歯・保健医療学部)横断PBLを実施している。しかし、ファシリテータや学生が異なったキャンパスに分散するため、時間的・距離的な制約あり、学生同士の討議やファシリテータの支援が不十分になることが考えられた。そこで、学部を超えた学生同士の討議を活性化し、ファシリテータが自己主導型学習に関われるシステムを構築した。本システムはWeb上で仮想のPBL室を設置し、討議、レポートの提出、情報の共有を支援する。コアタイム以外でも討議の場所として活用され、ファシリテータによる学生の自己主導型学習を支援することができた。また、学生からも「チーム医療の重要性がわかった」などの意見が得られた。本論文では全学部横断PBLにおけるPBL支援システムの概要と教育効果について報告する。

 

問題解決能力育成を目指した薬学型PBLと支援システム

 名城大学 大津 史子、永松 正、灘井 雅行、豊田 行康、後藤 伸之、平松 正行、吉田 勉、小森由美子
        長谷川洋一、亀井 浩行、野田 幸裕、森  健

 問題解決能力の育成を目的として新たに薬学型PBL「薬物治療学」を創設し、教育効果を十二分に引き出すために種々のICTによる支援システムを構築した。「薬物治療学」は1週間1疾患1症例を1モジュールとするPBL方式で、3モジュールを1クールとして実施した。効果的なグループワークと自己学習を推進するために、ファイルサーバーや既存のLMSを利用するとともに、クラスレビューシステムやeポートフォリオをなどのオリジナルなシステムを構築した。最終的に学習者が作成したケアプランの評価点とグループのメンバーのモジュールテストの間に有意な相関が認められ、良いグループワークができると知識の習得にもつながることが示唆された。今回の薬学型PBLにおいて、必要に応じて柔軟にICTによる支援を取り入れたことが、大きな教育改善効果をもたらしたと考える。

 

Webリフレクション・ペーパーによる授業改善と学習管理力の向上

 常磐大学国際学部 北根 精美

 本論文は、授業の最後の10分程度を利用して学習内容や授業のフィードバックをWeb上で記述させるWRP(Web reflection paper)の2年間にわたる135名分の記録をもとに、科目担当者の授業改善効果と学習者の学習管理力の向上効果を検証したものである。科目担当者は授業進度に対する評価点やフィードバックから、授業の内容量や説明時間を調整した結果、2009年において評価平均値が向上する改善が見られた。学習者の学習管理力は、WRP記入率、授業内容のテーマ語出現率、学習意欲に関連するキーワードの登場率、学習目標の設定に関する記述といった項目を用いてWRPを定量的に分析した結果、毎回の授業における学びを振り返る復習のためのツールとして機能していたことがわかった。今後、WRPを学びの成果を確認し、次の学習目標の設定がしやすいツールとして発展させる必要がある。

 

仮想業務体験実習のためのERPソフトの開発

 産業能率大学 坂本 祐司、松村 有二、斎藤 文、岩田 安雄、長屋 信義

 卸業を想定した統合基幹業務システム(ERP)を開発した。このシステムにより、業務プロセスとキャッシュフローの関連性を理解させることが期待できる。ERPについては、市販のパッケージソフトを授業用の教材とするには金額面の他、業務プロセスの複雑さ等で不向きである。このような状況から、機能を絞り込み業務プロセスを単純化した仕様で授業教材として使用できるシステムを開発した。教員自らが自主開発するにあたって、表計算ソフトのマクロ機能とデータベースソフトを利用した。自主開発ERPを使用し、受発注業務、在庫管理業務、資金管理を模擬体験する演習授業を実施した。この演習において、一般的な業務プロセスの理解、効率的な在庫管理および資金管理の重要性を体験させることができ、学生の授業参加への意欲向上にも貢献した。

 

学生の作問を利用した学習システムの教育効果

 創価大学 高木 正則、坂部 創一、勅使河原可海

 我々は、e-Learningコンテンツの作成と、学習意欲の維持の困難さに着目した上で、学生の学習効果を向上できるWebベースのオンラインテストシステム「CollabTest」を開発してきた。CollabTestでは、学生が問題を作成し、作成した問題をグループ内で相互に評価することができる。また、その問題を利用した確認テストを実施できる。本論文では、2008年度前期に本学で実施したCollabTestの利用実験について報告し、CollabTestの有効性を評価する。アンケートの結果では、教員の問題を解答することよりも、問題を作成することのほうが理解度や学習意欲の向上に役立つと答えた学生が多かった。また、 CollabTestの活用度とテストの得点にかなり関連があることが示された。

 

プログラミング導入教育における提出課題とフィードバックの共有

 京都産業大学 安田 豊


  プログラミング導入教育において、提出課題に対するフィードバックの重要性は論を待たない。特に理解度の低い受講生へは個別フィードバックがクラス全体に対して行う一括フィードバックより有効である。 しかし、個別フィードバックは教員側の時間投資量が大きく、また理解度の低い層に注力し過ぎることで、逆に理解度が高い受講生がその能力を伸ばす機会を失う可能性もある。そこで本稿ではすべての提出物と各受講生向けの個別フィードバックを全受講生が共有する手法について提案する。理解度の低い学生に対して各自に合わせた直接的な説明を与えながら、理解度の高い学生には他者の誤った、あるいは優れたコードやフィードバックを提示することで発展的学習の機会を与えることが目的である。半年間の授業における実践の後、アンケートによって手法の有効性を確認したので本稿にて報告する。

 

日本語表現法を支援するIT学習システムの開発

 城西大学 平澤 洋一
 摂南大学 松永 公廣

従来型の教育方法では教師の献身的な努力と過重な負担が求められる。その負担をできるだけ軽減し教育効果を向上させるために開発したのが「日本語表現法を支援するIT学習システム」である。4部15段の基底構造に学習者が短文を入力させ、表現構造レベルで種々の表現技法を加えることで小論文作成を簡素化し、自己評価と他者評価を採用することで教師の負担を軽減した。コンテンツは1)論文構成法、2)基本演習、3)応用演習、4)発想法など。24講に分けて画面配列した。キーワード抽出、キーセンテンスの抽出、誤文訂正などは自動採点とし、学習者の表現力向上の測定には、半期ごとのテストを活用した。表現力の半期後の上昇率は、大学による差があり、35.9〜65.7%であった。