特集

情報化時代の教育



心電図の生理学および不整脈の授業におけるデジタル教材

竹内昭博(北里大学医療衛生学部医療情報学助教授)




1.デジタル教材の利用範囲

 授業中の提示教材の一部として、デジタル教材を用いている。心電図の生理学および不整脈の講義の中で、正常の心電図および各種の不整脈の解説をしながら、適宜、該当する心電図波形をスクリーンやTV画面に提示している。描画の速度を遅く(停止)しながら、重要な点について説明している。


2.経 緯

 デジタル教材を利用するようになった理由としては、言葉や図では説明しづらいこと(心筋細胞の同期や電気的興奮伝播等)について、動画やシミュレーションにより理解や納得させることができるからである。
 デジタル教材を作成することができたのは、データ(多種類の心電図波形のデータが得られた)とプログラム(私自身がプログラム作成に興味を持っていた)と環境(学生がコンピュータを自由に使用でき、プログラムの配布ができる)が整ったこと等による。


3.教材内容

 本教材はMS-Windows上で、アプリケーションプログラムの一つとして稼動する。メインウィンドウには項目一覧表(ボタン)が列挙され、1)心臓全体の電気現象(電気的興奮の伝播、そのベクトルとしての見方、収縮弛緩等)がアニメーションで提示される。2)心筋の自動能および興奮伝播についてのシミュレーションが示される。3)正常心電図、不整脈(上室性期外収縮、心房細動と粗動、ブロック、心室性不整脈等)は、実際の心電図モニターの如く、心拍に同期したビープ音とともに連続的に描かれる。心電図波形の表示速度を変えることができるだけでなく、解説文も提示される。4)訓練項目では、毎回異なる不整脈が問題として提示され、入力された回答の正否が判定される。
 本教材では、強制的な学習コースは設定されておらず、学習履歴は残していない。


4.デジタル教材の利用によるメリット

 教室のスクリ−ンを注視していないと波形が流れて消えてしまうので、学生は注目せざるを得なくなる、引いては、心電図に興味を抱かせることができると思う。
 基本的なもののみを示し、学生の質問や要求に対応する不整脈をその場で提示し解説することにより、より対話を増やすことができる。
 一部の学生は、授業中にプログラムの扱い方を説明していないにもかかわらず、プログラムが容易に扱えることを知り、後日、情報演習室(コンピュータ室)でそのプログラムを動かして勉強をしている。


5.今後の課題

 「マルチメディア授業」「マルチメディア教材を使って良い授業を」等の流れに対して、戸惑いを感じている。マルチメディア教材を容易に作成できるようになり、授業に取り入れられつつある。しかし、マルチメディア教材を使うからといって良い授業というわけではない。マルチメディア教材は授業の脇役であり、授業の改善には、主役である担当教員の意識改革が何よりも必要であると思う。



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