私情協ニュース1

第25回臨時総会開催される


 第25回総会は、平成12年11月24(金)午後1時半より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催された。当日は、議事に入るに先立ち文部省専門教育課の西阪 昇課長から来賓の挨拶があり、引き続き第8回情報教育方法研究発表会の受賞者の表彰の後、平成13年度文部省の情報関係予算の概算要求および12年度補正予算について私学助成課の御厩祐司課長補佐より説明があった。次いで、会費規程の一部変更を議決の後、教材・素材デ−タの電子化促進のための対策、11年度情報環境基本調査の結果、サイバー・キャンパス・コンソーシアムの事業化等について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.情報関係補助金の13年度概算要求および12年度補正予算、当初予算の採択状況について

 13年度概算要求の経常費補助金は、全体で90億円の増額の3,160.5億円、教育研究装置施設補助金が10億円増額の205.9億円、研究設備関係補助金が24.3億円の増の71.6億円を要求しており、増額124.2億円全体の58.3億円が情報化関係の要求となっている。
1)情報関係の経常費補助金の特別補助、施設装置の補助金、設備の補助金の三つの補助金の他に、新規事業として三つを組み合わせ総合的に補助していく事業として、バーチャル・ユニバーシティ推進事業とIT基盤総合整備事業を要求することとした。バーチャル・ユニバーシティ推進事業は、インターネット等を活用した遠隔教育を行うために必要な情報処理関係設備、無線LAN等の整備費、実際教育研究にかかる経常的な経費を一体的に支援するもので、経常的経費の補助として6億円、LAN等装置の補助として2億1,000万円、情報処理関係設備の買い取り補助として5億8,800万円の合わせて約14億円を要求している。
 IT基盤総合整備事業は、最先端のITを最大限に活用した教育研究を行うために必要なマルチメディア教室等の施設整備、高速大容量のLAN等のネットワークの整備、ワークステーションやコンピュータ等の端末の整備で、施設とネットワークとプラットフォームの一体的な整備を重点的に支援するもので、経常的経費の補助として12億円、施設装置整備費の補助として6億7,900万円、設備の補助として5億2,900万円の合せて約24.1億円を要求している。
2)補正予算は、11月22日に成立した。大学関係では、「私立大学等教育・研究高度情報化推進事業」として、マルチメディアの装置施設を中心に学内LAN、情報処理関係設備の買い取りも対象に情報関係の事業をトータルで推進していくもので15億7,600万円が計上されている。「私立大学最先端研究所等整備特別事業」は、研究装置、研究設備の整備に関する補助で20億円が計上されている。当初予算の研究設備の不足分を措置するために今回計上したもので、この件は追加募集を行わず、当初予算に申請があったものの中から採択していくということで、補正予算の計上により、ほぼ全件採択できる見通しになった。
 マルチメディア装置施設、学内LANおよび情報処理関係設備の買い取りは、追加募集をするため11月17日付けの文書で行った。補正予算ということで時間が限られていることから構想調書を省略して計画調書で提出を依頼し、締切を12月25日とした。内定は2月頃を予定している。なお当初予算に申請して内定のないものは、改めて申請の必要はない。
3)平成12年度私学助成関係公共事業等予備費は、臨時の公共事業支出に備え内閣にプールされているもので、臨時かつ緊急に支出を要するという事業が対象になる。本年度は5千億円の予備費が使用されることになったが、私学助成の関係では、耐震補強事業、バリアフリー化の事業が中心となり、文部省からは、情報化関係としてLANの整備に特に短期大学の整備が非常に遅れているということも受け、7短期大学に対して5,600万円の補助をすることにした。
4)補正予算や予備費を合わせると、平成7年度から平成12年度の6年間に情報化関係で1,434億円あまりが費やされてきた。国の財政事情が苦しく厳しくなってくる中で、施設設備の充分な活用と事務処理に万全を期し、適正を期していただきたい。
5)当初予算の採択状況は、学内LANは100%の内定を考えているが、マルチメディアの装置施設については、当初予算で65%の内定となり、残りの35%は補正予算で2月に措置をしたいと思っている。研究設備、情報処理関係設備の当初予算の採択率は、10%以下になる見通しで、補正予算で対応していきたい。
6)補助金事務手続きの見直しの案として、文部省では内定を9月から11月頃にかけて行ってきたが6月から7月の間に内定ができるよう、大学が採択を確認した上で夏休みの間に工事、物品の購入ができるように改善を図っていきたい。平成13年度の申請分から、例年4月頃の計画調書の提出依頼を1月の下旬頃に早め、計画調書提出の締切をこれまでの5月頃から4月中旬頃に早める考えでいる。私立大学学術研究高度化推進事業のハイテクリサーチセンター、学術フロンティア事業は、例年通り12月の上旬頃に募集をかけ、来年の1月中旬に構想調書の提出を予定している。また、構想調書と計画調書の両方の提出を求めてきたマルチメディアの教育学習方法高度情報化推進事業についても、構想調書を計画調書に一本化して事務の軽減をはかることにした。


2.教材・素材データの電子化促進のための対策について

 大学が学生に魅力ある授業を提供するために、遠隔授業をはじめ事前事後学習、教材の共同利用など情報技術を活用した教育が本格的に展開するようになる。その基盤環境としてネットワークの上で教材・素材情報を交流する仕組みが基本インフラとして必要になるが、それにはコンテンツが電子化されていることが前提で、大学あげて取り組まなければならない。最も重要課題である。
 電子化対策としては、普及させるための体制づくりと権利処理への対応の二つの側面から整理した。振興普及には、教員の理解と協力を求めるため学部、大学全体で特別の委員会など組織的に進めていくことが必要。権利処理に関する問題としては、著作権法を中心とする法律で処理できる問題と教員と学校法人の間で契約などにより対処すべき問題がある。
 法律で処理する問題は、利用の許諾をとることが原則になる。契約による問題は、大学の著作物なのか、教員の著作物なのか、著作権法上の問題ではなく、大学の中で解決すべき問題で曖昧模糊となっていることから、私情協としてガイドラインを作ることにした。
 権利処理の対策として、五つの面で教員と大学との間で共通理解を得ておくことが大前提になる。
 一つは、大学の命令で教材を作る職務著作の場合は、著作権法に即して権利の内容を大学が内規として作ればよい。教員の個人著作の場合には、教員に著作物使用の権利があるが、大学の施設を使用する場合には、大学と教員の間での内規が必要となる。
 二つは、大学が保有する知的資源の社会への還元として、補助金を活用して作成した場合には費用負担を伴わない方式で還元することが望ましい。
 三つは、外部の専門家、学生の協力による作成された教材をWebページに公開する場合でも、協力者に許諾を得ることが必要。
 四つは、他者の著作物が部分的にでも入っている場合の著作権者、出所表示の義務があること。
 五つは、他大学との連携の問題で、一方通行の場合には当然、送信側と受信側との間で利用料の問題が生じてくる可能性があるが、双方向の場合には、経費負担の問題はあまり発生しない。
 権利者区分に対する考え方として、
第一に、職務上作成された電子教材等の使用は、大学の意思決定による。
第二に、職務著作によらない場合は、教員が著作者になり教員の判断で使用することになるが、教員の著作物を大学のWebページに載せて公開するような場合は、大学名を伏して公開することと同じことに理解されるので、掲載に際しては届け出など大学に何らかの形で了解を得ることが必要になる。コンテンツの中に個人情報や肖像権に触れる恐れのある場合は、教員個人の判断によらずに、情報公開委員会のような組織を設けて、教員と協議をする場が必要。
 インターネット上で電子教材を他大学の教員と共同使用する場合は、できるだけ輪が広がるように大学としても支援する姿勢が必要で、届け出のような形をもって、他大学と利用が認められるようにしてはどうか。教材を部品化し、データベース化して自由に組み合わせできるようなルールを作っておくことが必要と考えている。また、学生にWebページを開放して、意見発表、学習成果を掲載し、ネットワーク上で評価したりするような場合でも、届け出の必要があると考える。教育的な観点から、コンテンツの適正化、外部への漏洩には担当教員に留意いただく。
 第三に、他者の著作物を取り込む場合に、公に世の中に公表されているというものであれば、引用なので出所明示を正確にしておけば許諾をとる必要がないが、引用に該当しない場合は、許諾を得るか、掲載を止める。
 第四に、個人情報の電子化では、識別ができないよう情報を加工する必要がある。
 第五に授業の映像化については、大学の主たる活動であることから、教員個人の判断で収録・公開することは問題がある。映像を利用する必要性、教育効果への寄与など大学側に判断を求めていく必要がある。全部を公開することは、大学の経営戦略上など特別の事情がない限り困難なことが考えられるので慎重な対応が必要になる。授業の映像を学生が収録する場合についても何らかの規制をかける必要がある。病気、身体障害など特別な事情への取り決めも必要となる。
 以上、このような問題について学内で協議し、権利の区分、適用の範囲、条件を何らかの形で申し合わせることが必要になる。その上で、現行著作権法の中でどのように許諾を得るのか、四つの例示を掲載した。また、検討の過程で電子化に伴う著作権処理を専門的に対応するための機構を創設することが、避けて通れない課題であると判断し、私情協の事業の中で著作権協会を作る必要があるとの提案を行うことにした。13年度に準備を始める方向で今後、検討すべきとした。


3.「平成11年度の情報環境基本調査」の結果

 情報環境整備の柱はリテラシー能力を身に付けさせること、コンピュータ環境の規模は、1年あたり2割前後伸びている。教育用は1台を平均大学では14人で使用、短大では1台を7人で使用。ノートパソコンの貸与を含めると条件のよい大学は3倍、4倍改善している。ネットワークの接続状況は、「9割のコンピュータを全部繋げています」と「9割以上はコンピュータを繋げています」がおおよそ76%、短期大学も9割以上が接続。IDの取得状況は、9割以上接続している大学でも学生50%、教員28%とかなり悪い。セキュリティーの不安などが要因のよう。ネットワークの使用目的は、3年後になるとシラバス、自学自習、体験情報・現場情報を取り入れる授業、教材の共有化、生涯学習などが考えられている。
 教員のWeb環境を認めているのは、大学が9割、短大7割だが、女子学生の多いところは、犯罪防止なども考えて、あまり認めていない。URLの公開も4割は公開していない。教室のマルチメディア化については、将来一般教室が2割台であるものを4割台に増やす傾向。マルチメディアの教室の機能は、教員1人で操作、教師と学生のパソコンを接続して、学生の反応をその場で先生が受け取る双方向授業などが考えられている。授業の情報化に対する大学の支援体制の1位は情報技術の相談・講習、2位は教室の授業運営、3位が電子化の支援、教材・資料の電子化支援となっている。シラバスのデータベース化は、これからやっていこうという大学がほとんど。全授業科目の中でのコンピュータ、ネットワーク活用授業は11%で2%アップした。教育の情報環境ランキングでは、2倍項目を増した。新しい試みとして情報環境活用モデルとして3大学を抽出、どのような背景で情報環境を適用しているかを総合的に判断できるようにした。


4.大学連携事業としてのサイバー・キャンパス・コンソーシアムの事業化

 グローバル化時代における大学教育の環境として、大学が知的資源の創造に貢献していくには、教育の高度化、オープン化を図り、国内外に通用する教育を始めることが期待される。好むと好まざるとに関わらず、世界的な規模で展開しているIT技術の活用を考慮すると、日本の私立大学としても大学のアイデンティティを尊重・堅持しつつ、ネットワーク上で連携していくことが避けて通れない課題と判断し、サイバー・キャンパス・コンソーシアムという構想を早急に考えていく必要があるとした。目的は、望ましい教育を実現・促進することと、ネットワークによる連携を促進して大学運営に寄与する。連携の対象は、協会の加盟校で希望を募っていく。可能であれば、外国の大学にも参加を働きかける。国立大学、公立大学から参加の要請があれば、その時点で、協会として状況を踏まえつつ検討を行う。
 事業内容は、情報通信技術を活用した新しい授業方法・学習方法の共同研究、多様な授業の運営支援、教材等関連情報の電子化促進および教材の共同開発、共同利用の研究と連携支援、ネットワーク型授業による外国の大学、世界の国々の大学コンソーシアムとの連携・支援、情報通信技術による教員のための情報技術講習プログラムの共同開発と研修支援、生涯学習システムの共同研究と共同運営、ネットワークによる施設設備の共同運用の支援など。事業ごとに参加校による協議組織を作り運営してはどうかと考えている。実質的な支援組織は、参加校の中から拠点大学を募り、サイバー共同支援センターを設置して実施していく。
 平成13年度中に試験的に発足するため、12年度から準備する必要があるが、12年度事業として計画していないことから、準備のための検討について総会に諮り、13年度事業計画の中で具体的に検討することにした。



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