私情協ニュース3

第16回情報センター等部門研修会開かれる


 第16回情報センター等部門研修会は、平成12年9月6日(水)から8日(金)の3日間に亘り、京都のホテルニュー京都において開催された。
 本研修会は、私立大学の情報センター等の教職員、または学内の情報化を担う部門の教職員を対象に、教育支援、事務支援、ネットワーク支援等、情報部門の責務と課題について討議を行い、関係教職員の資質向上と関係部門の発展に寄与することを目的として開催し、135名(78大学、3短期大学、賛助会員6社)の参加があった。
 研修は、講演と分科会(情報部門管理者コース、教育・研究支援コース、事務の情報化支援コース、ネットワークコース)の形式で実施された。



全体講演

「情報技術(IT)を活用した教育支援」

講師:妹尾 堅一郎氏
(慶應義塾大学助教授・知的資産センター副所長)

 大学審議会の答申にあるように、今後の高等教育には、変化の激しい時代を見据えて、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」、すなわち、課題探求能力の育成に主眼をおいた教育改革の推進が求められている。このような状況の下で、ITを教育に導入した教育改革を実践されている教員の立場から、思い描く授業方法、授業環境などについてご披露いただき、情報センター部門による新しい教育支援のあり方を考える契機とした。
 現在は工業時代と情報時代の遷移期にあり、情報時代の教育モデルが明確に定義できていない。ネットワークやマルチメディアにより教育モデルの要素自体が変化し、古い教育モデルが成り立たなくなってきた。従来の教育は〈知識伝授〉であったが、今後は「学習支援」、「教えあう、学びあう」というかたちに変化する。このような教育モデルの変容によって、情報センター部門の意味もまた変容していくので、今までの延長線上でIT化を進め、支援のありかたを考えるのではなく、情報時代の教育モデルをもとに「情報センター」のミッションを再考する必要があるのではとの提言をいただいた。


第1分科会(情報部門管理者コース)

「情報化整備が目指すもの ―大学の環境(教育・研究・経営)はどのように変わるか ―」

 IT革命が起きている現在、大学情報センターの役割は変革期に来ていると言えるだろう。大型汎用機の運用や演習室の管理といった業務が始まりであった情報センターも、情報技術の進歩に伴いネットワークやマルチメディアへの対応が重要な仕事に変わってきた。今後はコンピュータをはじめとする情報機器の管理よりも、大学が持つ知的資産の統合や教育研究環境の高度化へ向けた取り組みが情報センターの重要な仕事になっていくことは間違いない。そのためには新しい時代の教育研究に柔軟に対応できるような情報センターづくりがどの大学にとっても課題である。大規模な組織改革により、そうした変化に対応する大学も出てきているが、最も重要なことはセンター職員が積極的に大学のアイデンティティの確立と教育研究の高度化に取り組む意欲を持つことであると言えよう。


第2分科会(教育・研究支援コース)

「情報技術を活用した教育研究支援のあり方
−情報技術の活用によって多様化する教育研究支援、学術情報環境(図書館等)の教育研究支援−」

 全体講演及び二つの事例発表の内容を受けて討議希望テーマをもとに以下の4グループに分かれ討議を行った。

グループ1:図書館業務とデジタルコンテンツの取組み
グループ2:教職一体の教育支援/メディアリテラシーと情報活用能力
グループ3:ノートPCと携帯端末の活用と課題
グループ4:教員の情報活用能力向上とデジタルコンテンツ作成支援
 この分科会では新たに「学術情報環境(図書館等)の教育研究支援」というテーマを加えた。情報技術の進展とインターネット環境の普及により、図書館で取り扱う学術情報は従来の紙媒体に加えて電子化された情報が大きな要素となり、図書館の情報環境も急速に変化している。図書館は「既存」の学術情報を収集・保管し、利用提供することを中心としてきたが、大学独自の学術情報の電子化と提供についても今後さらに取り組む必要がある。今回、デジタルコンテンツの取り扱いなど、図書館関連部門の参加者と討議を行うことができたのも意義深い。
 大学職員は教育の内容までは立ち入らないという意見もあるが、教材などのデジタル コンテンツ作成に当たっては様々な情報機器や技術のノウハウが必要である。IT化が進む中、「教職一体」というキーワードが今後の教育支援業務では重要な意味を持つ。学生への正しいサービスの観点からの教職一体となった組織・体制づくりそして効果的な運営を期待する。


第3分科会:事務の情報化支援コース

「事務の情報化の方向性と課題−大学の情報公開を意識して−」

 情報系組織の情報共有化への積極的支援が大学改革と学生満足度向上、他大学との差別化に繋がる大きな要件であることは、昨年に引き続き参加者全員が理解して討議を展開することができた。
 しかしながら、各校における情報化の対象は様々で、単なるホームページなどでの情報掲載を情報共有としている例から、学園内の様々な情報を整理統合し、活用しやすい形で蓄積し共有するシステム構築を目指す例、さらに大学改革、業務改革を中心に情報化を推進しようとしている例など、多くの大学が様々な考え方を持ち、情報系組織をそれに合った形で再編成を試みている例も多く発表された。
 すなわち、情報系組織は単なる情報系インフラの設置・管理、受動的なシステム開発に留まらず、積極的に教育現場、大学組織運営に関与し大学改革の先導的役割をも求められているのではないかとの意見が大勢を占めた。
 さらに、教育の情報化と事務の情報化を推進し、学園内情報の効率的流通を図り、結果として蓄積される情報の共有化体制の実現は、情報系組織の充実もさることながら、大学構成員の問題意識の高揚と業務改善努力なくしては成立しないことは参加者の共通認識であった。
 そして、この認識の上に情報共有化とは、情報のアーカイブ、情報管制、情報活用、の各システムが全学で効果的に連携して始めて達成でき、この実現に情報系組織は大きな責任が課せられているとの結論を得たことは大きな成果であった。


第4分科会:ネットワーク

「学園のネットワーク運用管理における諸問題−不正侵入対策−」

 セキュリティーをテーマに複数のグループに分かれて討議を行った。討議の中での意見としては以下のとおりであった。

 セキュリティーポリシー策定の必要性は十分認識しているが、明確な文書化にはいたっていない。セキュリティーは規制と利用との兼ね合いがあり、利用者へのセキュリティー教育の難しさがある。センター職員はセキュリティーポリシーの認識は十分にあるが、ネットワーク運用管理対応に追われている実態が浮かび上がった。


文責:研修運営委員会


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